【午後三時のデジャヴ】





午後三時の公園で

僕は君とすれ違った

君はゴールデンレトリバーを連れていて

僕はトイプードルを連れていた



僕たちはどちらからともなく

笑顔を浮かべ

しばらく公園の噴水の前にいた



犬たちはお互いのにおいを嗅ぎあいながら

お互い相性がいいことを確かめあっていた

あるいはそれぞれの飼い主のために

あえてその場にじっと

とどまろうとしたのかも知れない



僕たちは犬をせかすこともせず

かといって言葉を交わすこともなく

心地よい微笑みを

それぞれに浮かべていた

そしてタイミングを見計らって

直接視線を合わさないようにして

お互いの瞳の奥を覗き込んだ



ふとその瞬間

いつかどこかで

これと同じ場面に

出くわしたことを

僕は思い出した



目を閉じた瞬間

その場面がフラッシュバックして

僕は一瞬現実から遠ざかった



彼女は僕の初恋の人だった

２０年も昔のこの公園で

僕たちは初めて出逢った



そして今日のように

言葉を交わさず

微笑だけを交わして

その場を後にした



それきり僕たちは

逢うこともなかった



彼女の透き通った瞳は

あの時とは何ら変わらない

胸を締めつけられるような

熱い思いが今

再びこみあげてくるのを感じた



けれど僕たちは

やはり言葉を交わすこともなく

微笑だけを交わして

その場を後にした

いつか再び逢えるであろうという

淡い期待だけを胸に抱いて



(Illustration "Twilight Mellow" by kay)

* KAY'S BLOG【はや２ヶ月…】

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