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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2010年12月06日 09時32分24秒

    icon

    別れの涙

     私はその時、二階から外を眺めていた。ふと視線を門扉の方にやると、そこに彼がいた。

    「嘘……。」

     私は近くにあったコートを引っつかみ、慌てて階段を下りる。

    「どうして!」
    「……。」

     彼は黙って私を見詰め、そして、静かな声でこう告げる。

    「今日、ここを発つんだ。」
    「――っ!」

     話は聞いていた、彼がここの地を去る事を、だけど、ついさっきまでの私には実感などなかった。

    「……本当なんだね……。」
    「……。」
    「……。」

     沈黙が二人を包み込む、そして、その沈黙を破ったのは彼の方だった。

    「じゃあな。」

     時間なのか彼はそんな言葉で済ませようとしたが、私はそんな事を許せるはずがなかった。

    「待って。」

     私の声で彼の歩みが止まる。

    「私見送っても良い?」
    「……勝手にしろ。」

     冷たい言葉に、私の心は傷付くが、それでも、長い間一緒にいた私には彼の心が分かっていた。
     彼もまた私と同じで別れが辛いのだ、だから、自ら距離を取る言葉ばかりを選んでしまう、私はそれを知っていても、辛かった。

    「……勝手にするわ。」

     彼はそのまま駅の方へと足を向けた。
     私は黙って彼の後を追った。

    「……。」
    「……。」

     無言のまま私たちは駅へと向かう。
     そんな中私は彼との思い出を思い返す。

    (沢山…沢山色々な約束をしたわね……。)

     春は桜の花を見ようね。
     夏は花火を一緒にしようね。
     秋は紅葉狩りに行こうよ。
     冬は――。
     私はふと周りを見て、自然と微笑んだ。

    「ねえ……。」

     彼は私を見ないが、彼の意識が確かに私の方を向いている気がした。

    「いっぱい、約束したね。」
    「……。」
    「いっぱい約束した…だけど、どれも叶わなかったね。」

     そう約束をしたけど、互いに忙しく、どれも実行する事ができなかった。
     今までの私はそれが叶うと信じてきたが、もう駄目なんだ……。

    「だけど……。」

     私の歩みが止まり、目の前がぼやけて見えた。

    「一つだけ……。」

     笑え、笑え、と私は念じた。
     顔を上げ、私は泣き笑いを浮かべた。

    「雪が見れたね。」

     昨夜積もった雪が所々に見えた、本来の約束は静かに降る雪を見たかったのだが、残念ながら現実は人に踏まれ灰色に変わった雪だった。

    「………。」

     彼は無言で足を止めた、そして、私と目が合い、悲しげに頷いた。

    「ありがとう。」

     私が礼を言うと彼は目を見張った。

    「ありがとう、私を選んでくれて、そして、いってらっしゃい、私応援しているよ。」

     彼は何も言わず頷き、そして、私から離れていく。

    「……。」

     私はもう彼と歩む事が出来なかった。
     視界は歪み、頬に熱い雫が滴る。

    「ふ…え………。」

     本当は一緒にいたかった。
     同じ未来を歩みたかった。

     だけど、もう叶わない……。
     大好きだった貴方……。
     もう会えない貴方……。

     さよなら――。
     ごめんなさい――。
     ありがとう――。

     大好きだよ…愛しているよ……。

     だけど、もう私は貴方に言葉を言えない。
     遠く離れる貴方……私は貴方を待たせてくれはしないのね。
     あの春の日に出会い…そして、この冬に別れた。貴方は私の一番大切な人――。

    あとがき:四万人記念で載せていただきましたこれは、昔夢で見たワンシーンをアレンジして書いています。
    夢の中の別人の私が窓辺に立っており、そして、一人の男性に向かって行きます、ただ、会話はなく、そっと歩くだけで彼との関係がつかめませんでしたが、自分が発する「約束」「雪」というキーワードは心に残りました。「約束が守れなかった、だけど――。」のところで目が覚めてしまったので、私自身この続きは分かりません。
    ですが、どなたか、これの終わりをハッピーエンドにするか、バッドエンドにするのか、要求があれば、書いてみたい気もします。
    それでは長くなりましたが、毎回訪れてくれる方、今回偶然に立ち寄っていただいた方、皆様本当にありがとうございます。

