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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2011年12月24日 12時00分24秒

    icon

    「お誕生日リクエスト」
    マナさんに贈ります。

    ダークネス・ゲーム キャラクター対談
    『サンタさんに願うなら…。』

    友梨:「マナさんお誕生日おめでとうございます。」
    智里:「って、その日より何日間か早いわよ。」
    美波:「どうやら、サンタさん、という事で二十四か二十五までには載せたいと思っていたみたいだよ?」
    智里:「呆れるわ。」
    友梨:「まぁまぁ。」
    昌獅:「友梨はさ、いつまでサンタなんて存在信じてた?」
    友梨:「何よ、唐突に………。私は小学校中学年くらいまでかな?」
    昌獅:「ふ〜ん、結構長くまで信じてたんだな。」
    友梨:「もしかして、お父さんやお母さんが、何て思った時期もあったけど、中々決定打がなかったから。」
    昌獅:「……何か、小さい頃のお前の行動が目に浮かびそう。」
    友梨:「何よ、それ、昌獅はどうなのよ。」
    昌獅:「俺?俺は小三だな。」
    友梨:「ふ〜ん、智里や美波はどうだっけ。」
    智里:「わたしはそうね小一くらいかしら。」
    美波:「えっ、サンタさんって存在するんじゃ……。」

    美波以外の全員が目を見張った

    友梨:「み、美波…。」
    美波:「じょ、冗談なのに…皆酷い……。」
    涼太:「お前なら…言いそうだから…ついな。」
    友梨:「りょ、涼太くんはどうなの?」

    友梨は必死の形相で話題を変えようとしている

    涼太:「オレは五歳。」
    友梨:「結構早いね。」
    涼太:「四歳の頃に必死で起きてたけど、いつまで経ってもこなくて、朝方うとうとしているうちにいつの間にか置いてあって、五歳の時は狸寝入りをしていたんだ。」
    友梨:「……。」
    涼太:「そんで、物音がした瞬間目を開けると親父のドアップ…アレは恐怖だった。暗い部屋に親父の顔だぜ…。」

    やや涼太の顔が青ざめる

    勇真:「ご愁傷様。」
    昌獅:「お前はどうなんだよ。」
    勇真:「あんまり覚えていないけど、小三くらいかな?」
    友梨:「そろそろ質問に入ろうか。」
    昌獅:「そうだな。」

    友梨はポケットから紙を一枚取り出した。

    友梨:「それじゃ、サンタさんから貰うならどんなもの?」
    智里:「世界。」

    智里以外、顔を引きつらせる。

    智里:「冗談に決まっているじゃない。」
    友梨:「あんたの冗談は冗談に聞こえないっ!」
    智里:「あら、そう、まあ、欲しいのはそうね……出来のいい姉と妹かな。」
    友梨・美波:「……。」
    昌獅:「友梨は何が欲しいんだよ。」
    友梨:「そうだな……、図書カード?」
    昌獅:「何かかなり平凡だな。」
    友梨:「だって、本が欲しいけど、自分で吟味したいし。」
    昌獅:「はいはい。」
    友梨:「そういう昌獅はどうなのよ。」
    昌獅:「そうだな……現金。」
    友梨:「……。」

    友梨はどこか遠い目をする。

    昌獅:「友梨と早く結婚したいからな、金はやっぱあった方がいいじゃねぇか。」
    友梨:「――っ!馬鹿っ!」

    友梨顔を真っ赤に染める。

    涼太:「はいはい、このバカップルは放っておいて、オレはそうだな、天然か鈍感が治る薬。」
    勇真:「……。。」

    無言で勇真は涼太の肩を叩いた。

    涼太:「美波と勇真はどうなんだよ。」
    美波:「あたしはそうだな、ゲームもいいし、CDもいいな、あっ、この前見た服もいいし、あのアクセサリーもいいな〜。」
    涼太:「分かった、もういい。」
    美波:「え〜。」

    げんなりする涼太に美波は不満の声を上げる。

    勇真:「おれはそうだな、皆が無事ならそれでいいよ。」
    涼太:「…なんか無欲だな。」
    勇真:「そうでもないよ。」
    友梨:「昌獅っ!いい加減にして、そろそろ終わりよっ!」
    昌獅:「まだいいじゃねぇか。」
    友梨:「この馬鹿っ!最近なんかあんた変よ。」
    昌獅:「別にいいじゃねぇか、オフなんだし。」
    友梨:「オフでもしっかりして。」
    涼太:「それじゃ、こんな滅茶苦茶な対談を読んでくれて本当にサンキューな。」
    勇真:「これからも、「弥生の河に言の葉が流れる」をよろしくね。」
    美波:「あと、「ダークネス・ゲーム」や他の作品も楽しんでいってください。」
    智里:「待ってるわよ。」
    昌獅:「それじゃ、この辺で。」

    昌獅最後までちゃっかりと友梨を抱きしめる。友梨はもう開き直ったのか笑みを浮かべている。

    友梨:「感想やぶっちゃけこれはないんじゃないと言う苦情何でも受け止められると思うので正直な感想をお願いします。それではありがとうございました。」

    (終わり)

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    マナ

  • from: yumiさん

    2011年12月23日 12時24分41秒

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    「お誕生日リクエスト」
    6《シンデレラ》

