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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2010年11月30日 10時16分47秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・35・

    「分からねぇ。」
    『……。』

     昌獅(まさし)がそう言うと、電話の向こうの涼太(りょうた)が肩を落す気配がした。

    『そうか…。』
    「ああ、悪い。」

     昌獅は本当に申し訳なさそうに言った。

    『……どうしようか…。』
    「本当なら高田(たかだ)妹その一に訊いた方がいいだろうな。」
    『だよな……。』

     涼太は完全に気落ちしたような声を出す。

    『本当は頼りたくないんだけどな……。』
    「分からんでもないが、やっぱりちゃんと知っていそうな奴に訊いた方がいいと思うぞ。」
    『……。』
    「俺から訊いてやろうか?」
    『いや、そんな事をしたら…オレがどんな目に遭うか。』

     確かに起爆装置を見つけたのは涼太で、そして、それが間接的に智里(ちさと)の耳に入れば間違いなくあの魔王は激怒するだろう。

    「…………だろうな。」
    『……ん。』

     昌獅と涼太が頭を悩ませる中、友梨の瞼が微かに震えた。

    「う…ん……。」
    「友梨?」
    『んあ?』

     友梨の瞼がゆるゆると持ち上がり、そして、彼女の瞳に昌獅の姿が映し出される。

    「まさ……し?」
    「――っ!」

     昌獅は自分が携帯をもっている事など忘れ、友梨に抱きついた。

    「きゃっ!」
    「良かった、目が覚めて。」
    「ま、昌獅!」
    『……。』

     昌獅の唐突な行動に友梨は目を見張り、涼太は沈黙した。

    『………もしも〜し。』
    「本当に良かった。」
    「昌獅。」
    「…友梨。」
    『――っ!』

     電話の向こうで涼太が切れた。

    『いい加減にしやがれぇぇぇぇぇぇっ!』
    「へっ?」
    「あ〜……。」

     携帯電話から聞こえた怒声に友梨は気の抜けたような声を出し、昌獅は今気付いたかのように、気まずげな声を出した。

    「ま、昌獅。」
    「何だ?」
    「もしかして……。」
    「ん?」
    「電話繋がってる?」
    「…………ああ。」
    「なっ!」

     友梨は羞恥のためか頬を赤く染める。

    「あ、相手は?」
    「涼太。」
    「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

     友梨は声にならない悲鳴を上げたのだった。
     そして、一人残された涼太といえば………。

    『いい加減にしろ!!!!!』

     ――と再び怒声を上げたのだった。

    あとがき:哀れ、涼太…。
    う〜…昨日から微熱が出てしまいました…病院に行ったりもしましたが、喉が痛いです……。卒論とかに追われているのに…私は何をやっているのでしょうか……。
    嬉しい知らせが二つありました、一つはサークルの仲間が一人増えたことです!ありがとうございます!!
    あとはマナさんのファンレター、毎回楽しみに読んでいます、だけど…、訂正は間に合いません…(泣き)。すみません!マナさん!!

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  • from: yumiさん

    2010年11月29日 09時04分20秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・34・

     涼太(りょうた)は本気で頭を悩ませた。

    「どうすりゃいいんだよ……。」

     訳の分からない問題に、涼太は頭を抱える。

    「…………友梨(ゆうり)先輩に訊いてみよう……。」

     絶対に悪魔――智里(ちさと)には訊きたくない涼太は携帯を取り出し、友梨の番号を押した。

    「………。」

     電話を掛けるが、中々友梨に繋がらない。
     涼太の眉間に皺を寄せる。

    「何でだ?」

     涼太は怪訝に思いながら、友梨の代わりに昌獅(まさし)の電話番号に掛ける。

    「………。」
    『もしもし?』
    「あっ、昌獅か?」
    『俺じゃなかったら、誰なんだよ。』

     呆れたような昌獅の声に涼太は知らず知らずのうちにホッとした。
     そう、涼太は緊張していたのだ、多分猪と戦った時から、だから、自分よりも強く余裕のある昌獅の声を聞き、ホッと安堵したのだ。