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    マナ

コメント: 全4件

from: yumiさん

2011年02月16日 11時38分12秒

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「別れの涙」
〜再会〜

 アレから何年経ったんだろう……、私は大学を卒業して、社会人になった。
 彼とは連絡を取っていない。
 当然だ、だって、私は彼の連絡先など知らない……。
 それに、もうさよならをしたんだ、私たちの関係は既に終わっているんだから……。

「雪…みたい…。」

 桜並木をゆっくりと私は歩いていた。
 昼休みの間、私は習慣となった近くの公園の桜を見に来ている。

「……逢いたい…。」

 自然と零れた言葉に私は苦笑する。
 私はあの時から泣いていない、まるで涙が涸れてしまったかのように、あの時から悲しくても涙が出なくなった。
 一陣の風が悪戯に吹いた。
 私の髪を乱す。
 ああ、嫌な風ね。
 私は乱された髪をそっと掻きあげる。

「………えっ…。」

 視界に信じられないモノが映る。
 彼だ、彼だ!
 私が彼を見間違うはずが無い、でも…ああ、やっぱり私たちの関係は終わっていたんだね。
 彼は私の知らない、綺麗な女性と一緒に歩いていた。
 刹那、彼はこっちを見た。そして、目が大きく見開かれ、足がこっちを向いた。

「いや……。」

 私は怖くなった。
 彼を忘れられない自分…。
 まだ、彼とやり直せるんじゃないかと思っている自分。
 やだ、知られたくないっ!
 私は走り出していた。
 初めてパンプスで走った時は何度もこけそうになったけど、今じゃ平気だ。
 息が切れる、だけど、私の後ろから彼の気配がした。
 何で追いかけてくるの!
 私の涸れたと思った涙が溢れ出す。
 来ないでっ!
 だけど、私の願いは叶わなかった。

「おい、待てよ!」
「……。」

 彼の手は私を掴んだ。

「離して!」

 私は力いっぱい彼を振り払った。

「……っ!」

 彼の目が見開かれる。
 それもそうだろう、今まで私は彼から逃れようとした事が無いのだから。

「……何しに来たんですか。」
「……。」
「私、仕事あるんで失礼します。」

 私は頭を下げ、彼から立去ろうとするが、呆然と立ち尽くしていた彼は思い出したかのように私の手を掴んだ。

「行くなっ!」

 切羽詰った彼の声に私は怒りを覚えた。
 何で、貴方がそう言うの、私を置いていったくせに……。

「私は貴方なんか知りません、あのお綺麗な方の元に行ってください。」
「待てって言っているだろうが!」

 彼は私を抱きしめた。
 やだ…離して…。
 忘れたいのに!
 忘れなきゃいけないのに!
 何で、何で貴方がそんな事をするのよ!

「何で逃げる!」
「貴方の所為じゃない!」

 思わず怒鳴ってしまった私に彼は目を見開いた。

「貴方が…貴方が急に私の目の前に現れて……。」
「迷惑だったのか?」
「……。」

 迷惑じゃなかった、ただ、ずっと一緒に居ると思った人が居なくなり、そして、再び自分の目の前に現れたから驚いたのだ。
 だけど、貴方は違うんでしょ?

「離してっ!」
「駄目だっ!」
「どうしてよ!」
「離したら逃げるだろ!」

 傍から見れば痴話げんかに映るだろうか、と暢気に考える自分が居る。

「貴方は――っ!」

 私が言葉を紡ごうとした瞬間、彼はその口で私の言葉を止めた。

「……。」

 ゆっくりと離される唇…。

「……んで…。」
「俺はお前を忘れる事が出来なかった……。」
「……嘘だ…。」
「本当だ。」

 彼は眉間に皺を寄せている。
 その顔が懐かしくて、胸が痛くなった。

「離れてて分かった…俺にはお前が必要なんだ……だから、一緒に来てくれないか。」
「……。」

 自分勝手な人だと思った。
 だけど、それが嬉しかった。
 あの時だって、本当は連れて行って欲しかったのかもしれない、だけど、あの時は、私はまだ学生で、子どもだった……。
 今は…違う。

