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from: Dr. スリップさん
2020年05月22日 22時14分23秒
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2001:A Space Odyssey(2001年宇宙の旅)1968年4月6日公開 スタンリー・キューブリック 監督・脚本作品
新型コロナウィルスによる非常事態宣言もようやく徐々に解除が為されるようになりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。長い外出自粛生活には相当疲れてきましたね。今回は「2001年宇宙の旅」を取り上げました。
題名に示す通り宇宙を舞台にしたSF映画である。当時としては未来社会を扱っていたが、今ではすでに9年も過去の話であり、今更こんな映画に何の意味があるのか、と言われそうだが、52年前に初めて見たとき、理屈抜きに強烈なインパクトに打たれたのを覚えている。そして、今に至っても益々その価値は濃くなる一方である。先ず、冒頭の「ツアラトストラはかく語りき」の朗々たる序曲に圧倒された。そして、深淵な宇宙空間の映像美に吸い込まれていった。
当時の論評は、圧倒的多数の酷評と極少数の絶賛に大きく分かれていた。前者の1人は淀川長治であり、後者の1人は水野晴郎であった。何せ、ストーリーが難解なのである。人類の知性の誕生と進化の過程を見守る"神"の存在や人類とAIの相克や、宇宙空間の歪みとワープやいろいろなことが取り沙汰されたが、キューブリック自身は一切説明を行わず、「これを見て分かったという人がいたらこの作品は失敗だ。」などと豪語していた。その2年後、このストーリーの共著者である有名なSF作家、アーサー・C・クラークが本を刊行し、論争に決着をつけたが、キューブリックは「これは1つの解釈であって、見た人が自由にストーリーをイメージしてくれたらそれで良い。」などとうそぶいていた。
ストーリーは、猿人時代の人間が火と武器を使用するに至るプロローグから始まり、月の裏側に発見された謎の物体(モノリス)を調査中、その物体から発射された怪電波の発信源を探るため、木星に向けてディスカバリー号が無窮の宇宙へ船出する、と展開していく。そしてその途中でAI(HAL9000)の反乱が起こり、冷凍休眠中の乗組員の生命が絶たれ、唯一の生存者であるパイロット(ボーマン船長)は宇宙ポットで宇宙空間へ放逐されてしまう。何とか緊急入船したボーマンはHAL9000のメモリーを剥ぎ取り、無力化するが、この瞬間、地球から指令が届き、これからのミッションはHAL9000しか知らないと知らされる。宇宙空間に漂うモノリスに宇宙ポットで近づいたボーマンは突然ブラックホールのような空間の割れ目に吸い込まれ、ワープの果てにブルボン調の部屋にたどり着く。そして、ボーマンは胎児に変身し、宇宙空間を漂ってゆく。そしてEND。
全編を通じて流れる、精選されたクラシック音楽が印象深かった。とくに、スペルマ・ライクのディスカバリー号が木星へ旅立つ特に流れる「ガイーヌのアダージョ」が無窮の宇宙をよく表していた。宇宙空間の映像はリアルで、素晴らしく、あれから50年以上経ち、CGがフルに使える今に至っても、これ以上の作品を見たことがない。巨大な円筒を回転させ、鉛直方向に重力を作り出して、その中で演技・撮影を行ったり、宇宙船や宇宙基地の窓ガラスから見える内部の様子を省略せずに克明に表現したり、キューブリックの徹底した凝り性が為せる業だと言われている。