いつからだろう　髪が切れなくなった。
短くできない
パーマもかけられない
長い髪が重くならないように
シャギーはいれても
できるだけこのままの長さを保っていたいんです
と
美容室に行った時も
そんなオーダーをしてる

いつも長さはこのままでと思う

何年逢わなくても
あの時のあのままで....

都会の雑踏でも
わたしのことを　見つけてほしくて
偶然ばったりと出会っても
すれ違いざまにあれ？って振り向いて欲しくて
私のことを覚えていてほしくて
そんな偶然はありえないとわかっていても
そんな理由で髪が切れない

あの日あのときのあのままで
関係は
どんなに逢わない月日があったとしても
この間別れたときから
また続きが始まる
だから　別れ際には
またね
という。

若い男女関係には有り得ないが
人生折り返し地点ともなれば
好きだ嫌いだと
その時の感情で関係を切ったりできない
本当に二度と逢えないようなお別れの仕方も
人生の後半ともなればありえるから


メールが来たり来なかったりで
すぐ来て欲しいのに
思ったようにメールがこなくて
人生後半ともなれば　公私共々忙しくて
煩雑にやり取りなんてできない

そんなことがわかっているのに
若いときのように駄々をこねて
もうメールしないしアドレスも消すからそっちも消してよ
なんてメールをすれば

そんなこと簡単に出来るかよ
一体、どれだけ長い月日関係があるんだ
いっときの感情でアドレスを消す消さないなんて
結論は出せない

って怒ったようなメールが来る
頭冷やして
そうだよな大人げないよな
って思って
携帯を置く

髪が切れないのは
抱かれたそのあと　髪がいつもより生き生きとしてて
風が吹いたとき
若い頃のように髪がサラサラと音がしたからだ

さらさらと音が鳴り　
側にあったキンモクセイの香りが
甘く漂ってきて満ち足りた気持ちになったから

そうだよ
幸せのカンジって確かこんなカンジだった

人生折り返しの男女っていうのは
カラダでも会話をする
特別言葉で会話をしなくても
肌と肌が重なり擦れる感じで
お互いのことがわかる
カラダ全体が性感帯なんだか触覚なんだか....
愛の深みと人生の深み....
まどろみはまるで麻薬のようで....

胸まで伸びた髪が切れない理由はこんなこと...