胡錦涛の訪米に当たっては、中国は、その威信を尊重してもらう米側の演出に細かい注文を出したという。
　景気の低迷に苦しんでいる米国にとっては、中国は、米国債の最大の購入国、最大の貿易相手国だから、手抜かりはなかった。胡錦涛は満足したであろう。
　しかし、米中の溝である人権、人民元、ドルの機軸通貨否定発言、台湾、北朝鮮、南、東シナ海問題などは、お互いにあまり触れずにオバマが喉から手が出るほど欲しがっている輸出増へのお土産として、航空機２００機を含む４００億ドルの輸入、数十億ドルの投資などで蓋をした感がある。
　が、記者の質問に対して、胡錦涛が答えた「人道的な普遍的原則は尊重する」という発言については、中国国内メディアに対して、早速報道禁止の措置が取られたという。これが本音なのである。
　つまり、米中の埋まらぬ溝には貿易増というお土産で蓋を被せて、シャンシャンと手締めをした、という茶番劇の一席、ということなのだ。
　これが大人の外交というものであろうが、共和党が早速、オバマの弱腰を非難するであろう。
　村上新八