    『んで、何の用だ?』
    「いや、近くに友梨先輩はいるのか?」
    『……………。』

     黙り込む昌獅に涼太は怪訝な顔をした。

    「どうかしたのか?」
    『……そこに高田(たかだ)妹その一はいるのか?』
    「いないけど?」
    『……そうか、良かった…。』

     電話越しでも分かるほど、昌獅は本気でホッとしている。

    「何かやらかしたのか?」
    『……。』

     電話の向こうで昌獅がムッとした気配を感じたが、涼太は謝ろうとは思わなかった。

    『……やらかしたんじゃない…友梨が気絶したんだ。』
    「ふ〜ん……はあっ!」

     昌獅があまり真剣に言わないものだから、涼太は危うく流しかけるが、よくよく考えれば大問題だ。

    「何だって!」
    『……耳元で叫ぶな、馬鹿。』

     絶対に電話の向こうで昌獅が顔を顰めただろうが、涼太はそんな事を気にするつもりは一切なかった。

    「大丈夫なのか?」
    『…………多分な。』
    「多分ってお前……。」

     呆れる涼太に昌獅は溜息を一つ吐いた。

    『仕方ないだろう、急だったし。』
    「……。」
    『だから、友梨は出れないんだ。』
    「…そうか。」

     涼太は無理を言えないと思って、どうしようかと頭を悩ます。

    『どうして友梨何だ?』

     今更に思えるような質問を昌獅がしてきた。

    「こっちの方のアレが見つかったんだ。」
    『――っ!そうか……。』
    「それで、オレにはさっぱりな問題で、友梨先輩の知恵を借りたかったんだ。」
    『そうか…、一応俺が聞こうか?』
    「…そうだな、一人で頭を悩ませるよりましかもしれないしな。」
    『……。』

     涼太は自分が見ている画面の内容を読み、昌獅はこう言った――。

    あとがき:ふう、あと少しで4万人に達しますが、誰もリクエストがありません!!切実です…誰かリクエストしてください!!

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  • from: yumiさん

    2010年11月28日 15時53分19秒

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    「星色の王国」
    ・10・

    「ミナミ。」
    「ふえ?」
    「……。」

     リョウタは半眼で、目の前で果物を頬張るミナミを見て呆れた。

    「お前な……、どうして、いるんだよ?」
    「だって〜、家にいても暇なんだもの……。」
    「はあ…。」

     リョウタが彼女の言う家を思い浮かべ、本気であの城の警備はどうなっているのか疑問に思った。

    「お前な……ひ……良いとこの嬢ちゃんなんだから、もっとそれらしくしろよ。」
    「え〜、お姉様と同じ事言わないでよ〜。」

     リョウタは危うく「姫」と言いかけた事に冷や汗を覚えたのだが、幸いにも相手が鈍感なミナミな訳で全く彼女は気付かなかった。

    「本当にそれでよくやっていけるわ。」
    「ありがとう。」
    「……褒めてんじゃねぇ。」
    「そうなの?」

     首を傾げるミナミにリョウタは先程放った鷹がそろそろ城に着いた頃だと思った。
     彼は先程ミナミがお手洗いに行っている間に、こっそりと城に向かって鷹を放ち、その脚にミナミがここにいる事を暗号で知らせた。
     城の兵士か誰かが迎えに来るまでリョウタはミナミの面倒を見ようと思った、ただ、今日はかなり忙しく、彼女が帰った後は激務が待っているだろう。
     それを考えるとリョウタはこっそりとミナミを恨んだのだった。

    「な〜に?」
    「何でもねぇ。」

     強く言えるのだったら、当の昔に言っていただろう…。
     ミナミに惚れた時点で彼の負けが確定していた。そして、今度もまた鈍感な姫に流された自分に微かにリョウタは腹を立てていた。

