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from: yumiさん
2011年03月30日 10時13分25秒
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「星色の王国」
・24・
『兄様。』
『リディアナ?』
申し訳なさそうな声音のリディアナにカイザーは首を傾げる。
『ごめんなさい…、全く気配が辿れません……。』
『…ああ。』
カイザーはリディアナが気落ちしている事を感じ、穏やかな笑みを作るが、その顔はリディアナには見えていない。
『気にしなくてもいい。』
『兄様?』
『お前の力不足ではなく、今回の敵は隠れるのがうまいだけだ。』
フォローされているのだとリディアナは分かり、余計に気落ちしかける。
『俺だって分からない、多分、ここにいる奴らの中で一番気配を読む事が得意な俺でさえだ。』
『兄様も?』
『ああ。』
リディアナをはじめカイザーの弟妹はカイザーの気配を読む力は自国他国問わず、世界一だと認めている。そんな彼に読めないとはそんなにも敵は強大なのかとリディアナはぞっとした。
『兄様……。』
不安で声が震えるリディアナにカイザーは穏やかな声音を出し、彼女を落ち着かせようとした。
『大丈夫だよ。』
『兄様?』
『俺が守るから。』
『……。』
リディアナが遠くで目を見張っている事に気付き、カイザーは苦笑する。
『俺の大切な人間を傷付けさせたりはしない。』
『兄様。』
『絶対に。』
強い兄の言葉にリディアナは心から誓う。
この兄を守れる力が欲しいと。
昔からこの兄は優しい、それは敵に対しても、味方に対しても。
ただ、敵でも自分の大切な人間を傷つけようとすれば、彼のもつ鋭い牙が敵に向けられ、向けられた敵は一溜りもないだろう。
カイザーは二つ名の通り、獅子のような人物だと誰からも思われた。
獅子は百獣の王、カイザーは王としての器がある。ただ、彼自身はそうは思っていない。彼自身は平凡な強いて言うなら犬のようだと思っている。
ちっぽけな存在で、忠誠心が強い、そんな存在だとカイザーは思っているが、他の評価は全く違うのだった。
『兄様。』
『なんだい?リディアナ?』
『兄様はこのリディアナがお守りします。』
『リディ?』
『兄様は誰にも傷付いて欲しくないとお望みですが、そう思っているのは兄様だけじゃありません。』
リディアナの言葉にカイザーは苦笑を漏らし、妹と同じ事を言った弟(ルシス)を思い出した。
『ありがとう。』
昔同じ事を言われたカイザーはルシスに「すまない」と謝ったが、ルシスはこう言ったのだ。
――兄さん、こういう時は「ありがとう」で十分です。僕たちは兄さんの側にいる理解者であり、家族であり、それ以上の絆を持っている存在だから、だから、兄さん、兄さんは兄さんらしくいてくれるなら、僕たちはいつまでも兄さんの力になるよ。
「本当にお前たちには支えられている…。」
『兄様?』
風に声を送らなかったのにも拘らず、リディアナは敏感にカイザーが何かを言った事に気付いた。
『何でもないさ、リディアナ。』
『……本当にですか?』
『ああ。』
リディアナの声音からは納得した様子はないが、それでも、彼女はこれ以上カイザーを問う言葉を紡がなかった。
『兄様、これから、どうしますか?』
『そうだな……。』
カイザーはこれから何が起こるのか分からなかった、だから、リディアナに的確な指示を飛ばせないでいた。
『…取り敢えず、姫を頼む、許可を得たんなら俺たちが姫を守る。』
『…………兄様は、フローリゼル様をお好きなのですか?』
『……リディ?』
何を言い出すのか、とカイザーは思うが、リディアナの思いつめたような声音に思わず彼女の愛称を呼んだ。
『……ごめんなさい、何でもないんです。』
『……リディ?』
『……。』
カイザーは黙り込むリディアナと自分に言い聞かせるかのように口を開く。
『俺は皆好きだ。だから、姫も好きだし、リディアナも、ルシスも、ジャックも、母様たちも、父さんも好きだ。』
『……。』
『リディアナがそんな意味で言ったんじゃないことくらい、俺にだって分かるが、特別に思う異性はいないんだ。』
カイザーは心からの言葉を言い、リディアナはそっと息を吐いた。
『兄様……。』
リディアナはホッとしたような残念な心で呟いた。
『兄様、リディアナはいつでも、兄様の味方です。』
『ありがとう、リディアナ。』
カイザーが微かに微笑んだ瞬間、風が変わった。
『――っ!』
『兄様!』