「連れて行って…。」
「ん…。」
「離さないで…。」
「ん。」
「約束を一緒に守ろうね……。」
「ああ。」

 私の恋心は離れている間でも決して彼を嫌う事はなかった。
 だから、私は彼と共に未来を歩く。
 離さないで
 この手を
 ずっと
 ずっと
 側に居て
 私の大切な人……。

*おまけ*

「そういえば、さっきの綺麗な人は?」
「上司、因みにもう既に結婚されてる。」
「……、もしかして、私また勘違いしてた?」
「……。」
「ご、ごめんなさい!」
「……まあ、誤解が解けたんならそれで、いい。」
「……ううう、ごめんなさい。」
「気にするな。」

あとがき:涙シリーズも終わりですね、この二人は一体どのような人生を歩むかは私にも分かりませんが、それでも、きっと幸せになってくれると信じています。
毎回主人公の少女(?)を泣かせてしまいましたが、それでも、彼女は強く生きているのだと自分でも思いました。私も強く生きて生きたいと思います。

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マナ

from: yumiさん

2011年02月11日 15時03分49秒

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「別れの涙」
〜約束〜

 私と彼が付き合い始め、あっという間に半年……なのに…。

「…あんた本当に付き合ってるわけ?」
「……ううう。」

 私は友人に相談したらそんな事を言われ、机にうつ伏す。

「だって、先輩だって忙しいんだよ?」
「そりゃね、年上だしね。」
「だよね……。」
「それでも、約束の一つも取り付けられない訳?」
「だって……、先輩見てたら誘えないよ……。」
「は〜、付き合いだしても、こんなんだとは予想もしていなかったわ。」

 呆れたような友人の声に私は危うく涙をこぼしそうになる。

「知らないわよ!私だって出来たら……。」
「出来たら?」
「…………………くらいしたいわよ。」
「ふ〜ん、キスくらいはしたいんだ。」

 私が折角聞こえるか聞こえないかの音量で言った言葉も友人の大きな声で教室中に響き渡る。
 幸いにも私たちしかいないので誰も聞いていなかったからよかったけど、誰かが聞いていたらどうするのよ…馬鹿〜!!

「で?」
「で?って何よ?」
「奥手のあんたはどうしたいの?」
「…わかんない。」
「は〜、ここまで来ると生きた化石ね。」
「えっ?」

 友人は意味の分からない事を言って、席を立つ。

「じゃ。」
「へ?」
「またね。」

 唐突に去ろうとする友人に私は硬直する。
 普通もっとアドバイスとかくれるよね???
 って、本当に言ってしまうの??
 え、え、え……。
 うわあああああぁぁぁぁぁぁん!薄情者〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
 私は再び机にうつ伏し、そして、初めて先輩にデートの申し込みをしようとした時の事を思い出す。
 あの時は確か…そう、そう、観たい映画があって、それで、一緒に見に行きませんか?と訊いたんだっけ?
 で、彼は……その日に用事が入っている。と素っ気ない返事……。
 駄目だ…自信がなくなってきた…。
 いや、そもそも、私たち本当にお付き合いしてたんだっけ?
 現実逃避をし始める私の頭にポンと教科書が乗せられる。

「えっ?」
「どうした、ぼんやりして。」
「…………………………先輩ぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 あっ、危ない…危うく椅子から落ちかけた。
 ……でも、何で先輩がここに?

