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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2010年10月30日 10時30分32秒

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    30000人達成しました!?
    リクエストがありますので、そちらは後々アップすると思います。
    40000人もリクエストを募集中です!!!

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  • from: yumiさん

    2010年10月26日 14時00分49秒

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    「星色の王国」
    ・6・

     カイザーは妙な気配を感じ、自らの馬を止める。
     その時、マサシもまたその気配を感じ取ったのか、馬の足を止めた。

    「気付いたのか?」
    「ああ、この気配は――。」
    「殺気ですね。」

     唐突に割り込んだ声に、マサシは訝しげな顔をし、カイザーは誰だか知っていたのか、真剣な顔で銀の髪の青年を見た。

    「ルシス。」
    「兄さん、どうします?」
    「……。」

     カイザーは自国なら即座にフローリゼルに心配を掛けないように少人数で殺気を放つ者達を倒しに行っただろう。
     だけど、ここは彼の自国でもなく、そして、必要最低限の人数しか連れていないので、とてもじゃないが少人数で叩きに行くのは守りが疎かになり、フローリゼルに危険が及ぶだろう。

    「……客人にこのような事を言うのは失礼だと思いますが、構いませんか?」
    「?」
    「……。」

     マサシの言葉にカイザーは首を傾げ、ルシスは何かを警戒する素振りを見せた。

    「この隊は…目立つのを避け、必要の人数より減らしてしまったので、出来れば貴方がたの力を借りたいんです。」
    「……兄さん。」
    「いいのか?俺たちが手伝っても。」
    「ええ、寧ろこちらがお願いしています。」
    「……それなら、遠慮なくやらせてもらう。」
    「助かります。」

     カイザーは素早く視線を滑らせ、敵と自分の距離を把握する。

    「ルシス。」
    「はい。」
    「ジャックに二時の方角に向かうように言ってくれ。」
    「分かりました、わたしはどうしますか?」
    「俺と共に、一番数の多い真正面を頼む。」
    「……待て。」

     この場を取り仕切ろうとする、カイザーにマサシは制止の言葉をかけた。

    「先ず、馬車を止める、もし、馬車を囲まれても、俺たちで止められるようにする。」
    「そうだな。」
    「馬車を止めろ、そして、全員戦闘を開始できるようにしろ!」

     マサシの張りのある声がその場に響く。

    「カイザー、そちらの指示は頼む。」
    「ああ、こっちは任せろ。」
    「兄さん、来ました。」

     ルシスは視線を走らせ、そして、鋭い瞳を敵へと注ぐ。

    「さて、アルテッドの騎士の力を受けて、立っていられるかな?」
    「……久方ぶりの戦闘か…。」

     カイザーはなんとも形容しがたい顔でそう言った。



     カイザーは自分の剣を抜く。
     そして、その隣では二振りの剣を抜くルシスの姿があり、二時の方角に鮮やかな赤い髪の青年というか、少年がいた。

    「油断するなよ。」
    「しませんよ。」
    「……ルシス。」
    「何ですか?」
    「お前の思い人を守らなくても大丈夫か?なんなら――。」
    「大丈夫ですよ。彼女の側にはリディアナが居ますし、エルもおります。」

     カイザーはルシスの恋人に当たる少女を思い浮かべ、心配そうな顔をしていたが、ルシスのあげる名を聞き、納得する。
     因みに、エルという人は女性で、カイザーの副官を勤めている。

    「………もし、危険があったら、下がっても良いからな。」
    「いいえ、その時は前線に立ち、兄さん達を逃せるように生贄にでもなりますよ。」
    「……ルシス。」

     ルシスは冗談めかして言ったのだったが、カイザーはそれが本気で行っている事が分かっていた。

    「自分の命は大切にしてくれ。」
    「それを言うなら、兄さんが一番その言葉を実行してください。」

     少し怒ったような声を出す弟にカイザーは目を見張った。

    「兄さんは自分の命に無頓着すぎるんですよ。」
    「……。」
    「その御陰で僕たちがやきもきしているか…。塔から落ちたり、牢屋に入ったり、本当に兄さんは、僕の予想をはるかに超えた事をやらかすんですから。」
    「すまない…。」
    「謝るくらいなら、始めから気をつけてください。」

     呆れたように言うルシスにカイザーは許された事を悟る。

    「ルシス。」
    「何ですか?」
    「お前は本当に俺にはもったいないくらいのいい副官だな。」
    「僕は兄さんが上司じゃなければ、馬鹿な振りをしてますよ。」

     ルシスは冗談めかして言うが、目が笑っていなかった。

    「まあ、それ以前に僕が生きているのか事態怪しいですが。」
    「……。」

     怪訝な顔をするカイザーにルシスは一人、心の中で話す。

     兄さんが居なければ、僕は僕でなかっただろう。
     兄さんが居たから、僕は僕である。兄さんは気付いていないだろう、兄さんが笑えば、僕や妹…ついでに、ジャックも笑う。兄さんが悲しめば、僕たちは悲しむ。
     もし、兄さんが死んでしまえば、僕たちは生きる屍となる。
     昔…いや、それほど昔じゃないな…、あれはそう四年前、兄さんがまだ十八、僕が十七、ジャックが十六、リディアナが十五の時、あの時、人ならざるものが兄さんを殺しかけ、僕ら弟妹、兄さんと離れ離れになった。
     あの時は酷かった。
     皆が落ち込み、そして、皆が兄さんの無事だけを祈っていた。
     僕もまたそうだった、兄さんは僕に姫たちを守れと言った、だから、そう動こうとしたが、動けなかった。
     僕の思考は停止していた。
     だけど、兄さんは傷だらけで、僕たちの前に現れた。
     あの時ばかりは信じてもいなかった神に感謝した。
     そして、あの時から決めた、僕の命は兄さんのために使う、他の誰かのためじゃなく、兄さんの為に……っといっても、その後にあの少女に出会い、守る対象を増やした。
     僕は守る、兄さんも、兄さんの思う人たちを、そして、僕の大切な人たちをこの二振りの剣で守ろう……。

    あとがき:ルシスは兄(カイザー)のためならば、命を落とすこともかまわないような性格なので、先行きが不安な面もあります。

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    マナ

  • from: yumiさん

    2010年10月26日 13時57分13秒

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    「お嬢様の危険な日常・執事の憂鬱」
    ・13・