「兄さん!」
「カイ兄!」
敏感に空気が、風が変わった事にカイザーを含めた彼ら兄弟は気付いたようだ。
「……一体何が…起こっているんだ……。」
カイザーは眉間に皺を寄せ、ぼそりと呟いた。
「……兄さん。」
「まあ、オレたちに攻撃するんなら、倍返しにしてやらないとな。」
兄を純粋に心配するルシスと、彼らしさを失わずにニヤリと不敵に笑うジャックにカイザーは笑みを浮かべる。
「そうだな。」
「最悪の事態にならないように考えなくてはなりませんね。」
「ああ。取り敢えず、注意を促すように隊の連中に言ってきてくれないか?」
「オッケー、それはオレがやってくる。」
ジャックは素早い動作で走り出し、残された二人は真剣な顔で互いの顔を見合う。
「ルシス、気を引き締めていこう。」
「はい、兄さん。」
あとがき:この前、アクセスのトータル数が6万5千人を突破しました。嬉しい限りです。最近滞りっぱなしでしたが、少しずつ書いて載せていきたいです。
まだまだ、定期的に載せられるかは定かではありませんが、もっと頑張りたいです。icon
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マナ、
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from: yumiさん
2011年03月29日 14時16分45秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・6・
「無茶をさせたくもないのも、分かるけど、無茶をしないようにする努力の方が大切だと思うの。」
ニッコリと微笑む友梨(ゆうり)だが、目は笑っていない。
因みにその視線は涼太(りょうた)とガラスに映る昌獅(まさし)に向けられているのは絶対だ。
「一応私も手助けはするわ。」
「……。」
「でもね、気をつけるのと気をつけないとじゃ、怪我をする率が違うと思うのよ?」
友梨の目は真剣そのもので、涼太は何も言えなかった。
「最初から無茶をする宣言をするのは止めて、美波(みなみ)が心配するのも無理はないわ。」
「友梨先輩……。」
「私はあの人にその事を言っても聞き入れてはくれない、だから、貴方だけは聞き入れて、美波に私と同じ思いをさせないで。」
「……。」
あまりにも真剣な目をする友梨に涼太は彼女にこんな思いをさせる昌獅を少し恨んだ。
「……オレのできる限り。」
「ありがとう……。」
友梨は微笑む、その笑みは妹を案ずる姉の笑みだった。
もし、一人の少女としてだったら友梨はきっと美波を羨んだかもしれない、大切な人の為に自分を守ると誓う事をしてくれる人が彼女を想っているのだから。
「友梨先輩。」
「何?」
「友梨先輩も自分の身を考えてください。」
「……。」
友梨の目がゆっくりと見開かれる。
「友梨先輩だって、オレ以上に無茶をして傷付いているんですから。」
「涼太くん?」
「皆心配なんですよ。」
涼太の言葉に友梨ハッとなる。
「友梨先輩は他の、オレや昌獅、智里先輩や美波の心配ばっかりで自分の心配はしていなんですよ。」
「……。」
「自分の事だけは他人に指摘されない限り気付かないものですよ。」
「…そうね。」
友梨は苦笑に近い笑みを浮かべ、そっと、涼太の頭を撫でた。
「ありがとう、気付かせてくれて。」
お礼を言われた涼太は照れくさそうに笑った。
「いいえ、オレも友梨先輩に色々とお世話になっていますから。」
「ふふふ、ありがとう。」
友梨はそっと涼太の頭から手を下ろし、自分たち、正しくは涼太を睨みつけている人物に目を向ける。
「あ〜、そろそろ、向こうに戻るね。」
「そうして下さい、視線が痛い……。」
友梨は苦笑を浮かべ、彼女を待つ昌獅の元に向かった。
「もう、そんなに睨まなくたっていいじゃない。」
「睨んでなんかない。」
「もう……。」
友梨は小さく肩を竦め、昌獅の頭を叩いた。
「ほら、機嫌直してよ。」
「……。」
昌獅は友梨を一瞥して、ゆっくりと溜息を吐いた。
「別に怒っている訳じゃない。」
「どうだか?」
友梨が小さく肩を竦め、昌獅は唇を尖らせるが、何も言わない。
微妙な空気を放つ二人に涼太は半眼になるが――。
「?」
唐突に服を引っ張られ、涼太は軽く目を見開いた。
彼の服を引っ張ったのは忘れられた美波だった。
「リョウくん。」
「……何だよ?」
涼太は美波の存在をすっかり失念しており、先程からの自分の台詞を思い出し、顔を真っ青にさせた。
あとがき:やっと、アップできました!!
