新規登録がまだの方

下の[新規登録]ボタンを押してコミュニティに登録してください。

登録がお済みの方はこちら

コミュ二ティポイントのご案内

詳しく見る

写真で遊ぼ

写真で遊ぼ>掲示板

公開 メンバー数:17人

チャットに入る

投稿は [新しいトピックを立てる] をクリックするか
[コメントする] をクリックします

サークル内の発言を検索する

サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。

閉じる

  • from: 那須ボーイさん

    2024年05月19日 12時19分00秒

    icon

    短編小説 渚の慕情

    第一話
    男はライターを鳴らし、紫煙を燻らしながら女の事を考えていた。
    外は夜来の小雨が木々を濡らしている。
    寒かった冬も過ぎ、その木々には芽吹が見られ春到来の予感がしていた。
    男は55才。
    某メーカーの技術部長の地位にあった。
    同期の中では早くにその地位に就き今役員の話が出ている。
    専務からは身辺整理をして置くように言われている。
    変な噂があれば、足を引っ張られかねないからである。
    男に悪い噂話などない。
    只、女の事が少し気にはなっていた。
    男には家庭があり、言わば不倫関係。
    女は知的な女性である。
    話せば身を退いて呉れる事はわかっていた。
    だからこそ、簡単には話せない思いが男にはあった。
    その女性は何処かエキゾチックな顔立ちで、男心を擽る容姿をしていた。
    -------------------------------------------
    第二話
    女はT女子大の国際関係学科を終え、外資系の企業で貿易関係の仕事をしていた。
    服装も外国仕込みで洗練されており、物事は何事も即断即決する。
    そこに頭脳回路のスムーズさが伺われた。
    男はフランスに出張の際エールフランスの機中で、女と席が丁度隣り合わせになった。
    それが女とのなれ染めだった。
    帰国後も時々会うようになった。
    女は夜は既に成熟した女だった。
    35才ともなれば当然と言えば当然である。
    男は23才の頃当時短大の1年生だった彼女と旅行したことがある。
    男はあまり女を知らなかった。
    女を頂点に導く術を知らなかった。
    自分が終わればそれで終わりと思っていた。
    言わば独楽である。
    その事を思えば苦笑する思いなのである。
    ----------------------------------------
    第三話
    男と女はいつも同じホテルを利用していた。
    音響設備も整っている。
    何処からともなく流れて来る音の調べ。
    その音は一つ一つの細胞の細部にまで伝わって来る。
    女は男が淹れてくれた紅茶を口に運ぶ。
    味は何時も同じ。
    それはかってエール・フランスの機中で二人して口にしたあの味なのである。
    口にすれば、やがてはそれが体中一杯に広がって行く。
    女は紅茶を飲み干し、静かな音楽の調べに身を任せている。
    やがてうとうととし、浅い夢の中に落ちる思いがした。
    先程までの男との愛の疲れが心地良く残っている。
    何処か遠くから波の音がしている。
    寄せては返す波の音。
    静かな渚の音色である。
    その音色は女を一層心地よい夢の中へ誘うようだった。
    奇しくも男も渚の状景を思った。
    何故その状景を思ったかは良く分からない。
    女の渚の状景は感傷とロマンである。
    だが男の渚の状景はそれとは違うような気がした。
    何故違うのか。
    その時はまだ男には良く分からなかった。
    ------------------------------------------------
    終章
    不倫?!何と言われようと人の本能だ!
    だが男は思った。
    女とは別れよう。
    自分の保身のためでは有るが、所詮不倫。
    いずれは別れる時が来る。
    女もそれは承知している筈。
    その別れが役員の話が出て居る時に到来しただけなのだ。考え様によっては自分勝手な事は分かっている。
    だが所詮それが案外"人"なのかも知れない。
    ホテルの一室で観た(思った)あの渚の光景を思い出していた。
    あの渚の光景を思いながら、その時女とは別れようとの思いが既にあったのだろう。
    女との事が慕情として残るのだろうか。
    又女はどうだろう。一般的に女性は次のステージに行けば別の景色を観ると言われる。
    各人の在り方は各々。
    空は暮れ掛けていた。
    又明日は明日が有るのだろう。
    ー終わり
    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    終わりに寄せて

    "さよならは言わないで置こう"

    愛しても  愛しても  いけない恋なのか

    サヨナラは サヨナラは 言わないで置こう

    来世があるとすうならば大手を広げて君を抱きしめよう

    サヨナラは言わないで置こう

    • サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 0
    • サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 0

    icon拍手者リスト

コメント: 全0件