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配偶者からの暴力(DV)問題

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  • from: 21世紀さん

    2009年10月29日 17時44分23秒

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    【働く 暮らしを守る】

    (1)労組は機能しているか
    2009.10.25 18:10

    このニュースのトピックス:労働・雇用
     今春、神戸市内にある金型製造メーカーで、従業員十数人に解雇が言い渡された。別の会社との業務提携について、2度目の従業員向け説明会が行われる予定の日のことだ。説明会前の夕方、従業員は会議室に集められ、会社幹部が解雇通知書の束を机に置いた。「これを持って行ってほしい」。社印さえなかった。

     従業員100人に満たない、このメーカーには労働組合(労組)がなかった。個人では難しい会社側との交渉も団体なら可能だ。30〜50代の男性5人が、1人で加盟できる地域ユニオン「神戸ワーカーズユニオン」に入り分会を結成した。

     このうちの50代の男性は3月ごろ、業務提携の噂(うわさ)を知った。勤続約20年。会社の「危機」は何度も聞いたが、今回は違った。しばらくして相手企業のホームページで、自身がいる製造部門が事実上売却されると知り驚いた。

     上司を通じて会社側に問い合わせた。回答は「心配するな」。説明会の後、4月1日には、会社幹部が「社員は守る」と約束した。解雇が言い渡される約10日前のことだ。これらの経緯が、自身の雇用、生活がモノのように扱われたようで腹が立ったという。

     6月末の解雇後、現在は、次の職を探しながら退職金の上乗せを求め交渉を続けている。男性は言う。

     「定年まで働くと思っていたから、不安なことがあっても会社に反発せず、このままいけばいいと思っていた。いままで労組が必要とも思わなかった」
     ◇

     働く者を守るはずの労組の組織率低下が続いている。厚生労働省の調査によると、戦後間もなくの昭和24年に55・8%だったが、日本労働組合総連合会(連合)が結成された平成元年に25・9%、平成20年6月時点で18・1%に減った。

     しかも、これらは大企業、公務員中心の労組の数字。100人未満の中小企業だと、わずか1・1%(20年)で、つまり労組はないに等しい。冒頭のケースもこの一例だ。

     組織率低下に、連合も危機感を抱く。47都道府県の組織下に300以上の地域協議会を設置するなど活性化を図り、今月8、9日の定期大会で改革推進を確認した。

     一方で、企業別に組織されている日本の労組のあり方には、労組側から自省の声があがる。

     昨年5月、一橋大学の寄付講座で、連合幹部は「(労組という)言葉自体が暗い。色にたとえるなら灰色」という意識調査を紹介した。確かに労組のイメージは芳しくない。また、15年に連合評価委員会が出した最終報告は、企業別組合が社会変化に対応できず、組織率低下につながったと指摘し、労組に抱く社会のイメージをこう記している。

     《労使協調路線のなかにどっぷりと浸かっていて、緊張感が足りないとも感じられる》

     これも厳しい指摘だ。
     ◇

     男性らが頼った「神戸ワーカーズユニオン」は約20年前、従来の組織を改め結成された。労働相談などを通じ、雇用環境の改善に取り組む地域ユニオンだが、その輪は静かな広がりをみせる。

     同ユニオンが加盟する「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」(全国ネット)には計75団体が参加し、約1万5千人の組合員がいる。

     同ネット元事務局長で、神戸ワーカーズユニオン副委員長の黒崎隆雄(57)は昭和50年に春闘を手伝い労働運動に携わり始めた。「当時は労働者の力がまだ強かった時代で、自身も社会を変えられると思っていた」。その後、神戸ワーカーズユニオンの前身の地区労組に入ったが、電話相談の内容は、社会の問題点を映し出す「鏡」のように次々と変わった。