ふう、本当は27日にでも載せたかったんですけど…、遅れましたが、友梨ちゃん、お誕生日おめでとう!!
本編は…しっかりとしたお姉さんの姿を見せてくれました。いい娘だ…。icon
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from: yumiさん
2011年03月26日 14時34分17秒
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「お嬢様の危険な日常・執事の憂鬱」
・31・
ユウリは綺麗なドレスに身を包むが、その表情はかなり強張っていた。
「で、外に出るのはどうでしょう?」
「……。」
正直舞踏会などユウリは嫌いだ。鬱陶しいほどのお世辞に、気持ち悪い視線、それに何より、自分を一人の人間じゃなく「タカダ家」の人間としか見ない人たちなんか嫌いだった。
「……。」
ユウリはそっと視線を逸らし、客人にグラスを渡す少年を見詰めた。
「それじゃ行きましょうか。」
ユウリの沈黙を肯定と受け取ったのか、見知らぬ少年はユウリを外へと連れ出そうとする。
「へっ、きゃっ!」
唐突な事でボーとしていたユウリは体勢を整える事ができず、前へと転びそうになるが、一人の少年に体を支えられた。
「大丈夫ですか?ユウリお嬢様。」
「ユーマさん……。」
執事見習いのユーマがユウリを支えたので、辛うじて惨事にはならなかった。
「ありがとう…ございま――。」
「ふん、執事如きが。」
「――っ!」
「……。」
吐き捨てるように言う少年にユウリは眉を吊り上げ、ユーマは慣れているのか表情を変えない。
「さあ、行こう。」
「……あっ!」
「……。」
ユーマはどうする事も出来なかった、主の命があればあんな我侭坊ちゃんなど一ひねりだが、一応はアレでも客だ。手を出す事など只の執事見習いのユーマには何も出来ない。
「ユーマ!」
いつも以上に眉間に皺を寄せたマサシにユーマは目で彼を叱る。
「……。」
マサシはユーマが自分を叱っていると分かっているのか、眉間に更に皺を寄せ、口を一直線にした。
「……。」
「……。」
目を離したのはマサシだった、彼はユウリたちが消えた方へと足を向けた。
ユーマは一瞬マサシを止めようと彼に足を向けようとした瞬間、服を誰かに掴まれた。
「……。」
ユーマは一体誰が、というように顔を歪ませ振り返り、その表情が強張った。
「……ち、チサトお嬢様…。」
「別に止めなくても平気よ。」
「ですが……。」
「何?たかが執事見習いがわたしに意見するの?」
年下とは思えない程凛とした少女にユーマは眉を下げた。
「分かりました。」
「多分、あの馬鹿が行って正解だと思うわ。」
「えっ……。」
ユーマはチサトが言いたい意味がいまひとつ分からなかった。
「分からないのなら、貴方はまだまだ執事見習いね。」
「……。」
冷たい物言いのチサトにユーマは溜息を吐きたくなった。
しかし、こんな所で溜息を吐けば他の客人にも見られてしまうので、勇真は出来るだけ堪えたのだった。
*
「離してください!」
ユウリはその手を離してほしくて、暴れるが、今来ているドレスが重くうまく体を動かせなかった。
「嫌だね。」
「――っ!」
少年の目がまるで獣の目のように見え、ユウリは凍りつく。
「いや……。」
ユウリは逃げたかったが、少年の力に負ける。
「大人しくしろ!」
「嫌!嫌!」
ユウリは力いっぱいに暴れる。彼女はこれから自分の身に何が起こるかなんてちゃんとは理解していなかったが、それでも、恐ろしいとは肌で感じていた。
「――っ!ま――。」
恐怖のあまりいつもの彼の名を叫ぼうとしたが、彼が来た所で何も変わらないと思い、言葉を止めた。
彼はただの執事見習いで一応貴族であるこの少年に意見する事など出来ないのだ。
しかし、そんな事を考えるユウリに対し、見習いのはずの執事の少年は執事らしからぬ行動に出てしまう。
「――っ!」
「な、何だ!」
ユウリは反射的に殺気を感じ取り、少年ごと後ろに下がった瞬間、少年の頭があった位置に花瓶が落ちてきた。
「……。」
「……い、一体…。」
