香芝の河合町教委職員殺害：裁判員裁判　ＤＶの実態、浮き彫りに　／奈良
　◇０９年度過去最多、多い孤立被害者
　◇県、「まずは相談を」
　香芝市の自宅で夫を絞殺したとして殺人罪に問われ、奈良地裁で昨年１２月に懲役６年の実刑判決を受けた芳倉美鈴被告（５２）＝控訴中＝の裁判員裁判は、なかなか表面化しないＤＶ（ドメスティックバイオレンス）の実態を浮き彫りにした。０１年にＤＶ防止法が制定され、０９年度の県の被害相談件数は過去最多となった。一方で、今も支援が届かず、孤立する被害者は多いとみられ、県は「まずは相談してほしい」と呼びかけている。【岡奈津希】

　「苦しくてつらくて怖くて……。今思うと洗脳されているようで、そんな生活が普通だった」。美鈴被告は公判で２９年間の結婚生活を涙ながらに振り返った。夫は毎晩、泥酔して暴力を振るい、「殺してやる」などと暴言を吐いた。しかし、「自分さえ我慢すればいいと思った」と、行政や警察に助けを求めないまま、追い詰められた。

　県によると、０９年度のＤＶ被害の相談件数は過去最多の１４２７件（前年度比２０％増）で、７年前に比べてほぼ倍増した。

　中央こども家庭相談センター（奈良市）では、女性相談員４人が毎月２００〜３００件の相談を受け、アドバイスや自立支援、一時保護をしている。市口和子次長は「表に出る被害は氷山の一角。ＤＶは密室で行われる家庭内の問題なので、分からない部分が多い」と話す。

　被害者が相談しない理由は、支援の存在を知らない▽恥ずかしい▽ＤＶという認識がない▽仕返しが怖い－－などがあるという。美鈴被告が公判で語ったのと同じだ。相談員の１人は「個人情報が他に伝わることはない。必ず道はあるので、まずは相談してほしい」と呼びかける。また、「渦中にある本人が問題に気づくのは難しい。周りから支援があると教えてあげてほしい」と話した。

　同センター（０７４２・２２・４０８３）は、月〜金曜の午前９時〜午後８時に電話相談を受け付けている。

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毎日新聞　2011年1月13日　地方版