「……お前の友人から聞いた。」
「えっ?」
「悪かったな、誘ってくれたのに全部断って。」
「で、でも…先輩…忙しいし……。」
「言い訳にもならないだろう。」
「……ふえ…。」
「本当にお前って泣き虫だな。」

 ポンポンと頭を手で優しく叩かれた。

「せん…ぱい……。」
「悪かった、不安にさせたな。」
「うええ……。」

 私は涙を流した、これで何度彼に私の泣き顔を見られただろう、だけど、それでもよかった、彼の前でなら、私は泣く事ができるのだから。

「…なあ、お前は何がしたい?」
「私は……。」

 いっぱい、いっぱいやりたい事があった。
 だけど、その中で約束したいのは――。

「春は花見、夏は花火、秋は紅葉狩り、冬は雪を見たい。」
「そんな安上がりな事でいいのか?」
「うん、だって、四季を全部見るためには最低一年は一緒にいてくれることになるもの。」
「……。」

 彼の瞳がほんの少し見開かれた。
 ずっと一緒に居たい。
 そばにいたい。
 だけど、彼は忙しい、そして、私も忙しくなる。
 だから、私は彼と約束を交わす。

「一緒に見ようね。」
「ああ。」

 私は嬉しかった。だって、貴方とずっと一緒にいてもいいという許可を得たのだから。
 自分でも単純だと思うけれど、彼を想うから私は彼の行動一つ一つに一喜一憂しちゃうから、だから、お願い、私を離さないで。
 ずっと、ずっと側に居てね……。

あとがき:やっと、約束ですね、この後別れに繋がります。
再会を載せるまでまで少し時間がかかりますね。

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マナ

from: yumiさん

2011年02月10日 16時53分42秒

icon

「別れの涙」
〜告白〜

 若葉が生い茂る五月、私は四月に彼が教えてくれたサークルに入った。
 そして、彼とまた出会う事ができた。嬉しくて、嬉しくてまた涙が出そうになったけど、私は何とか笑う事が出来たし、それに、あの時のお礼をもう一度言う事が出来た。
 だけど、そんな幸せで浸る私に冷水のようにハッと現実に引き戻した事件が起こった……。

「………う〜。」
「まあ、仕方ないって。」

 カフェテラスの机にうつ伏す私に友人が慰めにもならない言葉を言う。

「先輩に恋人くらいいても可笑しくないよ。」
「それでも……。」
「あんたって、本当に間が悪いわね〜。」
「ううう……。」

 そう、ここの所私の耳に飛び込んでくる噂があった。それは私を助けてくれたあの先輩にメチャクチャ美人の恋人がいるという事だ…。

「それにしても、初恋は必ず散るって本当だね〜。」

 缶コーヒーを飲む友人に私は恨めしそうな目で彼女を睨んだ。

「人事だと思って……。」
「うん、人事よ。」
「……………最低。」

 私は本気で泣きたくなったが、それでも、事実が私の中で重く圧し掛かっていた。

「ねぇ…。」
「何〜?」
「私、玉砕されるね。」
「……あんたは…。」

 友人は私の頭を乱暴に掻き乱した。

「本当にいい訳?」
「……本当は怖いよ…。」
「なら、噂が本当か、嘘か分かった時で良いんじゃないの?」
「えっ?」
「こんな噂が立っている時に告白しても、あんたの心には惨めな思い出としか残らないでしょうが。」
「……。」

 私は友人の言葉にジーンとするが――。

「それに、折角なんだからあたしがカメラを持っているところでね。」
「……。」

 すっかり忘れていたが、友人はかなりの野次馬精神の持ち主だ、何と彼女の餌食となってきた人たちを見てきただろうか……。

「そうね、今度皐月祭があるでしょ。」
「皐月祭?」
「知らないの?ここら辺じゃ有名な五月のお祭りよ。」
「へ〜……。」

 そういえば、友人はこの大学付近の出身で、自分はこの大学よりもずっと南の方の地域の出身である。だから、彼女みたいにこの付近のお祭りなど知らないのだ。

「で、皐月祭であんたのサークル出し物出すんでしょ?」
「う、う〜ん?」

 私はそんな予定あったかなと、首を傾げると、友人は深々と溜息を吐いた。

「な、何?」
「あんたって、本当にあの先輩以外は見えていないのね。」
「へ、へ、へ?」

 訳が分からない私に友人はまた溜息を零した。

「まあ、頑張りなさいよ。」
「……だから、何なのよ〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 私の絶叫はカフェテラスに響き渡った。



