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配偶者からの暴力(DV)問題

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  • from: 21世紀さん

    2011年03月17日 22時46分54秒

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    「いくらのぞいても歌織の心の中は空っぽなんです」

    【書籍・書評】
    2011年3月2日 掲載
    ●「セレブ・モンスター」橘由歩著(河出書房新社 1500円)
     2006年12月、渋谷区で切断された男性の遺体が発見された。犯人は被害者の妻・三橋歌織。俗に「セレブ妻バラバラ殺人」と呼ばれる事件だ。現在は懲役15年の判決を得て服役しているが、彼女は公判中一度として謝罪を口にしていない。本書は猟奇的なまでの行為に及びながらも反省しない、彼女の心の内に迫ったノンフィクションである。
    「実は被告人質問が始まった当初、はかなげな彼女が語る、夫から受けた鼻の骨を折るなどの凄まじい家庭内暴力話に同情したんです。しかし、よくよく聞いていくと話は矛盾だらけ。途中で、彼女は哀れなヒロインでいるんだな、と思いましたね」
     彼女の生い立ち、結婚生活から事件までを丹念に追う中で浮かび上がってくるのは、歌織のプライドの高さ、そして金に対する執着だ。裕福だが暴君だった父から虐待を受けて育った歌織は、経済力さえあれば殴られる関係もアリ、という特殊な概念を持って成長し、やがて夫・祐輔と出会う。
    「彼女は夫の暴力を理由に離婚しようと思ったと主張していましたが、結局のところ自分の意思で戻っているんですね。さらに、一般的にDV被害者は無気力になるのに、彼女は夫に対し強気でさえあった。なぜか。彼女が〈被害者の優位性〉に気づいたからではないでしょうか。ワタシは可哀想な被害者、だから暴力の対価として夫の金を自由に使って当然という発想ですが、根っこにあるのは怒りです。その被害者意識が怒りを増幅させ、すべてを正当化してきたんです」
     逮捕後、彼女は関係者に「私がどれほど彼を憎んでいたか、これで分かったでしょう」と言ったとの話もある。
    「こんな結果を招いた一番大きな要因は彼女に情緒が育っていなかったことだと思います。情緒は、幼少期においしいね、楽しいね、など大人からの働きかけによって身に付くのですが、歌織にはそれがなかった。だから、彼女の心を必死でのぞいても空っぽ、何も見えなかったんです。たとえ暗くてもそこに沈んでいる何かがあれば周囲の声が届きます。でも彼女の心は、声が引っかかるものを何も持ち合わせていませんでした」
    “モンスター”を生み出したのは、経済を優先してきた私たちでもあることを思わずにはいられない。

    ▽たちばな・ゆうほ 福島県生まれ。ノンフィクションライター。家族という場所・関係性を定点に犯罪ノンフィクションなどを手がける。著書に「身内の犯行」など。
    ゲンダイネット

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