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from: yumiさん
2010年09月27日 10時00分05秒
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星色の王国
・1・海に面するこの国――レナーレ。この国が今回の話の舞台である。この国には三人の姫がいた。だが、この国の後継者は長女ではなく次女の少女であった。これ
・1・
海に面するこの国――レナーレ。この国が今回の話の舞台である。この国には三人の姫がいた。
だが、この国の後継者は長女ではなく次女の少女であった。
これは、そんな姫たちとその親しい者たちの織り成すお話――。
「チ〜サ〜ト〜。」
「何かしらお姉様。」
「うん、今度私たちの国に何処だったか、使者がくるんでしょ?」
「ええ。お姉様フォークを口に銜えないのっ!」
「あだっ…。」
行き成り投げつけられた木の実にユウリは避ける事ができず、それを額にモロにぶつけた。
「う〜…。」
額を擦る姉を横目にチサトは小さく溜息を吐いた。
「お姉様……。」
「何よ?」
「ミナミ、遅いわね。」
「……。」
ユウリはチサトから流れだす、凍りつくような殺気にゾクリと鳥肌を立てた。
「だ、大丈夫でしょ?」
「何が?」
「……あの子の行く所はどうせチサトは調べきっているんでしょ?」
「ええ、勿論よ。」
チサトはナイフをドスリと肉に突き刺す。
「でも、それとこれとは話が別……。」
「え〜と…。」
「だって、あの子は無断で行っているでしょ?わたしたちには一切話さない。未だにばれていないと思っている天然娘よ。」
「別にいい――。」
般若のような顔で睨むチサトにユウリは固まる。
「何か?」
「な、何でもありません!」
「そう、それならいいけど。」
「………あ、私そろそろ行かないと…。」
「また、稽古?」
「うん、ごめんね。チサト。」
「仕方がありませんわね。」
チサトはもう慣れているのか小さく溜息を吐いただけで殺気を放たない。因みに始めの頃はしょっちゅう殺気を放ち、ユウリの寿命を縮めていた。
「行ってくるわ。」
ユウリは出入り口に置いてあった荷物を持って逃げ出すようにその場を去った。
しばらく走っていたら、見覚えのある人影を見かけ、足を止める。
「ミナミ?」
「ふえっ?」
「――っ!」
ミナミはユウリの声に反応し、ビクリと体を揺らし、壁から手が離れた。
「〜〜〜っ?あれ、痛くない?」
「…あんたね〜…。」
ミナミの下から声が聞こえる。
「ふえ?」
「重いっ!早く退いて!!」
「お、お姉様っ!?」
そう、ミナミが落ちた瞬間ユウリは自分の体をミナミの落下地点に滑り込ませ、何とか彼女を守ったのだが、受け止めるのが精一杯でユウリはミナミの下敷きになってしまったのだ。
「あんたね、一体こんなとこで何やっているのよっ!」
「……。」
黙り込むミナミにユウリは小さく溜息を漏らす。
本当はユウリもミナミが今まで何処に行っていたのか知っていた。
「………。」
いつまでも黙り込みそうなミナミにユウリは折れた。
「仕方ないわね。今日は聞かないわよ。」
「ユウリお姉様…。」
「ミナミ早く着替えなさいよ。」
「え?」
「チサトカンカンよ。」
「ふえ!?」
ミナミは今にも泣き出しそうな顔でユウリを見るが今回ばかりはユウリは彼女に手を貸す気はなかった。
「悪いけど、ちゃんと怒られなさいよ。」
「ゆ、ユウリお姉様〜〜。」
「あんたが悪いんでしょ。」
ユウリは軽くミナミの頭を小突いた。
「まあ、食事抜きにされたんなら後で何か夜食を持っていくから、それで許してよね。」
「……う〜。」
不満そうな表情を浮かべるミナミにユウリはただ苦笑を浮かべる事しか出来なかった。
「さ〜て、私はちょっと稽古に行って来るわ。」
「え?今から?」
「うん、今朝はちょっとバタバタしてて時間が取れなかったら。」
「そうなの?」