    「お前はいいよな。」
    「ふえ?」
    「鈍感だから、何にも気付かない。」
    「なっ!あたし鈍感じゃないもん!」
    「どうだか。」

     リョウタは自分の髪を掻き乱し、盛大な溜息を一つ吐いた。

    「そんな事より、お前さ。」
    「そんな事って!リョウくんがふった話題じゃない!!」
    「まあ、そりゃそうだが…。」
    「ふんっ!」

     ミナミは子どものように頬を膨らませ、そっぽを向いたと思ったら頬いっぱいに果物を押し込み始めた。

    「……リスみてぇ……。」
    「ふぃふぉい!(酷い!)」
    「意味分かんないつーの。」

     ミナミは大急ぎで果物を咀嚼する。

    「リョウくん!」
    「あ〜?」
    「酷い!」
    「あっそ。」

     リョウタは興味をそがれたのか、思いっきりミナミを無視し始める。

    「リョウタ!」
    「やべ……。」

     遠くから、自分の父親の声がして、リョウタは顔を顰める。

    「遊んでないで、さっさと仕事を再開しろ!!」
    「……分かってるけどさ…。」

     リョウタだって今店が忙しい事を知っていたが、それでも、片思いの相手であり、この国の姫を放置してまで仕事をしていいものかと頭を悩ませた。

    「リョウくん、呼ばれてるよ?」

     リョウタは思わずミナミに向かって「お前が言うな!」と怒鳴りかけるが寸前の所で言葉を飲み込んだ。

    「リョウタ!これ以上休むと給金はないぞ!」
    「げっ……。」

     本気で父親が怒っている事に気付いたリョウタは顔を真っ青にさせた。

    「リョウくん?」

     何も分かっていないミナミは暢気に小首を傾げ、リョウタはムカつき、そして、彼にしては珍しい行動に出る。

    「来い!」
    「ふえ?」

     リョウタはミナミの手を引っ張りそして、自分の仕事部屋へと入っていく。

    「リョウタ…やっとって……。そいつは?」
    「オレの知り合い。」
    「……。」

     部屋にいたリョウタの父は何かに気付いたのか、ニヤリと笑った。

    「それはこれか?」
    「なっ!」
    「?」

     リョウタの父親が小指を立てたものだから、リョウタは顔を真っ赤に染め、そして、その隣ではミナミが首を傾げている。

    「どうでもいいだろ!」
    「成程な、とうとうおれらの子にも春が来たか!」
    「違う!!」
    「おい、母さん!今日は赤飯だ!!」
    「なんでそうなる〜〜〜〜〜〜っ!!」

     怒鳴るリョウタの横でミナミは「?」を大量に浮かべていた。

    「リョウくん、どういう意味なの?」

     リョウタの服の裾を引っ張るミナミにリョウタは脱力したようにこう言う。

    「お前の知る事じゃない。」
    「ふえ?」
    「………お前の迎えが来るまで、頼むから大人しくここに座っててくれ。」

     リョウタはミナミの腕を取り、この部屋の中で一番綺麗で高価な椅子にミナミを腰掛けさせた。

    「いいの?」
    「お前を一人で放っておく方が危険だ。」
    「リョウくん。」

     ミナミが感動したように言うのだが、リョウタの一言で全てが打ち壊しになる。

    「絶対、お前を放って置けば間違いなく、迷子になる、事件を引き寄せる、変な虫がつく、その他諸々の事が起こるからな。」
    「リョウくん、それってまるで、あたしが引き起こすような言い方じゃない。」
    「そうだろうが。」
    「違うもん!!」

     ミナミの怒声は店中に響き渡り、それから、リョウタは一ヶ月ほど見せの従業員に冷やかされたようだ。

    あとがき:何か今打っている話はどれも深刻な話しばっかりなので、本当に今回のこれはまだ和みます〜。ダークネスはリョウくんが大怪我、お嬢様はユウリとマサシの心に傷を負わせ、本当に、何をやっているんでしょうか……。

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    マナ

  • from: yumiさん

    2010年11月28日 15時46分50秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・33・

     涼太(りょうた)は傷の手当を大雑把に済ませ、そして、木に登り始めた。
     木は高く、かなり幅もある、そして、ご神木のように畏怖を覚えるような感じがした。
     涼太は心の中で謝りながらゆっくりと登る。

    「……本当に、すげぇや。」

     涼太は四分の一くらい登りきり、一旦休みを入れる。

    「…っ…。」

     腹から鈍い痛みを感じ、涼太は顔を顰めた。
     彼はワザと見ないが、傷口はまた開き、そして、微かにだが血がまた流れ始めていた。
     貧血気味なのか、耳鳴やだるさが涼太を襲ってきた。

    「……くそったれが…もし、ここになかったら、オレは死ぬぞ。」

     涼太は悪態を吐くが、それも無理はないだろう。
     上は五階建ての建物と同じ高さまである木なのだ、それに彼は起爆装置が無いか探すものだから体力も使うが、気力も使う。
     智里(ちさと)はそれを下で暢気に見学をしている。
     まだ、あれこれ野次が飛ばないだけマシであるが、それでも、涼太は物凄く嫌だった。

    「…………。」

     涼太は目を閉じた、真っ暗になった視界に落ち着きを覚える。
     耳に葉の擦れる音がする。
     手や背に感じる木のぬくもり。
     今ここに涼太一人しかいない、彼はそんな事を考えていると、一人の少女が脳裏に浮かぶ。

    (美波(みなみ)……。)

     美人というよりは可愛らしい分類で、性格はどこか抜けている少女……。
     初めて会った時から守りたいと思った、そして、今も――。心から守りたい、側にいたいと思っている。

