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from: 哲ちゃんさん
2022/07/02 01:58:00
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篠原ともえさんのブログから
70年代から日本のミュージック・シーンを牽引(けんいん)し続けてきた吉田拓郎さん。昨日6月29日に音楽活動の集大成としてラストアルバムを発表されました。タイトルは「ah-面白かった」。これまでの人生を振り返り、言葉と音と、そして愛でつむがれた拓郎さんらしい素敵な楽曲たちが収録されています。こちらは夏にアナログレコードも発表されるのですが、実はそのジャケットのアートディレクション、そして衣装デザインを私が担当させていただきました。
風に揺れるワンピースをデザイン(衣装:篠原ともえ)
拓郎さんと出会ったのは私が17歳の時。フジテレビ「LOVE LOVE あいしてる」での共演がきっかけでした。番組終了後もお付き合いは続き、今回この大切なプロジェクトの一員として、お声をかけてくださいました。
初めてお会いした時は、元気すぎる私と目を合わすことさえしなかった拓郎さん。でもなぜか、私は拓郎さんととても仲良くなれるような気がしていたんです。その予想は見事に当たり、ある時から心を開いてくださり、以来、公私ともに良くしていただいています。そして今回、この貴重な作品を一緒にクリエートできるという、大変ありがたくも背筋が伸びるような機会を与えていただきました。
10代の私にデザイナーになることをすすめてくれた拓郎さん
実は拓郎さんは、10代の私にこんなことを言ってくださったことがあります。「篠原の洋服を見てると、なんだか僕まで楽しい気持ちになるんだよ。篠原はファッションの才能があるはずだから、デザイナーになった方がいいよ」
歌やテレビに出ることを生業(なりわい)にしていた私は驚きや戸惑いもありました。でもデザインの世界へ憧れを抱いていた当時の私にとって、真っすぐに応援してくださる拓郎さんの言葉が、すごくうれしかったことを今でもはっきりと覚えています。
「僕がいろんな人に曲を作ったように、篠原の"アイデア"をみんなに届けてゆくんだよ」。あの日かけてくださった言葉に導かれるように、25年後の今、私は自分のアイデアをデザインで届けるお仕事をさせていただいています。吉田拓郎さんは、私のひそかな夢を言い当て、背中を押してくださった方でもあるのです。
撮影のディレクションをする拓郎さん
そんな拓郎さんからデザインのご依頼をいただけるなんて、10代の私が聞いたらびっくりすると思いますが、お受けした以上は、拓郎さんが温めてこられたイメージをしっかり届けられるよう、今の私にできることを精いっぱい尽くし、かたちにしたいと心から思いました。
拓郎さんは思い描く世界観を伝えようと、ご自身でスケッチを描いて私に送ってくださいました。ジャケット撮影までに、何度もメールを通じて資料のやり取りなどさせていただき、少しずつそのコンセプトやイメージを具現化してゆきました。
撮影地に選ばれたのは、1975年に拓郎さんが参加した、元祖夏フェスとしても語り継がれる伝説の野外コンサートの開催地、静岡県掛川市の「つま恋」。 アナログ盤ジャケットの構想をいただいたのは半年ほど前でしたが、当初より、ご自身が登場するのではなく、若かりし頃の拓郎さんのお母様や、奥様の佳代さん(森下愛子さん)のお母様が現代に舞い降り、つま恋を歩きたたずむ姿を、キービジュアルにしたいというアイデアでした。
奈緒さん、吉田拓郎さんと
そこでヒロインとして登場してくださったのが、俳優の奈緒さんです。ご自身も拓郎さんの大ファンということで、あらためて拓郎さんの音楽は世代を越え愛されているのだなぁと実感しつつ、この特別なコラボレーションに参加できることをとても幸せに感じました。
私はこの奈緒さんが着用される衣装のデザインを担当させていただいたのですが、こちらも拓郎さんのイメージを大切に、納得いただけるかたちでお届けできるよう、何度もご意見をうかがいながらともにブラッシュアップし完成させました。
吉田拓郎さんと「つま恋」にて
撮影の際、拓郎さんはポーズのポイントを奈緒さんへ伝えながらも、あとは自由演技でと、あくまで奈緒さんの表現を尊重され、そのクリエーティブなやり取りは私にとっても刺激的なものでした。 拓郎さんが撮影後に花束と一緒に、この日つけていた時計を奈緒さんへお渡しすると、奈緒さんはその瞳から涙をこぼし「時間を大切にしてがんばります」と。
拓郎さんが思い描いた今回のアナログ盤のコンセプトが、つま恋の空気とそこに流れる穏やかな時間とともに、奈緒さんによって見事に体現され、映画のように美しく感動的な一日でした。
「ah-面白かった」メイキングのナレーション収録にて
拓郎さんの楽曲制作の様子や、このつま恋での撮影の模様は、DVDとしてアルバムに収録され、そちらのナレーションもつとめさせていただきました。拓郎さんはこの作品を最後にデビューから52年の音楽人生に幕を下ろすとおっしゃっています。とてもさびしい気持ちもあるのですが、このタイトルに込められた思い、そして愛にあふれた素晴らしい楽曲を聴くと、拓郎さんの人生そのものに触れているようで、とても豊かな感情に包まれます。
この作品もまた、時を越え愛され続けていくと考えると、その一端に携われたことは私にとってかけがえのないものです。そして今回、私がデザインやディレクションをさせていただいたことが、遠いあの日、拓郎さんに背中を押してもらったことへのアンサーになっていればうれしいです。これからも拓郎さんの曲からたくさんのインスピレーションをいただき、私らしいスタイルでアイデアをかたちにしてゆければと思います。
あの「シノラー」が!
本当に成長しましたねぇ。
「ぐふふ」と言ってたシノラーが別人みたい。
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