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from: 21世紀さん
2009年09月27日 05時25分23秒
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【日本の議論】“ショック療法”でワーキングプアは救えるか…時給1000円が「最低賃金」の是非
2009.9.26 18:00
このニュースのトピックス:日本の議論
軒を連ねる町工場。最低賃金が跳ね上がるのは是か非か 全国平均で時給1000円の最低賃金を目指す-。「国民生活の立て直し」を目指す民主党のマニフェスト(政権公約)の一つだ。平成21年度の全国平均の最低賃金の見込みは713円。公約を一気に実現すれば、最低賃金は300円近く急騰する。ただ、やり方次第では、深刻な景気後退にあえぐ中小零細企業にさらなる打撃を与え、失業者を増やす恐れも指摘される。果たして、うまく“格差是正”につながるのか。
月収が大幅アップ? 雇用者には「夢のある話」
「実際、それだけ賃金がアップするなら、夢のある話ですね」
神奈川県内に住む30歳代の男性。私立大学を卒業したが就職活動はせず、「フリーター」として職を転々としてきた。将来は、デザイナーとしての独立を目指している。
派遣のバイトなどを掛け持ちして働いているが、月収は15万円程度。家賃をはじめ必要な生活費以外は切りつめ、専門学校の学費などに収入の大半を充てている。会社員の同期生らを見ると、不安が募ることもあるという。「甘えているわけではないが、今の社会では夢を追いかけるのがしんどい」とつぶやく。
野村証券金融経済研究所の試算では、最低賃金が1000円に引き上げられれば、全国の全雇用者の約25%にあたる1377万人で計3兆4000億円の賃金増となる見通しだ。
全労連系の民間シンクタンク、労働運動総合研究所は、約700万人の労働者の賃金が総額2兆1857億円増加すると分析。消費支出が1兆3230億円増えて産業も活発化し、国内生産額は約2兆6424億円拡大すると試算する。
男性は、衆院選で「現状を変えてくれる期待」にかけ、民主に投票した。「単純計算で月に数万円の余裕がでる。先々への不安はほんの少し和らぐかも」
男性よりも低賃金の“ワーキングプア”(働く貧困層)は確実に存在する。こうした人々にとって、暮らし向きに直結する賃金アップは願ってもないことだ。
民主の「高い目標設定」…交錯する“評価”と“疑問”
衆院選を前にした今年7月、民主党はすべての労働者に適用する「全国最低賃金」を新設し、その水準を当面、時給800円にする意向を表明した。直嶋正行政調会長(当時、現経済産業相)は「最終的には平均で1000円を目標にする」と述べ、負担が増える中小企業には年2200億円を助成すると説明した。
これに対して、自民党は「3年間で100万人に職業訓練を実施する」と主張。ただ、自民や政府は急な引き上げには慎重で、舛添要一厚生労働相(当時)も「高い目標を設定することは結構。だが、中小企業を倒産させず、雇用を守りながら、そこに至る道筋はどうなのか」と疑問を呈していた。
約1カ月後、衆院選で圧勝した民主は社民党、国民新党との連立政権の樹立に合意。現状を国民生活や地域経済が疲弊して雇用不安が増大していると分析。社会保障・教育のセーフティーネットは「ほころびを露呈している」などと痛烈に批判した。
連立政権は、家計に対する支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得を増やすことに重きを置き、3党の政策合意には、雇用対策強化や、労働者派遣法の抜本改正も盛り込まれた。また「最低賃金の引き上げを進める」ほか、全労働者に雇用保険を適用することなどでも一致した。
最低賃金底上げの重要性を訴えてきた同志社大学経済学部の橘木俊詔教授は「最低賃金の向上は評価できる政策」と語る。「ワーキングプアで苦しむ人は多い。海外、特にヨーロッパと比べると、日本の最低賃金はかなり低い。厳しい話だが、企業にも多少の甘えがある。経営効率化など、努力するところがあって然るべきだ」と力を込める。
主要国の中では割安の最低賃金…地域差の問題も
確かに、海外の主要国と比べ、日本の最低賃金はかなり割安だ。昨年のフランスは約1370円、英国でも約1190円となっている。
