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from: yumiさん
2011年09月21日 10時07分51秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・76・
時は少しばかり遡って昌獅(まさし)は涼太(りょうた)が潜り抜けたトラップを軽々と避けていった。
「本当にあの変態は。」
悪態をつける昌獅は眉間に皺を寄せて、浮石代わりのテーブルを蹴った。
「俺たちを忍者にでもしたいのかよ。」
段々自分が身軽になっていくのが分かり、昌獅は嫌そうな顔をする。
「……それにしても、あいつ…猿か?」
同年代よりの運動神経がいいだろうが、自分よりもかなり劣っている涼太が自分と同じ跳脚力や反射神経を持っているのが不思議だった。
昌獅は床に着地し、周りを素早く見渡し、身を捻った。
「危ないな…。」
昌獅が身を捻らなかったら、昌獅はレーザーのようなもので体の一部を焼かれていた事だろう。
彼ははじめに来た涼太が同じ罠を潜り抜けた跡――床が少し焦げているのを見て、この罠がある事を悟ったのだ。
「怪我をしたら、あいつが心配するのにな。」
昌獅は眉間に皺を寄せながら、素早く床を蹴った。
頭上から次々と槍や巨大なハンマー、水やゴムで出来た虫などが降ってきたが、昌獅はその脚力と反射神経で全て避けていった。
「アレかっ!」
走っていると目の前に明るい光が見え、昌獅はラストスパートをかけた。
「……。」
昌獅は目の前に座り込み、誰かと電話をしている涼太の姿を見て柄にもなくホッとする。
「おい…りょ……。」
「ありがとうございます。」
行き成り礼を言う涼太に昌獅は怪訝な顔をする。
彼が素直に礼を言う相手はかなり限られている上に、彼は丁寧な言葉遣いなのでおのずと彼が誰に電話しているかを知り、ムッとする。
「そんな事ありませんよ、友梨先輩がこうして知っていただけでオレは本当に助かっているんです。」
案の定彼女の名前を言われ、昌獅の瞳に嫉妬の炎が宿る。
「ありがとうございます。」
また礼を言った涼太に昌獅はつかつかと近寄った。
「…友梨先輩。」
「おい、いい加減俺の友梨との連絡を切れ、用件は終わっただろう。」
昌獅の声に反応した涼太が振り向いた、その時彼の瞳が驚きのためか大きく見開かれていた。
「……いつからいたんだよ。」
剣呑な声に昌獅は知らず知らずのうちに好戦的な笑みを浮かべていた。
「ついさっきだよ。」
電話の向こうで友梨が多分自分に何か言っているような気がした昌獅は彼女に向けて言葉を贈った。
「友梨、悪いがこっちにはきこえねぇ。」
「……。」
涼太はこれ以上友梨と電話していたら間違いなく厄介だと思ったのか、友梨に電話を切る旨を伝える。
「……それでは、友梨先輩また後で。」
昌獅は完全に彼女との電話を切られるのを黙って待った。
「はい。」
電話の相手である友梨に向かって頷いた涼太はすぐさま切り、ジロリと昌獅を睨んだ。
「電話終わった。」
「ああ、そうか。」
「……何か言いたい事があるんじゃないか?」
昌獅の目をしっかり見ながら涼太は挑むように睨んだ。
「ああ、確かにあるな。」
「それならさっさと言え。」
「友梨を巻き込むな。」
「……無理だ。」
苦しそうに言う涼太に昌獅は口元を歪め、冷笑を浮かべた。
あとがき:本日二本目っ!