     主婦パートや派遣、外国人労働者、名ばかり管理職、ワーキングプア…。今年1月から取り組む外国人研修生問題には驚いた。

     雇い側の企業は、研修生と周囲の接触を途絶えさせて午前9時から午後6時まで働かせていた。15分だけ食事休憩をとらせ、さらに午前0時まで労働を強いる。働く女性らに渡されるのは毎月1万円だけ。残りは通帳に入金され、通帳は会社が管理する。その過程に働く者の「誇り」は見いだせない。

     18日で7年間務めた事務局長を退いた黒崎は自戒も込めて言う。

     「この20年間、組織的な形はできたが、労働運動は後退し続けた。ひとつの例だが、不祥事があると、会社の恥をさらせないという意識が経営者側、労働者側双方にあり、発覚が遅れることがある。労組には企業内の不正を監視する役割があるし、また、そのことを通じて人々が誇りを持って働くための手助けをする役割もあるはずだ。ここに衰退の原因はないだろうか」

         ◇

     働く環境が悪化する中で労働組合や労働行政、司法が果たす役割は何か。現状をみる。

    (敬称略)

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コメント: 全5件

from: 21世紀さん

2009年10月30日 23時35分48秒

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「Re:【働く 暮らしを守る】」


 JRの労使関係には特殊な事情がある。杉原が「国民からノーを突きつけられた」と言い、安部が「とげとげしい」と表現する国鉄時代の労使関係で、社会を揺さぶった事件も多い。

 経営者側が、荒れた職場を改め、生産性を向上させようとした1960年代のマル生運動、70年代のスト権スト、そして80年代の国鉄民営化。中には「働かないことが労働運動だ」と主張するグループさえあった。

 昭和63年入社の杉原は、前年の国鉄改革後に入社したJR世代で、平成6年から組合専従となった。「国鉄末期のヤミ超勤やカラ出張、ストライキ。一人の国民として理解ができなかった」。これらの過程で労組への過激な印象が国民に根付き、国鉄改革による「労組潰し」につながり、結果として「(JRの)労使間にいい緊張感ができなかった」(安部)とされる。

 「社会の側から、労組は既得権益の集団にみえる。それを変えるには、例えば働く者がおかしいことはおかしいと自由に言える企業になることだ。そのために労組側も新たな形を提示するべきだ」と安部はいう。

 変化の兆しはある。今年1月末、杉原らは会社側との労使協議の前に初めて「雇用を守る」という議題をはかった。脱線事故や、厳しい雇用環境を踏まえたものだ。働く者の雇用を守れば、その生活を守るだけでなく、鉄道技術が継承でき、安全が生まれる、という思いがあったからだ。

 安心して働ける社会-。安全や安心を労使ともに求め、互いの関係が変われば…。JR西の企業体質が変化したとき、その道筋が見えてくるかもしれない。

(敬称略)

 =この連載は土塚英樹、小野木康雄、康本昭赫、大谷卓が担当しました。

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from: 21世紀さん

2009年10月30日 23時33分52秒

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「Re:【働く 暮らしを守る】」
(5)自浄作用の役割どこへ
2009.10.30 21:15
 平成17年4月25日に兵庫県尼崎市で発生し、乗客106人が犠牲になったJR福知山線脱線事故は、様々な問題を社会に突きつけた。ひとつは安全を軽視したJR西日本の企業体質。現在は、事故原因を調査した国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の報告書漏洩(ろうえい)が問題化している。

 労働組合(労組)は事故を、また様々な問題を防ぐことはできなかったか。

 組合員数約2万4500人で、JR西日本最大の労組「西日本旅客鉄道労働組合」(JR西労組)の書記長、杉原清道(46)は「事故を起こしたいと思う人は誰一人いない。ただ、事故前に一人一人が本当に安全の意味を考えて行動していたかと聞かれると自信がない」と言う。

 事故後、JR西労組を含む5労組のうち3つが合同で、事故前に年4度程度だった経営側との労使安全会議を何度も開いた。現場の声を伝えるためだが、違う結果を示す数字もある。

