・非福祉型社会正義もある
　以上に述べてきたことは、個人の生活と政治との関係での社会正義ということで、いわば「福祉型」の社会正義であるが、これとは次元を異にする社会正義というものがあると思う。これを「非福祉型の社会正義」と名づけることにする。
　次元を異にするというのは、生活の安心とか格差の是正というレベルの問題ではなく、もっと根底的な、人間としての基本的権利とか、民族としての誇りなどを毀損されている状態を回復し、それの実現を期す社会正義だからという意味である。
　個人レベルの正義や福祉型の社会正義が次元が低いと言うことでは決してないが、次元を異にするとはこういう意味なのである。
　しかし、この非福祉型の社会正義については、個々の具体的な事象は度々取り上げられるが、いままで、一般論として取り上げられることは殆どなかった。それらの問題が高度の政治的問題であるとか、内政問題だからということからでもあるまいが、その理由はよく分からない。
このような意味での「非福祉的社会正義」は五つあると思う。
１民族のアイデンティティの国際的確立を求める社会正義
２自由、人権を尊重する民主主義を志向する社会正義
３領土に対する主権を回復する社会正義
４独裁強権圧制政治からの開放を求める社会正義
５自立原理主義を抑える社会正義
である。