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from: 21世紀さん
2010年08月31日 12時30分33秒
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救え幼い命:児童虐待の現場から/1 兵庫・冷蔵庫に4歳男児遺棄、2年後に自首
◇「勇気あれば」母自問 夫のDV、支援制度知らず孤立
台所の家庭用冷蔵庫。幅、奥行き約30センチの野菜室が小さな遺体のひつぎだった。胎児のように足を抱え、冷たい箱の中に2年近くも眠っていた。07年7月、兵庫県小野市。4歳の男児は、義父(35)に「お仕置き」と称して体より小さな衣装ケースに閉じ込められ、熱中症で死亡した。口に靴下を詰められ、悲鳴を上げることすらできなかった。
「冷蔵庫に入れよう」と提案したのは、母親(35)だった。遺体を隠そうというより、「(男児と)離れたくない」という思いが強かった。
それから1年9カ月後、母親が警察に自首するまで、家族以外の誰も、男児が「消えた」ことに気付かなかった。保育所は死亡の前日、男児の体に青あざを見つけた。翌日から保育所に来なくなった。2週間後、母親から「引っ越すことになった」と連絡があり、それ以上追及しなかった。近所の住民も、笑顔で保育所に通う男児の姿は覚えているが、いなくなったのを不審には思わなかった。「いつごろか覚えていないけど、弟は遠いところに行った」。幼い姉(8)は警察にそう話したという。
■ ■
男児が亡くなった県営住宅では事件後、児童虐待防止を訴えるポスターが張られていた=兵庫県小野市で28日、幾島健太郎撮影 母親は親の勧めで結婚した前夫(37)とうまくいかず、07年3月、出会い系サイトで知り合った相手の県営住宅に、子ども2人と転がり込んだ。「子どもに優しくしてくれる」と思い選んだ新しい夫は、「これが教育」と子どもたちを殴り始め、やがて暴力が家庭を支配する。後に公判で、自らも虐待された成育歴があったことなどが判明する。
母親は、部屋では鎖でつながれ、体中にキリでピアスの穴を開けられた。すさまじい暴力に耐えていた理由は「子どもと追い出されたら生きていけない」と思い込んでいたからだ。「嫌なら出て行け」と言われると、何も言い返せなかった。
仕事は実家の青果店を手伝ったことがあるだけ。前夫と離婚して実家にも戻れない。貯金もなく、相談できる友人もない。母親の弁護人が最もショックを受けたのは、母子家庭への公的扶助やDV(ドメスティックバイオレンス)被害者の支援制度を全く知らなかったことだった。現状を耐え忍ぶだけで、誰にも相談していなかった。
■ ■
今年1月、1審・神戸地裁姫路支部で懲役6年の判決を受け、大阪高裁に控訴。控訴審で弁護人は母親にカウンセラーを派遣した。カウンセラーは、DV被害者を保護する民間シェルターのパンフレットを差し入れた。拘置所での面会の時、母親はアクリル板越しに「私も入ることができたんですか」と驚いたという。今年7月16日の大阪高裁の控訴審判決は「控訴棄却」。減刑は認められなかったが、世の中に助けを求める場所があることを知り「それだけでも控訴してよかった」と弁護人の前で泣いた。上告しないことは自分で決めた。
母親は刑務所への移送を待つ大阪拘置所で、亡くなった男児の夢を見る。
天国で寂しい思いをしているようで、目を覚ましては涙を流す。「私が一歩踏み出す勇気があれば、こんなことにはなっていなかったのに……」。自問自答を繰り返しているという。
× ×
「消えた」子どもたちがいる。親が社会から孤立しているために、子どもは家庭という密室に閉じ込められ、救いの手さえ届かない。幼い命の悲鳴に気づくには、どうすればいいのか。読者とともに考えていきたい。【児童虐待取材班】=つづく
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■ことば
◇兵庫県小野市・虐待死事件
小野市の夫婦が長男(当時4歳)を衣装ケースに閉じ込めて死亡させ、遺体を2年近く自宅の冷蔵庫に隠していた。昨年4月、妻(35)が警察に自首して発覚した。夫婦は逮捕監禁致死と死体遺棄の罪に問われ、夫(35)は同年12月、1審・神戸地裁姫路支部での裁判員裁判で懲役9年6月の実刑判決を受け、確定。妻も同支部で懲役6年の判決を受け、今年7月の控訴審判決で1審判決が確定した。
英訳
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救え幼い命:児童虐待の現場から/2 「助けたい」でも無力感
毎日新聞 2010年8月30日 東京朝刊-
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コメント: 全3件
from: 21世紀さん
2010年09月06日 14時43分58秒
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「Re:救え幼い命:児童虐待の現場から」
3 酒依存、「鬼」にひょう変
◇治療受け、後悔の日々続く
「私は家族から鬼と呼ばれても仕方ないことをしていました」
