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from: yumiさん
2012年05月31日 14時47分17秒
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「二周年記念小説『生きる』」
『過去』
気づいたら私は変な場所にいた。
「ここ…。」
見覚えの無い荒地、そして、襤褸を纏った人たちが寝転がっている。
「……。」
私はそっと倒れる人に話しかけようとかがんでみた。
「――っ!」
倒れる人は虚空を見ていた。そう、息をしていないのだ。
私は驚いて後ずさると、私の耳に微かな泣き声が聞こえた。
ゆっくりと振り返ると自分や先ほど見た少年よりもずっと小さな幼女が女性を揺さぶっている。
「お母ちゃん…お母ちゃん。」
幼女は涙をたたえながら母親と思わしき女性を揺さぶるが、女性はもう亡くなっているのかピクリとも動かない。
「何なのよ。」
「ここはお前の時代よりもずっと昔だよ。」
少年の声がして振り返ると少年は悼むような顔をしていた。
「悲しいよな。生きたいのに。生きられない。」
「…なんでこうなっているの。」
「飢饉や疫病、色んなもんがここで起こった。そして、人はなすすべもなく死んでいった。」
「……。」
私は吐き気を覚えた。だけど、ここで無様にもどすのは嫌だった。
「お前は生きているのに、生きたいと思っていない。何でだ?」
「そんなの、私の勝手じゃない。」
私がそう返すと少年は思いっきり嫌悪の顔をした。
「勝手だと?生きたいのに、生きれない人間だっているんだ。ここにいるやつらを見ろよ。」
少年は怒気の含んだ声音でそう言った。
私は渋々周りを見渡すと、死人は全員やせ細っている。
「食うものがない。病とかにかかり食えない。色んな理由があった。だけど、人は栄養を取らなければ死んでしまう。そして、病で命を落とす。」
「……。」
「お前はこんな必死で生きようとしているたちをみても、まだ、自分はただ生きているだけだと思っているのか?」
「だって…。」
「お前は知らず知らずの間に多くの命を貰っているんだぞ。」
「ただの綺麗ごとじゃないっ!」
私は自分が責められているようで嫌だった。
「何よ、貴方は私を説教するためにこんな場所につれてきたのっ!そんなの迷惑よ。」
「………………仕方ねぇ。」
少年は虚空に手を伸ばし、そこから杖を取り出す。
「何…打つ気?」
少年は無言のままそれを私に振り下ろそうとして、私は思わず、目を硬く瞑った。icon
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from: yumiさん
2012年05月31日 14時29分41秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・142・
「まあまあ、二人とも落ち着いて。」
今にも怒鳴りあいを始めそうな友梨(ゆうり)と昌獅(まさし)の間に勇真(ゆうま)が割り込んだ。
「……。」
「……。」
二人は黙って睨み合い、そして、同時に顔を逸らした。
「……喧嘩するほど仲がいいのは分かったから、こういう時は止めてくれないかな?」
「――っ!」
「……。」
勇真の言葉に友梨は羞恥で顔を赤く染め、昌獅は特に感情を感じさせない目で勇真を睨んでいた。
「はぁ、友梨ちゃんの言うとおり一度やってみようか、どうせノーヒントだしね。」
「はい。」
それぞれ六人は珠を持った。
赤は勇真が持ち、橙と黄色は昌獅、緑は友梨、青は智里(ちさと)、藍色は涼太(りょうた)、紫は美波(みなみ)が受け持つ事になった。
本当は美波と涼太の順番は逆になるかと思われたが、友梨の気遣いによってこの順番になった。
「それじゃ、嵌めるぞ。」
「分かってる。」
「ええ。」
「「……。」」
「はーい。」
昌獅の声に、それぞれが反応し、そして、ほぼ同時に皆がはめ込んだ。
「「「「「「……。」」」」」」
固唾を呑む六人に突然軽快な音が流れる。
パンパカパーンっ!