 まず、JR西労組が19年3月に実施した職場アンケート。労組が職場の実態などを把握し、会社へのチェック、提言機能を発揮しているかについて「あまりできていない」との回答がいずれも4割を占めた。

 漏洩問題に関するJR西の社員調査では、公表前の報告書の非公式入手を26人が知り、不適切な行為だと24人が知っていたと回答した。働く側が労組に信頼を置いていれば、不正や不適切なことを知った人は、労組に伝えることで社内の「自浄作用」の役割を果たせた。事故も、いくつかの問題も防げたかもしれない。
 ◇

 《労働運動の重要な課題の一つは、働く者の社会的公正労働基準をいかにして確立するかにあります。このことは産業社会における労働価値を正しく評価させ、働く者の人権を守り、社会正義を確固たるものとして定着させ、安心して働くことのできる社会づくりをめざすことを意味しています》

 11年9月、金属機械の2つの労組が統合してできた新組織「JAM」結成前の4年に統合に伴う話し合いの中で掲げられた理念のひとつだ。

 雇用環境が悪化するいま、「安心して働ける社会」は働く者がもっとも必要とすることだろう。

 今月26日の第173臨時国会召集に対し、連合は27日に発表した談話の中で雇用問題に触れ、「安全と安心の社会を取り戻すためのあらゆる施策に積極的に協力する」などとした。

 脱線事故後にJR西が設置した外部有識者会議で委員を務めた関大教授の安部誠治(57)は「経営陣は経済性を重視したがるが、公共交通機関として安全性は欠かせない。事故前のJR西は明らかに前者に傾いていた」と指摘。「だからこそ労組は企業内唯一のチェック者という自覚を持ち、安全への提言を続けなければならない」という。

 17年前に掲げられた労組統合の理念と、安部の指摘は、内容も、置かれた状況も異なるが、共通点がある。それは「安全」や「安心」をすべての基本に置く、という考え方だ。

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from: 21世紀さん

2009年10月30日 23時30分54秒

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「Re:【働く 暮らしを守る】」
(4)過労死 遺族の長い闘い
2009.10.30 00:34

 昨年1月、変わりはてた長男=当時(23)=と警察署の遺体安置室で対面した大阪府八尾市の母親(59)は検視で判明した事実を聞かされ耳を疑った。「怖がりな子だったのにどうして」。電気コードとLANケーブルで2度首をつった跡がある。1度失敗すれば恐怖でためらうはずだ。遺書には署名、指印と「自分の意志で逝きます」という走り書きがあった。

 大卒の新入社員として東京勤務を始めて10カ月。自殺前日には電話で「仕事がやばい」と打ち明けられた。「上司に相談する」「できないと言う」「退職を考える」。母親は繰り返し忠告したが、長男は死へと突き進んだ。

 寮から荷物を引き払うため会社を訪れると、担当者は一刻も早く縁を切りたいという態度。同僚が企画した追悼会を開くことも認めない。会社側の配慮はひとかけらもなかった。

 長男の同僚らと会い、手紙やメールをやりとりし分かったこともある。寮に帰る時間がなく宿泊用の荷物を持ち歩くほどだったのに、月10時間以上の残業は申告するなと命じられていた。死の約1週間前、上司に涙をみせた。体は痩せ細っていたという。
今年3月、労災を申請したが、9月に出た結果は不認定。鬱(うつ)病を発症していたが業務が原因ではないとされた。母親は言う。「本人が弱いから死んだと思われるのは悔しい。一生懸命働いて死んだという尊厳を取り戻したい」

     ◇

 「karoshi」

 今でこそ英語でも通用するほど有名になった言葉だが、大阪府堺市を拠点に全国で労働裁判を手がける弁護士の松丸正(63)によると、ルーツは昭和57年に大阪の医師らが出版した「過労死」(労働出版社)だった。