大きな黒縁眼鏡をかけ柔和な表情の男性(52)=大阪府豊中市=は、外見からは想像できないDV(ドメスティックバイオレンス)の加害者だった。2年半前、妻(54)と長女(21)は家を出た。長男(22)は家族と離れ外国で暮らしている。
男性は学生時代から「酒に強い」と言われるのがうれしかった。就職して取引先と一緒に繁華街に繰り出し、給料1カ月分を一晩で使わせたことも。脱サラして自営業になってからは自宅にウイスキーを並べ、毎晩がぶ飲みした。
酔うと暴力を振るうようになったのは、結婚後まもなく。育児を巡って妻を殴り、子どもが小学生になると「宿題をしない」などと殴った。「子どもはしつけのつもり。妻には『女は男に従うもの』という気持ちがあった。酔うと強くなった」
長女は高校で不登校になり、部屋にこもってインターネットにふけった。学校に行かせようと部屋から引きずり出した。突き飛ばされた長女が頭をぶつけた壁には、大きな穴が開いた。体を切り付け自殺未遂を繰り返した長女。「あの部屋は娘の唯一の逃げ場だったのに。ひどいことをした」
■ ■
酒と暴力で家庭崩壊を招くのは男性だけではない。アルバイトの女性(55)=兵庫県西宮市=は、42歳で7歳年下の男性と結婚し、46歳で娘を授かった。しかし、育児のまっただ中でアルコール依存症になり、娘を虐待。6年前、夫が娘を引き取り別居した。今、8歳の娘とは月2回の面会交流で会うだけだ。
「高齢出産で子育てにへとへとだった。飲まなきゃやってられない気持ちになり、昼間から飲んだ」と言う。娘がコップを落としただけで手を上げ、人前もはばからず怒鳴った。ある時、テレビで児童虐待のニュースを見て、自分が怖くなり児童相談所に連絡した。
■ ■
児童虐待やDVの「加害者の更生」は立ち遅れている。更生プログラムを実施する「メンタルサービスセンター」(東京都豊島区)の草柳和之代表(54)は「加害者更生は『治療しても治るわけがない』と世間から理解されにくく、取り組む専門家も少ない。回復するのは一部だが、自ら暴力をやめたいと願う人は支援すべきだ」と話す。
内閣府男女共同参画局は「加害者更生に国の取り組みは不十分だが、現状では制度化は難しい」と話す。加害者に更生プログラムの受講を義務付ける国もあるが、効果は個人差がある。被害者側から「加害者にかける金があるなら被害者に使うべきだ」という反発も大きいという。
■ ■
豊中市の男性は、2年前から更生プログラムを受ける。酒は飲んでいない。別居中の妻と時々、一緒に食事をするようになった。長女はまだ電話の着信拒否が続く。「娘はまだ許してくれない。過去は消せないが、少しずつ前に進んでいきたい」【児童虐待取材班】=つづく
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■ことば
◇加害者更生プログラム
暴力に頼らないしつけやコミュニケーション、感情をコントロールする方法を学ぶプログラム。固定した少人数グループで、加害体験を語り合い自分を見つめ直す作業が中心。カウンセリングを受けながら進める。一部の児童相談所や自治体、民間団体で実施されている。
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毎日新聞 2010年9月3日 東京朝刊
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from: 21世紀さん
2010年09月05日 00時00分43秒
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「Re:救え幼い命:児童虐待の現場から」
2 「助けたい」でも無力感
◇通報後も怒声、職員に身の危険
「半殺しにするぞ」「歩けんようにするぞ」。大阪市内の分譲マンションに住む40代女性が、隣室からのドンドンという音と怒声に気付いたのは3年前。「ごめんなさい、ごめんなさい」と、ひたすら謝る小学男児の声。母親らしい女性の大声は数日おきに響く。
夫に相談すると「トラブルに巻き込まれたら、住めなくなる」とかかわらないよう言われた。昨年、初めて児童相談所(児相)に連絡した。職員は家に来て女性から事情を聴いたが、「一般の通報者には、対応結果は教えられない」と説明したという。
思い切って最近、マンション前で見かけた男児に「お母ちゃんに殴られてるやろ」と声を掛けた。男児は「殴られてへん」と否定したが、話すうちに「このごろましになってんねん」とつぶやいた。
「何で大げさに泣くんや。誰かが助けてくれると思ってるんか」。今も怒声は続く。「児相職員の苦労も分かるが、ほとんど変わっていない。壁を破って子どもを助けたい。でも何をされるか分からない。本当につらい」
■ ■
虐待の通報や相談の電話対応は24時間。夜間も多いという=近畿の児相で、森園道子撮影 「誰が言うたんじゃ。何の権限や」。児童虐待の通報を受けて30代の女性職員が家庭訪問すると、入れ墨をちらつかせた父親が声を荒らげた。女性職員は、大阪府内のある市役所の福祉部門で相談員をしている。子育て相談などの担当だが、数年前から児童虐待の仕事が増えた。虐待通報で駆け付けた先では、しばしば身の危険も感じる。
金曜日の夕方になると、虐待情報の電話が怖い。「もう掛かってこんといて」と祈るような気持ちになる。虐待の通報は原則、48時間以内に安全確認する。家族構成や乳幼児健診記録など、家庭訪問には事前の情報収集が欠かせない。しかし、週末は関係機関が閉まり、入手が難しくなるためだ。
