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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2011年01月29日 11時27分57秒

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    5万人突破記念


    遅くなりましたが、マナさんへ
    般若の智里ちゃんです
    まだまだリクエスト募集中です!

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    マナ

  • from: yumiさん

    2011年01月29日 11時13分11秒

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    「お嬢様の危険な日常・執事の憂鬱」
    ・26・

     どのくらい経ったのだろうか、ユウリは顔をやっと上げた。

    「マサシ。」
    「……。」
    「帰ろうか?」
    「いいのか?」
    「うん、帰ってからでも貴方を叱れる、これ以上ここにいた方が私の頭がどうかなりそうよ。」
    「そうか。」

     マサシはユウリの手を取ろうとして、視界に入ったその人物を見て思案した。

    「マサシ?」
    「ん、ああ、こいつどうする?」

     ユウリはマサシが顎で指す人物を見て苦い表情を浮かべた。

    「ああ、その人ね……。」
    「どうしたものか……。」
    「う〜……あっ!」

     眉間に皺を寄せ、考えていたユウリは妙案を思いついたのか、目を輝かせた。
     一方、それを見たマサシは彼女がロクじゃない思い付きをしたのだと敏感に感じ取り、げんなりとした。

    「何よ、その顔は。」
    「お前、何くだらない事を思いついたんだよ?」
    「くだらないって何よ!」
    「……。」
    「もういいわ、マサシに頼もうと思った私が馬鹿だった。」

     ユウリは嘆息して、マサシに背を向ける。

    「もう、貴方には頼らない。」
    「……おい。」

     マサシは自分から去っていこうとするユウリの腕を掴んだ。

    「何よ、放して。」
    「……何をしでかす気だ?」
    「…………さあね。」
    「惚けるな。」

     静かに言うマサシにユウリは肩を竦めた。

    「分かったわよ。」
    「……。」
    「チサトのお土産。」
    「……………はあ?」

     マサシは眉間に皺を寄せ、怪訝な表情を浮かべた。

    「どうせ、自白なんかしないと思うけど、チサトのモルモット…じゃない趣味のお手伝いでもしてもらおうかと思って。」
    「……。」
    「マサシ?」

     ユウリは心配そうにマサシを見た。

    「……お前はな……。」

     溜息を共にそんな言葉がマサシの口から漏れた。

    「そんなでかぶつ、お前の妹が欲しがると思うのか?」
    「ええ、欲しがるわよ。」

     あっけらかんと言い切るユウリにマサシはあんぐりと口を大きく開けた。

    「……嘘…だろ?」
    「嘘じゃないわよ〜。」
    「……マジ?」
    「大マジ。」
    「……。」

     マサシは頼むから嘘だろ言ってくれと思うのだが、ユウリは肯定するのだ。

    「何か色んな被験者が欲しいらしいわ。」
    「……。」
    「体格とか年齢とかいろんな問題があって、それらに合う人って中々いないとチサトぼやいていたのよ。」
    「……。」
    「だから、今回のこの男ももしかしたら使えるかもしれないしね。」

     ふふふ、と笑うユウリにマサシはとうとう彼女にチサトの毒に侵されてしまったのかと肩を落とした。

    「それじゃ、マサシ。」
    「んあ?」
    「この人を運んで?」
    「………………はあ!?」

     叫ぶマサシにユウリはニッコリと微笑んだ。

    「運びなさい。」
    「何で…俺が……。」
    「マサシ??」
    「……。」

     マサシは嫌だと思った、だけど、今のユウリには「否」という答えた用意されていなかった。

    「……マサシ?」
    「分かったよ……。」
    「そう、良かったわ。」

     マサシは男をまるで荷物のように肩に担いだ。

    「凄いわね〜。」
    「なにがだよ……。」
    「だって、体格でいうとマサシより、その男の方がごついじゃない。」
    「……まあな。」
    「だから、持ち上げれるとは思っても見なかった。」
    「……。」

     マサシは着やせするタイプで、服を着ていたら華奢だと思われる事が度々ある。実際は筋肉がかなりついており、それに毎日トレーニングを欠かさず行っているので、彼は並みの人よりは力が強いだろう。

    「まあいい、さっさと行こう。」
    「そうね、ミナミたちが待っているしね。」
    「ん。」

     マサシは荷物など持っていないような軽い足取りで進んでいった。
     こうして、誘拐事件は解決した、だが、最後にまだユウリたちには締めが待っていたのだ……。



    「お姉様?」
    「ち、チサト?」

     家に帰ると真っ黒な空気を纏うチサトが待っていた。

    「ふふふ、何怪我をして帰ってきたのですか?」
    「こ、これは……。」
    「問答無用!お姉様、ミナミ、マサシ、リョウタの四名は謹慎です!」
    「ち、チサト!?」