ユウリが顔を上げると、一瞬だが黒い影が見え、彼女はこの事をしでかした犯人を確信する。
「…私に手を出すと、死神が貴方を殺すかもね…。」
ユウリは冷めた目で緩められた少年の手から逃れる。
「それでは失礼します。」
ユウリのドレスが靡く。
彼女はそのまま会場に戻らず、上の階へと足を向けた。
「マサシ!」
「……。」
ユウリが叫んだ時、マサシはしかめっ面でユウリを見た。
「何お客様を殺そうとしたのよ!」
「あいつが悪いんだろうが。」
「だからって……。」
「お前だって嫌だったんだろ?」
確かにユウリだって嫌だった、だけど、マサシの行動はやりすぎだ。
「それでも、殺しかけるなんて。」
「……。」
マサシは眉間に皺を寄せ、ユウリに背を向ける。
「さっさと、戻れよ。」
「もう、マサシの馬鹿!」
確かに戻らないといけないことくらいユウリも分かっていたが、それでもマサシの言葉にカチンと来た。
そして、ユウリは荒々しい足取りで会場に戻っていく。
「………………あの坊ちゃん気安くあいつに触りすぎなんだよ。」
ずるずると壁に凭れかかりながらマサシは床に座り込む。
「あいつに触る男は俺だけなんだよ……。」
あとがき:ストックのあるこちらを先に載せさせていただきました。正直まだまだ先が分かりませんが、時間とストックがあれば、絶対続きを載せます(王国パロとお嬢様パロは拍手が無いと更新しませんが…)、これからもよろしくお願いします。icon
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マナ、
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from: yumiさん
2011年03月13日 13時32分57秒
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ご報告
遅くなり申し訳ございません。
私が住んでいる大阪では被害は全くありませんでした。
3月17日
素っ気ない言葉で申し訳ありませんでした。
改めて、書かせていただきます。
あの時はちょっとパソコンの方をいじる余裕が精神的にもありませんでした。
ですから、携帯で文を打ったんですが…途中で色々な電話などありまして…はい、申し訳ないです。
就職活動の方はまだまだやっているので、サークルを再会出来るのはもう少し時間がかかりそうです。
ですが、サークルの方は携帯でも見ています。
それでは皆様のご無事などを願って。-
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from: yumiさん
2011年03月05日 16時22分20秒
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お知らせ
一昨日6万人に達し、真に喜ばしいことなのですが、3月23日までサークルの方に小説を載せるのを少々止めようと思っております。
あとがきで書かせてもらっておりますとおり、中々就職活動がうまくいかず、まだ内定をもらっていないという由々しき事態なので、卒業式が行われる23日をめどに小説をたとうと思っております。
一応はちょこちょこ覗きに来るつもりはあるのですが、載せるのは滞ってしまうと思います。
皆様には本当に申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
もし、内定がいただけたらすぐにでも再開したいと思います。
これからも弥生の河に言の葉が流れるをよろしくお願いいたします。-
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エリス、
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from: yumiさん
2011年03月03日 15時57分23秒
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「特別企画!?」