 従前の呼び方は「急性死」。個人の病状ではなく、背景にある労働実態を問題にすべきだという点で、過労死に表現が変わった意義は大きい。ただ、その数は一向に減っていないのが現状だ。

 厚生労働省の統計では、過労が原因で鬱病などの精神疾患にかかり労災認定された自殺者(未遂を含む)は、平成20年度で66人と過去2番目に多かった。脳・心臓疾患で死亡し、認定された人は158人。いずれも高止まりが続く。

 しかもこの数字は氷山の一角だ。認定者以外にどれだけ過労死しているか、正確には分からない。一説には1万人以上という推計もある。

 労働基準監督署で認められないと、労災審査官への審査請求、労働保険審査会に対する再審査請求と進み、なおも覆らなければ行政訴訟になる。最高裁まで行けば10年以上かかるケースも珍しくない。

 遺族にとってもよほどの決意がなければ高いハードルとなり、手続きが複雑な労災認定をあきらめる遺族は多い。

      ◇

 今月19日夜、大阪市阿倍野区の弁護士事務所で開かれた「大阪過労死を考える家族の会」の例会で、出席したある遺族が悩みを漏らした。

 「過重労働があったのは間違いないけど、上司のパワハラはもっとひどかった。ただ、正直に証言してくれる同僚がいない」

 会社の業務で死に至ったという当然の「真実」を事実と証明するには、同僚や上司の証言、出退勤を記録するタイムカードなどの客観的な証拠を、遺族自身が集めねばならない。

 それは実に辛い作業だ。懸命に働いた家族を助けられなかった悔恨の念にさらされ、一方で周囲の人間の冷たさを知る。
労災認定までに、家族を失った悲しみと同じだけ、あるいはそれ以上の苦しみを味わうことにもなる。

 大阪家族の会には遺族ら70人、弁護士、労働組合のメンバーなどの支援者30人の計100人が登録し、月に1度の例会では遺族の近況報告に時間が割かれ、それぞれの体験をもとにした助言が交わされている。

 この日の例会で、悩みを漏らした遺族に対し、8年に夫を過労自殺で亡くした全国家族の会代表の寺西笑子(60)がこう応じた。

 「当時の本人の様子をよく思い出すこと。過労自殺の場合は、必ず会社の裏切り行為があるから」

 辛いことを求めているようにも聞こえるだろう。寺西自身も、その苦しみを知っているはずだ。それでもなお、寺西はアドバイスをしなければならない理由があると思っている。

 「仕事のせい、会社のせいと主張しながら、遺族は必ず自分を責めて一生を過ごす。私たちは二度と犠牲者を出したくないんです」(敬称略)

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from: 21世紀さん

2009年10月29日 17時50分18秒

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「Re:【働く 暮らしを守る】」
(3)司法も解決できぬ現実
2009.10.29 00:41
 派遣社員だからこそ、不良品は出すまいと心に決めていた。それに、1ミクロン単位の誤差を許さぬトップメーカーの技術力に貢献しているという誇りがあった。「正社員にできない難しい工程を任せている」。工場幹部からそう言われたことは何度もある。

 岐阜県内のベアリング製造工場で勤務していた30代の男性に、派遣元から大幅な人員削減が記された解雇予告が届いたのは、昨年10月のことだ。リーマン・ショックから1カ月余り。派遣期間は残り5カ月あったが、製造業の現場は容赦なかった。11月末、予告通り行われた派遣切りは100人規模にのぼったという。

 3年余りの勤務で、態度や技術に問題があった記憶がない。「なぜ自分なのか」。納得がいかなかった。むしろ、勤務時間を漫然と過ごし、トラブルが起きても「何とかしろ」と派遣社員に丸投げしていたのは正社員の方だ。正社員の作った不良品を、面目をつぶさぬよう、こっそり研磨し直したこともあったのに。