     そう、チサトという雷が落ち、そして、ユウリたちは一週間の謹慎が決まったのだった。

    あとがき:誘拐編終わりました…長かった…いや、ダークネスよりは短いけれど…、次は回想編になります。ぜひ続きを知りたい方は拍手を下さい。

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    マナ

  • from: yumiさん

    2011年01月29日 11時07分54秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・69・

    「ここか……。」

     昌獅(まさし)はバイクを止め、睨み付けるように消防署を睨みつけた。

    「友梨(ゆうり)………。」

     昌獅は最愛の女性を思い浮かべ、自分が彼女を救わないで誰が助けるんだ、と己を叱咤する。
     昌獅は嫌な予感を覚えつつも、何の躊躇もなく建物の中に入って行った。

    「……。」

     中に入ってみてもあまり変わった所が見当たらなかった。
     昌獅はその事を怪訝に思いながらも、ただ自分の勘を信じ真直ぐに進んでいく。
     だが、彼の足取りは急に止まった。
     なぜなら急に何かの爆ぜたような音がした、いや、爆ぜたなんて可愛らしい音ではなくもっと激しく嫌な音がした。

    「……くそっ。」

     毒づく昌獅は心の中で「あいつが待っているのに」と思うが、相手はそんな彼の事など考えていないかのように次々に問題を引き起こそうとする。
     再び、昌獅が足を進めようとした時、彼は反射的に後ろに飛んだ。

    「――っ!」

     唐突の事だったので着地の時バランスを昌獅は崩しかけたが、それでも、何とか耐えた。

    「何だ!」

     目の前に立つのはいかにもロボットという形をしたそれだった。

    「……なんで次から次へと問題を引き起こすんだよ。」

     怒りの交じった口調にロボットは容赦なく彼に襲い掛かった。

    「くそっ!」

     昌獅は何とか体勢を整えなおすと武器を構えた。

    「……。」

     真剣な瞳がロボットを射るが、人間ならば一部の人間を除いて必ずといって言っていいほど怯むほどの威力だが、無機質のそいつは怯む事はなかった。

    「……。」

     昌獅は、攻撃は最大の防御というかのように一気に攻めの態勢に入る。
     その時、彼の鼻に嫌な臭いがした。
     きな臭いそれは、とても嫌なもので、そして、その奥に自分の探すものがある気がして、余計にこの対峙するロボットを潰した方がいいと思った。

    「その為には……。」

     昌獅は後ろに下がり、ロボットの距離を取る。

    「……。」

     神経をすべて切っ先に集め、ロボットの急所を探る。

    「――!」

     昌獅はその瞬間風のように駆けた。
     そして、瞬く間にロボットの核となる機械部分を見事に貫いた。

    「……。」

     ロボットは呆気なく崩れ落ちた。

    「……悪いな、俺には守る奴がいるんだ。」

     いつもの昌獅ならばもっと敵の急所を探るのに時間を掛けてしまっていただろうが、今回はそこまで時間を掛けなかった。
     今回は不思議なほど意識がクリアで一瞬にしてその急所を探る事が出来た。
     これも今までの経験なのか、それとも守るべき人の為なのかは昌獅自身分からなかったが、後者ならば昌獅は悔やんだだろう。
     大切な人の危機によってこのように力を発揮していたんじゃ、何時まで経っても大切な存在――友梨を守る事が出来ないだろう。
     昌獅はロボットの成れの果てを一瞥したと思ったら、何事もなかったかのように走り出した。

    (今は…あいつを解放するための一つを解き放つ!)

     昌獅の目は真剣で揺るぎない光が宿っていた。

    あとがき:久し振りです…。就職活動も中々進みませんし、小説も中々打てないし、テストは近いし…、もう闇の中をひたすら歩いているような気がします…、いや…立ち止まっているような……。
    明日の王国パロは明日に載せれるか自信がありません……。

