私はあわててサイドブレーキを下ろすと、アクセルを踏んだ。左折するはずだったのだが、まっすぐに進む。信号からほんの百メートルほどのところに空き地があるのが目に入っていたのだ。

私はその空き地で迷わず車をUターンさせた。信号はまだ青。その先にはおばあさんと犬の姿が見えている。おばあさんを追い越したすぐ先の路肩(ろかた)に車を寄せ、駐車させた。

「行ってみよう」

娘にそう言うと、エンジンを切って車を降りた。田舎道でよかった。市内の道路だったらこんなことはできない。運がいい。娘も私のあとをついてくるように車から降りた。