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from: 21世紀さん
2010年05月18日 02時54分52秒
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親子が別れる時:離婚を考える/2 「会わせたくない」事情
◇DV、精神的虐待の傷癒えず 共同親権へ抵抗も
5年前の秋の出来事を思い出すたび、関西に住む竹内恭子さん(仮名、40代)の胸は締め付けられるように痛む。
街路樹が紅葉色に染まった寒い週末だった。夫に息子2人を預け、日用品の買い物から戻った。玄関に鍵のチェーンがかかり、入れない。生後9カ月になる次男の泣き声が、玄関先にまで響いた。
「パパを呼んできて」。3歳の長男に頼むと、ようやく夫は自分の部屋から出てきた。夫はチェーンだけを外して恭子さんを見もせずにまた自分の“城”に戻り、音を立ててドアを閉めた。
「家族を無視するの」。思わず、恭子さんは夫に言った。積み重なってきた心情の吐露でもあった。夫は逆ギレして2人はもみ合いになり、はずみで恭子さんのつめが夫の腕に当たった。
夫は恭子さんの右手を満身の力を込めて握った。激痛が右手の甲から肩へと走り、見る間に腫れ上がった。病院で手の甲の骨が2本折れていたことが分かった。ショックで母乳も止まった。
同い年の夫とは、20代後半で知り合い結婚した。甘いマスクで仕事熱心。クールな性格にひかれた。結婚して半年が過ぎ、恭子さんは違和感を感じ始めた。声を荒らげることが多く、突然、怒りだすことも。「おまえの考え方は間違っているんだ」。言葉の暴力と無視の繰り返し。秋の出来事は、夫婦生活が行き詰まっていた時に起きた。
「暴力」「精神的」。二つのキーワードで、ある日、恭子さんはパソコンの検索をした。「モラル・ハラスメント(モラハラ)」。家庭内の精神的虐待を指すモラハラに関する情報が多数ヒットした。まるで、自分と夫のことが書かれていると感じた。07年春、調停離婚が成立。息子の親権は恭子さんが取り、2カ月に1回程度の面会交流を取り決めた。
面会のたび、待ち合わせ場所や日時を、元夫と連絡し合わなければならない。元夫が送信してくる携帯電話のメールの文言は相変わらず威圧的で、苦痛でたまらなかった。「離婚してまでなぜ、精神的に支配され続けなければならないの」
元夫は一度、面会の回数を増やしてほしいと恭子さんに申し込んできたが、再婚すると面会要求をしてこなくなった。
息子たちは父親をどう思っているのか。長男が小学2年生の時、学校の授業で「たからものは なに」というプリント課題が出た。息子は「さんかくのきれいなもの」と書いていた。元夫と面会した時にクレーンゲームでガムを取ろうとして、間違ってつり上げた空の箱のことだった。恭子さんはプリントを見つめ、涙が流れた。
恭子さんは「離婚しても、子どもにとってはお父さんなので自由に会えたら楽しいでしょう。でもDV(ドメスティックバイオレンス)やモラハラをする元夫と連絡を取り合うことに精神的に苦しむ女性がいることを忘れないでほしい」と語る。
中部地方に住む30代の女性も「モラハラをする男性が、そこにいるということが恐怖なんです」と訴える。
女性は今年1月、長男(3)を連れて家を出た。離婚調停中で、夫は女性の現在の居場所を知らない。夫は毎晩のように酒を飲んで深夜帰宅し、息子が夜泣きするたびに「何とかしろ」と怒鳴り散らした。調停で夫は子どもとの面会を求めているが、女性は「息子のためにも面会させたくない」と話す。
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「離婚後も、父母が共同で子育てにかかわる共同親権にすべきだ」という主張に対し、DVやモラハラ被害の女性を多く擁護してきた宮地光子弁護士は「元夫と子の面会を拒否する女性の多くには、それなりの理由がある」と反発する。「支配されてきた夫婦関係は離婚後、急に平等にはならない。離婚後も親権が支配の道具にされてはかなわない」
母子家庭支援を行う「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」と、DV被害女性を保護する「全国女性シェルターネット」の二つのNPO法人が昨年、会員ら217人に行ったアンケートでは、面会交流をしている人は23%のみで、共同親権については46%が「反対」、38%が「分からない」と答えた。離婚理由(複数回答)では「精神的虐待」が最多の28%、DVを訴えた人も21%いた。
米国には、DVなどで面会が困難な父母のため「監督」付きで親子が会える交流施設が各地にあるが、日本では未整備。「しんぐる」の赤石千衣子理事は「共同親権はあってもいいとは思うが、慎重な議論が必要だ」と訴える。=つづく
◇父母の経済格差、恨みも一因に
面会交流がうまくいかない一因に、離婚後の父母の経済格差を指摘する声もある。06年の厚生労働省の調査で、母子家庭の就労率は85%だが、平均年収は213万円。出産時に約7割が離職し、非正規雇用が進む女性全体の厳しい労働環境が背景にある。あるひとり親家庭相談員は「ぎりぎりの生活の中、面会で父親から小遣いなどをもらうと『パパのところへ行く』と言い出さないかと不安がる女性もいる」と話す。
日本と欧米の離婚文化の違いもある。長年、夫婦間の悩み相談に乗ってきた「東京家族ラボ」主宰の池内ひろ美さんは「欧米では離婚の決断が速く、関係も比較的ドライ。日本ではまだ『離婚は恥』との考えが強く、できるだけ避けようとぎりぎりまで我慢し、恨みを募らせる人も多い」と指摘する。
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◇感想、体験お寄せください
連載の感想や体験をお寄せください。表題を「離婚」として〒530-8251(住所不要)毎日新聞大阪本社学芸部まで。ファクスは06・6346・8204、メールはosaka.gakugei@mainichi.co.jp
05/13 10:31
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