「うん、じゃ、ミナミはチサトに怒られてらっしゃいな。」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
片手を挙げさっさとこの場を立去るユウリにミナミは不満そうな声を上げたが、ユウリはそれを無視する。
*
「……う〜ん、この時間じゃ誰も居ないよね〜。」
背伸びをしてユウリは広い練習場を見渡す。
いつもは屈強な兵がひしめき合うのだが、今は時間帯が時間帯なのでユウリ一人しか居ないように思われた――。
「何が誰もいないだ。」
「きゃっ!」
後ろから聞こえた声にユウリは思わず悲鳴を上げてしまった。
「ま、ま、ま………。」
「ちゃんと言葉を喋れよ。」
「マサシ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
ユウリは思わず後退りをして、マジマジとマサシと呼んだ青年を見上げる。
「……さ〜て、お前はこんな時間に一体何しに来たんだ?」
「稽古…。」
「そ〜か……。」
マサシは珍しく笑みを浮かべるが、彼の瞳は決して笑ってなどいなかった。
「お前は馬鹿か!」
「ふきゃっ!」
耳が痛くなるほどの大声にユウリは反射的に耳を塞ごうとするが、マサシはそれを許さなかった。
「お前は何も分かってないだろうがっ!!」
「ま、マサシ…。」
ユウリは顔を引き攣らせ、少しでもマサシから距離を置こうとするが、彼はそれを許さなかった。
「お前はな、一応王位継承権は捨てたが、それでも、この国の姫なんだぞっ!」
「……な、何の事かな〜?」
「……しらばっくれるな。」
マサシは引く気配を見せない、なので、ユウリは自分から折れるしかマサシから逃れる方法は無いと思った。
「ごめん、ごめん、そうだよね〜。」
「……本当に分かっているのか?」
「え、うん、そりゃ、この国の姫として一人で出歩くのは良くないよね〜。」
「……理由は?」
「王女として暗殺や誘拐はつきものだから、一人で行動してはいけない。」
「……。」
マサシは黙り込む、ユウリはそれが正解のためだと思ったが、実際は彼の中で渦巻く感情を制御するためだったとは知る由もなかった。
「帰るぞ。」
「え、え、え……。」
無理矢理引きずるマサシにユウリは長靴を地面に食い込ませ、意地でも引っ張られないようにした。
「……ユウリ…。」
「だって、私今日は走り込みとか柔軟とかしかやってないんだよ。」
「十分だ。」
「どこがよ、素振りをしないといけないでしょうが。」
「……。」
「マサシ、まさか、私が女騎士になるのがまだ不満な訳?」
「……。」
黙り込むマサシにユウリはそれが肯定の意味を含んでいる事に気付いた。
「いい加減にして。私は騎士になりたかったのっ!」
そうユウリは物心ついた時から、騎士になりたがった。だけど、周りは王女だからと止めさせようとしたが、ユウリの妹であるチサトの御陰で彼女は念願の騎士になったのだ。
「なのにあんたまでそれを否定するのっ!」
マサシとユウリは幼馴染だった。
そして、マサシはユウリのその言葉をずっと聞いていたのだ、そして、ようやくユウリが念願の騎士見習いになった時、彼はユウリに強く当たってきた。
「私だって遊びじゃないのよっ!」
「……。」
「なのに、なのに、何であんたは分かってくれないのよっ!!」
マサシは微かに顔を歪めたが、ユウリはその事に気づかない。
「俺の力の下にいる時点で、俺はお前を認めない。」
「マサシ。」
ユウリは怒りを宿した瞳でマサシを睨みつけた。
「私はあんたよりも確かに弱い、だけど、私だって、ちゃんとした将軍なのよ。」
そう、ユウリは自分一人の力で、将軍の位まで昇ったのだ。
「……お前を将軍にしたのは間違いだった。」
「なっ!」
ユウリの怒りはとうとう限界を達した。
「マサシの…マサシの馬鹿っ!」
ユウリは勢いよくマサシに飛び蹴りを食らわし、そのまま逃げ去った。
*
「あの馬鹿…、本気でやりあがって…。」
マサシは微かに痛みに顔を歪める。
「……だが、俺の方がもっと大馬鹿者か……。」
