側に住んでいる私が遠く離れている姉に母の病状を電話やメールで知らせるのが常だった。
今回もいつものように姉にメールを打ったものの送れない。
妻を亡くして悲しみに暮れている義兄に余計な心配はかけたくない。
私はこれからは一人で、誰とも分かち合うことなく戦わねばならない。
自分の家族は私を守って支えてくれる。それで十分だ。

母は自分自身も三度の手術を受けている。
三度目の手術は大手術でICUに一月も入り、その間人工呼吸器をつけていて何よりもそれが一番辛かったようだ。
正気を失ってしまう方も少なくないという。
意識がはっきりしているのに挿管し続けるのは命の危険は勿論だが、精神の均衡も失ってしまう辛さなのだと横で見ている私にも良く分かった。
でも、その時は姉が何度か足を運んで電話やメールで母本人、私や父を励ましてくれた。

悲しくてもお腹が空けばご飯も食べるし、テレビを見ておもしろければ笑う。
私にとって大切な姉でも私の家族にとっては同じ存在ではないし、私と全く同じ感情を持つように強要することはできない。
家族は私の悲しみを癒してくれようとする。
悲しみに共感してくれようとする。
けれど、私と同じ感情を持つわけではない。

同じように子供を亡くした両親と私も同じではないだろうし、母親を亡くした姪もしかり。

明日は早出出勤だからもう休まないと。

姉が亡くなった。

４年余りの癌の闘病生活だった。

昨年の夏に脳への転移が見つかった時に医師から「余命は一週間」と告げられたのだ。

この５ヶ月は、辛い治療に耐えたご褒美なのか。本当に良く頑張った。

家族といる時、仕事をしてる時私は泣かない。
悲しみを外に出してしまいたくて、記憶を忘れてしまいたくなくて記録する。