     何でこんな事になってしまったのだろう、友梨(ゆうり)はそんな事を思って二人のバトルを遠い目で見ていた。

    「友梨先輩大丈夫?」
    「う、うん…何とか。」

     友梨はそう涼太(りょうた)に答え、この物語の最初を思い出だす。


    「お姉ちゃん、隅がまだ汚れているわよ。」
    「……。」
    「本当にお姉ちゃんは大雑把ね。」
    「……。」
    「さっさとしないと日が暮れるわよ。」

     友梨(ゆうり)は胃を押さえながら、智里(ちさと)の厭味を聞き流していた。
     そして、それを少し遠くで見ている二人がいた。

    「智里お…母様、楽しそう。」
    「何かお似合いの役だな。」

     一人は普段の呼び方がそのまま出そうになり、何とか役通り言った。
     もう一人は仏頂面で呟く、その仏頂面になっている理由が今回二度目の女装をさせられているからか、それとも美波(みなみ)が姉役だからか、はたまた母親役が智里だからなのか、本人にしか分からない。

    「はぁ、助けに行くか。」
    「大丈夫?」
    「大丈夫だ。」

     そう言うと涼太は懐から一枚の手紙を取り出した。

    「手紙が入ってたぜ。」
    「あら。」
    「あっ、ごめん、涼太くん。」
    「いいえ、勝手にやった事ですから。」


     涼太はもし、これで友梨をいびったら殴ると言うように鋭い目で智里を睨む。

    「もうなのね、意外に早かったわね。」

     智里は涼太から手紙を受け取る。そう、それがすべての始まりだと友梨は思った。


     順調に物語が進み、友梨は綺麗なドレスを着てお城に向かった。
     そして、昌獅(まさし)が友梨の手を取り、踊る。
     友梨はステップを間違えないか、冷や冷やしたが、思ったよりも昌獅の腕が良かったので、彼女は昌獅の足を踏む事無く無事に踊りきった。
     そして、とうとう十二時の鐘が鳴る時、昌獅はしっかりと友梨の手を握っていた。

    「は、離しなさいよっ!」
    「ヤダ、どうせ面倒なんだ、ここにいとけよ。」

     友梨はここまで一応順調に物語が進んでいるので、何とか止めたくなかったので、仕方なくドレスの裾を持ち上げ、勢いよく昌獅を蹴飛ばした。

    「おい、友梨っ!」
    「馬鹿っ!」

     片一方のガラスの靴を脱ぎ、昌獅に向かって分投げた友梨は即座に消えた。

    「あの馬鹿…。」

     危うく割ってしまうところだった昌獅は傷一つない靴を見てホッと息を吐いた。

    「じらすなよ。」

     昌獅はそう呟き、すぐに友梨を探す準備を整え、翌日友梨のすんでいる屋敷に出向いた。
     そこまでは本当に順調だったが、今の状況は何なんだろうとようやく回想をやめた友梨はもう一度戦っている二人。
     昌獅と智里を見た。
     因みに二人は別に武器を持って戦っている訳じゃない、口喧嘩だ。

    「ごめんね、友梨ちゃん。」

     昌獅のお世話が係りなのか良く分からない役についている勇真(ゆうま)が謝り、友梨は首を横に振った。

    「いいえ、勇真さんが悪いんじゃないですから…。」

     友梨はこの状況を何とかできないものかと考えるが、どうする事もできないと諦め、台所に行きお茶の準備をして勇真たちにお茶を振舞った。
     そして、ようやく決着のついたようで、友梨は無事昌獅に嫁ぐことになったのだった。


    めでたし、めでたし


    End


    〜おまけ〜
    「終わった〜。」

     友梨は背伸びをしてやりきった感のためか笑みを浮かべていた。

    「それにしても、最後はかなり駆け込んでいないか?」
    「そうでもしないと暴走する人たちが多いからでしょ?」
    「…誰だよ、そのはた迷惑の奴は。」
    「……。」

     友梨はジロリと昌獅を見るが彼は気づいていないようだ。

    「まぁ、いいわ、それじゃ。」
    「今回こちらをリクエストしてくださりありがとうな。」
    「明さん、大変遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございました。今後とも「弥生の河に言の葉が流れる」をよろしくお願いします。」
    「そんじゃ、この辺でー―。」
    「失礼いたします。」

    本当に終わり

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  • from: yumiさん

    2011年12月22日 12時21分25秒

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    「お誕生日リクエスト」
    5《眠り姫》

     友梨(ゆうり)は今現在、ピンチだった。

    「お姉ちゃん、こんなもの誰が刺すと思っているの?」
    「…す、すみません。」

     何故か眠り姫役の智里(ちさと)が何処に隠し持っていたのか分からないが、友梨の喉元にナイフを突きつけていた。

    「さてさて、どうしようかしらね……。」

     クスクスと笑う智里に友梨は顔を真っ青にさせる。

    「お、お話が……ずれるから、お願いだから……。」
    「お姉ちゃん。」
    「――っ!」

     ナイフがさらに近づき、友梨はもう駄目だと目を瞑った。

    「別に眠りにつかなくたって、別にお姉ちゃんを倒せばそれで、終わりよ?」
    「ひっ!」

     智里の目はどうやら本気のようで、友梨は本当に殺されるのではないかと冷や冷やする。

    「さ〜て、どうやって料理しようかしら?」
    「や、やめてっ!」
    「ち、智里ちゃん、止めて、止めて。」
    「智里お姉ちゃん、駄目だよ。」

     あまりにも危険だと判断した王子役の勇真(ゆうま)と美波(みなみ)が必死になって智里を取り押さえた。

    「何で貴方たちがいるんですか?」
    「た、頼むから穏便に。」
    「そうだよ、お話が滅茶苦茶だよ。」
    「……。」

     智里は友梨を一瞥し、友梨は金縛りにあったように指一本動かせなかった。

    「ま、しょうがないわね。」

     友梨はホッと息を吐き、勇真を見る。

    「お話、どうしましょう……。」
    「そうだね……。このまま友梨ちゃんが逃げてお仕舞い…なら、まだマシだよね。」
    「わ、分かりました、全力で逃げます。」

