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from: yumiさん
2011年11月23日 12時32分31秒
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お誕生日リクエスト
明さんに贈ります。《名(?)場面童話パロディ》
演目
1.金の斧、銀の斧
男:昌獅
女神:智里
(秘密ゲスト有り)
2.桃太郎
桃太郎:勇真
犬:美波
猿:涼太
雉:智里
鬼:昌獅
3.マッチ売りの少女(?)
少女:涼太
4.赤ずきんちゃん
赤ずきん:美波
猟師:涼太
狼:昌獅
おばあさん:友梨
5.眠り姫
姫:智里
王子:勇真
悪い魔女:友梨
良い魔女:美波
6.シンデレラ
シンデレラ:友梨
王子:昌獅
継母:智里
姉(?):美波
姉(?):涼太-
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コメント: 全7件
from: yumiさん
2011年12月23日 12時24分41秒
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「お誕生日リクエスト」
6《シンデレラ》
何でこんな事になってしまったのだろう、友梨(ゆうり)はそんな事を思って二人のバトルを遠い目で見ていた。
「友梨先輩大丈夫?」
「う、うん…何とか。」
友梨はそう涼太(りょうた)に答え、この物語の最初を思い出だす。
「お姉ちゃん、隅がまだ汚れているわよ。」
「……。」
「本当にお姉ちゃんは大雑把ね。」
「……。」
「さっさとしないと日が暮れるわよ。」
友梨(ゆうり)は胃を押さえながら、智里(ちさと)の厭味を聞き流していた。
そして、それを少し遠くで見ている二人がいた。
「智里お…母様、楽しそう。」
「何かお似合いの役だな。」
一人は普段の呼び方がそのまま出そうになり、何とか役通り言った。
もう一人は仏頂面で呟く、その仏頂面になっている理由が今回二度目の女装をさせられているからか、それとも美波(みなみ)が姉役だからか、はたまた母親役が智里だからなのか、本人にしか分からない。
「はぁ、助けに行くか。」
「大丈夫?」
「大丈夫だ。」
そう言うと涼太は懐から一枚の手紙を取り出した。
「手紙が入ってたぜ。」
「あら。」
「あっ、ごめん、涼太くん。」
「いいえ、勝手にやった事ですから。」
涼太はもし、これで友梨をいびったら殴ると言うように鋭い目で智里を睨む。
「もうなのね、意外に早かったわね。」
智里は涼太から手紙を受け取る。そう、それがすべての始まりだと友梨は思った。
順調に物語が進み、友梨は綺麗なドレスを着てお城に向かった。
そして、昌獅(まさし)が友梨の手を取り、踊る。
友梨はステップを間違えないか、冷や冷やしたが、思ったよりも昌獅の腕が良かったので、彼女は昌獅の足を踏む事無く無事に踊りきった。
そして、とうとう十二時の鐘が鳴る時、昌獅はしっかりと友梨の手を握っていた。
「は、離しなさいよっ!」
「ヤダ、どうせ面倒なんだ、ここにいとけよ。」
友梨はここまで一応順調に物語が進んでいるので、何とか止めたくなかったので、仕方なくドレスの裾を持ち上げ、勢いよく昌獅を蹴飛ばした。
「おい、友梨っ!」
「馬鹿っ!」
片一方のガラスの靴を脱ぎ、昌獅に向かって分投げた友梨は即座に消えた。
「あの馬鹿…。」
危うく割ってしまうところだった昌獅は傷一つない靴を見てホッと息を吐いた。
「じらすなよ。」
昌獅はそう呟き、すぐに友梨を探す準備を整え、翌日友梨のすんでいる屋敷に出向いた。
そこまでは本当に順調だったが、今の状況は何なんだろうとようやく回想をやめた友梨はもう一度戦っている二人。
昌獅と智里を見た。
因みに二人は別に武器を持って戦っている訳じゃない、口喧嘩だ。