https://sites.google.com/site/mishengnocangqiong/home
の方に載せた短編(?)小説が一本終わりましたので、良ければ見てください。icon
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from: yumiさん
2011年09月21日 10時03分45秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・75・
友梨(ゆうり)はただ思い出した事を口にしただけだったので、涼太(りょうた)が理解できないのは当たり前だと思った。
「ごめんね、急に変な事を言って。」
『いえ、何ですか?それ。』
「うん、何かで鏡は陰陽の「陽」に属していて、勾玉と剣は「陰」に属していると見た事があって。」
『そうなんですか?』
「ええ、そういえば、箱に何か描かれていない?」
友梨の質問からしばらくしてから涼太が返事を返してきた。
『何か……頭が八つの蛇?と三日月と太陽がそれぞれの窪みの近くに描かれています。』
「…成程ね……。」
友梨は口角を上げ、ニヤリと笑った。
「よかった涼太くんで。」
『何がですか?』
「多分、私の事だから、真っ先に箱に描かれたものを見て、それで考えてたと思うの、そうなったら間違いなくはじめに蛇比礼(おろちのひれ)を考えたと思う。」
『おろち?』
涼太の疑問に友梨はきっと中学時代の自分では知り得なかった知識を口にした。
「ええ、多分それは間違いね、そうじゃなければ他の二つは難しいもの、涼太くんはヤマタの大蛇ってしっているかしら?」
『名前だけは…。』
「ヤマタの大蛇はスサノオの命が退治したと言われる八つの頭を持つ蛇だったと思う、あんまりはっきりとは覚えていないけど、それを対峙した時の剣が草薙剣(くさなぎのつるぎ)…もしくは天叢雲剣(あめむらくものつるぎ)とも言われるの。」
『――っ!それじゃ…。』
「ええ、多分、大蛇の場所には天叢雲剣、太陽には天照大御神がお隠れになった時に使った、八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)の中の「陽」に属する。」
『八咫鏡ですね、そして、月の書かれている場所には八尺瓊勾玉という訳ですね。』
「ええ、太陽は文字に「陽」が入っているように、「陽」、月は「陰」に属するの。」
『……ありがとうございます。』
感謝の言葉を言う涼太に友梨は目を見張った。
「えっ、別にお礼を言われるほどじゃ……。」
『そんな事ありませんよ、友梨先輩がこうして知っていただけでオレは本当に助かっているんです。』
「涼太くん。」
『ありがとうございます。』
友梨の目が優しげに窄められる。
「どういたしまして。」
『…友梨先輩。』
『おい、いい加減俺の友梨との連絡を切れ、用件は終わっただろう。』
「えっ?昌獅(まさし)。」
『……いつからいたんだよ。』
『ついさっきだよ。』
電話の向こうから聞こえる相手の声に友梨は困惑する。
「昌獅、何を言っているのよ、涼太くんは私に相談しているんだから。」
『友梨、悪いがこっちにはきこえねぇ。』
「……。」
確かに今友梨の声が届くのは涼太だけだ。昌獅の言うのは正しいのだけど、友梨は不機嫌なのか眉を顰めていた。
「はぁ……本当に、昌獅は……。」
『……それでは、友梨先輩また後で。』
「ええ、いい結果を待っているわ。」
『はい。』
電話が切られ、友梨は自分を心配そうに見上げる美波(みなみ)の頭をそっと撫でた。
「もうすぐで、あの二人が戻ってくるわ。」
あとがき:え〜と、台風によって本日休講…、なので、載せました。
昨日は昌獅の誕生日でしたね。一日遅れだけどおめでとうっ!?icon
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from: yumiさん
2011年09月14日 10時26分28秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・74・
「…………マジか。」
涼太(りょうた)の顔に緊張が走る。
「………。」
涼太は幾つものトラップを潜り抜け、最後のトラップまで辿り着いた。
涼太だってそう簡単には珠を手に入れる事は出来ないだろうと、悟っていたが、まさか、最後の最後でこんな問題があるとは予想していなかった。
「肉体的労働なら、よかったのに……。」
涼太は忌々しそうにいかにも宝がありそうな箱を睨んだのだった。
箱の蓋にはこんな張り紙があった。
《やあ、よくここまでたどりつたね、今回の罠は本気を出してみたんだが、君たちには簡単すぎたかな?まあ、本物を手にするのだから仕方ない事かな?