     友梨は恐怖で強張る体を叱咤して立ち上がり、ドアから逃げようとした瞬間、彼女の真横をナイフがよぎった。

    「……。」
    「……。」
    「……。」
    「逃がすと思う?」

     智里の低い声に友梨は戦慄する。

    「お、お願いだから命だけはっ!」
    「わたしを呪った罪は重いわよ。」
    「呪ってないから、呪ってないから、というか呪えませんから!」

     友梨は逃げ口を探そうとするが、ドア以外の逃げ口といえば、窓しかない。しかし、ここは塔の最上階、飛び降りなど不可能だ。

    「……。」
    「お願いだから、見逃して。」

     友梨は半泣きになりながら許しを請うた。

    「……智里ちゃん、ごめん。」

     勇真は智里を羽交い絞めにして、友梨に逃げるよう叫ぶ。
     友梨はその隙のお陰で運よく逃げ延びたのだった。

    End……?

    「し、死ぬかと思った…。」
    「つか、全然話しにならなかったな。」
    「智里が主人公にしようとするのが間違っているし、あの子にあう童話なんて思いつかないわよ……。」
    「だよな。」
    「あってもかちかち山のウサギよ!」
    「……。」

     確かにあの容赦のなさならばお似合いのような気がして昌獅は黙り込んだ。

    「次でやっと終わる。」
    「無事に終わるといいな。」

     この時友梨は昌獅が妖艶に微笑んでいた事に気づいていなかった。

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  • from: yumiさん

    2011年12月21日 10時16分49秒

    icon

    「お誕生日リクエスト」
    4《赤ずきんちゃん》

     鼻歌を歌っている美波(みなみ)は籠を持って友梨(ゆうり)の家に向かった。

    「いい天気だな〜。」

     暢気な事を言う美波の近くでは猟師役の涼太(りょうた)が木陰に隠れながらはらはらしていた。

    (あの馬鹿…もっと緊張感持てよ……。)
    (おい、涼太。)
    (――っ!)

     まさか、後ろから狼の尻尾と耳をつけた昌獅(まさし)がいるとは思っても見なかったから涼太は飛び上がりそうなほど驚いていた。

    (な、何でお前がここにいるんだよ。)
    (ちょっとな。)
    (……。)

     涼太はまさか昌獅がまたよからぬ事を考えているんじゃないかと訝しむ。
     その目で何を言いたいのか分かった昌獅はニヤリと不敵に微笑んだ。

    (分かっているじゃねぇか。)
    (…友梨先輩かよ。)
    (ああ、だから、絶対にあいつを近づけさせんなよ。)
    (……。)

     絶対に友梨を襲おうとしている昌獅に涼太は苦い顔をする。

    (……何つーことを考えているんだよ、お前は……。)
    (別にいいだろう、どうせ、後二つのうち、一つはあの悪魔の独占場だぞ、やってられないじゃねぇかよ。)
    (……。)

     涼太は嘆息する。

    (程ほどにな。)

     涼太は友梨の身を案じながらも、一番大切なのは美波なのでこれ以上彼女と差を広げられると彼女が転びそうになっても助けられない。

    (んじゃあな。)
    (……。)

     颯爽と去る昌獅に涼太はうんざりしながら、美波の後を追った。
     美波は花を摘み、そして、腕いっぱいに抱えていた。

    「あいつ……。」

     苦い表情を浮かべ、涼太は絶対にあの娘がこけるのを予想して足を速めた。
     そして、彼の予想通り、美波は石につまずき体が傾いた。

    「美波っ!」
    「ふぇ……。」

     地面にぶつかる寸前に美波は涼太に支えられた。

    「大丈夫かよ……。」
    「う、うん、ありがとう、リョウくん。」
    「はぁ。腕いっぱいに物を持つなよ、こけても仕方ないぞ。」
    「だって、綺麗なんだもん。」
    「はいはい。」

     涼太は呆れながら美波に適当に返事をする。

    「そういえば、リョウくんの出番ってもっと後じゃなかった?」

     小首を傾げる美波に涼太は本日何度目かの溜息を吐いた。

    「劇がつぶれそうだからな。」
    「ふぇ?」
    「そんじゃ、家に送る。」
    「え、でも…あたし、友梨お姉ちゃんの所に……。」
    「それは後でオレが持っていくから安心しろ。」
    「?いいの?」