「ごめんね、友梨ちゃん。」
昌獅のお世話が係りなのか良く分からない役についている勇真(ゆうま)が謝り、友梨は首を横に振った。
「いいえ、勇真さんが悪いんじゃないですから…。」
友梨はこの状況を何とかできないものかと考えるが、どうする事もできないと諦め、台所に行きお茶の準備をして勇真たちにお茶を振舞った。
そして、ようやく決着のついたようで、友梨は無事昌獅に嫁ぐことになったのだった。
めでたし、めでたし
End
〜おまけ〜
「終わった〜。」
友梨は背伸びをしてやりきった感のためか笑みを浮かべていた。
「それにしても、最後はかなり駆け込んでいないか?」
「そうでもしないと暴走する人たちが多いからでしょ?」
「…誰だよ、そのはた迷惑の奴は。」
「……。」
友梨はジロリと昌獅を見るが彼は気づいていないようだ。
「まぁ、いいわ、それじゃ。」
「今回こちらをリクエストしてくださりありがとうな。」
「明さん、大変遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございました。今後とも「弥生の河に言の葉が流れる」をよろしくお願いします。」
「そんじゃ、この辺でー―。」
「失礼いたします。」
本当に終わり
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明、
from: yumiさん
2011年12月22日 12時21分25秒
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「お誕生日リクエスト」
5《眠り姫》
友梨(ゆうり)は今現在、ピンチだった。
「お姉ちゃん、こんなもの誰が刺すと思っているの?」
「…す、すみません。」
何故か眠り姫役の智里(ちさと)が何処に隠し持っていたのか分からないが、友梨の喉元にナイフを突きつけていた。
「さてさて、どうしようかしらね……。」
クスクスと笑う智里に友梨は顔を真っ青にさせる。
「お、お話が……ずれるから、お願いだから……。」
「お姉ちゃん。」
「――っ!」
ナイフがさらに近づき、友梨はもう駄目だと目を瞑った。
「別に眠りにつかなくたって、別にお姉ちゃんを倒せばそれで、終わりよ?」
「ひっ!」
智里の目はどうやら本気のようで、友梨は本当に殺されるのではないかと冷や冷やする。
「さ〜て、どうやって料理しようかしら?」
「や、やめてっ!」
「ち、智里ちゃん、止めて、止めて。」
「智里お姉ちゃん、駄目だよ。」
あまりにも危険だと判断した王子役の勇真(ゆうま)と美波(みなみ)が必死になって智里を取り押さえた。
「何で貴方たちがいるんですか?」
「た、頼むから穏便に。」
「そうだよ、お話が滅茶苦茶だよ。」
「……。」
智里は友梨を一瞥し、友梨は金縛りにあったように指一本動かせなかった。
「ま、しょうがないわね。」
友梨はホッと息を吐き、勇真を見る。
「お話、どうしましょう……。」
「そうだね……。このまま友梨ちゃんが逃げてお仕舞い…なら、まだマシだよね。」
「わ、分かりました、全力で逃げます。」
友梨は恐怖で強張る体を叱咤して立ち上がり、ドアから逃げようとした瞬間、彼女の真横をナイフがよぎった。
「……。」
「……。」
「……。」
「逃がすと思う?」
智里の低い声に友梨は戦慄する。
「お、お願いだから命だけはっ!」
「わたしを呪った罪は重いわよ。」
「呪ってないから、呪ってないから、というか呪えませんから!」
友梨は逃げ口を探そうとするが、ドア以外の逃げ口といえば、窓しかない。しかし、ここは塔の最上階、飛び降りなど不可能だ。
「……。」
「お願いだから、見逃して。」
友梨は半泣きになりながら許しを請うた。
「……智里ちゃん、ごめん。」
勇真は智里を羽交い絞めにして、友梨に逃げるよう叫ぶ。
友梨はその隙のお陰で運よく逃げ延びたのだった。
End……?