     風が冷たかった。
     冷たい風からミナミをその身で庇うように、リョウタは体をずらした。

    「大丈夫か?」
    「う、うん。」

     ミナミの顔が青白く、無理をしているのがバレバレだった。

    「無理をするな、オレに凭れ掛かれ、少しはマシになるだろ?」
    「でも…。」
    「逃げる時に、そんなんでどうするんだ?」
    「……。」

     先の事までちゃんと考えるリョウタにミナミは目を軽く見開いた。

    「いくら、お前のお姉様たちが助けてくれても、お前がそんな青い顔じゃ、心配かけるだろうが。」
    「…うん。」
    「寒いようだったら、オレの上着を貸すが、どうだ?」
    「別に寒くはないよ。」
    「そうか……。」

     リョウタは彼女が意地を張っている事に気付き、上着を脱いだ。

    「りょ、リョウくん!」
    「ガタガタ震えながら言うせりふかよ?」
    「……。」

     ミナミの肩にそっとリョウタの上着が掛けられた。

    「あったかい……。」

     ミナミはリョウタの上着に頬を寄せ、目を閉じた。

    「そうか……。」

     リョウタはホッとしながら目を細めた。
     だけど、それも一瞬の事、ミナミの耳には届かない遠くで、発砲する音や金属がぶつかる音がした。

    (来た…。)

     リョウタはミナミに気付かれないように気を張り詰めさせる。
     リョウタは耳が良い、と言ってもユウリやマサシに次いでだが、それでも、彼の耳はかなり遠くの音を拾う事ができた。

    (……複数と、少数の戦いか……。)

     複数は間違いなく、ミナミと自分を閉じ込めた連中。
     少数はユウリとマサシなのだが、リョウタはそこまではっきりは分かっていなかった。

    (……向こうの騒ぎに、全員が向かえば良いが、……こっちに来る奴らも間違いなくいるだろうな……。)

     リョウタはミナミに気付かれないように体を動かせる準備を始める。
     同時に武器の確認と、敵の気配に注意を払う。

    「リョウくん?」

     リョウタの張り詰めた気配に気付いたのか、ミナミは不安そうな表情を浮かべる。

    「……。」

     リョウタはミナミの不安な表情を見て、何と声をかければ良いのか分からなくなった。
     分かるのは自分が思いつく言葉はすべてミナミを不安にさせるのだ。

    「リョウくん…何かあったの?」
    「……。」
    「リョウくん……。」

     今にも泣き出してしまいそうなミナミにとうとうリョウタは白旗を上げた。

    「分かった、言うから。」
    「本当?」
    「本当だ、言うから頼むから、泣かないでくれ。」

     リョウタはミナミの頭を軽く撫で、溜息を一つ吐いた。

    「お前の姉様…多分、爆音が少ないから、ユウリ様が来ている。」
    「本当?」
    「こんな事で嘘吐いてどうする。」

     リョウタの言葉を信じたのか、ミナミは嬉しそうな顔をした。
     一方、リョウタはミナミほど楽観的に物事を見ていない。
     息を抜けば、食い殺される。
     そんな言葉がリョウタの脳内に浮かぶ。

    「ミナミ、ユウリ様はお強い、だけど、オレたちはまだ敵の手の中にいる。」
    「……。」
    「もしも、ユウリ様が来る前に敵が来たら、逃げるぞ。」
    「えっ、でも……。」

     姉が来るなら別に逃げる必要はないのではないかとミナミは思った。

    「お前、本当に考え無しだな。」
    「ふえ?」
    「もし、ここに敵が来て、そして、その後ユウリ様が来ると仮定する。」
    「う…うん。」
    「そうなると、どうなると思う?」

     リョウタの鋭い眼がミナミを射る。

    「答えは簡単だ。」

     リョウタの声が常よりも低く響く。

    「オレたちを人質にとる。そして、ユウリ様たちが動けない間に一気に逆転される。」
    「でも……。」

     ユウリやマサシが強い事をミナミは知っている。だから、逆転なんか起こらないと思っている。
     リョウタはミナミの考えている事くらい簡単に分かっていた。だから、ワザと絶対に起きないとは限らない事を口にする。

    「ユウリ様もマサシも強い、だけど、あの人たちはオレたちと同じ人間だ。」
    「……。」
    「必ずしも勝てる人間はいない、油断は誰でもするものだ。」
    「リョウくん…。」

     リョウタは少し厳しすぎたかと思ったが、それでも、彼女を甘やかしてはいけないと思い、口を閉ざさなかった。

    「万が一かもしれない、億が一かもしれない事だ、だけど、それは起こらないとは言いきれないんだ、だから、ミナミもしもの時は、オレが敵を足止めする。」
    「……。」
    「もし、オレが傷付いても、死んでも、ユウリ様たちの所に行ってくれ。」

     ミナミの表情が強張る。
     リョウタはそれに気付いているのか、いないのか、視線をミナミから外した。

    「絶対に生き残ってくれ。」
    「……。」

     ミナミは何と言おうか迷った。
     だけど、どの言葉も違うような気がした。
     そんな悲しい事を言わないで、とか、一緒にいてよ、とか、リョウくんがいなければ意味がない、とか、そんな言葉が過るが、彼女はそれを口には決してしない。
     それらの言葉はリョウタを傷つけるからだ。
     彼女は理解していないが、感覚でそう分かっていた。だから、口にはしなかった。
     それは、正解だっただろう。
     リョウタはミナミを一人の女性として、愛している。だけど、ミナミは違う…。
     それが苦しくて、悔しくて、期待をもたらす言葉はリョウタを傷つけるのだ。

    あとがき:甘いのか、やや切ないのかわからなくなるような話ですね〜、リョウくん!がんばれ!!

