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弥生の河に言の葉が流れる

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公開 メンバー数:7人

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from: yumiさん

2010年11月02日 12時13分56秒

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ダークネス・ゲーム〜外伝〜

リクエスト(文化祭・白雪姫・友梨と昌獅)『秋風と共に――。』《前編》9月、それは何かとイベントが多い時期で、そして、例に漏れず、友梨(ゆうり)と昌獅(

リクエスト(文化祭・白雪姫・友梨と昌獅)

『秋風と共に――。』《前編》


 9月、それは何かとイベントが多い時期で、そして、例に漏れず、友梨(ゆうり)と昌獅(まさし)の学校も体育祭や文化祭の準備に追われていた。

「高田(たかだ)さん。」

 友梨が振り返ると、そこには見知らぬ女子生徒がいた。

「え…え〜と…、どなたですか?」
「ああ、わたしは特進科3-Bの橋本(はしもと)というの。」
「はあ?」

 友梨は別学科の子に声を掛けられる事などあまりなかったので、怪訝な表情を浮かべた。

「ああ、一応言っとくけど、怪しいものじゃないわよ。」
「……。」
「今日は貴女に願いがあってきたの。」
「……。」

 友梨は一瞬逃げようかと思うが、別に今までのような危険な生活ではないので、逃げる必要もないかと迷っているうちに、友梨は逃げる隙を失った。

「単刀直入に言うわ。」
「……。」
「わたしたち演劇部の舞台に出て。」
「は……はあ!!!!!!!」

 友梨はこの校舎に轟くような叫びを上げてしまい、この所為で、彼女はこの事で友人や見知らぬ人に冷やかされるとは知る由もなかった。



「で?」
「それだけ……。」
「ふ〜ん、こんなくだらない事で、わたしに愚痴りに来たのね。」

 智里(ちさと)は凍りつくような冷たい目で友梨を見ていた。

「だって……。ショックだったんだもん。」
「そう。」
「しかも、後から聞いたんだけど、この話を持ち出す切っ掛けを作ったのは!昌獅、何だよ!」
「あらそう。」
「あいつったら、自分のところに断れない頼みをされたからって、私にまで責任を押し付けてきたのよ!!」

 友梨が昌獅の名を上げた瞬間、剣呑の色が智里の瞳に映った。

「あいつ、友だちで、しかも、先輩の妹の頼みだから、逃れられないからって、条件を出すなんて酷いじゃない!!」
「で、どんなのなの?」
「『普通科の高田友梨が劇に出るんだったら、俺も出ても構わない。』って!!」
「それなら、お姉ちゃんが断れば言い話しじゃない。」
「そんな簡単なものだったら、私だって断ったわよ…でも……ね…。」
「でも?」
「うん、今回の演劇を成功させないと部の存続が怪しいんだって……。」
「とてもありがちの話ね。」

 智里は目で「本当にそれは作り話じゃないの?」と問うているので、友梨は苦笑を浮かべた。

「本当よ、部員だってギリギリだし、何の成果もないからって。」
「ふ〜ん…。」
「そんな話を聞かされて、私が断れると思う?」
「そうね、お姉ちゃんの性格からすれば、絶対に断れないわよね。」
「う…ん。」

 友梨は弱弱しい笑みを浮かべた瞬間、友梨の携帯電話が震えた。

「ふえ!」
「お姉ちゃん奇声を発しないでよ。」
「だ、だって…。」

 友梨は携帯の画面を見るとどうやら震えた理由は電話で、その相手は…昌獅だった。

「……でないの?」
「でるわよ、でてやる!!そして、文句を言ってやるわ!!」

 友梨は会話ボタンを押し、そして、電話の向こうから昌獅の声が聞こえた。

『友梨か?』
「私の携帯に掛けたんだから、私しか出ないでしょうが!!」
『この前、電話かけたらお前の妹が出たぞ。』
「へ?」

 友梨はそんな事があったかな、と首を傾げ、智里を見るが、彼女はそんな事を知らないのか首を横に振っている。

「それ、嘘でしょ。」
『何でそうなるんだよ。』
「だって、智里は記憶ないって。」
『誰が高田妹その一だと言った?』
「えっ?もしかして、美波(みなみ)の事だったの?」
『ああ。』
「それ何時の事?」
『お前が俺とのデートを忘れた日。』
「う……。」

