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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2012年05月17日 11時35分54秒

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    二周年記念小説『生きる』

    『始まり』

     全ての記憶の中から「私」という者がなくなればいいのに…

     私はどうしようもないほど自分と言うものを見失っている

     生きている理由(いみ)が分からない

     何で生きているのだろう?

     ただ呼吸をして

     ただ栄養を取って

     ただ睡眠を取る

     毎日、毎日同じ事の繰り返し

     それは本当に生きていると言えるのだろうか?

     自問自答しても、その答えは分からない

     そう、分からないが答え…

     私は自分の存在意義が分からなくなっていた

     自分と言うものを見失っている

     そして、そんな私にある出来事(転機)が訪れた

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コメント: 全3件

from: yumiさん

2012年06月07日 11時51分55秒

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「二周年記念小説『生きる』」
『未来』

 私はいつまで経っても衝撃が来ないので、薄っすらと目を開ければまた場所が変わっていた。

「ここは…病院?」

 何処かの大きな病院で、私はふっと人の気配を感じ振り返ると、そこには一人の男性が居た。
 その男性はどこかあの少年に似ているような気がしたが、私は気のせいだと思うことにした。

「頼む…無事に生まれてくれ。」

 まるで神仏に頼むかのように彼は手を握り額にそれを押し当て、硬く目を瞑っていた。

「何なのよ。」

 先ほどは『死』、今はまるで『生』の光景のように思えた。

「人は一人では生まれる事が出来ねぇ。」
「貴方。」

 聞きなれてしまった声に私が振り返ると少年は杖を地面に当て、そして、苦しげな表情をしていた。

「どうしたのよっ!」
「叫ぶな…。」

 思わず驚いて大きな声を出した私に少年は私を睨んできた。

「大丈夫なの?」
「ちょっと無理をしているが、大丈夫だ。」
「……。」

 何でここまでして少年は私に関わるのか疑問を持つが、それを口にするにはどこか躊躇われた。

「頼むから…これ以上喋るな。」
「だけど…。」

 少年は私を睨み、これ以上喋るなと目で言う。
 私は諦めて頷いた。

「………。」

 一瞬自分の名前が出たような気がして振り返ると、男の口がまた開き、私の名前を呼ぶ。

「えっ、何で知っているの?」

 私がそう呟いた瞬間、何かガラスのような繊細なものが砕ける音がした。

「この馬鹿っ!」

 少年の怒声が男の耳に入ったのか男は弾かれたように私と少年を見る。

「兄さん?……。」

 男は誰かに対し兄と言い、そして、私の名前を呼ぶ。
 私はどうしたらいいのか分からず、思わず少年を見れば彼は眉間に皺を寄せていた。

「久しぶりだな。」
「兄さん…だよな?」
「ああ。」

 少年はどこか優しげに微笑むが、かなり見た目としては違和感があった。

「…俺を恨んでいるのか?」
「まさか。」

 少年はおどけたように肩を竦めた。

「……なんで兄さんとこいつが…いや、あいつにしては若いな。」
「そりゃそうだろう、お前と会う前だしな。」
「そうか…。」

 どこか納得したような男に私は怪訝な顔をした。

「貴方は何なの?」
「……。」

 男は無言で微笑んでいると、一室から産声が上がった。

「産まれた…。」

 男は本当に嬉しそうにそう言い、私を見る。

「ありがとう。」

 たったその一言を言い、男は頭を下げる。
 私は訳か分からず、少年を見ればまるで本当に彼の兄のような、そんな柔らかい笑みをたたえていた。

「もう、行くな。」
「ああ、じゃあな、兄さん……。」
「いや、じゃあなじゃない「またな」だ。」

 男は虚を衝かれたような顔をしていた。

「大丈夫だ、義妹であり、母親であるこいつは無事に帰すよ。」

 男と私は同じように目を大きくさせ、そして、私の体が徐々に消え始める。

「またな、二人とも。」

 その男の声が最後だった。

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from: yumiさん

2012年05月31日 14時47分17秒

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「二周年記念小説『生きる』」
『過去』

 気づいたら私は変な場所にいた。

「ここ…。」

 見覚えの無い荒地、そして、襤褸を纏った人たちが寝転がっている。

「……。」

 私はそっと倒れる人に話しかけようとかがんでみた。

「――っ!」

 倒れる人は虚空を見ていた。そう、息をしていないのだ。
 私は驚いて後ずさると、私の耳に微かな泣き声が聞こえた。
 ゆっくりと振り返ると自分や先ほど見た少年よりもずっと小さな幼女が女性を揺さぶっている。