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    マナ

  • from: yumiさん

    2010年10月26日 13時52分34秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・8・

    「消防署……。」

     智里(ちさと)の指が一つの場所に止まる。

    「智里ちゃん?」
    「火か水が関係しているわね。」

     智里は一人で考えるより、姉の助言が必要かもしれないと思い、彼女を呼んだ。

    「お姉ちゃん。」
    「何?」

     友梨(ゆうり)が来たのは意外にすぐだった。

    「お姉ちゃんの知識を貸して。」
    「珍しい、明日は雪が降るかな?」

     冗談を言う友梨に智里は氷よりももっと冷たい目で睨んできた。

    「じょ、冗談よ…。」
    「そう。」
    「えっ…と、何処まで?」
    「消防署。」
    「はあ?」

     意味が分からない友梨は怪訝な顔で智里を見た。

    「智里…いくらなんでもそれだけじゃ分かんないわよ。」
    「仕方ないわね。」

     智里は大雑把に五行の関連のある場所が、【爆弾】の起爆源で、それをうまく解体できたら、きっとこの【爆弾】が止まる事を説明する。

    「まあ、あくまでも予測でしかないんだけどね。」
    「……そっか。」

     友梨はじっと地図を見て、思いつくままに口にしてみる。

    「五行で、一応方角とかもあるんだけど……。う〜ん。」
    「例えば?」
    「例えば?木は東、火は南、金は西、水は北、土は中央……だけど、中央がそうなら、ここだし……。」
    「多分それは違うわね。」

     智里の言う事ももっともだと友梨は思った。もし、中央をここだと仮定しても、成り立たない。
     東や西などがたとえ、ここに等しくとも、中央の「土」だけが外れ、「それぞれは河波に等しい」、そのワードが当てはまらない。

    「難しいわね…。」
    「ええ……。」
    「そういえば、智里。」
    「何かしら?さっきの消防署ってどの辺?」

     智里はスッと人差し指で消防署を指差す。

    「……そういば、ゲームとかで相生(そうしょう)とか相剋(そうこく)とかを表す時、よく星型にするな。」
    「……そうなの?」
    「うん、こういう風に星を書くでしょ。」

     友梨はそう言うと近くにあったペンを広い、地図に適当に点を打ち、それを線で繋げた。

    「こんなもんかな?」
    「お姉ちゃん。」

     智里の声が低くなっているのだが、友梨は自己満足の所為で気付いていない。

    「お姉ちゃん……。」

     友梨の首筋に智里の冷たい手が伸びる。

    「うぎゃっ!」
    「な〜んで、直接地図に書き込むわけ!」
    「ご、ごめんなさい!」
    「もう……。」

     智里は眉間に皺を寄せ、そのまま地図に視線を戻した。

    「……………偶然にしては、うまく出来てるわね。」
    「へ?」
    「あんまり言いたくないけど、お姉ちゃんが余計な事をした御陰で、この物凄く下らない謎が解けたわ。」

     智里は冷笑を浮かべ、地図をじっと見ていた。

    〜つづく〜
    あとがき:今日は載せれました〜、でも次の目処はわかりません。

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  • from: yumiさん

    2010年10月22日 13時21分23秒

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    「星色の王国」
    ・5・

    「ねえ、ユウリ。」
    「何ですか?」
    「貴女幾つかしら?」
    「私ですか、二十歳になりました。」
    「まあ、わたくしは二十一になったばかりよ。」

     女の話は意外にも弾んでいた。
     ユウリも他国の姫だからと始めのうちこそこっそりと緊張していたが、フローリゼルの気さくさにすぐに話が進む。

    「そうなんだ、私には二人の妹が居るんだけど、十八と十六なの。」
    「そうなの、羨ましいわ。」
    「そんな事ないですよ〜、十八の妹は口うるさいし、十六の方は少し抜けてて変なヤツに絡まれてないかいつもヤキモキするんですよ。」
    「ふふふ、仲が言い証拠じゃない。わたくしは一人っ子でカイザー…先程の黒髪の騎士の弟や妹と仲良くさせてもらっていたわ。」
    「へ〜、あの人に弟や妹が居るんだ。」
    「ええ、ただあの人の弟は二人居るのだけど、二人とも異母弟なの。」
    「えっ!」

     この国は一夫多妻制なので、複数の妻が居るなどユウリには想像できなかった。

    「……女性同士で、諍いとか起こりそうだね……。」
    「ふふふ、そうね、でも、カイザーの家はうまくいっているは、喧嘩しながらも仲が良い家族ですかね。」
    「そうなんだ。」
    「ええ。」

     ユウリはふと外を見て、目にある人物を見つけ顔を顰める。

    「どうかなされました?」
    「いえ、鬱陶しいものが見えたもので。」
    「?……………まあ。」

     フローリゼルはユウリが見たものを理解して、彼女と青年を交互に見た。

    「あの方は貴女の彼か何かしら?」
    「げっ!」

     本気で嫌そうな表情を浮かべるユウリにフローリゼルは呆気にとられる。

    「そこまで嫌がること?」
    「あの人は私が騎士になるのを反対したんです。」
    「……。」
    「確かにこの国では女性が騎士になるなんて前例がありませんでした。私はそれを壊してまで、今の地位に居る。勿論実力で上り詰めたんです……なのに、あいつは…顔を合わせれば、止めろって顔をするんです。」
    「それは、貴女を思っての事じゃないかしら?」
    「…そうだとしても、今は共に戦う同士なんです。」

     ユウリの瞳は真直ぐに未来だけに向けられる。だけど、未来と言ってもマサシやチサトが見ているような遠くではなく、かなり近い範囲であった。
     だから、ユウリはマサシの真意など知る由がなかった。

    「……そうね、殿方本当に女であるわたくしたちの心配など、させていただけませんものね。」
    「……フローリゼル様もですか?」
    「……ええ、ユウリ、フローリゼルで構わないわよ。それかリゼルでもいいわ。」
    「そんな、恐れ多い……。」

     ユウリはただの騎士という身分だけを考え、そう言った。

    「……相遠慮なさる事はないのに……。」
    「ですが…。」
    「騎士になる方は真面目が多いのですね。」
    「そうでもないですよ。」

     ユウリはマサシを思い浮かべ、そう言った。

    「確かに仕事に対しては真面目ですけど、何かあれば私に突っかかってきますし、意地悪です。」
    「あら、まあ……。」

     握り拳を作り、そう言い張るユウリにフローリゼルはクスクスと笑い始めた。

    「本当に、よく見ているんですね。」
    「ふえ?」
    「あの方の事を言っておられるのでしょ?」
    「あっ……。」

     ユウリは騎士と言われ、マサシの事を思い浮かべていた事に今更ながら気付き、顔を真っ赤にさせる。

    「いっ、今の無しです!」
    「ふふふ、残念でした、ばっちり聞きましたわ。」
    「う〜……。」

     ユウリは自分の失態に思わず、穴があったらはいりたいと強く思った。
     フローリゼルは落ち込むユウリを見て笑いすぎたかな、と思い何か言葉を掛けようと口を開きかけた瞬間、急に馬車が止まった。