ユウリが血反吐を吐くほど努力をしていた事を知っている、だけど、マサシは今まで一度も彼女が騎士になる事を肯定した事がなかった。
騎士になれば、おのずと戦に出るようになる。
この国は他の国に比べ平和といえる。この百何十年という月日の間戦は起こらなかった。
だけど、いつかは平和が崩れるとチサトもマサシも分かっていた。
この国はかなり豊かな国で他の国から見れば喉から手が出るほど欲しいだろう、だけど、実際手に入れようとするのは大変だ。
チサトはそれを見越して先手を打っていたし。それに、念のために別の計画も進めている。
しかし、いくらチサトが手を尽くしてもどうしようもない事もある、その時、ユウリが死んでしまったり、怪我を負ったりすれば間違いなくマサシは理性を失うだろう。
鬼神化したマサシはきっと、誰からも怖れられる。まあ、それは彼自身どうでもいい事だったが、もし、怖れる人の中にユウリがいれば間違いなく、マサシは壊れるだろう。
……今はそんな果てしない未来を考えるよりも今現在にマサシは目を向けた。
「………もっと、言葉を選ばなければ行けなかったのにな…。」
前髪を掻き上げ苦笑を浮かべるマサシは不意に顔を上げた。
淡い光を放つ星々にマサシは無意識に一つ一つの星に自分と周りを当てはめていく。
丁度マサシから見ればかなり上の方にある、淡く薄い青の星はチサト。
その斜め下にある淡い黄色の星はミナミ。
チサトと当てはめた星の右横にある真っ白な光はユーマ。
ミナミと当てはめた星のすぐ左にある煌々とした紅い星は彼女とよくあっている商人の息子。
真ん中に位置する青とも白ともいえる光を放つのはユウリ。
そして、マサシは自分の星を見つけられないでいた。
赤や黄色なんて、自分らしくない、白や青のように自分は穏やかではない、そんな自分にあう星がなく、ふっとそれもいいかとマサシは笑った。
「どうせ、俺はユウリの側に居てはいけない人間だからな。」
マサシはそう言うと、ただ一人、昔を思い返した。
昔を――。
あの時出会わなければ良かった……。そうすれば、傷つけずに済んだのに……。
「出逢わなければ、よかったのにな……。」
あの瞬間から、マサシの世界は変わった。
騎士になる、そして、国の為に働くという考えが、彼女を、ユウリを守りたいと思うようになった。
「そうすれば…俺は屑のまま終わったのにな…。」
守りたいと思った瞬間から、強くなりたい。何者にも負けない力が欲しいと思った。
だから、マサシは己の限界まで訓練を続けたし、今の地位に居る。
だけど、彼女は…守られるだけの女性ではなかった。
マサシが鍛える間、彼女もまた強くなろうとした。
彼女は妹や国を守るために剣を握った。
「……永遠に、俺たちは交われないのか…。」
始めのうちは確かに交わっていたが、最近では離れ離れになる。思想が違うのだ…。
マサシはユウリを守りたい。
ユウリは自分を犠牲にしても他人を守りたい。
それだけなのに、二人の距離は大きく開いていった。
「……こんなにも……。」
マサシは空に…ユウリを思わせる星に手を伸ばすが、星は遠く彼の手には収まらない……。
「こんなにも、お前を想っているのにな……。」
マサシは苦笑を浮かべ、そん場から立去った。
こうして、この国の話の運命は進んでいく。動き始めた歯車は止まる事を知らない。
あとがき:いや〜、思ったよりも早く20000人記念になりました。今回の話も、お嬢様パロと同じで、拍手がなかったら、続きを載せないつもりです。
さてさて、30000人記念はリクエストに応えるものにしたいです。(お嬢様パロと王国パロが続けば、次のパロが載せれないのが理由です。それまでにどちらかが終わればいいんですが、多分、いや、絶対に無理です。)
例えば両思いなら「×」で、片思いなら「→」で書いていただければ嬉しいです。リクエストしていただけるのなら、何でも構いません。パラレル、未来、過去(本編に載せないやつなら載せられます。)
何か、読んで見たいモノがあれば遠慮なく申し出てくださいっ!