ひな祭り
鼻歌を歌う美波(みなみ)を見ながら、涼太(りょうた)はつまらなそうな顔をする。
「なあ…。」
「ん?」
「クリームがついてる。」
「ふえ?」
涼太は美波の顔に付いていた生クリームを拭い、それを己の口に持っていく。
「うえ…あま…。」
「え〜、おいしいよ?」
「あっそ。」
素っ気ない事を言う涼太に美波はニッコリと微笑む。
「それにしても、ひな祭りだけのケーキ美味しいっ!」
「よかったな。」
「…涼太くん、ごめんね。」
げんなりと疲れている涼太に席は違うが、それでもかなり近い位置にいた友梨(ゆうり)が謝る。
「いえ、…友梨先輩の所為じゃないです…。」
「……。」
「昌獅(まさし)、このくらいで妬かないでくれ…マジで恐えから…。」
物凄い形相で睨みつけてくる昌獅に涼太は顔を引き攣らせる。
「それにしても……。」
「何なんだよ?」
溜息を吐く友梨に昌獅は眉間に皺を寄せる。
「何か、涼太くんと昌獅似てきたんじゃない?」
「はあっ!」
「……んなわけねぇ。」
「だって、眉間に皺を寄せるし、何か口調までに似ている気がするし…あっ、行動も似てきたかも。」
驚く涼太とげんなりとする昌獅に友梨は口元に指を当てながら言う。
「一番似ているのは嫉妬深いところかな?」
「「……。」」
昌獅と涼太は互いの顔を見合わせる。その表情は強張っている。
「確かに、昌獅は嫉妬深いが…。」
「何を、てえぇの方だろうが。」
「……あ〜、やっぱり似てるわね〜。」
「「……。」」
昌獅と涼太は互いの顔を見て、これ以上何も言わないと誓う。
「ふぅ…、さっさと雛人形仕舞わないとね〜。」
「何でだ?」
「えっ?そりゃ、自分はともかく美波には早くお嫁にいって欲しいもの。ね?涼太くん。」
「なっ!」
友梨の言葉に涼太は顔を真っ赤にする。
「雛人形って早く仕舞わないと行き遅れるんだって。」
「へ〜、まあ、友梨は別にいいんじゃねぇか?」
ニヤリと笑う昌獅に友梨はじろりと睨んだ。
「昌獅!」
「何だよ?お前と結婚するのは俺だろ?」
「……それまでに愛想つかされないといいな。」
友梨がふつふつと怒るのを横目に見ながら涼太はそう呟いた。
そして、一分後屍となった昌獅がいたような、いないような……。
その事実を知るのは伸した友梨とそれを見ていた涼太だけだった。
因みに美波はケーキを食べるのに必死で見ていなかったそうだ。icon
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マナ、
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from: yumiさん
2011年03月03日 15時54分21秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・5・
「…一体何処に行くんだろうな?」
涼太(りょうた)は外を睨み付けるように見詰めながら、溜息とともに言葉を吐き出した。
「さあ?何処に行くんだろうね?」
「……なあ、美波(みなみ)。」
「何?」
自分の横に座る少女に声をかけるが、その目は外を見続けた。
「絶対無茶はするんじゃないぞ。」
「え〜。」
涼太は胡乱な目付きになり、ガラスに映る友梨(ゆうり)と昌獅(まさし)を見た。
あの二人は今回も無茶をしでかしそうだろうが、それでも、彼女たちは互いを思いあっているので、互いが倒れるまで放っておかないだろう。
「ねぇ、聞いてる?リョウくん?」
「んあ?」
美波が先程から何か話しかけていたのだが、涼太は全く気付かなかった。
「悪ぃ、聞いてなかった。」
「もー!」
頬を膨らませ不満です、と顔中に表す美波に涼太は苦笑を漏らす。
「だから、リョウくんは無茶しないでって言ったの!」
「無理。」
即答する涼太に美波は絶句する。
「絶対無理、無茶も無理もする。」
お前を――美波を守るためならば多少の怪我は厭わないつもりだ。
「……馬鹿リョウくん!」
怒った美波は急に立ち上がり、友梨と昌獅の元に向かう。
「お、おい…。」