    「あら?」
    「……。」

     不思議そうな声を出すフローリゼルに対し、ユウリは目を鋭くさせた。

    「ユウリ?」
    「じっとなさってください、多分、外は今危険です。」
    「えっ?」

     ユウリはフローリゼルを馬車の扉から遠ざけた。

    「すみません、しばらくの間、騒がしいかもしれませんが、大丈夫です。あいつなら、必ずこの場所に近づけません。」
    「ユウリ。」
    「それに、私も騎士です。お守りします。」

     ユウリはそう言うと剣に手を伸ばした。

    「……ユウリ、大丈夫ですわ。」
    「フローリゼル様…。」
    「貴方の大切な騎士もおりますが、わたくしの大切な方もおりますですから、大丈夫です。」
    「……そうですね。」

     ユウリは笑みを浮かべ、そして、外からあの低い声がするのを待つ。

    あとがき:なぜか、外が騒がしいことになりましたね〜、来週(?)に載せれると思うので、お楽しみにしてください。

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    マナ

  • from: yumiさん

    2010年10月22日 13時17分06秒

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    「お嬢様の危険な日常・執事の憂鬱」
    ・12・

    「さてと…。」

     ユウリは漆黒の衣装に身を包み、腕が動きやすいか最終確認をする。

    「失礼しま――。」

     ノックもせず入ってくるマサシとユウリの視線がぶつかる。

    「なっ!」
    「……あ〜。」

     マサシはユウリの服を見て顔を真っ青にする。
     一方ユウリは見られ不味いと思いつつも、暢気な声を上げた。

    「マサシ、入る時はノックくらいしてよ。着替えてたらどうするのよ。」
    「…………………っ!」

     ようやく我に返ったマサシは息を吸った。

    「この馬鹿者が!!」
    「……もう、怒鳴らないでよ。」

     マサシの説教など慣れているのか、ユウリは鬱陶しげに顔を顰めた。

    「何という格好をしてんだ!」
    「え〜、動きやすい格好。」
    「お前な〜〜〜!」
    「大丈夫よ、この上にドレス着るし。」
    「そうしてくれないと俺が……って、まさか、乱闘になったら、そのドレスを脱ぐとは言いださないよな?」
    「あら、ドレス着たままだったら動きにくいじゃない。」

     当然だ、という顔をするユウリにマサシは怒りで顔を赤くする。

    「馬鹿か!」
    「もう、馬鹿、馬鹿、煩いわよ。」

     ユウリはこっそりと溜息を吐き、近くに掛けてあった地味でかなり着古したドレスを手にする。

    「お前、ドレスってそれを着るのか!」
    「どうせ汚れるのよ、汚いので十分。」
    「お前はタカダ家を背負っているんだぞ!」
    「家名だけで妹たちが守れるんだったら、それらしい格好をずっとしてあげる。」

     ユウリの目がスッと細められる。それはまるで野生の獣のようにも見えた。

    「だけど、そんな格好をしても、平穏何かないわ。」

     そう、昔はお嬢様らしくすれば、すべてうまくいくと思った、だけど、そうじゃなかった、妹も自分も何度も誘拐され、危険な目に遭った。
     だから、ユウリはその考えを捨てた。

    「私が戦わなければいけないの、マサシたちだけに任せておくなんて出来ないから。」
    「…ユウリ。」
    「ごめんね、一生懸命私を…私たちを守ってくれようとしているのは分かっているけど…それでも、報復だけは私たちの手でしたいの。」
    「……。」

     マサシは何も言えなかった、ユウリの気持ちは痛いほど分かっているし、それに、彼女はただ守られているだけの、少女ではなかった。

    「……頼むから、怪我はしないでくれ。」
    「さあ、乱闘になれば、どうなるかなんて自分にも相手にも分からないじゃない。」
    「……。」

     胡乱な顔つきをするマサシにユウリは真直ぐに彼を射抜くように見た。

    「マサシ私は超人じゃないのよ。」
    「知っている。」
    「だから、絶対に怪我をしないと言いきれない。」
    「……。」
    「私はいつも貴方に怪我をしないでと思っていた、だけど、今まで…戦いの前にそれを口にしなかった理由が分かる?」

     マサシは彼女の問う答えが分からなかったので、静かに首を振った。

    「そう、それは…、出来もしない約束で貴方を縛りたくなかったから。」
    「……。」
    「気休めで、そんな言葉を言うのはとても簡単。」

     そう言うユウリの目は澄んでいた。真直ぐで穢れの知らない瞳。
     だけど、事実は違う、ユウリは人間の醜さも自分の欲深さもよく知っている。穢れなんか知らないという訳ではないのだ。

    「簡単だけど、それを実現させるのはとても難しい。」
    「戦う身だから、分かるのか?」
    「いいえ。」

     ユウリは首を横に振った。

    「貴方を見ている身だから、分かるの。」
    「ユウリ?」
    「私はずっと貴方を見てきた。それは私自身が戦おうと決意する前から。」

     静かに話すユウリにマサシは微かに顔を歪ませる。

    「ユウ――。」
    「マサシは私に怪我をするなと言って、自分を戒めているのは分かっている。」

     ユウリはマサシの言葉を遮り、言いたい言葉をいう。

    「だけど、そのためだけに私を使わないで。」
    「……。」
    「私は貴方が望むのなら、『剣』にも『盾』にもなるわ。」

     マサシはユウリの言葉に目を見開いた。
     逆だ、とマサシは叫びたかったが、その口はカラカラに渇き、一言も発する事が出来ない。

    「私は貴方をここに縛り付ける『楔』になっている。『楔』だけなら良かった。だけど、私は貴方の動きを制限する『鎖』になっている。」
    「ユウリ…。」
    「私はそんなモノになる為に貴方の側にいたわけじゃない。」

     ユウリの目は静かな水面のようだったが、不意にその水面が波立った。

    「マサシ、私は貴方と同等な人間になりたいの。」
    「……。」
    「貴方には訳が分からないと思う、だけど、私は貴方と同じ道を歩みたい、貴方の行く先が茨の道だろうが、砂漠だろうが、私は貴方と共に歩む。」

     ユウリはそう言うと、寂しげに微笑んだ。

    「勿論、貴方がそう望まない事を知っている。」
    「……。」
    「だから、お願い、たとえ、別の道を歩みかけても、私を隣に置いていて。」

     いつかまたマサシが自分をおいって言ってしまう気がして、ユウリはそんな言葉を放つ。

    「俺はもう、二度とお前を置いては行かない…むしろ……。」

     お前の方が俺を置いていくだろう、とマサシは言おうとしたが、ユウリの顔を見て、言葉を呑んだ。

    「私は貴方を置いて行くつもりはない。私は貴方の後ろで必死に貴方を追いかけているだけだから。」
    「……。」
    「私はまだ、貴方の背すら追いついていない場所に居るわ。」

     ユウリは穏やかに微笑んでいた。

    「だけど――。」

     スッとユウリの目が危険な色を孕む。

    「私は絶対に貴方に追いつく、そして、絶対にくっ付いてやるわ。」

     マサシは呆気にとられながらも、ユウリなら本当にやりそうで泣きたくなった。

    あとがき:お嬢様パロは本来なら明日載せるんですが、明日もどうなるのか分からないので頑張って載せています!!

