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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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from: yumiさん

2010年05月17日 12時59分28秒

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ダークネス・ゲーム

〜第一章〜・1・《ゲーム・スタート》「ただいま〜。」「ただいま。」二人の姉妹が同時に家のドアをくぐった。二人とも制服姿で、ブレザーだがその形が違った。

〜第一章〜・1・《ゲーム・スタート》

「ただいま〜。」
「ただいま。」

 二人の姉妹が同時に家のドアをくぐった。
 二人とも制服姿で、ブレザーだがその形が違った。
二人の中で少し背の高い方で、ショートカットの少女はネクタイととれとおそろいのチェックのスカートが特徴で、もう一人の少女は眼鏡を掛けており、真直ぐで肩まである髪に、ワインレッドのリボンと紺色のベストとスカートが特徴だった。

「それにしても、智里(ちさと)も一緒に帰るなんて、珍しくない?」

 ショートカットの少女がもう一人の少女、智里に話しかけ、彼女は小さく頷いた。

「確かに、珍しいよね。」
「あ〜、お腹すいた〜!」
 ショートカットの少女、友梨(ゆうり)は叫ぶように言い、智里はそれを見て呆れている。

「確かにお腹は空いているけど、そこまでやる?」
「やるよ!」
「……あれ?」

 急に立ち止まった智里に友梨は訝しげに彼女を見た。

「どうかしたの?」
「何か静かじゃない?」
「……。」

 友梨は耳を澄ませ、智里が言うように確かに、いつもなら聞こえてくる末の妹や母、父の声が聞こえてこなかった。

「……どっか出かけるって言ってたっけ?」

 友梨は眉間に皺を寄せ、尋ねると、智里は首を横に振った。

「わたしは聞いていないよ。」
「だよね……。」

 ますます訳が分からなくなった、友梨はひとまず靴を脱ぎ捨て、中に入っていった。

「誰も居ないの!?」

 友梨は真直ぐに家族が集うリビングに向かい、その後を智里が追う。

「お母さん?お父さん?美波(みなみ)?居ないの〜?」

 友梨はヒョッコリと少し開いた扉から、中を覗き込むか、その部屋には誰も居なかった。

「……智里…。」
「お姉ちゃん…。」

 二人は互いの顔を見合わせ、その顔には不安が浮かんでいた。

「「おかしいよ(ね)。」」

 同時に同じ言葉を言う二人だったが、中に入る勇気だけはなかった。

「…ねえ、お姉ちゃん。」
「何?」
「机の上に乗っている料理、どう見ても、食べかけよね?」

 智里が指摘するものを友梨は見詰め、強張った顔で頷いた。

「うん…そうだね。」

 食事の最中で両親や美波が居なくなるなんて、今までそんな事がなかった二人は、「家族に何かが起こったのではないか」と思った。

「取り敢えず中に入ろう?」
「……。」

 何の言葉を発しない智里に友梨は意を決し中に入っていった。

〜つづく〜
あとがき:今週中にまた続きを載せたいです。

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マナ

from: yumiさん

2010年08月31日 11時44分02秒

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「ダークネス・ゲーム」
〜第七章〜・10・

「うあああぁぁぁぁ………。」

 分かっていた、分かっていたけど、胸がはち切れんばかりに痛む。

「あああああぁぁぁ……。」

 声を上げ泣く友梨(ゆうり)の姿は実年齢よりも幼い、まるで、迷子の幼子のように見えた。

「……ほんと…に…ばか…だ。」

 勇真(ゆうま)に「ありがとう」と言った時は少し無理をしたが、それでも、ここまで胸を痛めなかった。

「ばか…だよ…ぅ……。」

 雨が友梨を包み込む。
 雨粒は本来なら冷たかったが、今の友梨には何も感じなかった。

「……ここには…いられ…ないよぅ……。」

 友梨はゆっくりとおぼつかない足取りで歩き出した。
 ただ、何も考えず、足だけを動かす。

「……私……勇真さんの…前で…絶対に…笑えない……。」

 見覚えのある景色から遠のきたくて、友梨は雨の中ただ一人進んだ。
 日が隠れているからか、薄暗く、雨が視界を奪うが、今は幸いにも道路の真ん中を歩いても車がないので、轢かれる心配は無かった。

「………。」

 友梨は俯き、ただゆっくりとした歩みで前に進み続ける。
 何も考えていない友梨が今分かっているのは二つあり、一つは勇真の家とは反対の方向に進んでいるという事、もう一つは当分の間は誰も自分を捜しに来ないという事を――。
 何故なら、今勇真は自分の言葉を信じている、それに、勇真が探しに来てもどの言葉を言えばいいのか分からないから、きっと自分が探しに来ても意味がないという事。
 智里(ちさと)は頭を冷やせば、戻ってくると思い、探しに来ない。
 美波(みなみ)はきっと智里に止められる、美波が言っても意味がないのよ。とか、そんな近い言葉を言うだろう。
 涼太(りょうた)は傷がまだ癒えていない、それなのに、外に出る訳もないし、間違いなく美波が泣かない限り友梨を探しに来る訳がない。
 昌獅(まさし)、彼は前に嫌いだと言われた、だから、そんな嫌いな友梨を探しに来る訳がない、と彼女は思い込んでいる。
 だから、彼女は知らない、勇真が帰って、そして、それを智里と昌獅に話して、どうなったかなんかを――。
 友梨はただ歩く。
 雨は友梨を凍えさせる、身も、心も……。
 彼女を暖める事ができるのは…誰だろうか……。

〜つづく〜
あとがき:はあ、やっとここまで来た〜。次は主にまさくん(昌獅)中心です。ああ、楽しみだ。

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