涼太は眉間に皺を寄せ美波の手を掴もうとした瞬間、鋭い殺気を感じた。
「――っ!」
涼太が振り返ると、そこには鬼のような形相をした智里(ちさと)がいた。
「……。」
「……。」
冷たい睨み合いは一人の少女の登場によって遮られる。
「ごめんね。」
急に声をかけてきたのは友梨だった。その後ろに美波が涼太を睨みながら友梨の服の裾を掴んでいた。
「友梨先輩。」
「隣いい?」
「あ、はい……。」
「智里もいい加減認めたらいいのに。」
「えっ?」
「何でもない、独り言よ。」
友梨は苦笑を浮かべ、自分の横に美波を座るよう促す。
「よく、昌獅が許したんですね。」
「あ〜、美波が急に現れたからしぶしぶね。」
「…確かに。」
涼太は昌獅を見てみると、彼は不貞腐れていた、それは二人の所を邪魔されたからか、それとも友梨を取られた所為か…多分両方だろう。
「オレ…昌獅に殺されそうですね。」
「大丈夫よ、私が嫌がる事はやらないと…思うわ。」
苦笑を浮かべる友梨に涼太は弱弱しく微笑んだ。
「で、涼太くん、本題に入ってもいい?」
ニッコリと微笑む友梨だが、その目は笑っていなかった。
あとがき:美波ちゃんの見方は友梨と智里…さてさて、涼太くんは大丈夫でしょうかね〜…。icon
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2011年03月02日 16時08分17秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・4・
「さて、無人の駅とは不気味なものね。」
「だよね…。」
智里(ちさと)の言葉に友梨(ゆうり)はブルリと震える。
「幽霊とか出そうよね。」
「や、止めてよ……。」
友梨は幽霊とかお化けとかは大の苦手だ、因みに美波(みなみ)も友梨以上にお化けとかを嫌っている。
「……あら、可笑しいわね。」
「何が?」
「お姉ちゃんの後ろに…女の――。」
「きゃああああああああああああああああああああ――――――っ!」
「な、何だ!」
「友梨!」
「どうしのかい?」
友梨の悲鳴に涼太(りょうた)は目を見張り、昌獅(まさし)は彼女の名を叫びながら駆け寄り、勇真(ゆうま)は智里のあくどい笑みを見たのか、苦笑を浮かべている。
「昌獅!!」
友梨は昌獅に縋りつくように抱きつき、昌獅は震える友梨に腕を回しながらギロリと智里を睨んだ。
「お前、何やったんだよ!?」
「何も、ただ、お姉ちゃんの後ろに女の影が見える…そう言いたかっただけ。」
「…うぎゃっ!」
「……。」
さらりと言う智里に友梨は悲鳴をあげ、昌獅は半眼になる。
「嘘だろう。」
「あら?」
「お前みたいなリアリストに幽霊なんて非現実的なものを信じる頭はなさそうだがな?」
「あら、褒め言葉?」
昌獅は智里を一瞥し、続いて優しい眼で友梨を見た。
「友梨、こいつの法螺なんか信じるなよ?」
「…昌獅は知らないからいいんだ。」
俯く友梨に昌獅は首を傾げた。
「何だよ?」
耳を友梨の所にもって行き、友梨は少し背伸びして昌獅に囁く。
「あの子小さい頃は霊感あったみたいなのよ?」
「……はぁ?」
「言っておくけど、嘘じゃないからね。あの子小さい頃、あそこに透き通った女の人がいる…とか、言ってたもの。」
「……マジ?」
似合いといえば似合いだが、シャレにならない事実に昌獅は顔を引き攣らせる。
「マジもマジ、と言ってもあの子が五つくらいの時だけど、今は見えない…と信じたい。」
「……。」
「だけど、万が一見えてたら…。」
友梨は身震いをして、昌獅から温もりも貰いように抱きしめる。
「何であんな子が私の妹なのよ〜。」
「……。」
あんな娘を義妹として持つ事になるだろう昌獅はその事に気付いていないのか哀れみの篭った目で友梨を見詰めている。
「お姉ちゃんいい加減にしないと乗り遅れるわよ。」
いつの間にか改札を抜けている他の面子に友梨と昌獅は互いに顔を見合わせる。
「昌獅の所為よ!」
「何でだよ!」
取り残された二人は仲良く喧嘩しながら、改札を抜けた。
あとがき:智里ちゃんって霊感ありそうですよね?