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  • from: yumiさん

    2010年10月22日 13時11分51秒

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    「特別企画!?」
    ハロウィン(青年期編)

    「……なんでこの年になって、仮装なんてしなきゃいけないわけ。」
    「仕方ないでしょ…、作者がイベントごとでこれを思い出したんだもの。」
    「それにしても、幼少期のだけで十分じゃないっ!」

     珍しく声を荒げる智里(ちさと)に友梨(ゆうり)は苦笑を浮かべる。

    「まあ、いいじゃない、たまになんだから。」
    「ふんっ。」
    「でも…作者もよく、こんな自分の首を閉める企画を考え付くのかしら?」

     友梨は用意された衣装を取り出す。

    「………なっ、何よこれ〜〜〜〜っ!!!」

     友梨の手にしているのはスリットの深い、藍色の生地と蓮の花を銀糸と金糸で描いたチャイナドレス。

    「……はあ、そんなの本気で着るの?目の毒よ。」
    「で、でも、これ私の名前が書いてあるし…サイズも……。」
    「…ご愁傷様。」

     智里は胡乱な目付きで自分の名前の書かれた服を見詰める。

    「わたしのも変なものだったら、作者を殺しに行こうかしら?」
    「いや…物騒な事は止めて…。」
    「さあ、どうでしょう。」

     智里は本気とも冗談とも取れる声音を出すが、その目は殺す気満々だった。

    「…………。」
    「……ふえ?」

     智里が袋を開けるとそこには黒い布が見えた。

    「……学ラン?」
    「……マシね。」

     残念そうに呟く智里に友梨はホッと息を吐いた。

    「そういや、試着しまだ〜?美波(みなみ)〜?」
    「もう少し…。」
    「早くしてよね、こっちだってつっかえているんだから。」
    「は〜い。」

     美波はたった一つしかない控え室から出てきた。

    「どうかな?」

     嬉しそうにその場でくるりと回る美波の衣装はどこぞの姫様が着そうなヒラヒラとしたレースが沢山ついた薄い桃色のドレスだった。

    「……お姉ちゃん。」
    「…何…。」
    「アレじゃなくてよかったじゃない…。」

     美波の衣装は間違いなく美波には似合っているだろうが、友梨や智里が着るにはかなり抵抗のあるデザインだった。

    「そりゃ…アレに比べれば…この服は…マシだけど……。」
    「ほら、後つっかえているから早く着替えてよね。」
    「あ、うん。」

     友梨は衣装を抱え、仕方がなく藍色のチャイナドレスを抱えた。

    「智里…。」
    「何かしら?」
    「男性人は一体どんな格好をさせられているのかな?」
    「さあ、でも、あの作者ならどうせ、わたしたちに合わせてくるでしょ?」
    「……え〜と…、そうなるとかなり怖いんだけど。」
    「あら、何で?だって、智里の衣装学ランじゃん。」
    「あら、わたしはかなり楽しみよ。」

     悪魔の笑みを浮かべる智里を見て、友梨はゾッとした。

    「勇真さん…可哀想……。」
    「あら、別にそんな事無いわよ。」

     友梨は溜息を一つ吐き、男性人に思いを馳せた。

    *男性側

    「…これ着るのか?」

     昌獅(まさし)はただ呆気にとられ、ながら、紺の中華風の男物の衣装を掲げる。

    「昌獅はそれか、おれはこれだ。」

     勇真(ゆうま)は苦笑を浮かべながら自分の服、白地の軍服を見せた。

    「…かっこいいじゃねえか。」
    「涼太(りょうた)まだ開けねぇのか?」
    「だって、こんな企画で大抵は弄られるのはオレだぜ。絶対美波が姫の衣装で、オレが王子の格好で笑いを取る気で決まっているじゃねえかっ!!」
    「いや、そこまで弄られてねえと思うけど…。」

     苦笑を浮かべる勇真に涼太はキッと睨み付けた。

    「勇真だから、そんな事言えるんだぜ。」
    「まあ、そうだな…。」
    「分かってくれるか、昌獅っ!」

     感動する涼太に昌獅は苦々しくこう言う。

    「まあな、この前の誕生日なんて最後の落ちは何なんだよっ!俺の誕生日なんだから、もっとサービスしろっていうんだ。」
    「昌獅はいいさ、友梨先輩ともうくっついてるんだからな、オレなんてあと何年かかるやら……。」
    「大丈夫だと思うがな。」
    「はっ、あんな天然娘に設定した時点で、何処が大丈夫だと言いたいんだっ!」
    「……そうかもしれないけど、君と美波ちゃんがくっ付く事は作者ははじめから決めているんだよ?」
    「……くっ付くつっても、何年かかるか分からねぇ、って話だぜ。」

     そう、作者自身美波と涼太が何時くっ付くなど考えていない、それどころか、何年かかっても無駄な気がしていると、作者が考えているが、涼太は知らない。

    「おい、待てっ!」

     涼太は天井に向かって急に叫びだした。

    「てめえ何勝手な事を書いているんだっ!!」
    「…止めとけ、どうせ敵わないからな。」
    「そうだ、体力と気力が消耗するだけだ。」

     諦めきっている二人は涼太を必死で押さえ、そして、涼太は天井を睨め付けながらも抵抗を止めた。

    「昌獅や勇真は怒ってないのかっ!」
    「仕方がないと思うが。」
    「まあな、どうせこいつが居なければ友梨も俺も生まれていないからな。」
    「……。」