さてさて、この箱を開けるには回りにある木の欠片があるだろう、そこには文字が書かれている。それをしかるべき場所にはめると箱は開かれるよ、それでは健闘を祈る。》
「何が健闘を祈るだ。人を殺そうとして。」
涼太は顔を顰め、口の端を噛んだ。
「……………仕方ない、友梨(ゆうり)先輩の知恵を借りよう。」
涼太は携帯電話を取り出し、リダイヤルから友梨の番号を引っ張り出した。
「……。」
『涼太くん?どうしたの?』
本当に自分を案じてくれる声音に涼太は知らず知らずのうちに張り詰めていた何かを解いた。
「すみません、友梨先輩の知恵をお借りしたくて。」
『別にかまわないけど?』
「ありがとうございます。」
『で、どうしたの?』
「それが……。」
涼太は簡潔に友梨に色々な罠の先に箱があったのだけれど、その箱の周りに書かれているものが分からないと言ったのだ。
『……どんなのなの?』
「読み方が分からないんですけど…蜂の比べる礼とか、天…叢…雲…剣……とかよく分からないんです。」
『…それって、もしかして蜂比礼(はちのひれ)と天叢雲剣(あめむらくものつるぎ)?』
「ハチノヒレ?」
『ええ、十種神宝と呼ばれるものがあって、その中に蜂比礼とか、死返玉(まかるかへしのたま)とかがあるの。』
「………よく分かりませんが…すごいですね。」
『そうでもないわよ……でも、全部が全部覚えている訳じゃないし……。』
「そうですか……。」
涼太の表情が曇り始める。
『ついでに天叢雲剣は、三種の神器っていって、草薙剣(くさなぎのつるぎ)とか聞いたことない?』
「ああ、何か聞いた事があるかも……。」
『三種の神器は他にも八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)とかがあるのよ。』
「よく知っていますね。」
『一応、小学校の時に三種の神器で勾玉、剣、鏡の三つは習って少し興味があって、高校に入ってからちょっとずつ知ったから。』
「……そうなんですか。」
友梨の知識の深さに涼太は唖然となる。
『で、それを埋める場所ってあるの?』
「ええ、箱の壁側に三つ場所があります。」
『それなら、三種の神器ね。』
「そうですか……。」
『同の順番で埋めればいいのかしら……鏡は陽で、勾玉と剣は陰……。』
「何ですか?その呪文は?」
意味の分からない事を言う友梨に涼太は怪訝な顔をした。
あとがき:本日二本目です。
さてさて、この前ちょこっとお試しでサイトを作ってみました。よければそちらの方にも遊びに来てください。
取り敢えずそちらに載せているのはダークネスの第一章とちょっとした話です。
https://sites.google.com/site/mishengnocangqiong/home
よろしくお願いします。icon
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from: yumiさん
2011年09月14日 10時23分23秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・73・
正直、美波(みなみ)を放って置いて心配だったが、それでもこんないかがわしい場所に美波を連れて行くほど涼太(りょうた)はあの【ルーラー】を甘く考えていなかった。
「大丈夫だ、友梨(ゆうり)先輩なら早く来てくれる。」
涼太は友梨ならばきっと美波を心配して早く来てくれると確信していた。
「……それにしても、ここ蒼穹じゃなくて、悪魔の家じゃねぇかよ。」
涼太がそう毒づくのも無理はなかった、なぜなら店内は彼の予想したとおり罠の連続で、蜘蛛の巣まで張っている。
店内に入ってしばらくしてからあったのは大きな落とし穴。
次にあったのは矢が飛んでくる壁。
「…本気でオレを殺す気かよ。」
今回の罠でどれだけ命を懸けるアトラクションがあるのかと、涼太は内心ひやひやしていた。
「……。」
涼太はしばらく走っていたのだが、急に立ち止まり、胸ポケットに仕舞っていた石をつまみあげた。
「……。」
勢いをつけて石を投げ、床に石が触れた瞬間、石は燃えた。
「………何だよ、オレを焼き殺したいのか……。」
自分の勘を信じなければ石と同じ運命を辿っていた涼太は額から流れた汗を拭った。
「…どうするか。」
周りを見渡すと、ちょうどいい場所にテーブルやイスが置かれている。
「浮石みたいに渡れって事かよ。」