    「……会いてぇ…。」

     声に出したら余計に恋しくなった……。
     美波を想う涼太の表情がいつもよりも大人びて見える。

    「…頑張ろう、早くあいつに会えるように。」

     決意に満ちた瞳と共に涼太の覇気が戻る。

    「絶対にオレはこんな事で負けはしない。」

     涼太はバランスよく立ち上がり、再び気に登り始める。
     しばらくして、彼が中ほどまで登った時、彼の目に微かにだが何かが反射したような光が届く。

    「何だ?」

     涼太は手を休め、しっかりと上を睨むように見た。

    「――っ!アレか。」

     涼太は口角を上げ、ニヤリと笑った。
     そう、彼が見つけたのは起爆装置だ。それはまだまだ遠くにあるが、それでも、見えていない時よりは何倍も心が落ち着いた。

    「もう一息だ。」

     涼太は自分に活を入れ、腹が痛むのを堪えながら登り詰めていく。
     そして、それにようやく辿り着いた。

    「これか……。」

     涼太は木に括りつけられているそれを慎重に外していった。

    「………。」

     思ったよりもきつく結ばれていたのでかなりの時間を有したが、それでも、彼は自分の膝の上にそれを置いた。

    「よしっ。」

     涼太はそう言うとタッチパネルに手を置き、そして、目を点にさせた。

    「………なんだこれ…。」

     彼がそういうのも無理はないだろう、何故なら画面にはこう書かれていたのだ。

    《さあ、正解はどれだ?
     怨 喜 怒 哀 楽》

    あとがき:やっと、二つ目、本当に時間がかかりすぎです…、このペースじゃ年が明けても十章止まりかもしれません、短くしたいのに…出来ない…なんでかしら〜?

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  • from: yumiさん

    2010年11月27日 11時14分10秒

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    「お嬢様の危険な日常・執事の憂鬱」
    ・17・

     今よりもずっと幼いユウリの今にも泣きそうな顔が浮かんで消えた。
     それは、一瞬だった……。

    「マサシ!」

     ユウリのその言葉に、マサシは己を取り戻した。
     敵の持っていた剣が己のわき腹を突き、一瞬意識が飛びかけたのだ。
     マサシは己を保ち、余裕のない剣で男を一人殺してしまった。

    「大丈夫!」

     ユウリは安全を確認して、マサシに駆け寄った。

    「大丈夫だ。」

     マサシは僅かに顔を顰め、そのまま歩き出そうとするが、ユウリに止められる。

    「ユウリ……。」

     微かに疲れが出ているのか、マサシの声には覇気がなかった。

    「少し黙って。」

     ユウリは手早く腰に巻きつけていた漆黒の布を解き、それをマサシの傷口に当てた。

    「お前……。」
    「怪我をさせたまま行かせる訳には行かないわ。」
    「だが……。」
    「黙りなさい、これは私の命令です。」

     命令など滅多意に言わないユウリに、マサシは自分がどんなけ彼女に心配を掛けたのか悟った。

    「悪い。」
    「そう思うのなら、もっと、自分を気にかけてよ。」

     マサシはその言葉に微かに口角を上げ、笑っていた。

    「何笑っているのよ。」
    「さあな。」

     マサシはそう言うと、ユウリの手が離れているのを確認して、また走り出した。
     ただ、剣を振るう思いが、先程と違っている事に気付き、ユウリは軽く目を見張った。

    「マサシ……。」

     先程は鬼神だった、だけど、今彼は人に…いつものマサシに戻った。

    「……。」

     ユウリは彼が人に戻り、ホッとすると同時に、彼が人に戻った理由を見て悲しげに顔を歪めた。

    「ごめんなさい。」

     ユウリは一人の死骸を見て、マサシを追うように走り出した。



     マサシは優しい…。
     だから、強く…弱い……。

     ユウリは優しすぎる…。
     だけど強い……、決して弱くない。

     マサシは心を殺すことがある。
     それを見ていて、私は苦しい……。

     ユウリはすぐに感情的になる。
     俺はそれを見て、昔は愚かだと思った、だけど、今は愛おしい。
     泣く顔、笑う顔、怒る顔…どれも、あいつらしい。
     だけど、一番見たくないのは…誰が死んで、そして、感情をワザと殺す所だ。
     それを始めてみたのは忘れたが…、それでも、何度も見てきた……。

     マサシは自分の怪我を隠す…。
     それは肉体的なものも……。
     精神的なものも…すべてだ……。

     ユウリは己の怪我も他人の怪我もすぐに顔を顰める。
     痛そうだといって、他人の怪我を……俺の穢れた傷口を触ろうとする……。
     なのに、自分の怪我は無頓着……。俺はそんな時いつも感情をむき出しにしてしまう。

     マサシは馬鹿だ……。
     すぐに、自分の胸の内に全てを隠そうとする。
     一人で抱え込めないものでさえ、抱え込んでしまう…。
     愛しているのに…。
     好きなのに……。
     なのに、貴方は…私にそれを背負わせてくれない。

     お前は俺に背負いすぎだと言う…。逆なのに……。
     背負い込んでいるのはお前だ…。
     俺はそれを背負い込まないように、ただ隠すのに…。
     分かってくれ、と何度その言葉を飲み込んできただろう。
     お前は一人で…抱え込んで…そして、必ず、救えなかったら涙を零す……。
     俺の前で泣くのなら、俺は何も言わない…。
     お前は一人で泣いて、一人で立ち上がろうとする。
     何の為に俺が側にいると思っているんだ…。
     俺は前しか見ていないのに……。

     すれ違う…。
     思いが……。
     信念が……。

     重ならない…。
     この胸の中の信念が。
     お前の信念と…。

     いつか、分かり合えるかなと、幼い時は思った。
     今は分かりあうように、努力しているのに、貴方が分からなくなる。
     ミナミたちと同じくらいは、まだ、笑ってられたのにね。