     涼太がそう言っている意味が分からない美波は首を傾げそう訊ねる。

    「ああ、ほら、行くぞ。」

     涼太は美波の手を引き、そして、花畑を後にし、美波の家まで連れて行った。

    「そんじゃ、それ預かるな。」
    「うん、よろしくね。」
    「腹出して寝るなよ。」
    「寝ないよっ!」

     涼太の意地悪に美波は頬を膨らませそっぽを向く。

    「それならいいけどな、じゃあな。」
    「うん、またね。」
    「ああ。」

     涼太は籠と花を持ち、そのまま友梨の家へと続く森の中に入っていった。

    「大丈夫だといいんだけどな……。」

     涼太は友梨の家の前に立つの控えめなノックをした。
     しばらくは恐ろしいくらいの静かさに、涼太は本当に昌獅に友梨が食われたのではないのかと、心配になるが、それは杞憂に終わった。

    「は〜い、美波?それとも涼太くん?」

     元気そうな友梨が姿を現し涼太は軽く目を見張った。

    「友梨先輩大丈夫なんですか?」
    「平気平気。」

     ニコニコと微笑んでいる友梨だが、その笑みはどこか恐ろしく思えた。

    「ま、昌獅が来たんじゃ。」
    「……。」

     昌獅の名が出た瞬間友梨の目がこれ以上はないって程冷たい光を宿した。

    「ああ、あの狼さんね………。」

     低い声が友梨の口から漏れ、涼太は知らず知らずの内に体を強張らせた。

    「……ちょっと、悪戯が過ぎたから、そこで寝ているわよ。」

     友梨が指差した先に確かに昌獅はいた、彼は木に凭れ掛かり、顔は悲惨なほど腫れ上がっていた。

    「……。」
    「大丈夫、次は確か昌獅の出番はないし、最後には何とかなるわ。」
    「そうですね……。」

     涼太はそれ以上何も言えず、手に持っていた荷物を思い出す。

    「友梨先輩、これ。」
    「あら、ごめんね、美波とかの面倒とか見させちゃって。」
    「いいえ、あいつが狼に選ばれた時点で予想はしていたんで。」
    「少しは真剣にお芝居をして欲しいわね。」

     友梨はギロリと昌獅を睨みながら、涼太から籠を受け取った。

    「それじゃ、オレはこの辺で。」
    「ありがとう、それじゃ、気をつけてね。」
    「はい。」

     涼太の身を純粋に案ずる友梨に彼は微かに微笑み、森へと再び足を踏み入れた。

    End……?

    「……昌獅、いい加減にしなさいよね!」
    「……本気で殴るなよ。」
    「あんたが悪いんじゃない。」
    「……。」
    「この変態っ!色魔!」
    「お前な……。」

     額を押さえる昌獅を無視して、友梨はどすどすと次の場所に移動したのだった。

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  • from: yumiさん

    2011年12月16日 09時53分58秒

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    「お誕生日リクエスト」
    3《マッチ売りの少女(?)》

    「マッチはいかがですか?」

     涼太(りょうた)は雪降る中必死でマッチを売るが、中々買い手が現れなかった。

    「マッチ、マッチは……って今のご時勢でマッチなんか買う奴いないよな。」

     思わず本音を漏らす彼は己の持つ籠に入っている山ほどのマッチを一瞥する。

    「はぁ、今は百均で、ライターだって売ってるし、それにお徳用の箱を買えば絶対そっちの方がいいよな……。」

     妙に現実的な事を言う涼太の格好はつぎはぎのスカートと裸足だった。

    「はぁ、マジで冷える。」

     涼太は手持ちのマッチに手を出す。

    「マジで、何で一個五千円なんだ?嫌がらせじゃ……。」

     涼太は一箱取り出してみると予想よりも軽くて、目を見張った。

    「何だ…えらく軽いじゃねぇか。」

     不思議そうに涼太は箱を見るとなんと中にはマッチが一本しか入っていなかった。

    「さ、詐欺…だ。」

     一本のマッチが五千円もするなんて、絶対に訴えられると思った涼太は箱をまじまじと見た。

    「あっ…。」

     箱のパッケージに「智」と書かれていた。

    「……。」

     涼太はこれを捨てたく思ったが、話が進まないと思った。しかし、このマッチを使う勇気が彼にはなかった。

    「ど、どうすれば……。」

     マッチ売りの少女の話を思い出し、涼太は溜息を吐く。

    「このまま凍え死ねばいいのか……つーか、冗談抜きで凍え死にそうなくらい寒いんだがな……。」

     涼太はぼんやりと空を見上げた。

    「寒いな……。」

     こんな日は暖かい部屋でのんびりしたい涼太だが、今回はそんな贅沢が出来ないので余慶に落ち込んだ。

    「それにしても……暇だな。」

     だんだん人が少なくなっていき、涼太は近くの家の壁に凭れ掛かり座り込む。

    「何で女装なんだろうな……。」

     今更だが、何でこんなクソ寒い日に、スカートを穿くという辱めを受けなければならないのか涼太は顔を顰めた。

    「……。」

     涼太は暇をもてあまして、マッチの箱をいじり始めた。

    「…んあ?」

     パッケージかかれている文字を読み始めた涼太の表情が徐々に凍りつく。

    「…『人を呪うその一、人型の蝋燭を用意し、憎い人の名前かイニシャルを彫り、そして、このマッチを使えば、あら不思議、その人の命はその蝋燭が消える頃には……。』。」

     涼太の顔が強張ったままたくさん入っている籠を見た。

    「ま、マジかよ…。」

     何とも恐ろしいものを売ろうとしていた自分に涼太は愕然とした。

    「知らないじゃ、すまねぇぞ…。」

     犯罪者にでもさせる気か、と涼太は呟き、このマッチの処理に頭を悩ませ、そして、夜が明ける頃には完全に体を冷やした涼太は風邪を引き、そこから命を落としたのだった。

    End……?