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  • from: yumiさん

    2011年01月23日 13時06分20秒

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    「星色の王国」
    ・18・

    「ご苦労様、マサシ将軍。」

     冷たい声音が頭上から聞こえ、マサシは首を垂れる。

    「こんな鄙びた国までよくぞ、おいでくださいました。」
    「ご歓迎していただき、心より喜びもうしあげます。」

     凛とした声にチサトは口元に笑みを浮かべた。

    「女の身で国を統べるもの同士、堅苦しい言葉は止めにしませんか。」
    「ええ。」

     フローリゼルはニッコリと微笑むそれは春を思わせる笑みだが、チサトは冬を思わせるような冷たい笑みだった。

    「さて、わたしの名前はチサト、この国の第二王女であり、今この国を統べる国王代理です。」

     チサトは上に立つ者の威厳を持っており、フローリゼルの国の騎士たちはこんな幼い姫がと驚きを隠せなかった。

    「わたくしはフローリゼル、アルテッド国の姫です。」
    「そして、後ろに控えるのは貴方の国の騎士、カイザー、ルシス、ジャック、リディアナですね。」

     鋭い視線が三人の男性と、一人の少女を射る。

    「……………ふぅ。」

     緊迫した空気だったが、唐突にそれは消された。

    「チサト、すごむのは止めなさい。」

     凛とした聞き覚えのある声に、アルテッド国の者たちは戸惑いを隠せなかった。

    「ゆ、ユウリ?」
    「……。」

     ユウリは先程の騎士の服装ではなく、女性らしいドレスを纏っていた。

    「ごめんなさい、申し遅れました。」

     ユウリは優雅にドレスを掴み、お辞儀をする。

    「レナーレ国、第一王女、ユウリと申します。」
    「えっ!」
    「――っ!」
    「嘘っ!」
    「「「……。」」」
    「マジかよ……。」

     あまりの驚きようにユウリはそこまで意外だったのかと、苦笑を漏らした。

    「第一王女といってもただの置物ですけどね、実際は国を守る騎士になっていますから。」
    「そうなの?」
    「ええ、自分で決めた事なので。」
    「……。」

     フローリゼルは目に見えて落ち着いてきた、そして、穏やかな笑みを浮かべた。

    「それならば、余計に敬語はいらないわ、ユウリ。」
    「……。」

     ユウリは苦笑を浮かべるが、自分が王女だと知られた今ではそれでも構わないのかもしれないと思った。

    「分かった、フローリゼルには負けるわ。」

     小さく肩を竦めるユウリにフローリゼルはクスクスと笑った。

    「ふふふ、嬉しいわ。」
    「そんな大層な人物でもないけど?」
    「あら、わたくしと対等に接してくれる方は貴重よ?」
    「……まあ、そうね。」

     ユウリも経験があるのか、苦笑を漏らす。
     彼女自身も王女という立場の所為で、騎士となった当初は周囲の者に遠巻きにされていた、今でこそ彼女の実力を認め、多くの人が彼女についてくるが、それでも、王女という壁を壊したのはマサシだけだった。
     ただ、彼もユウリを王女としてみる、それだけは、他の人たちと変わらない点であった。

    「お姉様……。」

     地獄の底から響いてくるような声音にユウリの肩が跳ねた。

    「ち、チサト?」
    「私語は止めてくださいますか?」
    「……。」
    「ここは公の場、お姉様が勝手にしてはいけないことくらい分からないの?それに……ミナミっ!」

     ずっと壁の方にいたミナミは唐突に怒鳴られ小動物のように体を震わせた。

    「貴女いつまでそのような格好をしているの!」
    「だ…だって……。」

     ミナミが着ているのはいまだ一般人の格好であった。だから、チサトが怒るのは無理ないのだが、般若のような顔で怒られるミナミは可哀想だろう。

    「だってじゃないわ。」
    「…ううう……。」

     今にも泣き出しそうなミナミにチサトは更に畳み掛ける。

    「貴女には王女であるという自覚はない訳?そんなんだから、いつまで経っても馬鹿なままなのよっ!」
    「うわあああああん……。」

     とうとう泣き出してしまったミナミにユウリは頭痛を覚えたのか頭を抱えている。

    「ふんっ!」

     鼻を鳴らすチサトに一人の者が笑った。

    「……ルシ兄。」

     唐突に笑い出したルシスにジャックはギョッとなる。

    「ふははは……。」
    「……うげぇ…壊れたか?」
    「誰が壊れたんですか?」

     冷たい目はチサトと同じかそれ以上の威力を持っている。

    「貴女は素直じゃありませんね。」
    「下々の者が何を言うのから?」
    「……軽んじられたくないから、そのような言い方をするのでしょう?」
    「何がかしら?」

     チサトとルシスの冷たい目のにらみ合いが始まり、ユウリの胃がきりきりと痛み始めた。

    「ううう…痛い……。」
    「大丈夫ですか?」
    「う…うん、ごめんね。妹が貴女の騎士にちょっかいを出して。」
    「いえ、こちらこそ、ごめんなさい。」