     お前は気付いているのだろうか、道が…何時の間に道が少しずれている事を…。
     また、お前と共に進めるのか…、それとも、このまま別れていくのか。
     お前は共に歩もうとするだろう…。
     だけど、俺はたまに怖くなるんだ…。
     お前を本当に幸せに出来るのか…。

     ねえ、気付いてよ。

     気付かないでくれ。

     私が側にいる事を――。

     俺が逃げている事を――。

    あとがき:最後の方は互いの気持ちを言わしています、切ないように頑張りましたが…う〜ん、シリアスになったのでしょうか?
    それにしても、誘拐編(?)は長いです…始めのうちは短編で頑張っていましたが…、なぜこんな風になったかは謎です…。次はどうなるでしょうか〜?

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    マナ

  • from: yumiさん

    2010年11月27日 11時07分42秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・32・

    「涼太(りょうた)は大丈夫だろうか?」
    「ふへ?」

     急にそんな事を言う勇真(ゆうま)に美波(みなみ)は可愛らしく首を傾げた。

    「どうしてですか?」
    「……。」

     勇真は智里(ちさと)を悪く言っていいものかと、一瞬躊躇した。

    「………いや、やっぱり何でもない。」

     智里の悪口を言うのはやっぱりどこかいけないと思った勇真は結局何も言えなかった。

    「そうですか?」
    「ああ。」
    「……。」

     美波は特に何も思っていないのか、そのまま歩みを進める。

    「それにしても、ありませんね。」
    「そうだね。」
    「もしかして、リョウくんの方にあるのかな?」
    「……そうかもしれないね。」

     勇真は複雑そうな顔で言った。
     向こうであれば、間違いなく涼太に被害があるだろうから、だから、向こうで見つからなければいいと、勇真は思っていた。

    「ねえ、美波ちゃん。」
    「はい?」
    「美波ちゃんは、涼太の事をどう思っているんだい?」
    「ふえ?」

     勇真の唐突な質問に美波は素っ頓狂な声を出した。

    「リョウくん…の事?」
    「うん。」
    「……。」

     美波は眉間に皺を寄せて、真剣に考える。

    「…リョウくんは――。」
    「……。」
    「弟。」
    「……。」

     勇真は思わず、涼太に同情した。

    「弟…?」
    「うん、だって、年下だもん!」
    「……。」

     勇真は涼太が美波の事を好きなのは知っている、だから、余計に涼太を不憫に思った。

    「…そうか…。」
    「でも、弟にしてはリョウくんってませてるのよね〜。」
    「……。」
    「でも、弟だから許してあげるの!」

     勇真はこんな質問をしなければよかったと後悔した、だが、一度口にした言葉は戻らない。

    「そうか……。」
    「うん、あたしがリョウくんを守ってあげるの!」

     嬉嬉として言う美波に勇真は遠い目をしていた。

    (ごめん、涼太、おれはこれ以上踏み込めそうにない…頑張ってくれ。)

     勇真は心の中で謝りながら、本当に美波と涼太がくっ付く事ができるのかと、心配になってきた。
     勇真としては、二人は付き合った方が良いと思った。涼太にしても美波にしても二人揃っている方がしっくりくる、それに二人の表情が生き生きとしたものになっているように思う。
     くっ付くといえば、昌獅(まさし)と友梨(ゆうり)もくっ付いて欲しいと勇真は切に思っていた。
     昌獅があそこまで他人を思いやる事も、守りたいと思うのも友梨が初めてだと思う、だから、彼女と幸せになってほしい。
     そして、友梨には自分とは違ってしっかりと彼女を想っている人とくっ付いて欲しいと思っているのだ。
     奈津美が幸せになれなかった分、昌獅や友梨、そして、涼太や美波、そして、智里たちには幸せになって欲しいと、勇真は思った。

    あとがき:はあ、本当に最近は涼太が不憫に思います…。
    最近思うのですが、始めのうちは友梨ちゃん、智里、美波には身近(?)なモデルがいたんですが、最近は完全に自分の中で動いてくれる、マイキャラになりました。まあ、モデルといっても性格と、名前をちょっともじった程度ですけどね……。

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  • from: yumiさん

    2010年11月25日 14時39分58秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・31・

     涼太(りょうた)は智里(ちさと)の場所を聞いた時から全力で走っていた、絶対に彼女ならカウントを始めると思っていたからだ。
     そして、その怖れは現実のものとなる……。
     涼太は自分の傷口が開く事を危惧していたが、それでも、彼女の怒りと比べるとそれはちっぽけのように感じた。

