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from: ドングリさん
2013/09/01 15:40:07
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一枚の葉書きから、昔の記録
平成12年10月16日。小学校同窓会の案内はがきが届いた。これを手にすると10年前の同窓会を思い出した。
平成3年1月2日
小学校の同窓会会場
入り口をまるく囲んでいる8人の人がいる。先生を待っているのだ。先生が入ってこられると、その8人はしがみついた。「先生」。先生にしがみついた8人はしゃくりながら、泣いている。先生はにこにこしている。もう、頭をなでることはできなかった。他の人は、不思議そうな顔をして見ている。これは8人と先生だけの秘密なのだ。
昭和39年10月
4限めが終わる、鐘の音。カラン、カラン。
給食の時間がやってきた。アルマイトのおさら、3枚。ぱさぱさの食パン2枚。脱脂粉乳。正体の分からないスープのようなもの。おいしいとは思わなかったけれど、45人、全員が食べられた。
昭和39年10月12日
遠足。近くの山の頂上まで。砂利しか入っていない道は、でこぼこで、水溜りがあちこちにあった。それで、まっすぐな道をくねくねと歩いた。道端の草はぬれていた。
やがて、頂上へ。
お弁当の時間になった。チビのくせにけんかした私は、一人、みんなの反対側を向いて座っていた。
一人、今度は二人・・・・全部で8人。子供が反対側の斜面へ、腰をかがめながら歩いていく。「何しているんだろう。」
私は後をつけた。反対側の斜面で8人はうつむいて泣いていた。そこへ、キョロキョロしながら、先生が現れた。8人はけげんそうな顔をしている。先生はくちびるの前に指を当てて、手招きしている。集まった子らに、こげがあるおにぎりを1つずつ渡して、頭をなでている。泣き声を上げた子に、先生はまた指でこたえた。「静かに。」子供たちは口を押さえて泣いている。手でおにぎりを胸にかかえて。
見ていられなくなった。
あの8人は、お弁当を持たせてもらえなかったのだ。子供はつらかったろう。でも、親はもっと、つらくて切なかったろう。あの泣いている8人は、家に帰ると、もう一度、親と泣くんだろうか。
先生も豊かだったわけではない。8人と似たようなものだった。朝早く、起きて、子供たちのご飯をお釜でたいて、それでおにぎりをつくった。そして、それをコンロで焼いた。
平成3年1月2日
先生は、にこにこしている。8人は取り囲んだままだった。やがて、幹事が「そこの8人、早く自分の席に着いて。」唇をとがらせた。
昭和39年10月12日
都会では「東京オリンピック」とやらで、浮かれていた。でも、田舎の寒村では、こんな光景が見られた。
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