涼太は今回のこの場所はきっとアスレチックのようにゲームをクリアしたら「宝」を手に入れるシステムだと考えていた。
「…行くしかないか。」
涼太は何歩か下がって勢いをつけ飛んだ。
危なげなくイスに降り立った涼太は胸ポケットからまた石を掴みそれをテーブルとイスに投げた。
石が触れたテーブルは何も起きなかったが、イスの方は脆くできていたのかちょっとした衝撃で崩れた。
「…………マジかよ。」
涼太はあの変態なら浮石代わりのテーブルやイスに何か罠を仕掛けているとは思っていたが目の当たりにして、涼太の顔に緊張が走った。
「辿り着く前に運が尽きなければいいんだがな。」
涼太は自分の運を今回のゲームで使い果たしてしまうのではないかと思い、顔を顰める。
「せめて少しでも残ればいいんだがな……そうじゃなきゃ、一生かかっても美波を手に入れる事ができないじゃないかよ。」
もし、ここで昌獅(まさし)がいたのなら彼は呆れていただろう、そして、友梨がここにいれば涼太に同情して涙を流しただろう。
不幸か幸いかここにはどちらの人間はいなかった。
「………待ってろよ。」
残してきた少女が心配なのか、涼太は真剣な顔でそう呟き忍者のように浮石代わりのテーブルとイスを渡っていった。
彼は気付いていない、奥にかなり大きな罠がある事に――。
*
「美波っ!」
「お姉ちゃん!」
浅葱を一通り確認してきた友梨は涼太が入って三十分くらいかけて美波の所に辿り着いた。
「涼太くんは?」
「リョウくんはあの中……。」
友梨は美波の指差す方を見て顔を強張らせる。
「……友梨、お前はここで待っていろ。」
友梨の肩を軽く叩いて、昌獅は店内に向かって走っていった。
「昌獅っ!」
友梨は美波を一人ここで残していく事ができず、昌獅の後姿を見ている事しか出来なかった。
あとがき:ちょっと手違いを起こしかけました…。先ほど間違えて74を載せてしまいました。何か話し通じないな、とか思っていたんですが…ははは。
唐突ですが、すみません、多分十月までこちらには載せれそうにもありません…。
講習とバイト三昧の予定で…こちらにはチョロっと覗く程度はできても、載せるのは…ちょっと無理ですね。
昨日MOSのエクセルを受けまして、合格しました。icon
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from: yumiさん
2011年09月07日 12時27分56秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・72・
涼太(りょうた)は美波(みなみ)の手を引きながら、次の目的地に向かおうとしたのだが……。
「リョウくん、こっちじゃない?」
全く違う方向を指差す美波に涼太は眉を寄せた。
「お前な……。」
方向音痴の美波に涼太は嫌気が差した。
「どうみても、この通りはここで、行くのはここだから、こう行くんだよ。」
涼太は後ろジーパンのポケットに入れていたパンフレットを取り出し、美波に見せる。
「あれ?」
「アレじゃない、お前はどうすればそんな変な方向に行こうとするんだよ。」
「リョウくん凄いね。」
「……。」
涼太は頭痛に耐えながら、口角を引き攣らせた。
「お前に…まかせるのは色々と不安が残るな……。」
低い声音で言う涼太はできるだけ美波に聞こえないように、溜息を吐く。
「さっさと行こう、友梨(ゆうり)先輩も昌獅(まさし)も本気を出してこっちに来るんだったらかなり早いからな。」
「そうだね、友梨お姉ちゃん足速いもんね。」
「……。」
友梨の事だから昌獅と競うと実力以上の力を発揮するので、多分美波が思っているよりも早いだろう。
「そう思っているんなら、口じゃなく足を動かせ。」
「酷いっ!」
「ほら、放っていくぞ。」
涼太は美波の手を引っ張り、目的地へと向かう。
*
「…………。」
「………リョウくん。」
「……何だ。」
「……ここ?」
「…………看板からしてここだろう。」
「……。」
美波と涼太はそれを見て凍りついた。
「蒼穹」と書かれた看板を見て、その店内を見た。
「……。」
「絶対あの変態弄ったな。」
「そうだよね。」
名前は蒼穹つまりは青空と言う意味なのに、店内は曇り空…否酷ければ嵐のようなイメージの店内だった。
「……入りたくないよ。」
「……。」
