> 【ムスボ】秋の夜長、どんな本を読んでいますか？

最近になって、フト子供の頃に読んだ一冊の本のことを思い出しました。
それはいつも物静かな姉が持っていた本で、
世界文学全集のような何冊もある全集の中の一冊、いわゆる端本でした。

なぜ不意に思い出したのか...それはわかりません。
ただ、老いると遠い昔の記憶から呼ばれることが多いようには感じています。

その本には冒頭に「隊商」という砂漠を行く商人が旅路の慰めに、
代わる代わる自分の出逢った不思議な話を語るというお話が載っていて、
他にも幼い兄妹が母のお使いの帰り、山越えの際吹雪に遭い、
氷に閉ざされた雪山をさ迷う「水晶」というお話や、
あといくつかのお話が収録されていました。

私はその中にあった大きな目の犬が三匹出てくるお話を
また読んでみたいと思ったのです。
そのお話は探せば文庫本とかで読めるのかも知れませんが、
読みたかったのは大きな目の犬の挿絵が載っている、
当時読んだその本で読みたかったのです。

タイトルは「ゴッケル物語」...？
しかしそれは私の記憶違いでした。
当時読んでいた全集端本は２冊あり、
そのもうひとつのほうに収録されていたお話が
記憶の中で混ざってしまっていたのです。

わかったことは、前者は小学館の「少年少女世界の名作文学28 (ドイツ編 2)」
後者はどこの全集端本かはわかりませんでしたが、
お話のタイトルは「火口箱(ほくちばこ)」※現タイトルは火打ち箱
アンデルセン童話のひとつだということ。

さっそくネットで探して手に入れました！
火口箱のほうはどの全集がわからなかったので、
福音館の文庫本になりましたが。

遠い記憶の彼方、いつか出逢った本を探すという行為は、
自分の中、時空を超えて推理、探偵するような楽しさがありました。

今秋、夜長に読み耽る本としてこれ以上はありません。
それはまだ小さかった私が、夕暮れ時、電気を点けることももどかしく、
壁にもたれ読んでいた当時の情景や匂いさえも思い起こさせる、
時間や空間をも感じる「良い時間」になるに違いありません。