「し、死ぬかと思った…。」
「つか、全然話しにならなかったな。」
「智里が主人公にしようとするのが間違っているし、あの子にあう童話なんて思いつかないわよ……。」
「だよな。」
「あってもかちかち山のウサギよ!」
「……。」
確かにあの容赦のなさならばお似合いのような気がして昌獅は黙り込んだ。
「次でやっと終わる。」
「無事に終わるといいな。」
この時友梨は昌獅が妖艶に微笑んでいた事に気づいていなかった。
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明、
from: yumiさん
2011年12月21日 10時16分49秒
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「お誕生日リクエスト」
4《赤ずきんちゃん》
鼻歌を歌っている美波(みなみ)は籠を持って友梨(ゆうり)の家に向かった。
「いい天気だな〜。」
暢気な事を言う美波の近くでは猟師役の涼太(りょうた)が木陰に隠れながらはらはらしていた。
(あの馬鹿…もっと緊張感持てよ……。)
(おい、涼太。)
(――っ!)
まさか、後ろから狼の尻尾と耳をつけた昌獅(まさし)がいるとは思っても見なかったから涼太は飛び上がりそうなほど驚いていた。
(な、何でお前がここにいるんだよ。)
(ちょっとな。)
(……。)
涼太はまさか昌獅がまたよからぬ事を考えているんじゃないかと訝しむ。
その目で何を言いたいのか分かった昌獅はニヤリと不敵に微笑んだ。
(分かっているじゃねぇか。)
(…友梨先輩かよ。)
(ああ、だから、絶対にあいつを近づけさせんなよ。)
(……。)
絶対に友梨を襲おうとしている昌獅に涼太は苦い顔をする。
(……何つーことを考えているんだよ、お前は……。)
(別にいいだろう、どうせ、後二つのうち、一つはあの悪魔の独占場だぞ、やってられないじゃねぇかよ。)
(……。)
涼太は嘆息する。
(程ほどにな。)
涼太は友梨の身を案じながらも、一番大切なのは美波なのでこれ以上彼女と差を広げられると彼女が転びそうになっても助けられない。
(んじゃあな。)
(……。)
颯爽と去る昌獅に涼太はうんざりしながら、美波の後を追った。
美波は花を摘み、そして、腕いっぱいに抱えていた。
「あいつ……。」
苦い表情を浮かべ、涼太は絶対にあの娘がこけるのを予想して足を速めた。
そして、彼の予想通り、美波は石につまずき体が傾いた。
「美波っ!」
「ふぇ……。」
地面にぶつかる寸前に美波は涼太に支えられた。
「大丈夫かよ……。」
「う、うん、ありがとう、リョウくん。」
「はぁ。腕いっぱいに物を持つなよ、こけても仕方ないぞ。」
「だって、綺麗なんだもん。」
「はいはい。」
涼太は呆れながら美波に適当に返事をする。
「そういえば、リョウくんの出番ってもっと後じゃなかった?」
小首を傾げる美波に涼太は本日何度目かの溜息を吐いた。
「劇がつぶれそうだからな。」
「ふぇ?」
「そんじゃ、家に送る。」
「え、でも…あたし、友梨お姉ちゃんの所に……。」
「それは後でオレが持っていくから安心しろ。」
「?いいの?」
涼太がそう言っている意味が分からない美波は首を傾げそう訊ねる。
「ああ、ほら、行くぞ。」
涼太は美波の手を引き、そして、花畑を後にし、美波の家まで連れて行った。
「そんじゃ、それ預かるな。」
「うん、よろしくね。」
「腹出して寝るなよ。」
「寝ないよっ!」
涼太の意地悪に美波は頬を膨らませそっぽを向く。
「それならいいけどな、じゃあな。」
「うん、またね。」
「ああ。」
涼太は籠と花を持ち、そのまま友梨の家へと続く森の中に入っていった。
「大丈夫だといいんだけどな……。」
涼太は友梨の家の前に立つの控えめなノックをした。
しばらくは恐ろしいくらいの静かさに、涼太は本当に昌獅に友梨が食われたのではないのかと、心配になるが、それは杞憂に終わった。
「は〜い、美波?それとも涼太くん?」
元気そうな友梨が姿を現し涼太は軽く目を見張った。
「友梨先輩大丈夫なんですか?」
「平気平気。」
ニコニコと微笑んでいる友梨だが、その笑みはどこか恐ろしく思えた。
「ま、昌獅が来たんじゃ。」
「……。」
昌獅の名が出た瞬間友梨の目がこれ以上はないって程冷たい光を宿した。
「ああ、あの狼さんね………。」
低い声が友梨の口から漏れ、涼太は知らず知らずの内に体を強張らせた。
「……ちょっと、悪戯が過ぎたから、そこで寝ているわよ。」
友梨が指差した先に確かに昌獅はいた、彼は木に凭れ掛かり、顔は悲惨なほど腫れ上がっていた。
「……。」
「大丈夫、次は確か昌獅の出番はないし、最後には何とかなるわ。」
「そうですね……。」
涼太はそれ以上何も言えず、手に持っていた荷物を思い出す。
「友梨先輩、これ。」
「あら、ごめんね、美波とかの面倒とか見させちゃって。」
「いいえ、あいつが狼に選ばれた時点で予想はしていたんで。」
「少しは真剣にお芝居をして欲しいわね。」
友梨はギロリと昌獅を睨みながら、涼太から籠を受け取った。
「それじゃ、オレはこの辺で。」
「ありがとう、それじゃ、気をつけてね。」
「はい。」
涼太の身を純粋に案ずる友梨に彼は微かに微笑み、森へと再び足を踏み入れた。
End……?
