新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

　この表題は、元旦の朝日新聞の第一面の大見出しである。その主旨は次の通りである。
　ニュ－ヨ－ク市のある地下鉄駅の構内の壁一面に、色とりどりの紙片が貼られているという。その紙片には、大統当選でトランプ当選で「恐れていること」が書かれており、その紙片数は2000片に及ぶという現象が起った。その仕掛け人はマ－ラ・チャベスという２８歳の若者であった。
　トランプの当選は、自由競争の社会で、能力があり、努力すれば、誰でも社会のトップに踊り出られるというアメリカンドリ－ムが謳われてきたアメリカで、その夢を打ち砕かれた白人貧困層の潜在的不満を掬い上げ、それを無くすと、暴言的言辞で訴えた訴求が功を奏した結果であり、それによりアメリカ国民が二分されてしまった。
　このように、トランプのようなポピュリズムが激しい言葉で、人々を結集させ、社会を二分させてしまい、多数派として社会無を方向付けてゆくことになる。
　これは民主主義のもつ危うい側面であり、危険な面である、民主主義とは何かが試されている現象として、改めて考えねばならない、というのである。
　第一次大戦で敗れ、苛酷な賠償圧力とス－パ－インフレの下で苦しんでいたドイツ国民に、奸計弄したとはいえ、ヒットラ－の独裁と暴走を認めたのも、民主主義の理想型と賞賛されたワイマ－ル憲法の下であった。
　民主主義にはこのような現象が起りうることは、そのさきがけである古代ギリシャ、アテナイでも「愚民政治のリスク」として指摘されている。
　が、市民革命によって、王制、貴族制の人民無視の弊害を取り除く、人民のための政治体制として勝ち取られた民主主義は、チャ－チル元英国首相が言うように、これに代わるものが見当たらない政治体制として位置付けられているのだ。