     確かに昌獅や勇真が言いたいことも分かっているが、それでも、涼太は釈然としなかった。

    「まあ、どうでもいいが、さっさと着替えねえとあいつの妹が煩そうだな。」
    「そうだな、智里ちゃんを怒らせたら不味いしね。」
    「……。」
    「涼太文句は後でにして、さっさと着替えろよ。」
    「分かった。」

     そして、涼太は諦めたように袋から衣装を取り出した。

    「……。」
    「…ああ、かぼちゃパンツじゃないんだな。」
    「……昌獅、いくらなんでもそれはギャグになるだろうが。」

     涼太が手にしているのは手の込んだ衣装で、深い蒼のマントに、真っ白な手触りの言いシャツ、それに、ズボンも手触りがよく黒色、そして、腰に下げる剣が一つあった。

    「王子っつーよりは、騎士って格好だな。」
    「まあ、いいんじゃないか、ほら、さっさとしないと、本当に智里ちゃんの雷が落ちるよ。」
    「ついでに、友梨の雷も落ちそうだな。」

     昌獅は肩を竦め、すぐに自分の衣装を抱え控え室に入っていった。

    「すぐに着替えるから、待ってろ。」

     そして、昌獅は宣言通り五分も経たないうちに出てきた。

    「ほら、早くな。」



    「あ、来たわ。」
    「遅いわよ、昌獅!」
    「あ、リョウくん、似合っているね。」

     待ち疲れているのか智里の表情はいつもより冷ややかで、友梨も遅い男性人に少しイラついているが、美波だけは笑顔だった。

    「ごめんね、衣装に手間取っちゃたから。」
    「悪かったから、怒るなよ。」
    「……。」

     遅れてきた男性人の反応はそれぞれだった。勇真は本当に申し訳なさそうに謝り、昌獅は友梨の機嫌を戻すために下手に出て、涼太は赤面をして、口を金魚のようにパクパクを開けたり、閉めたりを繰り返した。

    「……ねえ、昌獅。」
    「何だ?」
    「Trick or treat!」
    「はあっ!」

     行き成り笑みを浮かべ寄り添ってくる友梨に昌獅は珍しく呆気にとられている。

    「どっちがいい?」
    「おい、おい、俺は菓子なんか持ってないぞ。」
    「そう、それじゃ、悪戯決定。」

     小悪魔のような笑みを浮かべる友梨はそっと昌獅の顔に自分の顔を近づけた。

    「お、おい、友梨。」

     友梨はほんの少し掠めるように昌獅の頬に自分の唇を押し付けた。

    「はい、お仕舞い。」
    「……。」

     珍しく積極的な友梨に昌獅は唖然とするが、すぐに調子を取り戻す。

    「Trick or treat?」
    「え…?」

     友梨は唐突な事で、慌てて服を叩くが何もなかった。

    「…………ま、昌獅さん…。」
    「何だ?」
    「な、何でそう詰め寄るわけ?」
    「そりゃ決まっているだろ?」

     何か嫌な感じがして後ずさる友梨に昌獅は容赦なく近寄ってくる。

    「いたずら。」
    「……いや…、いたずら、じゃないでしょ…あんたが考えてるのは……。」
    「さあな。」
    「ま、待ちなさい。早まらないで…。」

     とうとう壁に追い詰められた友梨は昌獅にその手を掴まれる。

    「そんじゃ、頂くとするか。」
    「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!」

     昌獅は先程出てきた男性人用の控え室に友梨を抱え込んで連れて行く。

    「……。」
    「……。」
    「……。」
    「……友梨お姉ちゃんどうなっちゃうのかな〜?」

     暢気な事を言う美波み智里は盛大な溜息を吐いた。

    「まあ、あんな二人は放って置いて、お菓子でも食べましょう。」
    「うん。」

     涼太も勇真も特に否定する事無く智里の意見に同意し、この部屋に置かれていたお菓子を食べ始める。
     こうして、無事(?)ハロウィンパーティが開始されたが、何時まで経っても友梨と昌獅が帰ってくることがなかったが、智里たちはそんな事を気にしていなかったので、何事もなくパーティが終わったのだった。

    あとがき:ああ、初めて裏行きになりそうになりましたが…、因みに、友梨ちゃんは無事です、昌獅に迫られますが!!彼女の方が一枚も、二枚も上手で逃げられます!!

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    マナ

  • from: yumiさん

    2010年10月22日 13時05分22秒

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    「特別企画!?」
    ハロウィン(子ども編)

    「とりっく、おあ、とりーとっ!」

     妖精姿の少女――美波(みなみ)はニッコリと微笑みながら海賊姿の少年――涼太(りょうた)に手を出した。

    「………。」
    「リョウ…くん?」

     何時まで経ってもお菓子が乗せられないので、美波は悲しげに顔を歪ませた。

    「――っ!な、なくなっ!」
    「ふぇ……。」
    「ま、まてよ……。」

     泣き出した美波に涼太は狼狽して、慌ててポケットを探るがお菓子の類は一つもなく、困った事にゴム製の虫のおもちゃしか出てこない。

    「……。」
    「あ〜らら、なかせちゃったね〜。」
    「――っ!」
    「だめじゃない、このこをなかせたら、ものすごくめんどくさいのに……。」

     美波の姉である二人の少女が現れた。因みに彼女たちの格好は友梨(ゆうり)が猫のカチューシャと尻尾を着け、猫娘。智里(ちさと)は真っ黒な衣装でとんがり帽子と箒を持って魔女の姿である。

    「……なんかようが、あるんですか?」
    「え〜と、まさしとゆうまくん、みなかった?」
    「しらないけど…。」
    「そうか、…じゃ、ここでまとうか。」
    「そうね、どうせ、うろうろしても、すれちがいって、ことがあるからね。」
    「き〜まり。」