涼太だって出来るなら入りたくはない、こんないかにも罠がありますよ、と言っているような店だ。何が出ても文句は言えないだろう。
「……しゃーねーな。」
涼太は深々と溜息を吐き、真剣な目で美波を見た。
「お前はここで友梨先輩を待っていてくれ。」
「リョウくん?」
「オレは取り敢えず中に入って見てくる。」
「えっ…リョウくん一人で?」
「ああ、ここにはオレとお前しかいない、こんないかにも罠がありますといっているような場所におまえを連れて行く訳にはいかない。」
「で、でも……。」
一切しか違わないとは言えど、涼太は美波にとって年下の少年だ。彼は美波にとっては守らなければいけない存在なのだ。
「いいから、お前はここで見張っていろ。」
「……。」
「もし、中で変な音がしたら、すぐに友梨先輩を呼びに行ってくれ。」
「リョウくん。」
美波が不安そうな顔をするものだら、涼太は彼女を安心させたいがために無理矢理に不敵そうに見える笑みを作った。
「これでも、喧嘩は強いんだ、安心して待っていろよ。」
まだ不安が残る美波の顔は青かったが、それでも、小さく頷いてくれたので、涼太はもう一度微笑んで目的の場所に向かって走り出した。
あとがき:今月載せられるのは本当にいつになるか分かりません…、ですが、当分は二つずつ載せられそうなので良かったです。icon
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2011年09月07日 12時25分37秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・71・
「……落ち着いたか?」
「うん、ごめんね、昌獅(まさし)。」
一頻り泣いた友梨は耳まで赤く染め、はにかむように笑った。
「別に大丈夫だ。」
「……でも、時間。」
「平気だ、涼太(りょうた)には先に行ってもらったから、少しくらい俺たちが休んでも平気だろ。」
「えっ?何時の間に。」
友梨は周りを見渡し、確かに涼太や美波(みなみ)の姿が無い事を確認した。
「お前が癇癪起こした時。」
「………うっ、まだ怒っているの?」
「当たり前だろ。」
「ごめん、時間とってしまって。」
友梨の言葉に昌獅は深々と溜息を吐いた。
「お前、本当に分かっていないな。」
「えっ、何が?」
「俺が怒っている理由。」
「………私が癇癪起こして、それを宥めるまでにかなり時間がかかったから。」
「違う。」
やっぱり分かっていない、と言うように昌獅は肩を竦めた。
「何が違うのよ。」
「俺が言いたいのは、お前が自分よりも他人を大切にしている点だよ。」
「えっ?」
友梨にしてはかなり意外な言葉に彼女は首を傾げた。
「そんな事は…。」
「あるだろうが。」
即答する昌獅に友梨は眉を寄せた。
「お前はさ、人の目、気にしすぎ。」
「……。」
「もう少し、のんびりと構えろよ。」
友梨はそんな事はないと思うのだが、昌獅がそのようにいうものだから、本当にそうなのかと眉を顰めた。
「お前はお前でいいんだから、もっと気軽に考えろ。」
「……。」
友梨は昌獅の優しい言葉に小さく笑みを漏らす。
「そんな、簡単には無理だよ。」
「……。」
不満そうな顔をする昌獅に友梨は柔らかな目で彼を見詰めた。
「簡単には私自身の考えは変わらない。」
「友梨。」
「だけど……少しずつ変えてみるように努力する。」
昌獅は自分の声が友梨に届いたのだと知り、少し表情を和らげた。
「だから、昌獅も勇真(ゆうま)さんを許せるように考えてあげて。」
「……。」
勇真の名前があげられた瞬間昌獅の表情が凍りつく。
「……。」
簡単には変わらないかと昌獅の顔を見て感じた友梨は昌獅に気付かれないように小さく溜息を吐いた。
「これ以上、美波や涼太くんに任せるのは忍びないから、急ごうか。」
「……。」
友梨は最後にこの場所に何もないか探しに行こうと身を翻した瞬間、その手を昌獅に掴まれた。
「昌獅?」
「すぐには無理だが、少しずつ…変える。」
「……。」
はじめ何を言っているのか分からなかった友梨だったがすぐに、先ほどの会話を思い出し、喜びが彼女の顔に広がった。
「昌獅。」
「少しずつだからな。」
それで十分だと言うように、友梨は昌獅の手をしっかりと握った。
あとがき:お久し振りです…。もう九月なんですね〜。
早いものです。icon
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