「……昌獅、いい加減にしなさいよね!」
「……本気で殴るなよ。」
「あんたが悪いんじゃない。」
「……。」
「この変態っ!色魔!」
「お前な……。」
額を押さえる昌獅を無視して、友梨はどすどすと次の場所に移動したのだった。
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明、
from: yumiさん
2011年12月16日 09時53分58秒
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「お誕生日リクエスト」
3《マッチ売りの少女(?)》
「マッチはいかがですか?」
涼太(りょうた)は雪降る中必死でマッチを売るが、中々買い手が現れなかった。
「マッチ、マッチは……って今のご時勢でマッチなんか買う奴いないよな。」
思わず本音を漏らす彼は己の持つ籠に入っている山ほどのマッチを一瞥する。
「はぁ、今は百均で、ライターだって売ってるし、それにお徳用の箱を買えば絶対そっちの方がいいよな……。」
妙に現実的な事を言う涼太の格好はつぎはぎのスカートと裸足だった。
「はぁ、マジで冷える。」
涼太は手持ちのマッチに手を出す。
「マジで、何で一個五千円なんだ?嫌がらせじゃ……。」
涼太は一箱取り出してみると予想よりも軽くて、目を見張った。
「何だ…えらく軽いじゃねぇか。」
不思議そうに涼太は箱を見るとなんと中にはマッチが一本しか入っていなかった。
「さ、詐欺…だ。」
一本のマッチが五千円もするなんて、絶対に訴えられると思った涼太は箱をまじまじと見た。
「あっ…。」
箱のパッケージに「智」と書かれていた。
「……。」
涼太はこれを捨てたく思ったが、話が進まないと思った。しかし、このマッチを使う勇気が彼にはなかった。
「ど、どうすれば……。」
マッチ売りの少女の話を思い出し、涼太は溜息を吐く。
「このまま凍え死ねばいいのか……つーか、冗談抜きで凍え死にそうなくらい寒いんだがな……。」
涼太はぼんやりと空を見上げた。
「寒いな……。」
こんな日は暖かい部屋でのんびりしたい涼太だが、今回はそんな贅沢が出来ないので余慶に落ち込んだ。
「それにしても……暇だな。」
だんだん人が少なくなっていき、涼太は近くの家の壁に凭れ掛かり座り込む。
「何で女装なんだろうな……。」
今更だが、何でこんなクソ寒い日に、スカートを穿くという辱めを受けなければならないのか涼太は顔を顰めた。
「……。」
涼太は暇をもてあまして、マッチの箱をいじり始めた。
「…んあ?」
パッケージかかれている文字を読み始めた涼太の表情が徐々に凍りつく。
「…『人を呪うその一、人型の蝋燭を用意し、憎い人の名前かイニシャルを彫り、そして、このマッチを使えば、あら不思議、その人の命はその蝋燭が消える頃には……。』。」
涼太の顔が強張ったままたくさん入っている籠を見た。
「ま、マジかよ…。」
何とも恐ろしいものを売ろうとしていた自分に涼太は愕然とした。
「知らないじゃ、すまねぇぞ…。」
犯罪者にでもさせる気か、と涼太は呟き、このマッチの処理に頭を悩ませ、そして、夜が明ける頃には完全に体を冷やした涼太は風邪を引き、そこから命を落としたのだった。
End……?