     フローリゼルとユウリは互いに隣に立ち、二人の様子を見守る。

    「……止めなくてもいいのか?」
    「ああ、大丈夫だろう。」
    「……。」
    「そっちは大丈夫なのか?姫なのに構わないのか?」
    「俺が止められるんなら、始めから止めているさ。」
    「そうか……。」

     マサシとカイザーの会話はかなり落ち着いているようだったが、チサトとルシスの戦いは激しさを増していく。
     しかし、それを止められるような勇者はこの場にはいない。
     二人が鎮火するまで、ユウリたちは待つ事しか出来なかった。

    あとがき:ああ、なんとも言えない冷戦が起こってしまったようです。あの二人が揃えば、どうなるのかな〜、と思っていた自分が懐かしい…。まさか、ここまで、周囲の人間を困らせるとは…想定外です。

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    マナ

  • from: yumiさん

    2011年01月23日 13時01分50秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・68・

    「昌獅(まさし)!」

     友梨(ゆうり)が叫ぶと昌獅は淡く微笑んだ。

    『限界なんだ。』
    「昌獅!」
    『なあ、友梨、俺はお前が好きだ。』
    「昌獅……。」

     本当の別れの言葉のようで友梨は切なくなった。

    『俺は自分の馬鹿で傷付き、そして、そこから闇を孕んだ。』
    「……。」
    『俺が誘拐され、家族がぎこちなくなり、姉さんとも距離を置くようになった。そこから一気に俺は変わったんだ。』
    「……。」
    『俺はがむしゃらに力をつけ、それで、自分さえも見えなくなった。』

     昌獅はどこか吹っ切れたかのように言葉を紡ぐ。

    『そんな俺をお前は救ってくれる。』
    「昌獅…私は……。」

     友梨が何か言おうとするが、昌獅は静かに首を振った。

    『言うな……。』
     友梨が何を言おうとしたのかが分かった昌獅は穏やかに笑う。
    『俺は幸せだ。』
    「昌獅……。」
    『なあ、友梨最後に一つだけいいか?』
    「……何?」

     昌獅は友梨が何をしても許してくれる事を声から感じ取り、嬉しそうに笑った。

    『キスしてもいいか?』
    「えっ?」

     友梨が許可する前に、昌獅はそっと友梨の唇に掠める口付けをした。

    「ま…さし……。」
    『愛してる、友梨。』

     昌獅の姿がもうほとんど消えかけている。

    『お前だけを愛している。だから、待っててくれ。』
    「昌獅…。」
    『お前を救い出すのは俺だけだ。だから、お前は待っていてくれ、辛くとも待っててくれれば俺は…必ず。』
    「……。」

     友梨は何か言おうとしたが、たとえこの口から出ても恨みの言葉のような気がして、それが嫌だった。
     変わりに友梨は泣き顔で笑った。

    『――っ!』

     昌獅は静かに息を呑み、そして、友梨と同じ様に泣き笑いを浮かべる。

    『友梨、現実で会おうな。』
    「うん……、待っているよ。」

     友梨は昌獅に手を伸ばす。

    『お前を助け出す。』
    「うん、うん……。」

     昌獅も友梨に触れられないと知りながらも手を伸ばし、そして、二人は微かにだが互いの体温を感じ取った。

    『俺の友梨、頼むから無理はするなよ。』
    「……馬鹿、昌獅。」
    『………軽口が言えるんなら大丈夫だな。』

     昌獅はそう言うと消えた、それと同時に友梨の視界に変化があった。

    「……。」

     友梨の目の前には爆弾があり、時間は二時間減っていた。

    「……待つよ、昌獅。」

     友梨は微笑みを浮かべ、そして、凛とした表情で爆弾を睨みつけた。

    「貴方は私を救ってくれる。」

     だから、待つよ、と友梨は心でそっと呟いた。

    あとがき:ああ、夢は終わりました、これからは現実編ですね…長い。
    そういえば、昨日は見ていなくって知りませんでしたが、5万人達成していました。記念作は落ち着いたら載せたいです。

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  • from: yumiさん

    2011年01月21日 17時48分38秒

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    「お嬢様の危険な日常・執事の憂鬱」
    ・25・

     マサシは剣を薙ぐように振り払う、だが、男はそれをいとも簡単に避けた。

    「……。」

     マサシは避けられたにも拘らず顔色一つ変えず、そのまま次の攻撃を繰り出す。
     男はマサシの繰り出す鋭い攻撃に舌を巻くが、それでも、男の顔にはまだまだ余裕が見られた。
     だが、男の余裕は長い事は持たなかった。
     マサシの剣が男の肩をかすった、かすっただけなら良かったが、男はマサシの続いての攻撃を避ける事が出来なかった。
     至近距離だったから避ける事もできず、そして、男はいつの間にか壁に追い遣られていたので、後ろにも避ける事が出来なかった。