    「何であんな悪魔があいつの姉なんだよ……。」

     毒づく涼太は速度を上げた。
     智里の電話を切ったというのに、彼女の声が耳元でした気がしたのだ。

    「……耳に残るんなら、こんな悪魔の囁きじゃなくて、美波(みなみ)の方が断然良いじゃないかよ!」

     もし、ここに友梨(ゆうり)や昌獅(まさし)、勇真(ゆうま)がいれば絶対に涼太に同情の目が向いていただろう。
     不幸か幸いかそんな事はなかった。
     そうこうしている内にようやく涼太は山林の中の開けた地へと足を踏み入れた。

    「三十。」
    「………はあ、はあ…。」

     息を切らす涼太の腹から先程止まったはずの血が再び出ていた。

    「残念ね。」

     木に凭れかかっていた智里はまるでこの地に住まう精霊か何かのようにその場に凛として立つ。

    「もう少し遅かったら、大変な目に遭わせたのにね。」
    「……。」

     涼太は間に合った事に本気でホッとした。
     もし、智里がカウントを始めた頃に走っていたのなら、間違いなく涼太は間に合っていなかっただろう、だが、実際はそうならなかった、否そうならないように涼太は全力で走り抜いた。

    「ふ〜、せっかくあんな事や、こんな事を考えてあげたのに、残念ね。」

     悪寒が走り、涼太の背中から冷たい汗が流れた。

    「でも、それはまた今度でいいかしらね?お楽しみはとっておかないとね。」

     一体どんな「お楽しみ」なのかは涼太には想像出来なかったが、それでも自分にとっては決して愉快な事ではない事だけは分かっていた。

    「まあ、時間のロスを考えるとまた今度でしょうけどね。」

     クスクスと笑う智里は先程まではこの山林の効果からか精霊のように神秘的に見えたのだが、今は何処からどう見ても魔王にしか見えなかった。

    「さて、涼太くん。」
    「……。」
    「ボロボロね〜、一体何があったのやら。」

     肩を竦め、悪魔のように微笑む智里に涼太は「こいつは絶対ワザと知ってて言っている」と感じていた。

    「取り敢えず、腹の傷くらいは応急処置しときましょうか。」

     そう言うと智里は何処からか救急箱を取り出した。そして、メチャクチャ痛いと思われる消毒液を取り出す。

    「なっ!それくらい自分でやる!」

     堪ったものじゃない、というように涼太は智里の手から救急箱を取り上げた。

    「あら。」

     智里はやや残念そうな顔をする。

    「嘘っぽいからそんな顔すんな。」
    「ふふふ、分かる?」
    「……。」

     涼太は絶対に智里が自分に対して何か嫌がらせをするつもりだった事に気付き、げんなりした。

    「……本当に、もうオレ…ヤダ。」

     涼太は本気で折れそうになるが、ここで折れたらもう二度と立ち直れない自信があったので、何とか折れないように努めた。
     そして、現実逃避するように、涼太は自分で自分の怪我の手当を始めたのだった。

    あとがき:涼太が幸せになる時が来るのか…謎です…(合掌)。

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  • from: yumiさん

    2010年11月24日 16時16分47秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・30・

     涼太(りょうた)が一人猪と戦闘を繰り広げている時、智里(ちさと)は一人走っていた。

    「さて、確かこの辺りよね。」

     智里は涼太が勝手に死んでいてもどうでもよかったので、一人この場所に来たのだが、流石の智里もこの山林の中の一番高い木を見てうんざりした。

    「……………わたしとした事が…。」

     あまりにも高すぎる木に自分は登れない事を智里は悟った。

    「これはあの猿にでもやらせないと、無理のようね。」

     ふっと息を吐く智里は戻らないといけない、と思うのだが折角来た道を引き返すのもしゃくだった。

    「………ここは圏外かしら?」

     智里は携帯を取り出し、アンテナの数を見た。
     幸いにも一本だけ立っており、電話は出来そうだった。

    「まあ、戦闘中でもこっちに気を取られた向こうが悪いんだしね。」

     智里は向こうの様子などお構い無しに涼太に電話をした。
     一度目は留守番電話になり、二度目でようやく繋がった。

    『もしもし……。』

     警戒するような声音に智里は反射的に眉を寄せた。

    「あら、わたしが電話して警戒するの?」
    『……。』

     黙り込む涼太に智里は一瞬ムッとするが、時間の無駄を考え仕方なさそうに溜息を吐いて手短に用件を言う。

    「直ぐに来なさい。」
    『………。』

     あまりの手短さに涼太は電話の向こうで黙り込んだ。

    『……もっと、言いようがあるんじゃないか?』
    「あら、来たら教えてあげても構わないわ。」
    『高飛車。』

     涼太の一言に智里の眉がピクリと動く。

    「三十。」
    『……?』
    「わたしが三十数えきるまでにここに来なさい。」
    『はあ!』

     涼太が大声を出したものだから智里の耳はキーンとした。

    「煩い。」
    『何無茶な事を言ってやがるんだ!』

     涼太が憤慨するのも無理はないだろう、智里が何処にいるかも知らされてないし、彼女の事だから絶対に三十数えてつける場所じゃないだろう。

    「あら、無茶って分かるの?凄いわ。」

     全く感情の伴わない声に涼太は本気で切れそうになった。
     だが、ここで切れた所で相手は智里なので涼太が怒るだけ無駄な体力を使う事になる、それを分かっているのか、今度は怒鳴らず涼太は深呼吸をした。