「何か、話違わないか?」
「まぁまぁ、どうせチョイスしたお話が微妙だったし、仕方ないじゃない、それに、多分涼太くん一人じゃ、見事にマッチ売りの少女で終わっていただろうし、あれくらいはいいんじゃない?」
友梨の言葉に昌獅は納得したのか、次の準備を始める。
「あと三つもあるのかよ。」
「半分よ、半分。」
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明、
from: yumiさん
2011年12月09日 09時59分58秒
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「お誕生日リクエスト」
2《桃太郎》
「も〜も太郎さん、も〜も太郎さん、お腰につけた黍団子、一つわたしにくださいな〜。」
「……歌うな、美波(みなみ)。」
暢気に歌う美波に涼太(りょうた)は猿の着ぐるみを着ながら溜息を吐いた、因みに美波の頭には犬の耳のカチューシャとスカートの裾からは見事な犬の尻尾が見えた。
「やあ、美波ちゃん、涼太。」
桃太郎の格好をした勇真(ゆうま)は笑みを浮かべ、やってきたので、涼太は顔を引きつらせた。
「何で暢気に登場してんだよっ!」
「変かな?」
「そんな事ないと思いますよ?」
「変か変じゃないの問題じゃねぇっ!てめぇには威厳が感じないんだよ。」
「そう言われてもね。」
苦笑を浮かべる勇真に冷たい声音がその場に落ちる。
「その辺にしたらどうです?」
背中に大きな翼をつけた智里(ちさと)が木の上から話しかける。
「ああ、智里ちゃん、そこにいたんだね。」
「ええ、先ほどから。」
「ごめんね、気づかなくて。」
「別に構いませんけど。」
微かに溜息を吐いて、智里はそんなに高くない木から下りた。
「で、さっさと鬼を退治して帰りますか。」
「えっ、まだ残り四つのお話が残っているよ?」
「……。」
美波の言葉に智里だけではなく涼太も疲れたように溜息を吐いた。
「この天然娘が……。」
「えっ?」
「今この場で次の話なんてしないで頂戴。」
「でも…。」
「ほら、さっさとすませましょう。」
さっさと木から下りて、前を歩き出す智里に勇真は苦笑しながら美波と涼太を促した。
「それじゃ、行こうか。」
「あ〜、何か嫌な予感がする。」
涼太の漏らした言葉が現実になるなんて、この時の誰も思っていなかっただろう。
***
「さあ、ついたわ。」
智里と美波はさっさと舟から降りるが、残る男性人は肩で息をしていた。
「ひ、人使い荒い…。」
「いや、今涼太は人じゃなくて、猿だから。」
「つーか、着ぐるみが動きにくいんだよっ!」
「脱げばいいじゃないか…。」
呆れる勇真に涼太はギロリと睨んだ。
「オレが脱いでみろ、絶対に文句言われるに決まっているし、役が分からなくなるだろうがっ!」
「…律儀なんだね。」
涼太の言葉に勇真は苦笑している。
「あっ、智里、美波…涼太くんに、勇真さん、こんな所で何をしているんですか?」
聞き覚えがある声に涼太たちがそちらに顔を向けると小袖を着た友梨(ゆうり)がそこにいた。
「友梨お姉ちゃん。」
「…お姉ちゃん、確か名前がなかったわよね?」
「うん、何か鬼に連れ去られた村娘Aみたい。」
「「「「……。」」」」
友梨の言葉だけを聴けばどう考えても脇役にしか聞こえないのだが、彼女を連れてきた「鬼」が、彼らが思い浮かべた人物なら彼女をうまく使えば円満で終わるだろう。
「……。」
「何か…オレたちが来た意味ないんじゃない?」
「言うな…仕方ないよ。」
「ねぇ、友梨お姉ちゃん。」
「ん?何?」
「鬼役ってもしかして。」
「ああ、昌獅(まさし)よ、昌獅。」
((((やっぱり……。))))
この場にいる全員が同時に同じ事を思った。
「で、その昌獅は?」
「ちょっと出かけているけど?」
「村を襲っているの?」
