これは、こどもから職業選択の自由を奪うという重大な人権無視ということに他ならない。
　自己主張の大切さを教育されるこれからの子どもがこのような親の意思に従うかどうかは大いに疑問とせざるを得ない。
　第２は、能力があるとされる特定分野に特化された教育を強いられる結果、一般常識が欠如した偏った考え方をする人間が出来、彼らが専門バカ化して、それによる問題が発生する虞があることである。
　それはまた、組織や考え方の縦割りを激化させることにもなりかねないであろう。
　第３は生命の選択という問題である。
　２０１３年に日本で風疹が大流行した。この病気に妊婦が感染すると、生まれた子どもに聴覚や言語発声の障害を起こす可能性が高まるというということで、妊婦の胎児の罹患有無を検査することが行われた。その理由はよく分かる。
　聾唖の子どもが生まれたら、子どもに申し訳ないという親の気持ちは痛いほど分かるからである。
　しかし、ヒトゲノム解析による受精卵のDNA判定は、これとは大きく違う。これは受精卵の段階で、生命の選択を行おうとするものだからである。その結果は、能力、資質は、あるレベル以上の人間のみになるだろうが、競争社会という人間社会の本質は変わらないであろうから、競争は激化し、権謀術数が横行する汚れた社会に堕することになろう。