彼女がこの三部作で言わんとしていることは反ユダヤ主義は大きな過ちであるということである。
　千年以上も前から行われてきた、ユダヤ人の差別化や迫害は全くいわれのない悪行であり、それは今までユダヤ人がやってきた、社会的機能や社会に対する貢献の史実を考えてみれば分かることである。
　その意味で、古くから行われてきたユダヤ人の迫害行為を「陳腐な悪」と称し、それを無反省に繰り返す姿勢に対して「無思慮への警告」を発したものである。
　それはアイヒマンに対してではなく、世界に対しての発言なのである。
・反ユダヤ風潮の真理
　反ユダヤ風潮は今でもある。それはア－レントが目にした時代と今とでは大分違うが、前者に焦点を合わせて考えてみることにしよう。
　アーレントの反ユダヤ主義の四つの要因分析は間違いではないが、ユダヤ人の富に対する周囲の憎悪とか嫉妬のような感情が強調され過ぎている感がある。
　世界中に分散して住み付いているユダヤ人の特徴を上げてみると次の３点が顕著である。