     ニッコリと微笑む友梨はとてとてと美波に近寄る。

    「みなみ、なかないの。ほら、わたしのぶんのおかしあげるから。」
    「ほんとう?」
    「あげるから、なかない。」
    「うんっ!」

     美波はようやく涙を拭い、友梨からお菓子を受け取った。

    「……たんじゅん。」
    「……。」

     智里は幼い子がするべきではない冷めた目付きで姉と妹の行動を見ていた。

    「………な〜にやってんだ、おまえら。」

     呆れた声に友梨が勢いよく振り返ると、そこには昌獅(まさし)と勇真(ゆうま)が立っていた。

    「……すごいかっこうだね。」
    「おまえも、いっしょだろうが…。」

     昌獅は獣の耳のカチューシャとふさふさの尻尾を着けた、狼男の姿で微かにうんざりしたように言った。

    「でも、にあっているよ。」
    「……うれしくねえ。」

     今回のハロウィンに乗る気でなかった昌獅は本当にうんざりしているようだった。

    「え〜、でも。」
    「にあってんのは、おまえだろ?」
    「わたし?」

     友梨はキョトンとし、思わず自分の方を指差す。

    「ああ。」
    「…うっそだ〜…。」

     明るく否定する友梨に昌獅は顔を引き攣らせた。

    「わたしが、にあうはずないじゃん。」
    「……。」
    「わたしより、ちさとのほうが、にあっているよ。」
    「……。」

     まあ、確かに智里の方も似合っている。いや、似合っているって言うレベルじゃない、あれは……。

    「あれは、はまりやくなんだよ。」
    「あ〜…たしかに。」

     ポンと手を合わせる友梨と顔を微かに引き攣らせる昌獅に冷たい視線が突き刺さる。

    「…あう……。」
    「げ……。」
    「おねえちゃん。なにかいった?」
    「ううん、なんでもないよ。」
    「ほんとうに?」
    「ほんとう!ほんとう!」
    「そう……。」

     信じていないと瞳では言っているが、それでも、これ以上姉たちに拘っても時間の無駄だと思ったのか、智里は踵を返した。

    「はあ……。」
    「こわかった…。」
    「ああ。」
    「ふたりとも、いっていいことと、わるいことがあるよ。」
    「あ、ゆうまくん。」
    「ふんっ。」

     昌獅は勇真が嫌いなのかそっぽを向く。
     漆黒のマントを着込み、牙を生やした勇真の格好はバンパイアの仮装だった。

    「ゆうまくん、にあっているね。」
    「ありがとう、ゆうりちゃん。」

     ニッコリと微笑む勇真に友梨は微笑み返すが、それを見ていた昌獅は不機嫌な表情でそれを見ていて、ついに手を出してきた。

    「ゆうり!」
    「ふえっ!」

     友梨は変な悲鳴を上げ、慌てて後ろを振り返ると、いつの間にか抱きついてきた昌獅の真剣な瞳が見えた。

    「ま、まさし?」
    「さっさと、おかしもらいに、いくぞ。」
    「ふえ?」
    「ほら、さっさとしろっ!」

     昌獅は近くに置いてあった南瓜のランタンを手にし、無理矢理、友梨を引っ張った。

    「な、なんなの、まさし!!」
    「……。」

     昌獅は容赦なく友梨を引っ張り、不意に立ち止まった。そして、彼はギロリと勇真を睨み、再び友梨を引っ張り歩き出したのだった。

    「………ふっ…。」
    「なにが、おかしいの?」
    「あ、ちさとちゃん。」

     勇真が微かに笑みを漏らしていると、怪訝な表情を浮かべた智里が立っていた。

    「そんなに、まさしであそんで、たのしいの?」
    「あそんではないよ。」
    「どうだか。」

     智里は小さく肩を竦め、そして、勇真の格好を胡散臭そうに眺めた。

    「それにしても、ゆうまがきれば、さぎね。」
    「……もっと、ほかのことばはないのかな?」
    「あら、ないにきまってるじゃない。」
    「……。」

     満面の笑みを浮かべる智里に勇真は苦笑を浮かべる。

    「どうする?」
    「どうするって?」
    「おかしもらいにいくかい?」
    「そうね。」

     智里もお菓子とかは好きだが、それでも、好き嫌いが激しく貰ったとしても嫌いなものが大半を占めていそうなので、貰いにいく労力と自分の利益を秤にかけた。

    「まあ、こういうおまつりだし、いきますか。」

     どうせ行かなければ姉や妹に何か言われそうなので、智里は微かに嫌そうに言った。

    「……くすくす…。」
    「なによ。」
    「そうしてると、こどもらしくみえるね。」
    「あら、いつもはこどもっぽくないってことかしら?」
    「さあね。」
    「……。」

     智里は気分を害したのか、荒々しい足取りで先に進んでいく。

    「………。」

     勇真はまだ微かに肩を震わせながら、智里を追いかける。
     さて、残された美波と涼太といえば……。

    「もぐもぐ……。」
    「……。」
    「はむはむ…。」

     美波は口いっぱいに友梨から貰ったお菓子をおいしそうに、しかも笑顔で食べていた。

    「うまいのかよ…。」
    「うんっ!」

     満面の笑みを浮かべる美波に涼太は呆れた表情を作った。

    「それはよかったな。」
    「うん。」
    「………なあ、みなみ。」
    「な〜に〜。」

     お菓子をもらえて機嫌の良い美波はニッコリと微笑んだ。

    「どうする、いくか?」
    「うん。」
    「……そうか。」
    「そういえば、おねえちゃんたちは?」

     お菓子を食べる事に夢中だった美波は姉がいなくなっている事にようやく気付いたのだった。

    「……さきにいってたぞ。」
    「え〜、なんでいってくれないのかな〜。」
    「さあな。」

     涼太はやや拗ねたように言い、美波はその事に気付かない。

    「ほら、さっさといくぞ。」
    「うん。」

     涼太が手を差し出すと美波は当然のようにその手に自分の手を絡めた。

    「いこう、リョウくん。」
    「ん。」

     美波の手の温もりと、彼女の満面の笑みで機嫌をよくした涼太は穏やかな表情を見せた。

    「…あ、みなみ。」
    「な〜に〜?」
    「くちもとについてる。」
    「なに――。」

     涼太は美波の口元についたチョコを指で掬いそれを己の口にくわえた。

    「ありがとう。」

     ニッコリと微笑む美波は絶対に涼太がワザとやった事に気づいていない。そして、涼太は呆れた表情をしながら溜息を一つ吐き、そのまま、美波と一緒にお菓子をもらいに行った。

    あとがき:小さいゆうちゃん(友梨)たちは可愛らしいかな?
    来週がどうなるか分からないので、今日一気に色々なものを乗せたいと思っています!!楽しんでください!!