    「何か、話違わないか?」
    「まぁまぁ、どうせチョイスしたお話が微妙だったし、仕方ないじゃない、それに、多分涼太くん一人じゃ、見事にマッチ売りの少女で終わっていただろうし、あれくらいはいいんじゃない?」

     友梨の言葉に昌獅は納得したのか、次の準備を始める。

    「あと三つもあるのかよ。」
    「半分よ、半分。」

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  • from: yumiさん

    2011年12月15日 14時10分26秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・123・

    「智里(ちさと)。」
    「何かしら?」
    「もし、涼太(りょうた)くんが怪我をしたら私絶対に怒るからね。」
    「まぁ、怖い。」
    「……。」

     わざとらしい智里に友梨(ゆうり)は眉間に皺を寄せた。

    「私は本気だからね。」
    「大丈夫でしょ、あのクソ餓鬼は悪運だけは強いんだから。」
    「クソ餓鬼って…あんた。」

     友梨は智里の言い方に呆れ、小さく肩を竦めた。

    「涼太くんはいい子だよ。」
    「分かっているわよ。同じ年頃のクソ餓鬼どもと比べたら、思慮分別もあるし、まあまあ、いいかもしれなけど、それでもまだまだ青いわ。」
    「……。」

     智里にしたらたとえ五十過ぎのおじさんでも間違いなく子どもとか言いそうなので、友梨は顔を引きつらせる。

    「何か失礼な事考えたでしょ。」
    「えっ、何の事?」
    「まあ、別に構わないけど。」
    「……。」

     友梨はホッと息を吐いた。

    「リョウくん…大丈夫かな?」

     涼太を案ずる美波(みなみ)に友梨は純粋に驚いた。

    「お姉ちゃん、甘いわ。」

     智里の小さな呟きは残念ながら友梨の耳には届いていなかった。

    「美波、心配なの?」
    「うん、心配だよ。」
    「……。」

     ようやく涼太が報われ始めているのではないかと、友梨は顔をほころばせるが、次の美波の言葉によって彼女の笑みは凍りついた。

    「だって、弟みたいだもん。」
    「……。」
    「お姉ちゃんだって、妹のあたしが怪我をすれば心配でしょ?それと一緒だよ。」
    「……。」

     友梨は思わず、涼太に同情した。
     何でこんなにも涼太は美波を想っているのに、何でこの娘は全くその事に気づかないのだろうか。

    「何か…、頭痛くなってきた。」
    「大丈夫?」

     元凶が心配し、友梨は盛大な溜息を吐きたかったが、何とか堪えた。

    「何とかね……。」
    「そう、良かった。」
    「……涼太くん…どうして、こんなにも救いようのないような鈍感を好きになってしまったのかな…。」

     友梨の呟きはきっと涼太自信思っている事だろう、だけど、それを言ったところで、涼太は美波を嫌いになれないし、友だちという立場で収まりたいとは思わないだろう。

    「はぁ。」
    「お姉ちゃん、溜息吐くと幸せが逃げるよ。」

     本当は吐きたくなかった溜息が友梨の口から漏れ、美波が迷信じみた事を言った。

    「もう逃げているわよ。」
    「ふえ?」

     こんなゲームに巻き込まれる事態もう幸せなんて思わない。
     だけど、不幸せの中にあったたった一つの「愛」だけは感謝するが、それ以上に「憎しみ」や「怒り」が彼女の中にあった。

    「さてと、昌獅っ!しっかりやってよね。」

     友梨は昌獅に向かって大きく怒鳴った。
     それを聞いた昌獅は軽く手を挙げた。

    あとがき:十一万人突破しました。長いようで早いですね。今年中に十一万いくとは正直思っても見なかったので少々驚いています。

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  • from: yumiさん

    2011年12月13日 10時47分56秒

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    「『さよなら』のかわりに―紅葉を―」
    「機嫌直せよ。」
    「……。」

     もくもくと食事を続ける秀香(しゅうか)に兄は苦笑を浮かべた。

    「秀香〜。」
    「……。」
    「秀香。」

     征義(まさよし)に呼び捨てにされ、秀香は黙って睨むが、その目の前に御飯茶碗を差し出され、目を丸くさせた。

    「おかわり。」
    「――っ!」

     自分勝手な征義に秀香は怒鳴りたくなったが、そうすれば彼の思う壺になりそうなので、黙って席を立った。

    「おい、本城。」
    「何だ、辻。」
    「人の妹を勝手に呼び捨てにすんなよ。」
    「いいじゃねぇか。」
    「てめぇは教師だろうが。」
    「正確には教育実習生だから、まだ免許は取ってないさ。」
    「……。」

     秀香の兄は行儀悪く箸を噛んだ。

    「おれはてめぇを認めてねぇぞ。」
    「お前に認めてもらわなくたって結婚できる。」

     さらりと言う征義に秀香の兄はギロリと彼を睨んだ。

    「てめぇ、正気かよ。」
    「ああ、悪いが本気だ。」
    「何でてめぇのような奴があいつを。」
    「あいつは俺に似ていてだけど、異なる存在だ。」
    「……あいつとお前が似てるはずがねぇだろ。」
    「……さあな。」

