これは「意地」という意味でのプライドを捨てた実例であるが、意地というプライドを張り通すこともある。
　「武士は食わねど高楊枝」という諺がそれである。飯を食うカネもない貧乏素浪人だか、食った顔をして楊枝をくわえて歩いているという図である。武士であるというプライド（意地）は張り通そうというわけである。
・プライドの心理特性
　自分の自慢をする人は少なくない。息子自慢や娘自慢は、親バカとしてご愛嬌だが、自分の自慢は、けなすのも大人気ないから、あいづちででも打っているより仕様がないものである。
　この自慢は、プライドとは違う。自慢は「自慢話」として顕示される。人に伝えて、感心してもらったり、偉い人だなと思ってもらうことが自慢の狙いだから、自分で表に出さなければならないのである。
　これに対して、プライドは、自分では表に出さない。こころの内に秘められているのである。
　「これが、おれの『プライド』だ」と言って、人に示すような人もまずいない。