    「覚悟しろっ!」

     マサシは冷め切った目で、そのまま剣を振り下ろそうとした――。

    「止めなさい!マサシ!」

     鋭い声が飛び、マサシの動作が止まる。

    「ゆ…う…り……?」

     マサシの瞳に理性という名の光が宿る。

    「そこの者もその剣を捨てなさい。」

     ユウリは怪我など感じさせない姿勢で真直ぐに立ち、その目には次期当主としての威厳があった。
     男は舌打ちをして、剣を捨てた。マサシとの力量が分かったからだ。

    「……マサシ。」

     いつまでも剣を鞘に収めないマサシにユウリの鋭い視線が彼を貫く。

    「……………大丈…夫…なの…か?」
    「……。」

     ようやく声を発したマサシは情けない程、声が震えていた。

    「ゆう…り…。」

     ユウリはこの時初めてマサシを冷たい目で睨んだ。

    「黙りなさいマサシ!」
    「――っ!」
    「貴方は執事失格ね、私との約束を破ろうとするなんて。」
    「………。」

     まだ、二人が出会ったばかりの頃、マサシは人を傷つける事に躊躇をしなかった、そして、殺す事だってあったのだ。
     だから、ユウリは彼と一つ約束をした。

    『人を殺さない事。』

     勿論、どうしようもない事だってあった、今回だってミナミたちの所に到達する為に何人もの命が犠牲になった。
     だけど、それ以外は人を殺さなかった、そして、マサシは本気を出す事がなかった。
     なのに、マサシは今回人を殺めようとしたのだ、ユウリの誓いを破ってまで……。

    「ユウリ……。」

     マサシはユウリにかける言葉を捜すが、残念ながらそれは見つからなかった。

    「リョウタくん、貴方はミナミを連れて屋敷に戻りなさい。」
    「ですが……。」

     このまま二人を置いて行っていいものかと、リョウタは一瞬悩んだが、ユウリの表情を見て、自分は行かないといけないと思った。
     マサシは彼女から離れているから分からないだろうが、彼女の眼には殺気にも似たものを宿していた。

    「行けません。」

     キッパリと言い切るリョウタにユウリは一瞬表情を和らげた。

    「大丈夫です、私は冷静よ。」
    「……。」

     リョウタはユウリとマサシを交互に見詰め、嘆息した。

    「分かりました、ですが……少し離れるだけです。」
    「……分かったわ、それで構わない。」

     リョウタが譲歩し、ユウリもその条件を飲んだ。
     そして、リョウタは速やかにミナミの手を引き、その場を立去り、残されたのは事情の分からない男とユウリ、マサシだった。

    「マサシ。」
    「……。」

     マサシはユウリと顔を合わせる事が出来なかった。

    「…………約束。」
    「……。」
    「破ろうとしたわね。」
    「……。」
    「言う事は何もないわけ?」

     ユウリは腕を組みマサシを睨みつける。

    「貴方はいつもそう……私気持ちなんて分かってくれない、ううん、分かろうとしてくれない。」
    「……。」
    「貴方ばかりが思っているんじゃないのよ、私は貴方が――。」

     感情的に怒鳴ろうとした瞬間、黙り込んでいたマサシが片手を上げた。

    「何?」
    「少し待ってくれ。」

     マサシはそう言うと男の首筋に手刀を入れた。

    「…これで、話を聞かれる心配はないな。」
    「……。」

     ユウリは怒りの所為で回りの配慮まで意識を向けられなかった自分に腹を立てた。

    「ユウリ。」
    「何かしら?」
    「悪い。」
    「それは、何に対して謝っているの?」

     ユウリは顔を上げ、マサシを睨んだ。

    「お前の約束を破りかけた事、お前の気持ちを考慮せず、俺の気持ちを優先させ、心配をかけさせた事だ。」
    「謝るくらいなら、もう二度としないで。」
    「……悪い、約束できない。」
    「何で?」
    「俺はお前の事に関してだけは、視野が極端に狭くなると思う。」
    「……。」
    「だから、俺はお前を傷つけるものは許せない…、それで、そいつを殺しても俺は後悔しないと思う。」
    「本当に?」
    「あっ?」
    「本当に、後悔しないの?」