 友梨は覚えがあるのか、顔を強張らせた。

『あん時確か何十回と電話しまくったからな。』
「……ごめん。」
『まあ、そんな事はどうでも言いだが、ちょっといいか?』
「う、うん。」

 友梨はふと自分が昌獅に対して怒っている事を思い出した。

「あ、昌獅!!」
『………急にでかい声を出すなよ…。』

 電話の向こうで顔を顰めている昌獅に友梨は更に大きな声で怒鳴る。

「何で私が出ないといけないのよ!」
『決まった事だから。』
「あんたが勝手に決めたからでしょうが!!」
『別に暇だからいいだろ?』
「何であんたがそう言いきるのよ!」
『お前のクラス三年のクセに展示だろ?』

 友梨と昌獅の学校は一・二年が展示か教室の出し物か、舞台発表を選べる、そして、三年はそれらにプラスして飲食の販売が可能なのだ。だから、大抵のクラスは飲食の販売を選ぶのだが、何故か友梨のクラスだけは違ったのだ。

「それが?」
『店番とかないんだから、演劇にちょっと出るくらいは平気だろうが。』
「何でそうなるのよ!」
『しゃーねだろ?先輩の妹の頼みなんだから。』
「ふ〜ん。」

 友梨は瞳を半眼にさせ冷たい声音を出す。

『友梨?』

 流石は昌獅という所だろうか、昌獅は友梨の纏う空気が変わった事に気付いた。

「そう、妹さんの頼みだから?本当はその子に惚れてんじゃないの!!この!浮気者―――――――!!」

 友梨は昌獅がこれ以上何も言わないようにすぐさま電源を落とした。

「ふん!!」
「まあ、いい薬かもね。」

 一部始終聞いていた智里は黒い笑みを浮かべ満足そうに頷いていた。

「で、大丈夫なの?」
「別に知らない!」

 こうして、友梨と昌獅の間に深い溝が出来た……といっても、友梨の一方的なものだ。
 そして、その日から昌獅は友梨に声をかけようとするが、友梨はうまく昌獅をかわし続け、とうとう、文化祭当日になってしまった。

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マナ

from: yumiさん

2011年04月25日 14時08分36秒

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「ダークネス・ゲーム〜外伝〜」
『その手に掴む温かなモノ』《中編》

「楽しい!」
「「「……。」」」

 小さなカフェテリアの一角で一人喜ぶ少女に残る三人はげんなりしていた。
 それもそうだろう、高校三年にしてメリーゴーランド……と友梨(ゆうり)は思い、残る二人は男とのプライドを捨てないと乗れないものだった。
 因みに、男二人はそれぞれの想い人もしくは恋人の頼みだったので、自分のちっぽけなプライドを砕いても何とか乗ったのだった。

「…次、何にする?」
「ジェットコースターはどうだ?」
「……あんた本気で言っているの?」

 オレンジジュースのカップを持ち、うんざりしたような顔をする友梨に昌獅はニヤリと笑った。

「冗談だよ。」
「そうじゃないと困る。」
「お前と確か高田(たかだ)妹その二はジェットコースターやお化け屋敷は駄目だったけか?」
「うん、私は最近お化け屋敷は平気だけど、美波は未だに駄目だよね?」
「うん。」

 美波はやや表情を曇らせ友梨の言葉に同意する。

「そうか、そんじゃ、何が残ってる?」
「ミラーハウス、小さな急流すべりもどき、観覧車に…期間限定の迷路かな?」
「あっ、私ミラーハウスと迷路に行きたい!」
「ん、涼太たちは?」

 友梨の意見に同意を示し、昌獅は涼太たちを見る。

「ん〜、どうしようか…。」
「急流すべりに行ってみたいかも。」
「大丈夫か?」
「うん、確か友だちに聞いたけど、全然高くもないし、濡れないって言ってたもん。」
「そうか。」