「最低賃金」は、文字通り事業主が雇用した労働者に支払う最低限の賃金。厚生労働省の諮問機関「中央最低賃金審議会」が設定する「目安」に基づき、各都道府県の審議会が引き上げ額を答申し、労働局長が正式に決定する。
厚労省が9月1日に発表した21年度実施の都道府県別の最低賃金の改定状況によると、据え置いた新潟、岐阜を除く45都道府県が1〜25円引き上げる方向を示し、全国加重平均は713円。前年度比で10円上がる見通しで、中央最低賃金審議会が7月に引き上げの目安として示した「全国平均の7〜9円」を上回った。
全国では、最低賃金が生活保護水準を下回る「逆転現象」が10都道府県で起きている。この状況では、所得が生活保護の支給額を下回るため、ワーキングプアを生む一因ともされ、19年の最低賃金法改正で2〜5年以内の逆転解消が決まった。最低賃金の底上げは逆転現象の是正のためにも欠かせないものとなっている。最低賃金の地域格差も大きい。最高水準と最低水準では160円ほどの差がある。
雇用者には朗報も、企業側の“懐”には影響大
雇用者にとっては、大いに歓迎できる最低賃金の底上げ。ただ、深刻な不景気で経営体力が先細る中小企業などにとって、急激な賃金アップや雇用保険料の増大は懸念材料だ。
野村証券金融経済研究所の分析によると、最低賃金引き上げによる賃金増は、企業部門での同額のコスト増に繋がる。企業が非正規社員での雇用調整や、正規社員の雇用・賃金の調整で吸収しようとした場合、経済全体の成長に与える影響はわずか。仮に、増大したコストを正社員の賃金カットで賄うとすれば、正社員の賃金は2・3%も減少する計算だ。
日本総合研究所主席研究員の山田久氏は「中長期的な賃金アップは、待遇格差に対応する意味で重要」としながらも、「これだけ景気が悪いときに、企業に過度のコストアップを強いれば、倒産を招き、逆に雇用を減らすことにも繋がりかねない。地域ごとの雇用の実情も無視できない」と話す。
山田氏によると、東京など都市部の企業が最低賃金を上回る額で雇用するケースが多いのに対し、地方では最低賃金ギリギリの場合が多く、賃金の底上げによる影響もより大きいものになるという。
実際、性急な賃金アップに対して企業側の不安は根強い。日本商工会議所会頭の岡村正氏は、民主党のマニフェストについて、中小企業の法人税率引き下げなどを評価しながらも、「最低賃金の1000円への引き上げなどは、経営に大きなインパクトがあるので慎重にお願いしたい」(今月4日付、産経新聞インタビュー)と注文を付けている。
「賃上げしろでは、つぶれてしまう」
現場の声はより痛切だ。東京都内の部品製造業経営の男性(60)は「社員も、アルバイトも家族同然の仲間。不景気でも、何とか給料をやりくりしてきたが、これ以上の経費増は耐えきれない」と悲鳴をあげる。
別の食品製造業の女性(57)も「融資を食いつないで細々とやっている。一方的に『賃上げしろ』では、会社をつぶしてしまえといわれているのと同じだ」と憤る。
これに対し、政府は中小企業の支援強化や、大企業の下請け企業に対する不公平な取引を禁じる法整備のほか、政府系金融機関による貸付制度や信用保証制度の拡充を図る方針を示しており、どのように具体化するか注目が集まっている。
橘木教授は「大企業が中小企業からの納品価格を買いたたくなど、不公正の問題は自民党も認めていた。最低賃金を一気に上げるのは難しいかもしれないが、こうした問題を解決しつつ、段階的に引き上げていく形が必要では」と話す。
政権交代の可能性が高まっていた7月、すでに「パワーバランス」の変化は現れ始めていた。民主党の支持母体である労組、連合と日本商工会議所の懇談会で、最低賃金の引き上げに慎重な姿勢を示した経営側に対し、連合は時給1000円への引き上げを要求、強気の姿勢を崩さなかった。
前出の山田氏は、「90年代に入り、労働組合の力がどんどん失われた。小泉内閣以降は経済財政諮問会議などを中心に財界と政府の意向で政策が打ち出されてきたことは否めない」と指摘した上で、「雇用政策は労使間の話し合いが基本。過度の偏重には問題がある。民主政権がどちらかに肩入れするのではなく、バランサーとして交渉の土俵を作り出すことが重要だ」と話す。-
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