「「「「「「……。」」」」」」
「…なんだよこれ。」
「さ、さあ?」
怪訝な顔をする昌獅に友梨は顔を引きつらせる。
『おめでとう、今回のゲームも君たちの勝ちのようだ。だけど、次のゲームはそう簡単にクリアをさせないよ。』
上から流れる機械音に友梨たちが顔を顰める。
「呆気なく終わったわね。」
『次はゲームオーバーにさせるために本気を出すから、それでは諸君また次の機会に。』
「「「「「「……。」」」」」」
「何なの…一体。」
呆れたような声を出す友梨に昌獅は顔を顰めたまま溜息を吐く。
「俺が知るか。」
「まあ、取り敢えず、終わったようでよかったね。」
「本当に終わったのか?」
「大丈夫だよ、きっと。」
「……さっさと家に帰ってお風呂にでも入りたいわ。」
それぞれ、思い思いの言葉を吐き、そして、今回のゲームは呆気なく幕を閉じた、しかし、この後次のゲームがどうなるかなんて、この時の面々は分かっていなかった。
そして、友梨は大きくくしゃみをする。
「おいおい、友梨、風邪引くなよ。」
「引かないわよっ!」
そういう友梨だったが、残念ながら風邪を引いてしまったのだった。
あとがき:一週間ぶりです。何か私生活がうまくいかず、少々苛立っていますが、それでも、今は前を向いていきたいと思っています。
まだまだ落ち着くまで時間がかかるかもしれませんが、今後も見捨てないでください。icon
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from: yumiさん
2012年05月24日 10時59分13秒
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「二周年記念小説『生きる』」
『少年と私』
私自身は何もとりえも無いごく普通の学生だ。
生きる理由(いみ)も分からず、ただ息をして、栄養を取って、睡眠をとる、それだけを繰り返している。
人が将来、将来、といっても、私には何をしたいのか、何をなしたいのか、分からない。
人はどうして何をしたいという事を見つけるのか。
どうして、学びたいと思うのか。
私自身にはその意欲がないので分からない。
私はふっと空を見上げた。蒼い、蒼い空に何か黒いものが、見えたきがした。
目を凝らすと一人の漆黒の服を着た少年が落ちてきていた。
「……。」
私はただそれを見て、自分の目の前にそれが落ちてくるのをじっと見ていた。
「いててて…。」
痛そうに腰を摩る少年に私はただ呆れた顔をした。
「おい、何でお前助けようとしないんだよ。」
「……。」
えらそうな少年に私は聞こえない振りをする。
「……ちっ。」
少年は何故か舌打ちをして、私の腕を掴んだ。
「おい、俺が見えているんだろ。」
「……。」
私は少年の言う意味が分からず、思わず顔を顰めた。
「周りを見てみれば分かるだろう。」
少年は私の言いたい事が分かったのか、私と同じようなしかめっ面でそう言った。
そして、癪だったが少年の言うとおり周りを見渡すが、少年が落ちてきたというのに、周りはいつもと変わらない日常が流れていた。
「何で。」
「そりゃ、俺が普通の奴じゃねぇからだ。」
ようやく口を開いた私に少年は悪戯を思いついた悪がきのような顔をした。
「……。」
私は肩を竦め、そのまま行こうとするが、少年が引き止める。
「何なのよ。」
「あんたこのままじゃ、いけないぜ。」
「はぁ?」
訳が分からなかった。
少年はニヤリと笑う。
「まあ、騙されたと思ってついて来いよ。」
そう言うと突然私の目の前に真っ白な光が現れ、私と少年を飲み込んだ。icon
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from: yumiさん
2012年05月24日 10時57分47秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・141・
階段を上りきり、そして、例のくぼみのある場所までたどり着いた。
「涼太(りょうた)くん。ここ?」
「はい。」
「確かに、この珠が収まりそうな大きさね、でも、どれをどうやって埋めればいいのかしらね。」
【ルーラー】の事だから間違いなく正しい置き方をしない限りはゲームをクリアする事ができない事は目に見えて分かっていた。
「…………さて、どうしましょうか?」
智里(ちさと)はぐるりと見渡し始める。
「まずは何かヒントがないか探して見ないかい?」
勇真(ゆうま)の言葉に涼太は首を横に振る。
「残念ながら、この辺りは一度友梨(ゆうり)先輩と一緒に探した。」
「そうか…。」
「ねぇねぇ、適当に埋めてみるのは?」
さも名案とばかりに言う美波(みなみ)に昌獅(まさし)は溜息を吐く。
「お前馬鹿か?」
「ふぇ?」
「もし、何か仕掛けがあって間違えればドカンとかだったら、どうするつもりだ。」
「……ご、ごめんなさい。」
「おい、昌獅、言いすぎだぞ。」
しゅんと項垂れる美波を可哀想だと思い、涼太が怒鳴るが、昌獅は蔑んだ目で彼を睨んだ。
「俺は本当の事を言ったまでだ。」
「……。」
「もし、何かあってからじゃ遅いからな。」
「そうかもしれねぇが、もっと言い方とかあるだろう。」
言い争う二人に美波はおどおどとし始め、刹那、その双肩に手が置かれる。
「私に任せて。」
疲れからか少しかすれた声で話す彼女は昌獅の後ろに気配を殺して立つ。
「……。」
丁度昌獅と向き合っている涼太は彼女の姿を見て軽く目を見開く。
彼女はそっと口元に人差し指をそえ、涼太に黙るよう指示をして、口元を歪めた。
「昌獅、いい加減にしなさいっ!」
そう言って、彼女――友梨の踵落としが見事に決まった。
「〜〜〜〜っ!友梨っ!」
痛みで顔を歪ませる昌獅に友梨は不敵に笑った。
「私の気配に気づかないなんて、まだまだね。」
「……いつの間に起きたんだ。」
「今さっきよ。」
「……体は?」
「大丈夫……と言いたいけど、正直もう限界。」
昌獅の目から嘘は言えないと判断した友梨は素直に言った。
「友梨。」
「大丈夫よ、ほんの少しだけ試したい事があるの。」
「何だよ。」
「このくぼみに入れる順番は多分、赤、橙、黄色、緑、青、藍色、紫の順番だと思うの。」
「何でだよ。」
顔を顰める昌獅に友梨は小さく微笑む。
「虹って結局はグラデーションでしょ?つまりはそれに違和感がないように配置されている。」
「……そうかもしれないが。」
「それに美術の時間で赤、赤みの橙、黄みの橙、黄、黄緑、緑、青緑、緑みの青、青、青紫、紫、赤紫…って習ったでしょ?」
「ああ、確かにそんなんがあったな。」
友梨と同じ中学の昌獅はそれに覚えがあるのか頷いた。
「多分、虹も同じでしょうね。だけど、どっちが上だったけ?」
「……。」
友梨の発言に昌獅は胡乱な目つきで彼女を見た。
「しょうがないでしょ、私まともに虹を見た事がないんだもん。」
昌獅の言いたい事が分かったのか、友梨は昌獅に噛み付くように言った。
あとがき:さてさて、一週おきに載せたいところですが、中々話が浮かばないので出来る限りにしか頑張る事が出来ません。
それでも、気が向いたら見に来てください。icon
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2012年05月17日 11時35分54秒
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二周年記念小説『生きる』
『始まり』
全ての記憶の中から「私」という者がなくなればいいのに…
私はどうしようもないほど自分と言うものを見失っている
生きている理由(いみ)が分からない
何で生きているのだろう?