 皐月祭当日、私はお気に入りの服を着込み、髪型もワンパターンではなく少し凝ったものにした。

「いらっしゃいませ。」

 ニッコリと私は店番に精を出していた。
 近くに彼がいるものだから、私の笑みは更に深いものになる。

「ねぇ、ねぇ。」
「はい?」

 唐突に男性のお客さんに声をかけられた私は笑みで返事をした。

「君、この後時間ある?」
「は………。」

 思わず私の表情から笑みが消えた。

「よければお茶しない?」
「……。」
「ねぇ?」
「…嫌です。」

 私は嫌悪むき出しの表情でそう言うと、お客の方は私の表情が見えていなかったのか、しつこく私に問いかけてくる。

「ちょっとだけで良いんだよ?」
「このあと予定があるので。」
「それじゃ、それが終わってから。」
「何時になるのか分かりませんから。」
「それでも……。」
「………嫌って言っているでしょうが!」

 私は今までにした事がないくらい冷たい眼で男を睨みつけた。
 すると、先程までしつこかった男性が息を呑んだような、何かを怖れているような表情をした。

「……。」
「おい、こっちに来い。」
「へ?」

 低い声が聞こえ、私は手を引かれた。

「えっ…何で?」
「来い。」
「……。」

 私を救い出してくれたのは彼だった。彼はぶっきら棒に言い、私を人気のないところまで連れて行ってくれた。

「あ、ありがとう。」
「……。」
「あの…。」
「嫌ならもっと、早くに言えよ。」
「えっ?」
「そんなに隙があるといつか痛い目に遭うぞ。」

 彼の唐突な言葉に私は呆気にとられた。

「へ?」
「お前、さっき口説かれてただろう、しかも、メチャクチャ古い手口で。」
「え?あれって、私をからかっただけでしょ?????」
「………………………………………。」

 彼は何故だか黙り込んでしまった。そして、私はこの状況の重要さに今気付いた。

(あっ!告白のチャンスじゃ!)
「……。」

 何故か黙り込み続ける彼の服をそっと引っ張り、彼の気を引く。

「あの……。」
「何だ?」
「私、貴方が好きです。」
「……。」

 俯いていて彼の表情が見えなかったけど、私は何とか声を出す。

「始めて助けてもらった時から、ずっと、好きなんです……。」
「おい…。」
「………ごめんなさい。」

 唐突に謝った私に彼は驚いたのか、息を呑むような音がした。

「貴方には好きな人がいるんですよね。」
「…はぁ?」
「分かっているんです、私なんかが告白しても玉砕するなんて。」
「おい…。」
「でも、知っていて欲しかったんです。自分勝手ですけど。」

 私は今にも泣きそうになりかけるが、笑みを精一杯浮かべた。

「自分の気持ちだけ押し付けて御免なさい、返事は分かっていますから。」

 私は踵を返そうとした瞬間、手首を強くつかまれた。

「待てよ。」
「えっ?」

 話は終ったはずなのに、何故か彼は私を引き止めた。

「自己完結させるな、しかも、返事は分かっているのに、逃げる気かよ。」
「え……え?」
「まあ、お前が勘違いしているから、こうなるんだよな。」
「へ、へ、へ?」
「言っておくが、お前が悪いんだからな。」
「え?」

 私が首を傾げた瞬間、私の唇に彼のそれが重なった。

「………………ええええええええええええええええええっ!」

 私が絶叫すると彼は煩そうに顔を顰めた。

「お前から告っといてなんなんだよ。」
「だ、だって……。」
「俺だってお前が好きだ。」
「嘘だ…。」
「本当だ。」
「嘘だ…嘘だ……。」

 私の目から涙が零れ落ちる。そして、目の前の彼は溜息を一つ吐いた。

「泣くなよ。」

 腕を引かれ、私は彼の胸に顔を埋めた。

「さっさと泣き止め。」
「う……ううう……。」

 絶対に振られると思っていた、だけど、現実はそうならなかった。私は嬉しさのあまり一時間ほど涙を止める事ができず、彼に呆れられた。
 ああ、神様、こんな幸せすぎて本当に良いのですか?しっぺ返しなんかあるんですか?
 私はそんな事を思いながらも、彼の横顔を見ながら幸せに浸っていた。