 年が明け、同じ工場で派遣切りにあった年配の女性と、ハローワークで偶然再会した。個人加盟できる労働組合に入って会社側と団体交渉をしていると聞き、心が動いた。だが、労組の中心メンバーの返事は意外だった。「やめた方がいい」。交渉は進んでおらず、後悔すらしているが、人を誘った手前抜けられないという。男性は困り果てた。
 ◇

 正社員と派遣社員。立場が違うだけで解雇が決まってしまう。その「見えない壁」を男性は感じた。男性のように働く側が直面するトラブルは多い。派遣切りを含む解雇や退職勧奨、パワハラ、内定取り消し…。それらを解決するための手立てをみる。

 まず労働組合で解決できなければ、厚生労働省が全国約700カ所に置く総合労働相談コーナーが、最初の「入り口」だ。平成20年度の相談件数約108万件のうち労使間のトラブルは約24万件。この6年間で約2・3倍になった。

 都道府県労働局による紛争調整委員会に訴える方法もある。弁護士などの民間委員が労使双方の訴えを聞いた上で斡旋(あっせん)案を提示する。20年度は8457件を受理した。1回で決着がつく上に無料だが、強制力はない。

 次は、司法制度改革で18年に始まった地方裁判所の労働審判。受理件数は昨年1年間で2052件。今年は8月でその数を超えた。民間の審判員2人と裁判官1人が原則3回で決定を下す。福岡地裁が今年4月、元学生の内々定を取り消した会社に75万円の支払いを命じたのも労働審判だ。

 ここでも決裂すると、民事訴訟となる。ただ、労働問題専門の裁判所がある諸外国に対し、龍谷大学教授の脇田滋(労働法)は「日本の労働裁判は少なすぎる」と指摘する。
 ◇

 独立行政法人「労働政策研究・研修機構」によると、労働問題専門の裁判所があるドイツ、フランスは2002年でそれぞれ1万件、17万件の訴えを受理している。日本は労働審判分をあわせても18(2006)年で約3千件を超える程度だという。

 なぜ、これほど「差」が生まれるのか。単純な比較はできないが、脇田は「日本の場合、労働問題は複雑で手間がかかる割に離婚や相続などと比べ成功報酬が低く、弁護士は受任を敬遠しがちになる。さらに派遣社員など立場の弱い労働者ほど金銭的な余裕がない。まず、弁護士までたどり着けない」と解説する。

 冒頭の男性に話を戻す。

 労働組合に頼れなかった男性は、知人のつてをたどって労働問題に関心のある弁護士と巡り合った。男性は「それも、これも違法と言われて驚いたが、心強かった」と振り返る。

 弁護士は、労働者派遣法で定められた上限3年を超えると受け入れ側が直接雇用しなければならないという「派遣期間」に着目。男性は今年5月、メーカーと派遣会社に直接雇用と慰謝料などを求める民事訴訟を岐阜地裁に起こした。

 再び職場に戻るのが理想だが、判決まで1年以上かかる可能性を考えれば、裁判で戦いながら無職のまま過ごす現在の生活は苦しい。たとえ勝訴しても、訴訟沙汰になった企業で満足に働けないとも思う。それでも司法の場で戦う理由を、男性は「労働者を簡単に切れると会社に思ってもらいたくないから」という。

 職場に存在する「壁」、弁護士に至るまでの労力と時間という「壁」。そして法律でも解決し得ない「壁」…。働く者を囲む「見えない壁」は多く、その現実はあまりに厳しい。

       (敬称略)

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from: 21世紀さん

2009年10月29日 17時47分04秒

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「Re:【働く 暮らしを守る】」
(2)足りぬ労働基準監督官
2009.10.26 23:44

このニュースのトピックス:労働・雇用
 「働く環境がこんなに厳しかったことはない」

 大阪労働局の主任地方労働基準監察監督官、山本博(55)は今年3月まで、大阪府羽曳野市などを管轄する労働基準監督署の署長を務めた。長い経験がある山本をしても、現状の雇用環境の悪化ぶりは際立っているという。