     ユウリは自分の胸に手を当て、涙が零れそうな瞳をマサシに向けた。

    「……しないと思うが…、もしかしら、何年か何十年か経って、古傷が痛むように胸が痛むかもしれないな。」
    「……。」

     ユウリはこの時悲しげに顔を俯いた事にマサシは気付いていたがあえて気付いていない振りをしたのだった。

    あとがき:はぁ、何とか人を殺す前で踏みとどまりました…。
    本来なら土曜日に載せるのですが、明日がどうなるのか分からないので今日載せておきます。

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    マナ

  • from: yumiさん

    2011年01月21日 17時43分37秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・67・

    「止めてよ…もう……。」

     友梨(ゆうり)は子どものように泣きじゃくる。

    「昌獅(まさし)…………。」

     友梨は少しでも昌獅の盾になればと、男と昌獅の間に入ろうとするが、残念ながら男の攻撃は彼女の体を通り抜ける。

    「どうして……よ……。」

     痛みがくれば、友梨は自分を責めなかっただろう。
     だけど、実際は彼女には痛みや殴られたような感覚がないのだ。

    「どうしてよぉぉぉぉぉっ!」

     友梨は吼えるように叫び、そして、光景が一気に変わった。
     気付いたら、友梨は立っていた。
     昌獅の姿や男の姿が見当たらない。

    「どこ……?」

     友梨は零れた涙を拭おうともせず、周りを見渡す。

    「……………。」

     薄暗い室内だと言う事が分かるが、それ以外は分からない。

    「……嘘っ!」

     唐突に辺りが明るくなった、それは雲に隠れていた月が姿を現したからで、月明かりは彼女に残酷な光景を見せた。
     友梨はその光景に吐き気を覚えた。
     昌獅がそこにいた、ただ血塗れの姿でそこにいた。

    「嘘だ…嘘だ…っ!」

     ガタガタと友梨は震える。
     血は止まっていないのか、昌獅を中心にして血溜まりを作っていく。

    「ヤダ…ヤダよ……。」

     友梨は狂ったかのように昌獅に近付き、そっと体を起そうとするが、その手は昌獅をすり抜ける。

    「もう嫌っ!」

     これ以上は耐え切れなかった、だから、友梨は声を張り上げた。

    「いやあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
    『友梨……。』

     声が友梨の耳に入る。

    『心を壊すな。』
    「昌獅?」
    『……ああ、俺だ。』

     うつ伏していた昌獅が体を起した。

    「昌獅……。」
    『悪い、直接俺を斬りつけられているとか場面は見せたくなかったが、うまくコントロールできなくって、こんな場面を見せてしまった。』
    「……ねぇ。」

     友梨が声をかけると昌獅は痛みなど感じていないのか、血塗れの顔で友梨を見た。

    「これは現実にあった事?」
    『ああ、俺はあの後斬りつけられて、助けが来るまでここで倒れていたんだ。』
    「……。」
    『自業自得だよな。』

     自嘲する昌獅に友梨はこれまでの怒りを彼にぶつけた。

    「馬鹿!」
    『……。』

     唐突に怒鳴った友梨に昌獅は目を見張った。

    「馬鹿……誰だって逃げたいと思うし、悪いのは昌獅を誘拐した人でしょうが……。」
    『ああ…泣くなよ。』

     涙を零す友梨に昌獅は少し慣れたのか、苦笑する。

    『……なあ、友梨。』
    「何。」
    『………ありがとうな。』

     唐突に礼を言われ友梨はキョトンとなる。

    「何?突然……。」
    『そろそろ、限界だからな。』

     昌獅がそう言った瞬間、彼の体から光が零れ、肩の部分が消え始めた。

    あとがき:さてさて、あと少しで過去の夢は終わりますが、まだまだ十章は長いです。
    愚痴ですが、最近、就職活動とかで頭を悩ませています。母からは就職できないで家にいる事ができるの?などと聞いてきます…。正直そんな事を言われた日はかなり落ち込みます。
    けれど、母が心配する気持ちも分かるのですが…どうしたら、大人になりきれるのでしょうね……。