「まさか、ちょっと狩をしにね。」
「……。」
「自給自足も大変だけど、結構面白いものよ。」
なんとも逞しい友梨に勇真たちはどうしたものかと、思った瞬間、勇真に向かって鋭い石が投げられた。
「……。」
「昌獅っ!」
勇真は寸前のところで避け、友梨は投げた犯人が誰か分かり般若のような顔で振り返った。
そして、彼女が叫んだように憤怒の顔の昌獅がそこにいた。
「友梨、こっちに来い。」
「……や。」
「友梨っ!」
「勇真さんたちだもの、大丈夫よ。」
「だが、この話は。」
「大丈夫だよ。」
勇真はそう言うと、智里、涼太、美波と順に見ていった。
「いいかな?」
「別に構わないわ、無駄な体力を使う必要がないから。」
「オレも別に、いいぜ。」
「えっ、えっ、どういう事?」
ただ一人は理解していないが残る二人は勇真の意見にどうしてくれたので、勇真はホッと息を吐いた。
「簡単な事だ、悪さなんかしていない昌獅を退治しなくてもいいからな。」
「あっ、そうか。」
「それじゃ、おれたちは帰るな。」
「あっ、ちょっと待って、お土産持って帰ってよ。邪魔で仕方ないから。」
友梨はそう言って物置として使っている納屋から高価な壷や屏風、つまりは金目になりそうなものを持ってきた。
「何か昌獅が悪い鬼だと勘違いして色々持ってこられるんだけど、こっちは迷惑だし、換金なんて出来ないから。」
「ごめんね、友梨ちゃん気を使わせてしまって。」
「ううん、こっちだっていらないものを押し付けているんだから。」
友梨はそう言うと、荷台を昌獅に持ってこさせ、いらないと称した宝を乗せていったのだった。
「それじゃ、気をつけて帰ってくださいね。」
「もう、来るなよ。」
勇真たちを見送る二人に勇真はこっそりと苦笑する。
「友梨ちゃんがいれば間違いなく昌獅は鬼になりきれないな。」
「だよな、もしそんな事になれば間違いなく、あいつ友梨先輩に張った押されるぞ。」
完全に尻に敷かれている昌獅に男性人は同情の目を向けるが、それでも、本人が幸せならばそれでいいかと思うのだった。
End……?
「昌獅っ!いい加減にしてっ!」
「別にいいだろ、夫婦なんだし。」
「それは劇ででしょうがっ!」
「まだいいだろ。」
「駄目っ!」
「……。」
「ほら、次よ、次っ!」
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明、
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2011年11月23日 12時34分28秒
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「お誕生日リクエスト」
1《金の斧、銀の斧》
「……は〜、面倒くさい。」
顔を顰めている昌獅(まさし)は伐りにくくなった斧を一瞥し、溜息を吐く。
「つか、何で俺がこの話でこの役なんだよ、勇真(ゆうま)とか涼太(りょうた)の方が適任じゃねぇか。」
一人愚痴る昌獅だが、仕方なさそうに己のとるべき行動をとりる為湖に近寄りながら、この後の展開を期待するのだった。
「さ〜て、頼んだぜ。」
昌獅は持っていた伐りにくくなった斧を湖にボチャリと落とした。
「……。」
斧を落とした水面から人影が見え始め、昌獅は期待するのだが――。
「貴方が落としたのは――。」
「ちょっと待てっ!」
せっかくの台詞の途中に昌獅が割って入り、女神…智里(ちさと)は心底嫌そうな顔をしたのだった。
「何かしら、わたしは忙しいのよ?」
「だから、何でてめぇなんだっ!普通はあいつだろ!」
「……ふんっ、知らないわよ、作者に訊いて頂戴よ。」
「あ〜っ!クソっ、友梨(ゆうり)が出ると聞いたからこうやって面倒臭くてもやっているのに、何でだよっ!」