「お母ちゃん…お母ちゃん。」

 幼女は涙をたたえながら母親と思わしき女性を揺さぶるが、女性はもう亡くなっているのかピクリとも動かない。

「何なのよ。」
「ここはお前の時代よりもずっと昔だよ。」

 少年の声がして振り返ると少年は悼むような顔をしていた。

「悲しいよな。生きたいのに。生きられない。」
「…なんでこうなっているの。」
「飢饉や疫病、色んなもんがここで起こった。そして、人はなすすべもなく死んでいった。」
「……。」

 私は吐き気を覚えた。だけど、ここで無様にもどすのは嫌だった。

「お前は生きているのに、生きたいと思っていない。何でだ?」
「そんなの、私の勝手じゃない。」

 私がそう返すと少年は思いっきり嫌悪の顔をした。

「勝手だと?生きたいのに、生きれない人間だっているんだ。ここにいるやつらを見ろよ。」

 少年は怒気の含んだ声音でそう言った。
 私は渋々周りを見渡すと、死人は全員やせ細っている。

「食うものがない。病とかにかかり食えない。色んな理由があった。だけど、人は栄養を取らなければ死んでしまう。そして、病で命を落とす。」
「……。」
「お前はこんな必死で生きようとしているたちをみても、まだ、自分はただ生きているだけだと思っているのか?」
「だって…。」
「お前は知らず知らずの間に多くの命を貰っているんだぞ。」
「ただの綺麗ごとじゃないっ!」

 私は自分が責められているようで嫌だった。

「何よ、貴方は私を説教するためにこんな場所につれてきたのっ!そんなの迷惑よ。」
「………………仕方ねぇ。」

 少年は虚空に手を伸ばし、そこから杖を取り出す。

「何…打つ気?」

 少年は無言のままそれを私に振り下ろそうとして、私は思わず、目を硬く瞑った。

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from: yumiさん

2012年05月24日 10時59分13秒

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「二周年記念小説『生きる』」
『少年と私』

 私自身は何もとりえも無いごく普通の学生だ。
 生きる理由(いみ)も分からず、ただ息をして、栄養を取って、睡眠をとる、それだけを繰り返している。
 人が将来、将来、といっても、私には何をしたいのか、何をなしたいのか、分からない。
 人はどうして何をしたいという事を見つけるのか。
 どうして、学びたいと思うのか。
 私自身にはその意欲がないので分からない。


 私はふっと空を見上げた。蒼い、蒼い空に何か黒いものが、見えたきがした。
 目を凝らすと一人の漆黒の服を着た少年が落ちてきていた。

「……。」

 私はただそれを見て、自分の目の前にそれが落ちてくるのをじっと見ていた。

「いててて…。」

 痛そうに腰を摩る少年に私はただ呆れた顔をした。

「おい、何でお前助けようとしないんだよ。」
「……。」

 えらそうな少年に私は聞こえない振りをする。

「……ちっ。」

 少年は何故か舌打ちをして、私の腕を掴んだ。

「おい、俺が見えているんだろ。」
「……。」

 私は少年の言う意味が分からず、思わず顔を顰めた。

「周りを見てみれば分かるだろう。」

 少年は私の言いたい事が分かったのか、私と同じようなしかめっ面でそう言った。
 そして、癪だったが少年の言うとおり周りを見渡すが、少年が落ちてきたというのに、周りはいつもと変わらない日常が流れていた。

「何で。」
「そりゃ、俺が普通の奴じゃねぇからだ。」

 ようやく口を開いた私に少年は悪戯を思いついた悪がきのような顔をした。

「……。」

 私は肩を竦め、そのまま行こうとするが、少年が引き止める。

「何なのよ。」
「あんたこのままじゃ、いけないぜ。」
「はぁ?」

 訳が分からなかった。
 少年はニヤリと笑う。

「まあ、騙されたと思ってついて来いよ。」

 そう言うと突然私の目の前に真っ白な光が現れ、私と少年を飲み込んだ。

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