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  • from: yumiさん

    2011年01月20日 16時42分06秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・66・

    『なあ、友梨(ゆうり)。』
    「何?」

     真剣な声音の昌獅(まさし)に友梨は暢気な返事をした。

    『悪いけど、ここから、また俺の知っている過去を動かす。』
    「えっ?」
    『……お前には包み隠さず見ていて欲しいんだ。』

     立ち上がる昌獅の目は彼女の知る昌獅の目ではなく、幼い昌獅の瞳だった。

    「昌獅……。」

     友梨は胸を押さえ、必死で彼を止めようとする自分と戦った。

    『……父さんたちに教わった武術で何とかならないかな……。』

     昌獅は周りを見渡し木刀代わりになる何かを探した。

    「昌獅……。」

     友梨は自分を掻き抱くように自分に腕を回した。

    「…………貴方の気持ちは受け止めるわ。」

     凛とした瞳は直向に昌獅に向けられる。

    『……。』

     昌獅は近くにあった鉄パイプを掴み、木刀のように構えた。

    『よし…。』
    「……昌獅。」

     気合十分の昌獅に友梨は心配そうな表情で彼を見守る。
     昌獅は唯一の出入り口に向かって慎重に歩みを寄せる。そして、彼にしたら運が悪かった。
     丁度飯の時間だったのか一人の男が、昌獅が開けようとした扉を開けてしまい、昌獅は反射的に凍りついた。

    『お前っ!』
    『――っ!』

     昌獅は当て身でも喰らわせようとするが、男の方が早く反応した。

    『しまっ!』

     男は昌獅を振り払うように手を動かし、昌獅は受身を取るが、それでも、吹き飛ばされガラクタの山に突っ込んだ。
     ここまでなら、ただ単に昌獅の運が少し悪いだけですんだだろうが、彼の運の悪さはここで終わらなかった。

    『このガキ、オレらの前から逃げられると思ったのか?』

     男はにたにたと笑い、友梨はゾッとした。

    『………。』

     男を睨みつける昌獅は唇を噛んだのか口の端から血が滲んでいた。

    『ほお、睨むか?』
    『……。』

     不服な昌獅の態度に友梨はやはり彼は彼なのだと思いながらも、今はその態度が裏目に出ないようにと願うが、その願いは裏切られる。

    『躾のなってないガキだ。』
    『――っ!』

     男は無防備な昌獅の腹に蹴りを入れる。

    「止めて!」

     反射的に友梨が飛び出すが、男の体をすり抜けるだけで、男を止める事が出来ない。

    『――っ!くっ!くぁっ……。』

     昌獅のうめく声が友梨の耳に入る。

    「やめ…て…止めてぇぇぇぇぇ――――――――!」

     友梨は涙を流しながら必死で懇願する、だが、ここは過去であり、幻である。だから、彼女の思い通りにならなかった。

    「昌獅!」

     友梨は男の攻撃に必死で堪える昌獅を見ながら、涙を流し続けたのだった。

    『………っぁ…。』

     昌獅の体はもう持たなかったのか、彼の意識は闇に溺れたが、男は昌獅が気絶した事にも気づかず、攻撃を続けたのだった。

    あとがき:ふう、今日も載せれましたが、当分の間どうなるか分かりません、5万人記念ももしかしたら遅れるかもしれません…。

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  • from: yumiさん

    2011年01月19日 13時19分57秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・65・

     昌獅(まさし)は友梨(ゆうり)を見ずに淡々と話す。

    『俺は確かに姉さんと帰ってた時に掴まって、そんで、ここに連れてこられた。』
    「……。」
    『そして、目が覚めた俺は無謀にも逃げ出そうと考えたんだ。』
    「……。」
    『馬鹿だよな、相手は俺よりもずっと強くて、それで、武器を持っていたんだからな。』
    「馬鹿じゃないよ。」
    『いいや、馬鹿さ。』

     昌獅は嘲笑を口元に浮かべ、そして、苦々しいものを吐き出すように言葉を口にする。

    『俺は習っている武術で勝てると思い込んでいたからな。』
    「…それは…。」
    『大人にだって負けないそんな風に考えていた、だけど、それは間違いだ。俺の習った武術は人の命を奪ったりしない。』
    「……。」
    『だけど、あいつらは簡単に人の命を奪う事が出来るんだ。』

     吐き出す言葉は本当に苦しそうで、友梨は思わず彼に抱きついた。

    『ゆう…り……。』
    「ごめんなさい……。」
    『お前の所為じゃない、俺の弱さの所為だ……。』

     昌獅はそっと友梨の手に自分の手を重ねる振りをした。
     二人は触れ合うことが出来ないのだ、だけど、通り抜けるギリギリの範囲で友梨たちは互いの魂に触れ合う。

    『俺がお前にちゃんと話せる強さを持っていたら、こんな目に遭わなかったのにね。』
    「昌獅……。」
    『俺はお前が羨ましい。』

     何を言っているのかと、友梨は目を見張った。

    『お前の強さ、優しさ、どれも俺が持ち合わせていないもので、眩しくて、だけど、遠ざけたくもあった……、いつからだろうな……。』

     昌獅は口元に嘲笑を浮かべる。

    『お前が欲しくなった。』
    「……。」
    『人は自分にないモノを相手に求めるというが、その通りだな。』
    「昌獅……。」
    『俺はおれ自身で持っていないものを求め、お前を求めた。』
    「……。」
    『だけど、それはお前を苦しめる結果になった。』