「ふん、どうでもいいけど、貴方が落としたのは、このメッキの加工がされた全く伐れない斧?それともコケやら何やらが生えた今にも崩れそうなこの斧?」
「……俺が言うのもなんだが、これは「金の斧、銀の斧」の話だよな?」
「ええ、だから、こうして二本の斧があるんじゃない。」
「……。」
昌獅は絶句する中、智里は苛立ちを露にする。
「さっさと答えて、この二つをさっさと処分したいの。」
「俺はゴミ箱かよっ!」
「ゴミ箱の方がマシよ。」
いがみ合う二人だが、昌獅はどうにかこの二本の斧を貰わずにすむ方法を考えるが、全く浮かばない。
「早くしなさいよね、まだまだわたしの出番はあるんだから。」
「知るかよっ!」
さっさとこんな茶番を終わらせたい智里は昌獅に詰め寄った。
「早くしなさいっ!」
「はっ、ゴミ箱になってたまるか。」
さらにいがみ合う二人にとうとう一人の少女が痺れを切らして、水底からやってきた。
「いい加減にしなさいよっ!」
「お姉ちゃん。」
「友梨っ!」
友梨の登場に二人はそれぞれの反応を示した。智里は頭が痛むのか額を押さえ、友梨は待ち望んでいた存在に顔いっぱいに喜色を浮かべた。
「そんじゃ、その斧と俺自身の持っていた斧もいらねぇから、これ貰っていく。」
「へっ。」
「あっ!」
昌獅は言うのが早いか、友梨の手を掴み一目散に逃げていった。
「あの馬鹿……。」
智里は手に持っていた斧をワナワナと震わせた。
***
「昌獅っ!話が。」
「いいんだよ、つーか、あんなおんぼろの斧を貰った方が話的には変じゃねぇか。」
「……。」
確かにあの斧は流石にないんじゃないかな、と友梨も思いがそれとこれとは話が別だった。
「だからって、何で私な訳っ!」
「だって、良いもんを貰えるんなら、お前がいいじゃねぇか。」
「私は物じゃないわよっ!」
「はいはい、それじゃ、お前が俺の嫁になって、はい、めでたし、めでたし。」
「全然めでたくないわよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
嘆く友梨だが、残念ながら昌獅の言った事が現実となる。
友梨はこの後家に連れて行かれ、昌獅の嫁となり、昌獅はなくした斧の代わりに新しい斧を買い、二人は幸せに暮らしたのだった。
End……?
「ちょっと、これ何よっ!」
「まあまあ。」
友梨をなだめる昌獅だったが、彼女の怒りの矛先は見事に彼に向けられた。
「あんたが余計な事をしでかすから、話が逸れたじゃないっ!」
「キャストミスなんだから、別にいいじゃねぇか。」
「どうせ、私が女神でも同じ事をやったでしょっ!?」
「ん?お前もあの使えない斧を持っているのか?」
「そんな訳ないでしょ、普通に金の斧、銀の斧を持っているわよっ!」
「……。」
つまんね〜、と顔に書かれている昌獅に友梨はぶち切れそうになる。
「あんたっていう人はっ!」
「さ〜て、次だ、次。」
「話を逸らすな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
絶叫する友梨の声は最後まで持つ事が出来るだろうか……。
from: yumiさん
2011年12月24日 12時00分24秒
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「お誕生日リクエスト」
マナさんに贈ります。
ダークネス・ゲーム キャラクター対談
『サンタさんに願うなら…。』
友梨:「マナさんお誕生日おめでとうございます。」
智里:「って、その日より何日間か早いわよ。」
美波:「どうやら、サンタさん、という事で二十四か二十五までには載せたいと思っていたみたいだよ?」
智里:「呆れるわ。」
友梨:「まぁまぁ。」
昌獅:「友梨はさ、いつまでサンタなんて存在信じてた?」
友梨:「何よ、唐突に………。私は小学校中学年くらいまでかな?」
