その内容は、現場にいた者でなければ分からないし、今となっては調べようもない。が、これをなしげ得た村上貞一は「天才」という外ない。
　村上は、１９４７年、戦後初の総選挙に郷里の愛媛から立候補したが、落選した。再度の挑戦を期していたが、５５年逝去した。享年７３歳であった。
　彼のような天賦の異才を持つ快男児は、古今未曾有であり、未来不世出であろうし、今後彼のような天才を発揮しうる場が再来することもないであろう。
・村上の天才の解剖
　このように、「山本かつぎ出し」活動によって、彼は、各界の超名士の知遇ネットワ－クを築いたわけだが、村上ははじめからそれを意図してやったことではなく、長年に亘る「山本かつぎ」の結果としてそういうものが出来たということなのである。
　それをなし得たのは、次の三つの条件があったからである。
　第一は、各界の超セレブに可愛がられたこと、第二は、村上の説を聞きこれに応答するるという対話を成立させ得たこと、第三に、村上という男を他の人に紹介しても大丈夫であると信用されたこと。
　この三つの条件があったからこそ、村上は水野広徳が言うように「徒手空拳、一通の紹介状だけで」超セレブ知遇ネットを築くことが出来たのである。
　では、この三つの条件を成立させ得た要素は何であろう。それは五つあると思う。