家庭訪問に居留守を使う母親は、保育所の前で待ち伏せ。親が育児放棄している家で、子どもにご飯の炊き方や卵焼きの作り方を教えたりもする。1人で年間数十件の虐待事案を担当するが、「解決した」と感じることはほとんどない。「親の考えを変えるのは非常に難しい。強制的に親子分離できる場合は限られ、無力さを感じる」
■ ■
各児相で人員確保の模索が続く。横浜市中央児童相談所は、今年1月から当直のために嘱託職員5人を雇った。嘱託職員1人が泊まり込み、正職員1人が深夜まで残る。10月からは嘱託職員の4人増員を検討している。
大阪市は、人員不足や機動力を補うため、今月から、緊急性のある虐待情報に消防職員を派遣している。全国初の取り組みで、「すぐに助けて」など救助要請の通報には、消防車両計6台が現場に急行する。市こども相談センター(児相)の市村好弘・相談支援担当課長は「これまで1時間かかったケースが、消防なら10分で着ける」と期待を寄せる。だが、消防職員がどの程度、強制介入できるのか、まだ手探りだ。【児童虐待取材班】=つづく
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2010年09月06日 21時00分27秒
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「Re:救え幼い命:児童虐待の現場から」
4 SOSなし、未熟な親
◇貧困、情報不足で孤立
今年3月3日、奈良県桜井市のアパート。布団の上で、5歳の吉田智樹ちゃんは瀕死(ひんし)の状態にあった。極度の栄養失調で、身長は2歳並みの85センチ、紙オムツを着けていた。同じ部屋で母親が「子どもが可愛くない。ぐったりしているが放っている」と児童相談所(児相)に電話していた。
通報を受けて、桜井市役所の職員2人が駆け付けると、布団から骨と皮になった子どもの腕がのぞいていた。すぐ119番したが、救急隊が搬送した病院で智樹ちゃんは息を引き取った。
両親の博(35)、真朱(まみ)(27)両被告が同日、奈良県警に保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。現在、奈良地裁で公判前整理手続きが進む。
■ ■
保育園で遊ぶ子どもたち。吉田智樹ちゃんは保育園に行かせてもらえず部屋に放置されていた=大阪市北区の24時間保育園で、馬場理沙撮影
智樹ちゃんが死亡する3年ほど前から夫婦仲が悪くなり、真朱被告は「夫とダブって見える」と、智樹ちゃんをたたいたりつねったりするようになった。2畳のロフトに上げられた智樹ちゃんは、物を落として親の気を引こうとしたが、それにも真朱被告は手を上げた。さらに、博被告が保証人になった借金返済で、共働きしても家計で使えるのは月10万円程度になった。智樹ちゃんへの虐待もエスカレートし、食事は1日1回に。保育園や幼稚園にも行かせず、昼間は家に放置した。
昨年9月ごろ、博被告は、トイレの世話をした智樹ちゃんのお尻が老人のようにしわだらけなのに驚いた。しかし、見て見ぬふりを決め、以来、智樹ちゃんには触らなかった。
経済的に困窮しながら公営住宅に入居を検討したふしもない。真朱被告は両親が近くにいるが、助けを求めてもいない。2人の弁護人らは「最後まで優柔不断に問題を先送りした」「誰かに相談していたら絶対に起きない事件」と、行動力のなさに首をかしげる。「こんなに貧困と孤立がセットになっている国はない」
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「内面はパニックなのに外にはSOSを発信しない。基本的な行政サービスも知らず、孤立する未熟な親が増えている」と指摘するのは、児童虐待に詳しい峯本耕治弁護士(大阪弁護士会)。経済的な格差の拡大を背景に、こうした親は今後、増えるとみる。
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昨年8月3日、名古屋市中央児童相談所に愛知県警中署から連絡があった。同市中区のマンション廊下で2歳の女児が保護され、警察は「将来的に育児放棄に発展する可能性がある」と判断した。母親はキャバクラで働くシングルマザー。住民票もなく、乳児健診や児童扶養手当の記録もない。児相職員は母親の携帯電話にかけた。「何か困っていることはないですか」「今はありません」。その後、何度電話しても応答せず、自宅は生活の気配が消えていた。
保護された女児は1年後、1歳の弟とともに大阪市西区のマンションで変わり果てた姿で見つかった。子どもを放置して逮捕された母親、下村早苗容疑者(23)=鑑定留置中=が、自治体の相談窓口を訪れた形跡は全くない。【児童虐待取材班】=つづく
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救え幼い命:児童虐待の現場から/1 兵庫・冷蔵庫に4歳男児遺棄、2年後に自首
児童虐待:深刻化の恐れ 児童97人が不明 児相指導中に突然転居
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