それよりも、友梨ちゃん、貴女はナツさんの霊を見たのにも拘らず、幽霊が嫌いなんですね……。icon
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2011年03月01日 15時59分24秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・3・
「仕方ないよ。」
勇真(ゆうま)が穏やかに微笑み、友梨(ゆうり)は苦笑を返す。
「…変な所もお見せしたんですよね。」
「……。」
友梨の台詞に今度は勇真が苦笑を浮かべる。
「ごめんね。」
「…う〜、昌獅(まさし)の馬鹿〜。」
友梨は穴があったら入りたいとおもうが、残念ながらここには穴が無い。
「それにしても、昌獅も変わったね。」
「変わりすぎよ…。」
所構わず友梨にくっ付こうとする昌獅に友梨は嬉しいけど、かなりうんざりするものがあった。
「まあ、もしかしたら、あれが本当の昌獅なのかもしれないね。」
「……。」
勇真の一言に友梨は顔を上げた。
「……勇真さん。」
「なあ。」
二人の会話にいかにも眠そうな声が割り込んできた。
「いつまで…喧嘩させとくんだよ?」
「あっ…。」
「つ〜か、こいつ寝かしてきてもいいか?」
涼太は勇真を睨み付けるように見て、そして、自分に凭れかかりながら舟を漕いでいる美波(みなみ)を指差す。
「あっ、ごめん涼太(りょうた)くん重かったでしょ。」
「いや、重くはないけど…。」
男の横でこうもすやすや眠られていると男として見られていない気がして涼太は内心複雑だった。
「……複雑ね。」
「だな。」
友梨と勇真は哀れんでいるような顔をした。
「涼太くん、明日は早いから貴方も休んでね。」
「いいんですか?」
「ええ、智里(ちさと)と昌獅は放って置いても大丈夫だけど、貴方たちはまだ中学生だしね?」
「ありがとうございます。」
「うん、明日頑張ろうね。」
「はい。」
友梨に対してだけは素直な涼太に、勇真は苦笑した。
「それじゃ、二人ともお休み。」
「ん。」
「うにゅ〜……。」
年少組を見送った友梨と勇真は同時に顔を見合わせ、火花を散らしまくっている智里と昌獅を見た。
「これ、どうしましょうか?」
「そうだね…。」
困ったように勇真が笑うが、これ以上喧嘩させれば明日に支障が出ると思い、二人はそれぞれの肩を掴んだ。
因みに、友梨は智里、勇真は昌獅の肩を掴んだのだった。
「はい、ストップ。」
「何よ、お姉ちゃん。」
「お前もいい加減にしろ。」
「……離せよ。」
互いをとめる人物を睨む二人に友梨と勇真は同時に言った。
「明日に響くからそこまでに――。」
「しろ」
「したら。」
「「……。」」
二人の最もな言葉に智里たちは黙る事しか出来なかった。そして、二人は溜息を同時に吐き、その事が気に食わなかったのか最後に睨み合い、自室に引いて行ったのだった。
「ごくろうさま。」
「勇真さんもね。」
二人は互いをねぎらった。そして、夜は明ける。
あとがき:意外に勇真と友梨のコンビはやりますね。カップルというよりもコンビ…、始めの頃の思惑とは違うものになりましたけどね…(遠い目)。icon
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