今回は、ティツィアーノには珍しいフレスコ画、「聖母被昇天」を取り上げます。

ヴェローナ、ドゥオーモのカルトラーリ礼拝堂にあります。フレスコ画ですから、彼がわざわざヴェローナに出向いて描いた作品ですが、これがヴェローナで制作した唯一の作品だそうです。作品画像はヴェローナ・ドゥオーモのHPから転載させて頂きました。
ティツィアーノ特有の色彩を駆使して、何とも優雅で温かみのある作品に仕上げたところに魅かれます。
ティツィアーノはヴェネツィアで大工房を構えて多くの作品を手懸けましたが、海に浮かんだ街ヴェネツィアということで、湿気に弱く、落剝の恐れがあるフレスコ画を殆ど制作しませんでした。彼だけに留まらずヴェネツィアで仕事をした殆どの画家は、大キャンバスに油彩画を制作して、それを壁面に貼り付けてフレスコ画の代わりにしました。
私が見た、ティツィアーノのフレスコ画はこの一点だけです。他にあるかも知れませんが、彼のフレスコ画は貴重だと思います。
ところで私は近年ヴェローナから足が遠のいています。イタリアに来たことがないイギリスの作家の戯曲に街全体が浮かれて、歴史とは関係なく観光客や街当局が踊らされているのが気に入らないからです。戯曲のヒロインのバルコニーまでも作ってしまう軽薄さが嫌いです。戯曲とは一切関係がないヴェローナを愛して已まないのですが・・・・
という事で、この作品に再会出来るのは可なり先になりそうです。