なければ、30000人記念はスルーするかも…。
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マナ、
from: yumiさん
2011年03月30日 10時13分25秒
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「星色の王国」
・24・
『兄様。』
『リディアナ?』
申し訳なさそうな声音のリディアナにカイザーは首を傾げる。
『ごめんなさい…、全く気配が辿れません……。』
『…ああ。』
カイザーはリディアナが気落ちしている事を感じ、穏やかな笑みを作るが、その顔はリディアナには見えていない。
『気にしなくてもいい。』
『兄様?』
『お前の力不足ではなく、今回の敵は隠れるのがうまいだけだ。』
フォローされているのだとリディアナは分かり、余計に気落ちしかける。
『俺だって分からない、多分、ここにいる奴らの中で一番気配を読む事が得意な俺でさえだ。』
『兄様も?』
『ああ。』
リディアナをはじめカイザーの弟妹はカイザーの気配を読む力は自国他国問わず、世界一だと認めている。そんな彼に読めないとはそんなにも敵は強大なのかとリディアナはぞっとした。
『兄様……。』
不安で声が震えるリディアナにカイザーは穏やかな声音を出し、彼女を落ち着かせようとした。
『大丈夫だよ。』
『兄様?』
『俺が守るから。』
『……。』
リディアナが遠くで目を見張っている事に気付き、カイザーは苦笑する。
『俺の大切な人間を傷付けさせたりはしない。』
『兄様。』
『絶対に。』
強い兄の言葉にリディアナは心から誓う。
この兄を守れる力が欲しいと。
昔からこの兄は優しい、それは敵に対しても、味方に対しても。
ただ、敵でも自分の大切な人間を傷つけようとすれば、彼のもつ鋭い牙が敵に向けられ、向けられた敵は一溜りもないだろう。
カイザーは二つ名の通り、獅子のような人物だと誰からも思われた。
獅子は百獣の王、カイザーは王としての器がある。ただ、彼自身はそうは思っていない。彼自身は平凡な強いて言うなら犬のようだと思っている。
ちっぽけな存在で、忠誠心が強い、そんな存在だとカイザーは思っているが、他の評価は全く違うのだった。
『兄様。』
『なんだい?リディアナ?』
『兄様はこのリディアナがお守りします。』
『リディ?』
『兄様は誰にも傷付いて欲しくないとお望みですが、そう思っているのは兄様だけじゃありません。』
リディアナの言葉にカイザーは苦笑を漏らし、妹と同じ事を言った弟(ルシス)を思い出した。
『ありがとう。』
昔同じ事を言われたカイザーはルシスに「すまない」と謝ったが、ルシスはこう言ったのだ。
――兄さん、こういう時は「ありがとう」で十分です。僕たちは兄さんの側にいる理解者であり、家族であり、それ以上の絆を持っている存在だから、だから、兄さん、兄さんは兄さんらしくいてくれるなら、僕たちはいつまでも兄さんの力になるよ。
「本当にお前たちには支えられている…。」
『兄様?』
風に声を送らなかったのにも拘らず、リディアナは敏感にカイザーが何かを言った事に気付いた。
『何でもないさ、リディアナ。』
『……本当にですか?』
『ああ。』
リディアナの声音からは納得した様子はないが、それでも、彼女はこれ以上カイザーを問う言葉を紡がなかった。
『兄様、これから、どうしますか?』
『そうだな……。』
カイザーはこれから何が起こるのか分からなかった、だから、リディアナに的確な指示を飛ばせないでいた。
『…取り敢えず、姫を頼む、許可を得たんなら俺たちが姫を守る。』
『…………兄様は、フローリゼル様をお好きなのですか?』
『……リディ?』
何を言い出すのか、とカイザーは思うが、リディアナの思いつめたような声音に思わず彼女の愛称を呼んだ。
『……ごめんなさい、何でもないんです。』
『……リディ?』
『……。』
カイザーは黙り込むリディアナと自分に言い聞かせるかのように口を開く。
『俺は皆好きだ。だから、姫も好きだし、リディアナも、ルシスも、ジャックも、母様たちも、父さんも好きだ。』
『……。』
『リディアナがそんな意味で言ったんじゃないことくらい、俺にだって分かるが、特別に思う異性はいないんだ。』
カイザーは心からの言葉を言い、リディアナはそっと息を吐いた。
『兄様……。』
リディアナはホッとしたような残念な心で呟いた。
『兄様、リディアナはいつでも、兄様の味方です。』
『ありがとう、リディアナ。』
カイザーが微かに微笑んだ瞬間、風が変わった。
『――っ!』
『兄様!』
「兄さん!」
「カイ兄!」
敏感に空気が、風が変わった事にカイザーを含めた彼ら兄弟は気付いたようだ。
「……一体何が…起こっているんだ……。」
カイザーは眉間に皺を寄せ、ぼそりと呟いた。
「……兄さん。」
「まあ、オレたちに攻撃するんなら、倍返しにしてやらないとな。」
兄を純粋に心配するルシスと、彼らしさを失わずにニヤリと不敵に笑うジャックにカイザーは笑みを浮かべる。
「そうだな。」
「最悪の事態にならないように考えなくてはなりませんね。」
「ああ。取り敢えず、注意を促すように隊の連中に言ってきてくれないか?」
「オッケー、それはオレがやってくる。」
ジャックは素早い動作で走り出し、残された二人は真剣な顔で互いの顔を見合う。
「ルシス、気を引き締めていこう。」
「はい、兄さん。」
あとがき:この前、アクセスのトータル数が6万5千人を突破しました。嬉しい限りです。最近滞りっぱなしでしたが、少しずつ書いて載せていきたいです。
まだまだ、定期的に載せられるかは定かではありませんが、もっと頑張りたいです。
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