     肩を竦めてみせる征義の目の前にドンと大盛りにご飯が盛られた茶碗が置かれた。

    「おっ、サンキュー。」
    「……。」

     征義は秀香の不機嫌そうな顔に気づいているのに、わざと気づいていないような顔をしているので、秀香はそんな征義の態度に腹を立て、彼を一睨みした。

    「何だ?俺の顔に何かついているか?それともこの顔に興味があるのか?」
    「……。」

     秀香の怒りが限界に来ていたのか、彼女は台所に行きある調味料を持ってきた。

    「さっさとそれ食っていなくなれっ!」

     そう言うと塩を思いっきり征義にぶっ掛けた。

    「わっ!」
    「……。」

     先ほどまで驚いていた征義は、まさか塩をまかれるとは思ってもみなかったので苦笑する。

    「酷いな、秀香は。」
    「馴れ馴れしく呼ばないでくださいっ!」

     秀香は征義を睨むが、彼はニヤリと微笑んだ。

    「いいじゃねぇか。」
    「良くありませんっ!」
    「何でだよ。」
    「私にとって貴方は教育実習生、つまりは先生なんですっ!」
    「……別にまだ大学生だぞ?」
    「それでも、変わりありませんっ!」
    「……。」

     征義は頑固な秀香を一瞥して肩を竦める。

    「長期戦になるとは思ったが、こんなに頑固だとは正直想定外だ……。」

     眉を寄せ、考える征義に秀香の兄はニヤリと笑った。

    「どうだ、こいつは一筋縄じゃいかねぇだろ?」
    「そうだな、だけど、悪くない。」
    「お前、Mか?」
    「いや、違う、ただこんなにも懐かない子猫を飼いならすのが楽しみなだけだ。」
    「……うげっ、秀香可哀想にマジでやな奴に惚れられたな。」
    「煩いっ!」

     全てを聞いていた秀香は顔を真っ赤にさせ、己の部屋に逃げ込んでいった。

    「本当に、子猫みたいで飽きないな。」
    「…はぁ、マジであんな子どもの何処がいいんだか。」
    「全部。」

     即答する征義に秀香の兄はこれ以上何も言わず、そして、食事を終えた征義は荷物を持ち自宅へと帰っていった。

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  • from: yumiさん

    2011年12月12日 11時37分29秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・122・

    「で、智里(ちさと)何なのよ。」

     説明もなく呼ばれた友梨(ゆうり)の顔には不満がありありと書かれていた。

    「何でもいいでしょ。」
    「……。」
    「まぁまぁ、智里ちゃんも友梨ちゃんもいがみ合うのはやめてくれないかな?」
    「……勇真(ゆうま)さんに免じて今日は許してあげるけど、次はどうなるか分からないんだからね。」
    「お姉ちゃんが怒っても怖くなんかないわよ。」
    「……。」

     友梨の額に青筋が浮かび、それを不味いと思った勇真が二人の間に割って入った。

    「涼太(りょうた)がここに着いた時何か光っているのを見たとか言ってたんで、さっきの休憩の間に見に来たんだけど……。」
    「どうやら、屋根の方にあるみたいでうまく見えなくて、たまに太陽の光で光っているように見えるから、それが本物かもまだ判断できないんだ。」

     勇真の言葉を継ぐように、涼太はそう言い、肩を竦める。

    「何で始めに言わなかったんだよ。」

     涼太の言葉に昌獅(まさし)は眉間に皺を寄せた。

    「確信がなかったんだよ、一瞬だったしな。」
    「成程ね。」

     友梨も涼太の言葉に納得する、確かに自分も一瞬光ったように見えたとしても確信は持てず何も言えなかっただろう。

    「で、何でこいつは俺たちを呼んだんだよ。」
    「こいつ、呼ばわりしないでくれるかしら?」

     智里は蔑むように昌獅を見た。

    「……。」
    「それは簡単な事よ、二階へ向かうために階段を使いたいけど、そこに向かうまでの間に鍵がしてあるのよ。」
    「……。」
    「で、どうする気なの?」

     友梨はだんだん目が据わっていく昌獅を横目で見ながら智里に問うた。

    「脚立とかがあればいいんだけど…。」
    「あっても、短いのしかないわよ。」
    「でしょうね。」

     中で探していたメンバーは中にあるのは踏み台程度の高さしかない脚立しか見当たらなかったのを知っていた。

    「どうする気なの?」
    「どうするも、こうするも探すか、別の手を捜すかでしょ?」
    「……別の手を聞いているの。」

     友梨はじらそうとする智里に半分イラつき始めるが、何とかそれを押さえる。

    「このくらいの高さなら、勢いをつければ上れそうじゃない?」
    「……。」
    「丁度、まあまあ鍛えられている人たちが二人もいるし、傷を負っても大丈夫な軽そうな奴もいるから大丈夫でしょう。」
    「「「……。」」」

