小泉の政治力の本領が発揮されてのは、このときであった。
　法案を否決したのは参院なのに、小泉は、「郵政民営化の可否を国民に問う」として、衆院解散、総選挙の挙に打って出たのである。これは、理不尽極まる奇手である。衆院議員は「何故衆院解散なのだ」と怒り狂ったが、参院には解散はなく、解散権は首相の専権事項だから、如何ともなし難かったのである。
　それだけではなかった。小泉は、郵政民営化法案に反対の意思を明確にしている自民党議員は、公認から外し、除名し、やむなく無所属で立候補した彼等を落選させるべく、刺客候補まで立てるという徹底的な追い落としを図ったのだ。
　マスコミは、この奇襲選挙を面白がって「劇場選挙」と名付けて、煽った。
　国民も面白がった。この国民の興味本位とマスコミの煽動は、それまで政治に無関心であったノンポリ層まで投票所へ足を運ばせるという効果につながり、投票率は向上し、自民党は大勝した。