 涼太は頷き、マップを見る。

「ここからだと、迷路、急流すべり…という順番がいいか。」
「うん!」
「そんじゃ、その後は観覧車前で集合な。」
「そうね、その後で買い物で十分ね。」
「だな。」

 美波も涼太も友梨たとの意見に同意を示すようにゆっくりと立ち上がる。

「昌獅、お会計よろしくね?」
「…わーたよ、ああ、あんな約束すんじゃなかった。」
「もう、そこまで言うんなら、私の分だけ払おうか?」
「……。」

 友梨は鞄から財布を取り出そうとするが、昌獅の左手が止める。

「何?」
「払うから出すな。」
「もう、変な意地ね……。」

 友梨は呆れるが、それでも、そんな昌獅が嫌いじゃなかったので自然と笑みを見せた。

「涼太くん、美波、先に外に出てようか?」
「うん。」
「そうですね。」

 三人は外に出ていき、昌獅を待つ三人にどう見ても柄の悪い男たちが近寄ってくる。

「お姉さん。」
「おれたちと遊ばないか?」
「そんなガキどもは放って置いてさ。」
「「……。」」

 友梨と涼太は同時に顔を顰めた。その姿は本当の妹である美波よりよっぽど姉弟のように思えるほどだ。

「連れがいるので。」
「どうせ、そいつもガキなんだろ?」
「別に良いじゃねぇか。」
「止めとけよ。」

 友梨に詰め寄る男たちの間に小柄な少年、涼太が割り込む。

「殺されるぞ。」
「お前にか?」
「ははは、そりゃ傑作だ。」
「……。」

 涼太は呆れたような目で男たちを見た。

「馬鹿ばっかり。」
「……同感。」

 友梨の吐き捨てるように言った一言に、涼太も同意の言葉を漏らす。

「……あ〜…やってしまったようね。」
「……ですね。」

 最近特に緊迫した状況にいた二人は気配に鋭くなっていた。しかも、相手は味方だったらどんな気配でも直ぐにわかるだろう。

「やってしまったわね。」
「ええ、でも、丁度良いですけどね。」

 ゆっくりと自分たちに近付く只一人の気配は殺気を帯びている。

「半殺し?」
「せめて、骨か歯の一本くらいじゃ?」
「どうかしらね……。」

 涼太と友梨は同時に溜息を吐く。

「どちらにしても。」
「無事じゃすまないな。」
「ふぇ??」

 友梨と涼太が諦めの境地に入り、只一人訳が分からない美波を放って置いて、殺気の元凶が姿を表した。

「おい、そいつは俺のだ。」
「……馬鹿昌獅。」

 友梨は昌獅のストレートの言葉に顔を赤く染める。

「んあ?」
「誰だよ。」
「この姉ちゃんはおれたちと遊ぶんだぞ。」
「きゃっ!」

 急に手を引かれた友梨は嫌悪の篭った目で、男たちを睨んだ。

「はな――。」

 友梨が怒鳴ろうとした瞬間、友梨を掴んだ男が文字通りぶっ飛んだ。

「………あ〜〜〜〜〜〜〜。」
「……オレ知らねぇ……。」
「ふぁ、すごく遠くに飛んだね〜。」

 暢気な声に友梨は思わず頭を抱えたくなったが、それよりも、昌獅が一番不味かった。
 昌獅の目は据わっており、殺気だけで人を殺せそうな勢いで、しかも、容赦なく一人の男の胸倉を掴んでいる。

「……ふぅ。」
「友梨先輩?」
「ごめんね、少し席を外すわ。」
「えっ?」

 唐突にいなくなる友梨に涼太は目を丸くさせるが、次の瞬間、意識は昌獅に向けられる。
 バキッ、という嫌な音が聞こえ、そして、次の瞬間、物凄く痛そうに悶える声、どうやら昌獅は男の一人の骨を折ったようだ。

「やべぇ…。」

 涼太が顔を真っ青にしているその時。

「ストップ!」

 いつの間にか、柄の長い箒を手にした友梨が昌獅の繰り出した拳を受け止めた。

「友梨?」
「…………昌獅?」

 友梨は笑みを浮かべるが、その目は笑っていない。

「……。」
「自分が何をしたかよ〜く分かってる?」
「……悪い。」
「…ふ〜ん、涼太くん、美波。」
「はっ、はい!」
「ふえ?」
「二人は遊んでいらっしゃい、私はこの馬鹿を説教するから。」

 優しい声なのに有無を言わせぬ迫力があり、涼太は冷や汗を流す。

「は、はい…。」
「気をつけてね?」
「うん、行ってきます。リョウくん、行こう。」

 美波もここにいてはいけないと分かっているのか、珍しく走り出す。

「ふふふ、さ〜て、昌獅。」
「……。」
「何でよりによって、初デートで問題を起こすのよ!!!」
「悪い…。」
「許す訳ないでしょうが!!!!」

 友梨の怒声は遊園地中をかけた。
 そして、友梨たちは見世物化していたのだが、本人達は全く気付いていなかった。

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