まさに、小泉戦略の大勝利であった。
　政治における政治力とは、自分がやりたいと思っていることをうまくやり遂げるための手練手管だ、という意味だとすれば、小泉のこの「劇場選挙」策は、驚くべき政治力であるとい言えよう。
　国民生活にも経済面でもさして意味があるとは思えない「郵政民営化」を、これに反対を唱える多数のベテラン政治を排除し、マスコミを踊らせ、国民を騙して、一挙に実現させたからである。
　この小泉の驚嘆すぺき政治力は、小泉の発想ではなく、長年に亘って彼の政策秘書を務めた飯島勲の知恵であったという。これが本当だとすれば、誠に稀有な軍師である。
　しかし、このような「政治力」は決して褒められたものではない。
　郵政民営化で国民生活が向上したわけでも、資金繰りに喘ぐ中小企業が楽になったわけでもなく、何のメリットがないだけでなく、特定郵便局が減り、郵便と郵貯が切り離された結果。山間僻地の高齢者にとっては、不便になり、地域の絆が絶たれてしまった、という大きな負の遺産を残したに過ぎなかったからである。
　つまり、その政治力は、小泉の私的満足達成のためのお遊びの手段として使われたに過ぎなかったからである。