昌獅:「ふ〜ん、結構長くまで信じてたんだな。」
友梨:「もしかして、お父さんやお母さんが、何て思った時期もあったけど、中々決定打がなかったから。」
昌獅:「……何か、小さい頃のお前の行動が目に浮かびそう。」
友梨:「何よ、それ、昌獅はどうなのよ。」
昌獅:「俺?俺は小三だな。」
友梨:「ふ〜ん、智里や美波はどうだっけ。」
智里:「わたしはそうね小一くらいかしら。」
美波:「えっ、サンタさんって存在するんじゃ……。」
美波以外の全員が目を見張った
友梨:「み、美波…。」
美波:「じょ、冗談なのに…皆酷い……。」
涼太:「お前なら…言いそうだから…ついな。」
友梨:「りょ、涼太くんはどうなの?」
友梨は必死の形相で話題を変えようとしている
涼太:「オレは五歳。」
友梨:「結構早いね。」
涼太:「四歳の頃に必死で起きてたけど、いつまで経ってもこなくて、朝方うとうとしているうちにいつの間にか置いてあって、五歳の時は狸寝入りをしていたんだ。」
友梨:「……。」
涼太:「そんで、物音がした瞬間目を開けると親父のドアップ…アレは恐怖だった。暗い部屋に親父の顔だぜ…。」
やや涼太の顔が青ざめる
勇真:「ご愁傷様。」
昌獅:「お前はどうなんだよ。」
勇真:「あんまり覚えていないけど、小三くらいかな?」
友梨:「そろそろ質問に入ろうか。」
昌獅:「そうだな。」
友梨はポケットから紙を一枚取り出した。
友梨:「それじゃ、サンタさんから貰うならどんなもの?」
智里:「世界。」
智里以外、顔を引きつらせる。
智里:「冗談に決まっているじゃない。」
友梨:「あんたの冗談は冗談に聞こえないっ!」
智里:「あら、そう、まあ、欲しいのはそうね……出来のいい姉と妹かな。」
友梨・美波:「……。」
昌獅:「友梨は何が欲しいんだよ。」
友梨:「そうだな……、図書カード?」
昌獅:「何かかなり平凡だな。」
友梨:「だって、本が欲しいけど、自分で吟味したいし。」
昌獅:「はいはい。」
友梨:「そういう昌獅はどうなのよ。」
昌獅:「そうだな……現金。」
友梨:「……。」
友梨はどこか遠い目をする。
昌獅:「友梨と早く結婚したいからな、金はやっぱあった方がいいじゃねぇか。」
友梨:「――っ!馬鹿っ!」
友梨顔を真っ赤に染める。
涼太:「はいはい、このバカップルは放っておいて、オレはそうだな、天然か鈍感が治る薬。」
勇真:「……。。」
無言で勇真は涼太の肩を叩いた。
涼太:「美波と勇真はどうなんだよ。」
美波:「あたしはそうだな、ゲームもいいし、CDもいいな、あっ、この前見た服もいいし、あのアクセサリーもいいな〜。」
涼太:「分かった、もういい。」
美波:「え〜。」
げんなりする涼太に美波は不満の声を上げる。
勇真:「おれはそうだな、皆が無事ならそれでいいよ。」
涼太:「…なんか無欲だな。」
勇真:「そうでもないよ。」
友梨:「昌獅っ!いい加減にして、そろそろ終わりよっ!」
昌獅:「まだいいじゃねぇか。」
友梨:「この馬鹿っ!最近なんかあんた変よ。」
昌獅:「別にいいじゃねぇか、オフなんだし。」
友梨:「オフでもしっかりして。」
涼太:「それじゃ、こんな滅茶苦茶な対談を読んでくれて本当にサンキューな。」
勇真:「これからも、「弥生の河に言の葉が流れる」をよろしくね。」
美波:「あと、「ダークネス・ゲーム」や他の作品も楽しんでいってください。」
智里:「待ってるわよ。」
昌獅:「それじゃ、この辺で。」
昌獅最後までちゃっかりと友梨を抱きしめる。友梨はもう開き直ったのか笑みを浮かべている。
友梨:「感想やぶっちゃけこれはないんじゃないと言う苦情何でも受け止められると思うので正直な感想をお願いします。それではありがとうございました。」
(終わり)
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