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    マナ

  • from: yumiさん

    2010年10月22日 12時57分10秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・7・

    「何をやっているのかしら、あの人たち。」

     智里(ちさと)は少し離れたところで言い争っていた友梨(ゆうり)と昌獅(まさし)を一瞥した。

    「まあ、あの二人らしくて良いじゃないか。」

     苦笑を浮かべる勇真(ゆうま)はペンを走らせる。

    「さて、この暗号をどう解読すればいいのかしら?」

    《5つの力が河波(かわなみ)の起爆源
     それぞれは河波に等しい》

    「……5つの力……一体なんだ?」
    「………。」

     智里は口元に手を持っていき、じっくりと考え始めた。

    「勇真さん。」
    「何かな?」
    「地図なんか持ってませんか?」
    「いや…ないな。」

     そう言うと勇真は顔を曇らせる。

    「そうですか、まあ、当然ですよね。」
    「……ごめん。」
    「いえ、別に責めているわけじゃありません、それに、持っていますから。」
    「はい?」

     勇真は智里が持っていないから、自分に言いてきたのだと思ったが、実際は違ったようだ。

    「ですから、持っています。」
    「……なんで、持っているのに、尋ねるのかい?」

     訝しむ勇真に智里は笑みを浮かべた。

    「折角のわたしの地図に何かを書き込むなんて嫌ですから。」
    「……。」
    「さて、どういう意味かしら?」

     智里はすっと何処からか一枚の地図を取り出した。

    「……河波…つまり、わたしたちが居る、小学校……。」

     智里はスッと指を地図の上の小学校の場所にもって行く。

    「……それに等しい訳だから…コンパスも必要ね。」
    「……。」

     智里はヒントを頼りに出来るだけ答えを出そうとするが、やはり、5つの力の意味が分からなかった。

    「………、お姉ちゃん。」
    「ん?何か呼んだ?」

     結局【爆弾】を触るのは昌獅になって、それを丁度覗き込んでいた友梨が智里の声に反応した。

    「お姉ちゃんは5つの力と言って、何を思い浮かべる?」
    「5つ?」

     友梨は首を捻らせ、思いつくままに言う。

    「四つとかなら、四季とか四神とか…だけど…あっ!そういえばゲームとかで「5」のつくのがあった!」

     友梨は自分の持っているゲームを思い出し、それが何という名前かを思い出す。

    「五行!」
    「……。」
    「……?」

     智里はそう言われて、何となく理解するが、勇真の方は全く知らないのか、首を傾げている。

    「あ、五行は確か中国の何かだったと思うんだけど、天と地の間に留まらず流れ続ける気とか、万物組成する元素とか言われていたはず。」
    「そうなんだ。」
    「確か、五行の5つの元素は――。」
    「木火土金水(もくかどごんすい)!」
    「えっ?もっかど……?」

     友梨が早口で言ったので、勇真は聞き取れなかった。

    「木・火・土・金・水……つまり、木、火、土、金、水の五つからなっているの。」
    「へ〜。」
    「金は火に弱い、とかを火剋金(かこくごん)といの。」
    「お姉ちゃん、その知識はまた今度ね。取り敢えず…五つの力をそれに当てはめて……。」

     智里はそう言って、地図をざっと見渡した。

    〜つづく〜
    あとがき:ゆうちゃん(友梨)…へんな知識を披露をしちゃいました…。因みに間違っている事もあるので、鵜呑みにしていただかない方がいいかも知れません……。

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  • from: yumiさん

    2010年10月21日 08時54分45秒

    icon

    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・6・

     それを発見したのは涼太(りょうた)だった。
     彼は他のものが【爆弾】付近を探る中、彼だけはその【爆弾】を見ていた。

    「………あいつが、そんなに親切か?」

     胡乱な目付きで彼が見ていたのは【爆弾】に取り付けられている、特に変哲もない時計の方だった。

    「絶対なんか裏がありそうだ。」

     涼太は自分の勘を信じ、そのまま時計に触れた。
     時計は簡単に外れ、中の窪みから紙が数枚出てきた。

    「友梨(ゆうり)先輩!」

     涼太は紙を掴み取り、そのまま友梨の側に近寄った。

    「涼太くん、どう――。」

     友梨は涼太の手に握られている紙を見て理解する。

    「涼太くん、お手柄ね。智里(ちさと)、昌獅(まさし)、勇真(ゆうま)さん!」

     友梨の呼び声が聞こえたのか、三人が近寄る。

    「これ。」

     友梨は智里に紙を渡し、目で会話する。

    (智里、これを解読して。)
    (分かったわ。)

     二人は慣れた動作で、智里は筆記用具を広げ解読、友梨は涼太にこの紙の出た場所を尋ねた。

    「あの【爆弾】の時計の底に。」
    「そう、少しでもアレを探った方が良さそうね。」
    「友梨。」

     そう呼びかけたのは昌獅だった。
     友梨は不思議そうな表情で振り返り、昌獅を真直ぐ見詰める。

    「どうかしたの?」
    「お前まさか、自分から【爆弾】に触ろうとか考えてないよな?」

     昌獅の鋭い視線から逃れるように友梨は目を逸らした。
     そう、図星なのだ――。

    「何で、ばれるのかな〜。」
    「……お前な。」

     不服そうな友梨に昌獅は呆れる。

    「危ない事は俺たちに任せろ!」
    「……。」
    「いいか、お前は手を出すな。」
    「……。」

     昌獅が一言、一言言うたびに友梨の目が据わっていく。

    「いい加減に…。」
    「?」
    「いい加減にしてよ!」

     友梨はとうとう切れた。

    「何であんたはいつもそうなわけ?」
    「ゆ、友梨?」
    「私はね、良かれとやっているのよ、それなのに全部拒否しているじゃない!」
    「いや、そんな事は…。」
    「あら、そうかしら?」

     友梨はギロリと昌獅を睨みつける。

    「あんたは一体私のなんなわけ!」
    「……。」
    「まるで、それじゃ、戦友以上じゃない!」

     昌獅はその言葉に顔を曇らせる。

    「私は守られるだけのそんじゃない、危ない仕事だってするわよ!」
    「友梨。」
    「私は勝手にさせてもらうからね!」

     そう言うと友梨は勝手に【爆弾】の所まで行った。
     呆然と立ち尽くす昌獅の肩に小さな手がポンと置かれる。

    「まあ、頑張れよ。オレも頑張らねえといけないし。」

     涼太はそう言ってチラリと美波(みなみ)を見たのだった。

    〜つづく〜
    あとがき:ああ…、まさくん(昌獅)ま〜た、ゆうちゃん(友梨)を怒らせた…。馬鹿な奴…。

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