    『……何処にいる。』

     一応怒鳴らなかったが、それでも涼太は感情を堪え切れなかったのか彼の声にしては低く、どこか殺気を孕んでいた。

    「貴方も見ていた場所。」
    『……………あの木か?』
    「そうよ。」

     智里はワザと遠まわしの表現をしたが、涼太は一応気付きそこを言うと智里はやや不満そうに言った。

    「貴方なら分からないと思ったのに。」
    『……。』

     涼太は自分が馬鹿にされた事に気付いていたが、これ以上自分が切れても良い事が無いと思い、口を噤む。

    「さっさと来なさい。」
    『……。』

     智里は命令口調でそう言うと、ニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。

    「カウントを始めるわ、1…2…。」
    『なっ!』

     智里は電話に向かってカウントを続けるが、向こうの方が電話を切ってしまった――、だが……。

    「……5…6…。」

     智里は電話が切れてもカウントを続けた……。彼女が三十を数え切る前に涼太は智里の前に現れる事が出来るのか…それは誰も知らない事だった。

    あとがき:さてさて、涼太の運命やいかに……。
    早いですね〜、もう十章が30…先はまだまだあるのに…絶対最長です。

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  • from: yumiさん

    2010年11月23日 11時05分40秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・29・

     涼太(りょうた)はいつまで経っても智里(ちさと)が来ない事に疑問を持ち始めていたが、それでも、目の前の敵――猪に神経を集中させていた。

    「……絶対に負けない。」

     涼太の脳裏に一瞬あの暗い牢が過った。
     あの時はあの【ルーラー】に負け、美波(みなみ)を一時的に失ってしまった、だけど、今回懸けているのは彼女の命ではなかったが、それでも、それと同等の意義を懸けていた。
     彼女を自分の命が果てるまで見守りつづ権利、本当なら一生添い遂げられるのなら、良かったのだが、残念ながら今の彼にはそんな権利を持っていない。
     何せ鈍感娘と魔王とのタッグなのだ。何とかしてもう一人の姉を見方に引き寄せたいのだが、今は無理だと涼太は分かっていた。
     何せ彼女に想いを寄せる相手がいるのだ、せめてそいつとくっ付いてからの方が、まだ勝算が高いだろう。

    「絶対に――。」

     涼太はナイフを構え、そして、襲いかかって来た猪に向かってそれを振り下ろした。
     猪の絶叫がこの場に響く。
     涼太のナイフは見事に猪の額を傷つけたのだが、それの代償として涼太の腹に血が滲んでいた。

    「くっ……。」

     涼太は顔を顰めるが、体勢を崩す事はなかった。
     もし、彼がここで崩れていたのなら、間違いなく涼太は負けが確定していただろう。
     猪は最後の力を振り絞って涼太に向かって突進してきた。
     涼太は痛みに耐えながら即座に避けた。

    「――っ!」

     その時、涼太は悶絶しそうなくらいの痛みを覚えたが、彼は気力でそれを乗り切った。
     そして、涼太をしとめそこねた猪は事切れた。

    「はあ…はあ……。」

     涼太は肩で息をしながらそのままズルズルと地面に座り込む。

    「やった……。」

     握り拳を作り、勝利の味を噛み締める涼太は不意に血塗れの手を見た。

    「………これ一体だけで、この様か……。」

     もし、昌獅(まさし)や勇真(ゆうま)なら間違いなく傷一つつかずに猪を簡単に潰すだろう。
     それを考えると涼太は顔を曇らせた。
     自分は自分、まだ発達段階だからと、彼が考えられれば良かったのだが、真面目な彼はそこまで考えがいたらなかった。

    「……もっと、強くなりたい……。」

     涼太はその場に倒れこむようにして地面に横になった。

    「……強くなって、美波を守りたい……。」

     無理だとは思わない…だけど、今すぐには難しいだろう。

    「…………牛乳でも飲むべきか?」

     本気でそのような事を考えている涼太は眉間に皺を寄せていた。
     因みに言っておくが涼太は牛乳が決して嫌いという訳ではない、だが、飲み物ではコーラや炭酸飲料の方が好きだし、普段からはコーヒーを飲んでいるから牛乳単体では飲んではいなかったりする。

    「……そうすれば、骨も丈夫になるだろうし……身長もな……。」

     涼太は自分の身長が美波より低い事を気にしていた。といっても彼の身長は美波とほとんど変わらない、ほんの数センチしか変わらないのだ。
     後、一・二年もすれば完全に美波の身長を追い越すだろうが、今の涼太にはそれがかなり不満だったりする。

    「絶対、昌獅や勇真並みにでかくなってやる!」

     涼太は決意をしながら、立ち上がった。

    「――っ!」

     腹の痛みが涼太に襲い掛かり、彼は傷口を押さえながら蹲った。

    あとがき:リョウくん!君はいつか背が延びると思うよ!
    でも、それは二年くらい先かも……うん、ガンバ!

