2011.8.6 22:03

　６６回目の「広島・原爆の日」の６日、広島市中区の平和記念公園で「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」（平和記念式典）が営まれた。菅直人首相は挨拶で、犠牲者の冥福を祈るとともに「原発への依存度を引き下げ『原発に依存しない社会』を目指す」と述べ、「脱原発」方針を強調した。犠牲者追悼の式典で首相がエネルギー政策に触れるのは極めて異例。

　首相は東京電力福島第１原発事故について「世界各国に大きな不安を与えた。事故を人類の新たな教訓と受け止め、世界の人々に伝えていくことが責務」と訴えた。さらにエネルギー政策を「白紙からの見直しを進める」と強調した。式典後の記者会見では「私の（平和記念式典での脱原発）発言と、政府の方針は方向性で一致している」と述べ、脱原発が政府方針である点も強調した。

　一方、広島市の松井一実市長は平和宣言で、初めて被爆者２人の手記を引用。今も続く被爆者の苦しみを訴え、核保有国に核兵器の廃絶に向けた取り組みを進めるよう求めた。東日本大震災については「広島は一日も早い復興を願い、被災地の皆さんを応援している」とした上で、原発事故が「原子力発電への国民の信頼を根底から崩した」と指摘。国に「国民の理解と信頼を得られるよう、早急にエネルギー政策を見直し、具体的な対応策を講じていくべきだ」と求めた。

　式典では、この１年間に死亡が判明した被爆者５７８５人を書き加えた計２７万５２３０人の原爆死没者名簿を慰霊碑に奉納し、被爆者や遺族代表らが献花。原爆投下時刻の午前８時１５分に「平和の鐘」が打ち鳴らされ、参列者が黙●（＝示へんに寿の旧字体）（もくとう）した。

　国内外の被爆者は今年３月末で２１万９４１０人。前年より８１００人余り減少し、平均年齢も７７・４４歳と０・７１歳上がった。