そういうことは確かに言えるのではないか。
　リタイアするまでは家庭を顧みずに、仕事にかまけることが、一家の大黒柱たるもののあり方だと独り善がりしてやってきたため、リタイヤ後は家庭での居場所をなくしてしまったような男が沢山いる。
　そんな男が、高齢化するにつれて、気が強く、ふてぶてしく、嫌がらせの年齢になってきた妻にいびられたようなときに、「嫌だな!」と思った瞬間に、そんな思いが脳裏を突き上げるのであろうと思う。
　このことは、高齢化した男性にとっての、唯一の安息の場こそ家庭であるからだ、ということを意味するものであろう。
　こういうことは、いじわる婆さん化した妻にとっても、立場は違うか、同じような感慨を味わわせることも起こり得るのである。
　しかし、人生の最終段階で、このような感慨に襲われることは悲しい限りである。