     智里のいう三人は互いの顔を見合わせ、溜息を吐く。

    「何でこうなるんだ?」
    「だけど、そうする方が手っ取り早いし。」
    「……つーか、失敗したらオレが一番被害大きじゃねぇか。」

     勇真と珍しく昌獅も同情的な目で涼太を見た。

    「まぁ、オレが一番こん中で適任かもしれねぇけど。」

     実際美波(みなみ)と涼太が軽いだろう、そして、運動神経がまだいいのは大きい二人を除いたら友梨と涼太。
     つまり、トータル面で見たら涼太が適任なのだ。
     だけど、智里が彼を押す理由は別にもあった。
     それは一番怪我をしても大丈夫な人間だったからだ、美波や友梨に怪我をして欲しくない智里は意識をしてか、しなくてか涼太を選んだのだった。

    「仕方ねぇ、やるか…。」

     涼太は少しでも体重を軽くするために上着や鞄などを地面に置き始めた。

    あとがき:やっと書きたかった、場所にたどり着いた気がします。次はいつ載せられるかは本当に分かりませんが、お待ちください。

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  • from: yumiさん

    2011年12月10日 11時56分18秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・121・

    「あ〜、もう、何で見つからないのよ〜。」

     友梨(ゆうり)は机の上にうつ伏し、溜息を吐く。

    「しゃーねーだろ。」
    「だってさ〜。」

     昌獅(まさし)はそっと友梨の頭を撫で、彼女を落ち着かせようとする。

    「お前は頑張りすぎなんだ、今くらい素直に休めよ。」
    「……。」

     友梨は唇を尖らせるが、昌獅の言うとおりかもしれないと思い、拗ねたようにそっぽを向く。

    「リョウくん、何処行くの?」
    「ちょっと外。」
    「何で?」
    「気になる事があってな。」
    「気になる事?」

     せっかくの休憩なのにわざわざ外に出ようとする涼太(りょうた)に美波(みなみ)は不思議そうな顔をする。

    「ああ、気のせいかもしれないけど、当たってみる価値はあると思
    うんだ。」
    「涼太くん、おれもついて行くよ。」
    「別に一人でも。」

     別に一人でも大丈夫だと涼太は思うのだが、勇真(ゆうま)はニッコリと微笑んだだけだ。

    「……勝手にしろよ。」

     どうせ、何を言っても無理についてくるに決まっているので、涼太は諦める事にした。

    「で、気になる事って?」

     外に向かう途中勇真がそう訊ねると、涼太は溜息を吐きながら答える。

    「はじめここに来た時、屋根の所で何か輝いたように見えたんだ。」
    「……。」
    「最初は錯覚だとか、気のせいだと思ったけど、こんなに探しても出てこないんならもしかして、と思ってな。」
    「成程、探す価値はあるね。」
    「まあ、本当に屋根の方にあるんなら面倒だけどな。」
    「えっ?」
    「ここ二階はスタッフの休憩場があるみたいなんだけど、二階に行くまでの階段がありそうな部屋は鍵が掛かってたんだよ。」
    「……。」
    「鍵も見当たらなかったし、下手にいじって無事に元の生活に戻った時、そんな後があったら問題があるだろ?」
    「確かに……。」

     涼太の言葉に勇真も納得する。

    「そんな事になれば大事になるな…。」
    「だろ?」
    「ただでさえ、ビルを一つ焼いたり、色んな場所を破壊しているのに、これ以上物を壊すのは気が引けるな。」
    「つーか、どれも、向こうが悪いんだけどな。」

     涼太は眉間に皺を寄せ、そして、上に視線を向ける。

    「さっさとやるしかないな。」
    「ああ。」

     涼太は先ほど見た場所を睨むように見る、すると微かに太陽の光に何かが反射した。

    「ん……。」

     もっと目を凝らしてみると確かに何かありそうなのだが、全く分からない。

    「あー、くそ…上に上がってみない事には分からないのか?」
    「…困ったね。」
    「しょうがないわね。」
    「「――っ!」」

     まさかの第三者の声に涼太と勇真はびっくりして振り返るとそこには智里がいた。

    「智里ちゃん。」
    「いつから。」
    「貴方がたがこそこそしている時から。」

     別に彼らはこそこそしているつもりはないのだが、智里の目にはそう映ったようだ。

    「まあ、一つ手はありますけど、お姉ちゃんたちを呼んできますね。」

     智里が何を考えているのか、勇真たちには分からなかった。

    あとがき:マナさんすみません、もしかしたら彼方の誕生日を過ぎてからになってしまいそうです、本当にすみません。

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  • from: yumiさん

    2011年12月09日 09時59分58秒

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    「お誕生日リクエスト」
    2《桃太郎》

    「も〜も太郎さん、も〜も太郎さん、お腰につけた黍団子、一つわたしにくださいな〜。」
    「……歌うな、美波(みなみ)。」

     暢気に歌う美波に涼太(りょうた)は猿の着ぐるみを着ながら溜息を吐いた、因みに美波の頭には犬の耳のカチューシャとスカートの裾からは見事な犬の尻尾が見えた。

    「やあ、美波ちゃん、涼太。」

     桃太郎の格好をした勇真(ゆうま)は笑みを浮かべ、やってきたので、涼太は顔を引きつらせた。

    「何で暢気に登場してんだよっ!」
    「変かな?」
    「そんな事ないと思いますよ?」
    「変か変じゃないの問題じゃねぇっ!てめぇには威厳が感じないんだよ。」
    「そう言われてもね。」