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  • from: yumiさん

    2010年11月22日 09時15分00秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・28・

     友梨(ゆうり)が意識を失っているなどと知らない、智里(ちさと)たちはグループを二つに分けた。
     智里、涼太(りょうた)ペアが山林の中でも東の方を散策し、美波(みなみ)、勇真(ゆうま)ペアが山林の中央を目指した。最初、涼太は智里と一緒になる事を拒んだが、残念ながら智里に負けた。
     彼女はこう言ったのだ「あら、美波と一緒に出来ると思っているの?貴方の実力は勇真さんよりも低いのに。」と――。
     涼太は自分の実力で美波を守れなかった現実を知っているので、強くは言う事が出来ず、結局力のバランスを考え、こうなった。

    「何で、オレが……。」

     涼太はかなり大き目の木を目指し、地面を蹴った。一方、智里はその後をゆっくりとした足取りで進む。

    「昌獅…絶対苦労するよな、こんな義妹を持って……。」

     涼太は盛大に溜息を吐くが、美波とくっ付けば大魔王が自分の義姉になる事など考えていない、否、考えたくなかった。

    「……あ〜。」

     涼太は目の前に立ちはだかるモノを見て足を止める。

    「……ビンゴかよ。」

     涼太は智里の読みが当たった事をこの目で見てしまい、顔を顰めた。
     そう、智里は奥に入ってから、北の方に群を抜いて高い木を見つけたのだ、そして、あの変態の事だから、絶対に目立つ所に隠していると言い張ったのだ。

    「……ビンゴはいいが、何で…猪?」

     涼太の目の前にいるのは以上に大きく、そして、目が真っ赤の猪が一頭いた。

    「……。」

     涼太は別れる前に友梨から借りた切れ味の良く、彼女の持つ大きめのナイフを一本鞘から抜き出した。

    「……美波、たちの方じゃなくて、良かった。」

     涼太は口元に笑みを作るが、その表情は硬かった。
     彼にしたら戦闘になるのは今回が初めてだった、この前の蜘蛛を潰した時は智里が囮になり、そして、友梨が数を減らしていたから出来た芸当だが、今回は他の誰も頼る事ができない。

    「どうせ、あの魔王は助けてくれねぇからな。」

     そう、智里は涼太など助けないだろう、むしろ猪と相打ちになってくれた方が美波を狙う奴を減らすことができるので、一石二鳥と思っていそうだ。
     そんな事を考える涼太に向かって猪は突進してきた。

    「っ!」

     あまりの猪の速さに涼太の目が大きく見開かれた。

    「なんていう早さだっ!」

     通常の二倍近く早い速さで突進してきた猪を涼太は紙一重で避けた。

    「……。」

     涼太はナイフを構えじっと猪を睨んだ。

    「本当に友梨先輩はすげぇな。」

     女の身であの変態の繰り出す敵と戦ってきた友梨に涼太は尊敬の念を抱いた。

    「……オレも頑張らないとな。」

     涼太は地面を蹴り、そして、ナイフを閃かせ猪を狙う。
     だが、猪は自分の身の危険を感じたのかサッと避けた。
     涼太の顔に苦渋が広がる、だが、彼は諦めなかったまだ彼は怪我を負っていないし、時間ならまだあるからだ。

    「美波たちが気付く前につぶさねぇとな。」

     涼太は好戦的な目で猪を睨んだ。その時一人の少女があっさりと自分と猪の横を過ったなど知らなかっただろう。
     まぁ当然かもしれない、彼女は気配を消し、そして、木々を利用して隠れていたからだ。
     少女は冷酷な笑みを浮かべ、こう言って横を過った。

    「せいぜい相打ちにでもなってくたばりなさい。」

     もし、それをばっちり涼太が聞いていたのなら苦虫を噛み潰した顔を彼はしていただろう。
     幸いなのか、不幸なのか彼の耳にはその言葉は入っていなかった。

    あとがき:頑張れ!リョウくん!!
    貴方の犠牲は決して無駄にはしない!!(ってまだ倒れてないよな〜……。)
    そういえば、今日はいい夫婦の日(11月22日)ですよね〜、いい夫婦…、このサイト(?)にはまだ夫婦と呼べる関係の人はいないな…、ちょっと寂しいです、でも、来年は!!(出来るかな〜?)

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