「あの、N先生は、どちらに変わられたんですか。」
「大阪の実家のほうに帰られたそうですよ。実家が病院だそうです。」

大阪、金沢までなら追いかけられたけど、とても無理だ。肩が落ちた。
N先生
黒縁めがねで、無精ひげが少し。難しい顔で、前の患者の様子をカルテに書いてる。

急に椅子を回して正面に。とたんに笑顔。
「やあ、君か・・・」「うん、それで」「またかね、こりないね」「そんなこともあるさ」
「薬、少なくなりませんか」「だめだね」
「いいかい、薬は必ず飲むこと。高いところはだめだよ。」「はい、ありがとうございました」
急に、難しい顔で、机に向かってカルテにカキカキ。

今日はE先生
体をこちらに向けずに話すので顔が見えない。
質問をして、カルテにカキ、カキ。質問をして、カキカキ。
「もういいですよ。」

この先生だけは、もう、２度と来ないぞ。
N先生いるとき、病院来るの楽しかったな。最後の診察のときより、今日の方がさびしかった。