     苦笑を浮かべる勇真に冷たい声音がその場に落ちる。

    「その辺にしたらどうです?」

     背中に大きな翼をつけた智里(ちさと)が木の上から話しかける。

    「ああ、智里ちゃん、そこにいたんだね。」
    「ええ、先ほどから。」
    「ごめんね、気づかなくて。」
    「別に構いませんけど。」

     微かに溜息を吐いて、智里はそんなに高くない木から下りた。

    「で、さっさと鬼を退治して帰りますか。」
    「えっ、まだ残り四つのお話が残っているよ?」
    「……。」

     美波の言葉に智里だけではなく涼太も疲れたように溜息を吐いた。

    「この天然娘が……。」
    「えっ?」
    「今この場で次の話なんてしないで頂戴。」
    「でも…。」
    「ほら、さっさとすませましょう。」

     さっさと木から下りて、前を歩き出す智里に勇真は苦笑しながら美波と涼太を促した。

    「それじゃ、行こうか。」
    「あ〜、何か嫌な予感がする。」

     涼太の漏らした言葉が現実になるなんて、この時の誰も思っていなかっただろう。

    ***

    「さあ、ついたわ。」

     智里と美波はさっさと舟から降りるが、残る男性人は肩で息をしていた。

    「ひ、人使い荒い…。」
    「いや、今涼太は人じゃなくて、猿だから。」
    「つーか、着ぐるみが動きにくいんだよっ!」
    「脱げばいいじゃないか…。」

     呆れる勇真に涼太はギロリと睨んだ。

    「オレが脱いでみろ、絶対に文句言われるに決まっているし、役が分からなくなるだろうがっ!」
    「…律儀なんだね。」

     涼太の言葉に勇真は苦笑している。

    「あっ、智里、美波…涼太くんに、勇真さん、こんな所で何をしているんですか?」

     聞き覚えがある声に涼太たちがそちらに顔を向けると小袖を着た友梨(ゆうり)がそこにいた。

    「友梨お姉ちゃん。」
    「…お姉ちゃん、確か名前がなかったわよね?」
    「うん、何か鬼に連れ去られた村娘Aみたい。」
    「「「「……。」」」」

     友梨の言葉だけを聴けばどう考えても脇役にしか聞こえないのだが、彼女を連れてきた「鬼」が、彼らが思い浮かべた人物なら彼女をうまく使えば円満で終わるだろう。

    「……。」
    「何か…オレたちが来た意味ないんじゃない?」
    「言うな…仕方ないよ。」
    「ねぇ、友梨お姉ちゃん。」
    「ん?何?」
    「鬼役ってもしかして。」
    「ああ、昌獅(まさし)よ、昌獅。」
    ((((やっぱり……。))))

     この場にいる全員が同時に同じ事を思った。

    「で、その昌獅は?」
    「ちょっと出かけているけど?」
    「村を襲っているの?」
    「まさか、ちょっと狩をしにね。」
    「……。」
    「自給自足も大変だけど、結構面白いものよ。」

     なんとも逞しい友梨に勇真たちはどうしたものかと、思った瞬間、勇真に向かって鋭い石が投げられた。

    「……。」
    「昌獅っ!」

     勇真は寸前のところで避け、友梨は投げた犯人が誰か分かり般若のような顔で振り返った。
     そして、彼女が叫んだように憤怒の顔の昌獅がそこにいた。

    「友梨、こっちに来い。」
    「……や。」
    「友梨っ!」
    「勇真さんたちだもの、大丈夫よ。」
    「だが、この話は。」
    「大丈夫だよ。」

     勇真はそう言うと、智里、涼太、美波と順に見ていった。

    「いいかな?」
    「別に構わないわ、無駄な体力を使う必要がないから。」
    「オレも別に、いいぜ。」
    「えっ、えっ、どういう事?」

     ただ一人は理解していないが残る二人は勇真の意見にどうしてくれたので、勇真はホッと息を吐いた。

    「簡単な事だ、悪さなんかしていない昌獅を退治しなくてもいいからな。」
    「あっ、そうか。」
    「それじゃ、おれたちは帰るな。」
    「あっ、ちょっと待って、お土産持って帰ってよ。邪魔で仕方ないから。」

     友梨はそう言って物置として使っている納屋から高価な壷や屏風、つまりは金目になりそうなものを持ってきた。

    「何か昌獅が悪い鬼だと勘違いして色々持ってこられるんだけど、こっちは迷惑だし、換金なんて出来ないから。」
    「ごめんね、友梨ちゃん気を使わせてしまって。」
    「ううん、こっちだっていらないものを押し付けているんだから。」

     友梨はそう言うと、荷台を昌獅に持ってこさせ、いらないと称した宝を乗せていったのだった。

    「それじゃ、気をつけて帰ってくださいね。」
    「もう、来るなよ。」

     勇真たちを見送る二人に勇真はこっそりと苦笑する。

    「友梨ちゃんがいれば間違いなく昌獅は鬼になりきれないな。」
    「だよな、もしそんな事になれば間違いなく、あいつ友梨先輩に張った押されるぞ。」

     完全に尻に敷かれている昌獅に男性人は同情の目を向けるが、それでも、本人が幸せならばそれでいいかと思うのだった。

    End……?

    「昌獅っ!いい加減にしてっ!」
    「別にいいだろ、夫婦なんだし。」
    「それは劇ででしょうがっ!」
    「まだいいだろ。」
    「駄目っ!」
    「……。」
    「ほら、次よ、次っ!」

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