あとがき:告白です。う〜む、長くなってしまいましたね…。
なのであとがきは短くします。

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マナ

from: yumiさん

2011年02月08日 10時11分49秒

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「別れの涙」
〜出会い〜

 薄紅色の花が咲き誇る季節、私は新鮮な気持ちで大学に入学した。
 真新しいスーツを着込んだ私はどこかスーツに着られているような気がしながらも、それでも、これから始まる大学生活に胸を躍らせていた。

「…って、ここどこだろう。」

 ポツリと建物と建物の間の道で私は悲しい事に迷子になっていた。

「ど、どうしよう……。」

 始めてみる建物に私は戸惑いを隠せなかった。

「………。」

 私は何とかして講堂に行く道を探そうとするが、何処にも人はいないし、看板もなかった。

「……うっ……。」

 迷子になった心細さからか私の目から涙が零れ落ちた。

 誰もいない。
 誰も私の事なんか探さない。
 恐い。

「そこに誰かいるのか?」

 声が聞こえた。
 低く男性の声だった。
 私は顔を上げた。そして、私の視界に一人の私服姿の青年がいた。

「……。」
「……。」

 私と彼は見つめあった。それは長い間のような、一瞬のようなそんな時間だった。

「……はぁ。」

 唐突に彼は溜息を吐いた。私は怖くなってビクリと肩を震わせた。

「お前、新入生だろ?」

 私は声が出せそうにもなかったのでしっかりと頷いた。

「そっちに講堂はないぞ、反対側だ。」
「――っ!」

 私は思わず目を見張っていると彼は呆れたような溜息を一つ吐いた。

「このままじゃ、完全に遅刻だな。」

 彼は顔を上げ、上にあった時計を見て肩を竦めた。

「う、嘘……。」

 私も慌てて顔を上げると、確かに始まる時間の五分前だった。

「ど、どうしよう……。」

 オロオロとしている私に彼は溜息を一つ吐いた。

「仕方ないな……。」
「えっ?」
「こっちが、近道だ。」

 彼は行き成り私の手首を掴むと一気に建物の中に入っていき、突き進む。

「えっ…えっ……。」
「黙ってろ。」

 彼はたったそれだけ言うと、速度を速めた。

「――っ!」

 あまりの速さとなれないパンプスの所為で私は躓きそうになりながらも、何とか彼に追いつく事が出来た。
 そして、いつの間にか私は講堂の前にいた。

「あ、ありがとうございます!」
「ん。」

 私は頭を下げると、彼は軽く手を振り、さっさと私の前からいなくなろうとした。

「あ、あの!」

 私はこのまま彼がいなくなってしまうのが嫌だと思った。だから、ありったけの勇気で彼を呼び止めた。

「何だ?」
「ま、また会えますか?」
「……ボランティアサークル。」
「え?」
「そのサークルに入れば会える。」

 私はその言葉に喜びを感じた。

「はい!絶対入ります!」

 彼は苦笑を漏らしながら、私の目の前からいなくなった。
 だけど、先程の寂しさなどなく、また会ってもらえるという喜びが私の中の大半を占めた。
 その時は気付かなかったが、私は彼に恋していた。
 あの時は気付かなかったが、それも、確かにこの時恋という芽が芽吹いたのだ。そして、その芽ははっきりと育っていった。

あとがき:別れの涙のはじめ、二人の出会いです。この後、告白、約束、そして、再会の順番で載せていきます。
この作品の始めは4万人記念の時に載せたので、5万人は早くやって来たように思います。
さて、さて、次にこれの続きを載せられるのかはまだ未定です。申し訳ありません。ですが、できるだけ早く乗せたいです!!
6万人突破記念の募集はまだまだ受け付けています!!よろしくお願いします!

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マナ