ただ呼吸をして
ただ栄養を取って
ただ睡眠を取る
毎日、毎日同じ事の繰り返し
それは本当に生きていると言えるのだろうか?
自問自答しても、その答えは分からない
そう、分からないが答え…
私は自分の存在意義が分からなくなっていた
自分と言うものを見失っている
そして、そんな私にある出来事(転機)が訪れた-
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2012年05月17日 11時13分27秒
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「ダークネス・ゲーム」
〜第十一章〜・140・
「美波(みなみ)大丈夫か?」
心から心配そうに顔を覗き込む涼太(りょうた)に美波はニッコリと微笑む。
「大丈夫だよ……。」
まだ呼吸が荒く、涼太はもっと早く智里(ちさと)に声を掛ければよかったと後悔をした。
「もし、辛かったら言えよな。」
「大丈夫だよ。」
「美波の大丈夫はあまり当てにならない。」
「そんな事ないよ。」
軽く拗ねる美波に涼太は彼女の大丈夫は友梨(ゆうり)よりは髪の毛一本ほどマシだとしか認識していない。
それはある意味正解だろう。
ただし、友梨ならば自分の体調を知りながら無理をするのだが、美波の場合、あまりの鈍さで自分の疲れ具合をうまく把握できていないのだ。
それはどちらがマシなのか、誰にも分からないが、見ている人にとってはどちらもはらはらするものがあるだろう。
「……お前な、もっと自分の体を知れよ。」
「知っているよ。」
「いいや、知らない。」
美波の事でついつい意地になってしまう涼太は美波の機嫌に気づいていない。
「知っているってばっ!」
「……。」
美波が怒鳴り、ようやく涼太は自分がまたやってしまった事を悟った。
「……悪い。」
罰が悪そうな顔をして、謝る涼太に美波は軽く目を見張った。
「リョウくん…。」
「オレはお前が辛そうな姿を見たくないんだ。」
「……。」
「だから、ほんの少しでも違和感を覚えたら、何でも言って欲しい、たとえどんなに小さな事でも、何でも話して欲しいんだ。」
「…リョウくん。」
表情はどこか落ち着いている涼太だが、その瞳は何かを焦っているような色を宿していた。
「何度言ってもお前が聞き入れてくれないのは分かっているけど、それでも、オレはお前が無茶をするたび、何回も同じ言葉を言うだろう…。」
「リョウくん。」
「ごめんな、美波。」
謝る涼太に美波は頭を振った。
「ううん、リョウくんが心配するのも当然だよね、仲間だもんね。」
「……。」
涼太は弟の次は仲間なのかと思い小さく落ち込む。
いつになったら、彼は美波に一人の男としてみてもらえるのだろうか、それは残念ながら誰も知らない事だ。
「……。」
ほんの少し現実逃避をしていた、涼太だったが、昌獅(まさし)の言葉で現実に戻る。
「お前ら、休憩は終わりだぞ。」
「ああ、分かった。」
「はい。」
二人は立ち上がり再び階段を上り始めた。
涼太は今度こそ美波に気を配りながら気を張り詰めてみていた。
昌獅はそれを横目で見ながら溜息を吐いた。
「やっぱり、血は争えないか。」
妙なところで似ている姉妹に昌獅は自分の背中で寝ている少女を思った。
あとがき:大変お久しぶりです。さてさて、今日は確か私がサイトを立ち上げた記念すべき日でしたよね?
と、聞かれても困る方が多いと思いますが、申し訳ありません。
二年とは物凄い早いですが…ダークネスまだ終わっていません。一体何年かければ気が済むのでしょうね?icon
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