     昌獅は悔やむような表情を浮かべ、友梨はその事に驚きを隠せないでいた。

    『悪い…友梨……。』
    「ちょっ、ちょっと待って……。」

     友梨は何処までも自分を貶めるような言い方をする昌獅を止めたかった。

    「私は私の意志でここにいるんだよ。」
    『……。』
    「私は苦しんでいない、確かに苦しんだかもしれないけど、貴方の事を知って良かったと思うし、それに自分の気持ちに気づく事ができた。」
    『友梨……。』
    「だから、謝らないで。」

     真剣な眼差しの友梨に昌獅はゆっくりと顔を上げ、友梨を見た。

    「私は貴方が大切なの。」
    『友梨?』
    「だから、勝手に苦しんでいるとか言わないで。」
    『……。』

     昌獅の目がゆっくりと見開かれ、そして、彼の口元に嘲笑じゃない苦笑に似た笑みを浮かべた。

    『さすが、俺が惚れた女だな。』
    「なっ…。」

     あまりにもあっさりと言うものだから、昌獅ではなく友梨の方が顔を真っ赤にさせてしまった。

    あとがき:あ〜、進み始める二人の関係は早い早い、それに比べて、リョウくんは…哀れ……。
    う〜…、卒論は終わったけれど発表があるよ…、もう嫌だ…。就職活動も決まってないし…やばすぎる!!

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  • from: yumiさん

    2011年01月18日 09時22分46秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十章〜・64・

    『落ち着いたか?』
    「うん。」

     友梨(ゆうり)は涙を拭い去り、微笑む。

    「ありがとう、昌獅(まさし)。」
    『……別に感謝されるいわれはない……。』
    「ふふふ……。」

     幼い顔には似合わない言葉に友梨は笑った。

    『何で笑うんだよ。』

     ムスッとする昌獅は彼女の良く知る彼そのもので涙が再び零れた。

    『おっ、おい……。』
    「あはは…、ごめん、うれしくって。」
    『…………悪い。』
    「え?」

     唐突に謝る昌獅に友梨はびっくりして涙を止めた。

    「何で謝るの?」
    『………俺の姉さんが余計な事をしたから…。』
    「余計な事じゃないよ。」
    『……。』

     昌獅は苦々しそうに顔を歪める。

    『なあ、友梨。』
    「何?」
    『ここは、姉さんが知っている過去であり、そうじゃない過去であるんだ。』
    「……?」

     友梨は昌獅の言っている意味が分からなかった。

    『つまり、ここの一部は本当の過去であるが、一部は違うという訳だ。』
    「……。」

     友梨の目が見る見るうちに見開かれ、昌獅は溜息を一つ零した。

    「どう…いう…意味?」
    『まんま、だよ。』

     昌獅は小さく肩を竦め、そして、真剣な顔で倉庫の入り口を睨みつけた。

    『俺は実際この後無謀な行動に出たんだ。』
    「……。」
    『そこで、俺は死にかけた……それが、現実だった。』
    「……何で、記憶通りに見せないの?」
    『お前は勘違いしているのかもな。』
    「えっ?」
    『ここは奈津美(なつみ)姉さんの記憶、実際俺がこんな倉庫に連れて行かれたなんて、姉さんは知らない。』

     友梨はここでようやく可笑しな点に気付いた。

    「あっ…。」
    『ようやく気付いたか。そう、これは俺の記憶自身も混ざっているんだ。』
    「でも…何で?」
    『多分、俺とお前との関係がかなり強かったからじゃないか?』

     友梨は目を瞑り、奈津美が言っていたことを思い出す。

    『あの子を最も変えた時の記憶……、と言ってもわたしのものだけど。』

     奈津美は確かにそう言っていた。もし彼女自身の記憶ならば間違いなく彼女の姿しか見ていないだろう。
     昌獅の無事を心配する奈津美の姿だけを友梨は見る事が出来たはずで、掴まった後の昌獅の姿など彼女は知らないはずだ。

    「…つまり、これは嘘?」
    『全部じゃないがな。』
    「……?」

     友梨の頭に疑問符が浮かび上がるが、昌獅はそれを無視して説明し始めた。

    あとがき:そういえば、5万人まであと千を切りました。一応企画しているのは、別れの涙の続編(?)とダークネスゲーム外伝とダークネスゲームのとあるキャラの絵を載せたいと思いますが、まだまだ募集中です。

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