 働く権利を守る労働基準監督官は、働く側が「頼れる存在」だ。不当な解雇や長時間労働などに対し、事業所に是正を勧告するのが役割だが、一般にその仕事は見えにくい。

 山本によると、監督官が事業所に出向き行政指導するのは1カ月の半分程度。事前予告はしないため、担当者不在で空振りに終わることも少なくない。ひとつの事業所で一日がかりになることもざらだ。

 昨年12月以降は民間の信用調査会社などの情報を積極的に活用し、大規模なリストラをしようとする事業所を早期につかみ指導。担当者に対し、企業が支払う休業手当の一部を、国が補填(ほてん)する制度の利用などを勧めている。

 だが、中小企業経営者の多くは労働法規への理解が足りない。山本も、相談に駆け込んできた経営者から「経営が苦しい。リストラしたい」と詰め寄られ、「経営者の一方的な理由で解雇はできない」と、いさめたことがある。

 「安易な解雇はいさめますが、あくまでお願い。使用者の改心を期待するしかない。極端に言うと100件中1件でも解雇を思いとどまってくれればいい」




 監督官不足が、働く側に過酷な労働を強いる土壌になっているとの指摘がある。

 国際労働機関(ILO、本部・ジュネーブ)は、日本を含む加盟国への指導文書で、監督官数の目安を「先進国は労働者1万人に対して1人」としているが、日本の監督官数は平成20年度末で全国で3076人しかおらず、約1万6千人に1人にとどまる。

 大阪府内を管轄する大阪労働局はさらに悪く、365万人以上の労働者に対し、監督官は191人で、ILOの目安の2倍近い約1万9100人に1人だ。これでは事業所をくまなく回り、労働環境を監視するには無理がある。

 「監視の目が行き届かず、結果、不当な長時間労働などが横行している。まるで、もぐら叩(たた)きのような状態です」

 大阪労働局の職員などでつくる「全労働省労働組合大阪基準支部」の副執行委員長、丹野弘(46)は現状をそう説明する。

 財団法人「日本生産性本部」が4月に上場企業2237社を対象に実施したアンケートによると、「心の病」を理由に1カ月以上も休暇・休職した労働者がいる企業は約7割に達したという。丹野は「過労死の予備軍は極めて多い。法制度を含め抜本的に見直さないと、近い将来、大変な事態になる」と警告する。




 監督官は、丹野が言う「大変な事態」を回避できるのだろうか。

 労働基準法(労基法)には、「週40時間以下、1日8時間以下」という労働時間の原則が定められている。しかし過半数の労働者で組織する労働組合と使用者が協定で合意すれば時間外・休日労働が可能だ。監督官は、この合意を強制的に変更できない。

 さらに、少なくとも30日前に予告する必要があるという労基法20条の解雇予告を、山本は「唯一の武器」と呼ぶが、賃金支払いを科す罰則規定があるとするものの、解雇を覆す力はない。このほか20年3月施行の労働契約法では社会通念上認められない解雇は無効とされるが、これは民事上のルール。各都道府県の紛争調整委員会も、使用者側が出席を拒むと成立しない。

 いずれも行政の権限が及ばない「範囲外」のことばかりだ。その限界は、丹野の警告に現実味を与える。

 21年度経済財政白書は、実際の生産に見合う以上に企業が雇用を抱えている「企業内失業」が600万人を超えると指摘した。政府は今月23日、21年度内に10万人の雇用を創出する緊急対策をまとめたが、今後、大量解雇が起きる懸念は消えそうもない。

 労働法が専門の大阪大学高等司法研究科教授、小嶌典明(57)は「労使交渉で決める問題に労働行政が介入して正しく判断できるのか疑問がある。労使双方が納得できる形で法制度を見直すのは相当難しい」と話している。(敬称略)

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